【バスケ】2013年度開幕特集 佐々木HCインタビュー

佐々木HC

 

2013年度開幕特集。第1回は、ヘッドコーチとしてチームを作り上げ続けてきた佐々木三男HCのインタビューだ。トランジションバスケットという慶大の武器を生み出し、今に至る慶大バスケ部の伝統を形成し続けてきた佐々木HC。2部降格後最初の年となった昨季は、2部リーグ8位という不本意な結果に終わってしまっただけに、今年に懸ける想いは強い。ご自身も今年で65歳を迎えられる勝負の年。目標である1部昇格、そして5年前に成し遂げた2部からのインカレ制覇という伝説を再び実現するために。今年度も、その手腕を以ってして慶大バスケ部を導いていく。

 

 

──昨年を振り返って、いかがですか。

結局フルメンバーが怪我の為に揃わずに、揃った時はまあまあな試合が出来たんだけど、怪我をするとまた勝てないチームに戻るという、一番残念なシーズン…消化不良というか。そんな感じでした。

──その中で得た課題と手応えは?

一つは、ディフェンスが相当弱くなってしまったということです。良かった点というのは、仕方なしに若い選手を使わざるを得なくて使ったということが、今年のいい面に繋がるだろうな、という期待をしていることですね。

──春先の練習で強化したポイントはどこですか?

今、ディフェンスの再構築ということで、ディフェンスのフットワーク系を1対1などを少しずつ入れながらやっています。力点を置いているのは、ディフェンスの基礎作り、フットワークの部分です。

 

『ディフェンスから速攻という戦い方で』

 

──六大学での手応えはいかがでしたか。

ゼロです。ボールマンの所の足の運びが、リングに向かって縦になってしまうんですね。今まではサイドバイサイドでジグザグのフットワークなんかを随分やって来たのですが、ひょっとするとその練習が足を後ろに引くような習慣性になったのかな、という反省があったので、ジグザグのフットワークを止めてサイドステップの練習を増やしています。六大学の時に少しは外に押す様なディフェンスが出来るかな、とは思ったんだけど。まだ六大学の時点では1ヶ月しかやってなかったので、改良まではもうちょっと時間は掛かるかなと思ってます。

伝統の堅守速攻のスタイルを、今年も貫く。

伝統の堅守速攻のスタイルを、今年も貫く。

──それと同時に体力強化も行ったと伺いましたが。

やっぱり体力が無いと、いくらいい戦術なんかを乗っけても、結局は息切れしてそれが使い切れないということなので。今までインカレを目標にしていた時も、走ったり体を使うというトレーニングは沢山やって来ていたので、この春はトレーニングを重視しましたね。

──現時点での基礎体力はいかがですか。

まだやり始めだから、完成という域までは行ってないと思うんだけど。関東連盟の方で出している体力測定の数値は全部配ったので、少なくともそれを凌ぐ所まで行って欲しいですね。なので、まだまだ体力は強化しないといけません。

──今年のチームの印象はいかがですか。

ピンチになった時の弱さというのが、チームの弱さになっています。苦しい時に歯止めになる様な選手がいて欲しいんだけど。これは今、昨年の反省からミーティングを重ねているにも関わらず、そういう悪い流れが断ち切れないという、チームとしてはあまり良くない状態です。

──今年のバスケットスタイルは、従来道理ですか?

今年もディフェンスから速攻という戦い方で行くしかないと思ってます。結局、ディレイドゲームになっても勝てないと思いますよ。2部で言ってもセネガルがいたりする訳なんで、セットで戦って行くよりは、トランジションゲームの方が確率が高いと思うので。ディフェンスから速攻。失点をしたら早攻め。それは変わらずやろうかなと考えています。

チームの柱とならなければならない、主将の蛯名。

チームの柱とならなければならない、主将の蛯名。

──今年度の4年生について。

蛯名(法4・洛南高)とか矢嶋(総4・福大大濠高)が復帰して、そこに中心を置いてチーム作りをすれば、いつもの様に4年生に信頼を起きながら試合が出来ると思うんだけど。残念ながら壊れちゃうんですよね。だから、4年生の核が今のところ出来ていない。怪我から2人が復帰して来れば、柱になって4年生中心にチームを作れるんですけど。怪我をしない4年生であって欲しいなと思いますね。

──新3年生について

何か纏まっているようで纏まっていないというか。これは僕の感じだけど、心を開いてきちんとしたミーティングが出来ているかな、という点が不安材料ですね。上辺だけでやっている気がして、同級生として深くまで突っ込んで言えて無い感じがするんで。ここ2,3年そういう学年がいるんで、それはウチにとってはマイナスですね。力が弱いのに纏まりきれない。結束というか、阿吽の呼吸というか、そこまで行ってない様な気がします。素材的には悪くないと思うんで、本来だとこの子達が頑張ってくれれば、そんな弱いチームじゃない筈なんだけど。そこが何か強固じゃないですね。

──新2年生について

黒木(環2・延岡学園高)が出遅れてますね。2週間くらいした所で怪我をしたっていうこともあるんですけど。福元(環2・福大大濠高)は、僕としてはまずまずの評価です。大元(環2・洛南高)も凄く高い能力を持っているんだけど、心が優し過ぎて。真木(環2・國學院久我山高)も怪我をしたので十二分じゃないし、大元は心の方がもうちょっと強くならないといけません。

──新入生について

西戸(総1・洛南高)の方は使えると思うけど、あの背ですからね。後藤(環1・藤枝明誠高)もガードがウチにいなければ使えると思うけど、伊藤と福元が力を付けて来たので、3番目の控えのガードくらいですかね。戦力になってくれるとは思っていますけれども。

 

『究極を言うと1点でも勝てばいい』

 

HCも「絶対に必要」と明言する点取り屋として期待される矢嶋。

HCも「絶対に必要」と明言する点取り屋として期待される矢嶋。

──今年の「不動の3選手」は誰ですか。

蛯名、矢嶋、本橋(環4・佼成学園高)がしっかりやってくれればと思っています。その中に、伊藤(環3・洛南高)や権田(政3・慶應高)がもっと成長して入ってくれば、3本柱というのは出来ると思うんですけど。ポイントガードとしては伊藤がもうちょっと安定すること。それの競争相手が福元です。だから、まだ3本がしっかり出来ていません(笑)もう一つウチで絶対に必要なのが、やっぱりポイントゲッター。当初矢嶋を予定していたんですけど、怪我しちゃったんで。今のところ点取り屋がいないです。去年みたいに伊藤が20点取るような試合っていうのは良い展開では無いので、フォワードで20点取れる子がいないと試合は出来ないですね。それを矢嶋であったり権田に期待しているんですが、そこもまだ未完成です。

──チーム内での競争はありますか。

山崎哲(環2・秋田高)が少し上手になり掛けているんですが、でもまだ脱皮しきれない部分があります。後は真木と大元辺りが相当頑張れば、チーム内の競争というのは出てくるんですけど、今のところまだそこまでは行ってないので、競争という所には至ってないですね。

──ベンチの層の厚さについて、どうお考えですか。

人材的には厚いと思います。ただ、体調が万全では無いという部分を考えると、まだ競争にまでは発展していないです。

──佐々木HCの理想の得点差は?

これも日本の代表チームを見ていると、女子なんかで言うと75・6点という話をしていますが、僕はそう思って無くて。得点というのは沢山取れる能力が無いと駄目だと思っています。究極を言うと1点でも勝てばいいと思っているので、守り切って勝つというのが1番オーソドックスなんだと思うんですけど。やっぱり体格的な部分を見ると、守り勝つというのは非常に難しいと思うので、点数は多ければ多い程良い。点数を多く取ると、相手に攻撃権を与えちゃうことになるんですが、それを乗り切って行かないと、ディレイドゲームだけでは絶対に勝てないと思っています。もう一つは、今年はリーグ戦までにはハーフコートのゾーンディフェンスを1つ作らないといけないかなと思っています。

──それは外国人留学生の選手対策ですか?

高さ対策というのも勿論ですが、目先を変える、変化を付けることも考えています。今まではあまりそういうことをやったことは無かったんですが、女子のユニバーシアード(※)ではチェンジングディフェンスを使いながら、体の大きい海外の選手と戦って、今一歩届かなかったんですが。そういう戦い方も女子の時にはやっているので、チェンジングの為のディフェンスも必要かなと。春はゾーンをやっているような暇は無いので、秋に向けて作って行こうかなと。ですから、理想の得点というのは、多いだけ良しですね。

──春シーズンは日程が詰まっているが、コンディショニングについてどうお考えですか?

練習は、体力・個人的な能力・チームという3つの柱を考えているので、それを崩すつもりはありません。後は走ったり飛ぶ力が付いたものが、ゲームで使えないと意味が無いので、今年はいいテストのチャンスかなと思っています。1ヶ月体力強化をして付いた体力をゲームでいかに活かすか、ということを念頭に置いてやれば、早慶戦までには間に合うんじゃないかと思います。

──最後に、主要4大会(関東トーナメント,早慶戦,リーグ戦,インカレ)の目標をお願いします。

トーナメントはベスト8で東海と当たるんですが、今まで指導した中で、強いチームに挑んで行くということをずっとやって来ている訳なので。一発勝負ですし、ウチがどんどんシュートを入れればアップセットの可能性はあるので、それを頭に置いてトーナメントを頑張らないといけないです。新人戦は、この素材感ではちょっと難しいですね。早慶戦は連敗しているので、私も今年が定年退職の年ですし、ラストイヤーで早慶戦くらいは勝ちたいなと(笑)リーグ戦は、日大や日体といった上から落ちて来たチームと対等に戦うだけの体力を付けて、どうしても1部復帰へチャレンジする資格を取りたいので。当然1着2着狙いで頑張らないといけません。インカレは2部で1位にならないと出場権が無いので、リーグ戦に賭けるしか無いかなと。その結果としてインカレ出場というのが取れるということなので、インカレを狙いますということでは無くて、リーグ戦を頑張るという所に力点を置かなければならないかなと思っています。

──ありがとうございました。

※佐々木HCは1992年から2000年にかけて、全日本B(=ユニバーシアード代表)チームのコーチ・及びヘッドコーチとして、ユニバーシアード国際大会に4回出場している(体育会バスケ部HPより引用)。

 

※この取材は4月6日に行いました※

(記事: 大地一輝)

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