ここ数試合で上り調子だったものの、前節は早慶戦に完敗し、残留に向けてもう後がなくなった慶大。そして今節は勝ち点差4につけるライバル、順大との背水の陣に臨んだ。試合は残留へのプレッシャーからか互いに相手を伺う慎重な試合展開の中、後半に武藤が値千金の先制点。その後、体を張り続けて虎の子の一点を守り切った慶大が貴重な勝ち点3を獲得した。
JR東日本カップ2013 第87回関東大学サッカーリーグ戦 1部リーグ 第19節
2013/11/2(土)13:50KO@フクダ電子アリーナ
慶應義塾大学1-0順天堂大学
【得点者(アシスト者)】
〔慶〕武藤義紀(71分=溝渕雄志)
◇慶大スターティングメンバー
GK | 福本晋也(商4・暁星高) |
DF | 溝渕雄志(環1・流通経済大学付属柏高) |
DF | 望月大知(環1・静岡学園高) |
DF | 久保飛翔(環2・済美高) |
DF | 保田隆介(法3・横浜Fマリノスユース) |
MF | 端山豪(総2・東京ヴェルディユース) |
MF | 松下純土(総4・國學院久我山高) |
MF | 岩田修平(総4・名古屋グランパスU-18) |
MF | 増田湧介(環3・清水東高) |
FW | 平戸奨眞(法3・暁星高)→90+2分沢田真洋(経4・慶應義塾湘南藤沢高) |
FW | 武藤義紀(経3・FC東京U-18) |
後半も「我慢比べ」(須田芳正監督、松下主将)の展開が続くが、慶大にとっては、これは「プラン通り」の展開。慶大が徐々にギアチェンジを行ったことで、互いにゴール前まで持ち込む場面が増えてくる。後半開始早々、端山豪(総2・東京ヴェルディユース)のフィードからファーサイドで望月大知(環1・静岡学園高)がトラップするもシュートを打ち切れずに終わると、対する順大もバイタルエリアに侵入した天野がシュートを放つがこれを、体を張って阻止しCKに逃れる。そのCKも頭で合わせられるが、必死に体を寄せて十分な態勢で打たせなかった。その後慶大は再び端山のフィードから今度はファーで久保飛翔(環2・済美高)がヘディングで合わせるがキーパーにキャッチされる。その直後にも増田がドリブルで中に切れ込みミドルを放つがわずかにゴールマウスの上に外れた。波状攻撃を仕掛けていた慶大だったが、63分、この日最大のピンチを迎える。天野の縦パスを起点に決定的なシュートを放たれるも、福本がこれをファインセーブで凌ぐ。一進一退の展開の中迎えた後半26分、ついに慶應が均衡を破った。溝渕が相手のロングパスをインターセプトし、1人で縦に持ち込むと絶妙なスルーパス。これに抜け出した武藤が相手キーパーを見極め、冷静なループシュートで価値ある先制点を奪取する。その後慶大は、度重なる相手のクロスやシュートをCBの望月と久保を中心としたDF陣が跳ね返し続ける。またキック精度の高い天野のFKに脅かされる場面もあったが、粘り強い守備で見事順大の攻撃をシャットアウト。攻撃面でも、岩田修平(総4・名古屋グランパスU-18)が絶妙なファーストタッチで抜け出し決定的な場面を迎えたがシュートは相手DFに阻まれた。終了間際には、疲れの見える平戸を下げ沢田真洋(経4・慶應義塾湘南藤沢高)が2試合連続の出場を果たした。そしてそのまま逃げ切り、残留争いの直接対決を制した。
今シーズン初の完封勝利。そして3試合ぶりのエースの得点。攻守共に内容の伴った会心の勝利だったと言えるだろう。それは特に守備面において、「ファースト(の競り合い)」「セカンドボール」「カバーリング」といった、基礎的な部分を怠らずに「労働」(須田監督)し続けたからこその結果とも言える。また、今節を落とすと絶体絶命の危機に立たされていたが、シーソーゲームを勝ち切る勝負強さを見せた。ただ降格圏内にいるという事実に変わりはないため、慶大は今後も目の前の一戦一戦を勝つことだけに集中することが必要だ。そんな残留争いも残り3試合で決着。次節は後半戦負けなしと絶好調の国士館大が相手だ。今節見せてくれたチーム力、そして勝負強さは本物か。荒鷲イレブンの地力が試される。 (記事 木下彰)
試合後の監督・選手コメント
須田芳正監督
(今日の試合を振り返って)
我慢比べで、ガチガチな戦いでよく最後まで集中してやって、今季初の無失点ゲームだったのでそれが良かったです。エースが決めて本当にプラン通りというか、最高のゲームだったと思います。
(開始から平戸選手を使ったことについて)
ボールを取った後のターゲットということで、今日は彼を持ってきました。今までは一本の裏を狙う形だったんですが、そこの一本の裏をなかなか相手も準備して取れないので、彼をターゲットとしてそのセカンドを拾うという、そのようなプランでした。
(増田選手をサイドハーフで起用した意図について)
あそこのサイドはアップダウンが激しいポジションなので、走力もあるし、あと中でのこぼれ球や切れ込んでのシュートというところも彼は能力があるので、あそこのポジションで使いました。
(今日の勝因はどこにあるか)
メンタル。本当に集中して90分間できたことだと思います。
(完封できた要因は)
守備のところはここ4試合、ブロックを作って、また自分のゾーンに入ってきた時はしっかりボールに行って、カバーリングもしっかりやろうと徹底しました。守る、というのは労働なのでまじめにやらないといけないですが、今日はチャレンジ&カバーも相当できていました。そしてやっと、守りのオーラが若干ですが出てきたんじゃないかなと思いますね。気持ちの部分も含めて。それまではあまりにも簡単に失点しすぎていましたし、あとは攻めている時に攻めのことばかりみんな考えていたので。だからカウンターで入れられたり簡単に失点した場面がありましたが、今は攻撃している時も守りのことも考えて、要するにリスクマネージメントができているというのが、ディフェンスが安定してきた要因だと思います。
(順天堂大との前回対戦では敗れていたが)
順天堂大に2-6で負けたのはあまり気にならず、むしろ残留争いの一戦ということでそっちの方に対して強い気持ちを持って彼らは戦っていたと思います。僕もそうですし。そういう意味で、本当に我慢比べでガチガチなゲームだったと思いますが、その我慢比べに今日は勝ったところが良かったと思います。
(次節に向けて)
今度は国士館大で、彼らは本当に勢いがあるチームなので、それに負けないぐらいの気持ちとメンタルを持って戦いたいと思います。
松下純土主将(総4・國學院久我山高)
(今日の試合を振り返って)
本当に気持ちで掴んだ一勝というか、両チームとも前半特に固い試合運びで、多分見ている人はすごくつまらない試合だったと思うんですけど、その我慢比べってところで僕らの気持ちが上回ったというか、そこに勝った結果1-0の勝利をできたと思っていて、内容的につまらなくても気持ちという部分で見ている人に何か伝わったんじゃないかなと思っています。
(エースが決めるとチームは盛り上がりますか)
守備が今シーズン初めて0失点で抑えてエースが決めるという理想的な試合というか、固い試合運びの中でやっぱり武藤が決めるのはすごい大きな1点だったのではないかなと思います。
(先制点を取れたことについて)
前半は0-0で折り返すところはプラン通りで後半、我慢比べの中で自分たちがどこで強気になるというか、リスクを背負ってでも前に出て仕掛けるかというところで、駆け引きの部分で勝った結果得点が生まれたのだと思います。
(今日は中盤とDFがコンパクトな印象を持ったが、意識したことはあるか)
向こうもロングボールを蹴ってきますし、僕らも基本的に一個飛ばそうと言っていたので、やっぱりセカンドボールが90分間通して非常に発生する回数が多いと予想していて、セカンド勝負だというのも試合前からずっと意識していたことで、その点で僕らの中盤のラインと守備のラインがコンパクトになっていた分拾うことができて、拾えると有利に試合が運べると思うのでそこが上手くいったんだと思います。
(絶対に落とせない一戦で勝利した率直な感想は)
チーム、出ている選手以外にも応援してくれる選手だったり仕事をしている人全員が一丸となった勝利で、正直すごい個人的にもホッとしていますが、ただ残り3試合も勝利が必要になってくるので、ここで緩めないでしっかり気を引き締めてまた明日から1週間準備していきたいと思います。
(次は勢いのある国士館大が相手だが)
まだ(後半戦は)負けていないですが、筑波もこの間負けていない状況で僕らと当たって僕らが勝ったということもあるので、その点では向こうも勢いはあるでしょうけど、僕らもまた落とせない試合なので勝利を掴みにいきたいと思います。
武藤嘉紀(経3・FC東京U-18)
(今日の試合を振り返って)
前半から自分たちが失点しないことを心がけて、1点をもぎ取って守りきるというサッカーをしようとして、それが出来たのは良かったです。
(流れの中からの得点は久しぶりでしたが)
久しぶりですね。自分としても後期全然流れの中からの点がなかったので、今日決められて良かったなと思います。
(今期初の無失点でしたが)
DF陣が0で抑えてくれたので、攻撃陣も1点取って楽にさせてあげないといけなかったんですけど、(得点を挙げたのは)ちょっと遅い時間帯だったんですけど、チームとして無失点で抑えたということは良かったです。
(雨によって滑りやすかったと思うが)
雨が降ってきて自分たちは、今日は繋ぐというよりも蹴ってこぼれ球を拾うという形だったので、今日は雨が味方してくれたのかなと思います。
(残留ラインまで勝ち点差1となったが)
ラスト3試合は絶対に負けられないですし、残り3試合は全勝で終わりたいなと思います。
(次は好調の国士大ですが意気込みは)
自分たちは勝たないといけないので、相手の調子どうこうより、自分たちのサッカーをして勝って残留に近づきたいと思います。
保田隆介(法3・横浜Fマリノスユース)
(今日の試合を振り返って)
今日の試合の目標はサッカーの内容どうこうではなくて、とにかく勝ち点3ということでした。失点0で勝ち点3を取れたので、今日の試合に関しては満足です。
(どのような気持ちで臨みましたか)
ここで負けると残留が厳しい状況になってしまうので、負けたら終わり、この試合が最後という気持ちで臨みました。
(自身のプレーに関して)
試合中は本当に個人のプレーよりもとにかく相手に得点されないということを意識していたので、あまり気にしていなかった。今終えて考えると、相手の攻撃はうちの右サイドからの攻撃が大半だったので、あまり1対1で対応する場面はなかったが、中で集中を切らさずに相手のマークを離さなかったというのは評価できる。しかし、もう少し攻撃に出ていればチャンスになったので、そこは課題かなと思います。
(今季リーグ戦初の無失点について)
リーグ戦で無失点試合がないというのは気にしていたので、この時期にそれが達成できたのは自信にもなるし、チームにとっても非常に大きいことだと思います。
(残り3試合に向けて意気込み)
3試合ですが、1試合負けたらかなり厳しい状況になってしまうので、トーナメントの気持ちで目の前の試合で勝ち点3をつかみに行きたいです。
久保飛翔(環2・済美高)
(今日の試合を振り返って)
リーグ戦を通して無失点という試合がなかったので、無失点で勝てたということは良かった点だと思います。
(今季リーグ戦初の無失点ということに関していかがですか)
素直に嬉しいです。
(残留のかかった大事な一戦にどのような気持ちで挑んだか)
残留争いをしている中で、順大とは勝ち点も近いチームですし、とにかく勝たないといけない、負けは絶対に許されないという状況だったので、勝ちだけにこだわる気持ちでやりました。
(自身のプレーで評価できた点は)
弾くところはしっかり弾いてというところでは、自分の持ち味は出せたと思います。
(残り3試合のリーグ戦について意気込みをお願いします)
やっぱり、残り3試合は全部勝つという気持ち、絶対に残留するんだという気持ちを忘れずに臨んでいきたいと思います。
溝渕雄志(環1・流通経済大学付属柏高)
(今日の試合を振り返って) 残り4節で残留に向けて絶対負けられない戦いになっていたのでとにかく勝つことだけにこだわって全員で臨みました。
(終始我慢比べの展開だったが、勝った慶大と負けた順大の差はどこにあったか)
最後は1点勝負になるということはわかっていました。そこでアシストできたというのは、あそこでセカンドボールを相手よりに先に僕が反応できたことと、武藤が一歩先に相手の裏を取れたこと、その一歩の差だったと思います。
(今季リーグ戦では初の無失点試合となったが)
今まで大量失点も含めて無失点で乗り切れなかったので、その中で自分含めセンターバックの望月と久保も左の保田も本当に我慢強く、1対1でもボールカバーでもシュートブロックの場面でも、体を張れたのでそれがあの1点(1得点)につながったと思います。
(試合後のチームの雰囲気は)
この勝ちは残留に向けて本当に大きかったので盛り上がりましたけど、やはり皆もう気持ちは切り替わっていると思います。残り3節全勝でいくしかないのでこの一週間やっていきたいというのはキャプテンから話があったところなのでまだしっかり締まった雰囲気だと思います。
(残り3節、まだまだ厳しい戦いが続くが)
次が国士舘で後期調子いいので、ただ日体と勝ち点差2で順天とも1と詰められてプレッシャーもかかっていると思うので、ここで連勝という形でさらに残留に向けて大きな一歩を踏み出せるようにまた一週間全員でやっていきたいと思います。
望月大知(環1・静岡学園高)
(今日を振り返って)
1点を争う厳しい試合でしたが相手より我慢強く戦えたことがよかったかなと思います。
(雨の中の試合だったが)
まずファーストを落とさないことを心掛けていて、そのあとのセカンドボールも難しくなったんですが、しっかりと深くとってうまく対応できました。
(順大FWに足の速い原田選手がいたが)
翼くん(久保)がまずファーストで厳しくいって自分はそのあとのセカンドをしっかり拾うということではっきり役割分担していてそれがうまくいき抑えられたと思います。
(今シーズン初のクリーンシートであったが)
ディフェンダーなので無失点に抑えられたことは素直に嬉しいですし、やっぱりチームにとっても大きな自信につながると思うのでとても良かったです。
(次節、残留に向けて)
国士舘がまだ後期無敗ということで手強い相手だと思いますが、今日の勢いのまま勝ち点3を奪いたいです。
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