【ソッカー男子】開幕前特集第5弾! 須田芳正監督

インカレベスト4入りした2011年以降、ここ2年は残留争いを経験し、昨季はあと一歩で降格という苦しいシーズンを送った慶大ソッカー部。3年前に就任した須田芳正監督は慶大の栄光も苦悩も味わってきた。「今季は集大成」と語る勝負の4年目のシーズン開幕を前に、自らの胸の内を語った。

 

 

後半戦で5連敗したときは『もう終わりだ』と思った

 

 

―昨季を振り返って

 

「苦しいシーズンだったね。リーグ戦では同じチームと2回当たるわけで、同じチームに連敗するのは避けなくてはいけないのが鉄則だと思うんだけれども、シーズン中に4連敗、5連敗しちゃったからね。負けた後に戦術的にも精神的にも立ち直れなかったというのがリーグ戦で良い成績を収められなかった1つの理由だし、もう1つは戦術的なところで守備が崩壊しちゃったからね。4点5点6点取られる試合というのは、例えば我々が全く関係ないサッカーの試合を観て、『ああ、もう気持ち切れちゃったな』って思うように、うちらが4点5点6点取られた試合はそういう風に周りから見られていて、『慶應もう諦めちゃったんだな』というゲームになっちゃうと思うんだよね。そういうところで守備の崩壊というのが苦しんだ原因だったと思う。とにかくよく残ったなと。」

 

―監督ご自身が一番苦しかった時期は

 

「やはり前期が始まってすぐの時期がきつかったね。勝てなかったし、自分たちが目指そうとするサッカーができなかったし、チームが色々な意味で1つになれなかった。」

 

―後半戦の5連敗の時以上に苦しかったか

 

「ある意味後半戦で5連敗したときは『もう終わりだ』と思った。良い意味で開き直りだよね。夏を乗り越えると実力がはっきりと分かってきて、ちょっとこれはかなわないし無理かなと。がっくりはくるけど、一勝も挙げられない方がきついよね。」

 

―ここ数年は、前後期の序盤で勢いに乗りきれないことが多いが

 

「1つはどこも強いからね。今年も日程を見て、初戦が明治、次が国士舘、どこも強いんだよね。こっちがそれほど実力で劣っているというわけではないけど、1つ波に乗りたいから一発目って大事。昨年も一昨年も開幕戦で負けていて、そうするとメンタル的にきついんだよね。『次負けたら連敗だな』ってなるし、『次はやってやろう』という気持ちももちろんあるんだけど、一発目を取るということが大事だね。今は(開幕戦の)明治戦のことしか考えてない。そこに照準を合わせてやっているし、おそらく選手たちもそういう気持ちでやっているし、僕も最初が大事だと言っているので。もちろんリーグ戦は22試合を1年通してやるけど、そのうちの1つとはいえ気持ちの部分で初戦というのは今年大事に戦いたい。」

 

―残留を果たして得られたものは

 

「まずは4年生の力。これは本当に大きいなと思った。後期5連敗して、その後BチームやCチームの4年生たちがトップの練習に出てきて、なぜか頭も丸めて声出して、チームのために水を運んだりゴールを運んだり、特にうちらは100人の部員が1つの目標に向かってベクトルを向けて戦うことが本当に大事だなと。特に大学スポーツは4年生が本当に中心となってリーダーシップをとってチームを引っ張って、1つの組織が一丸となれば力以上のものが発揮できるので、4年生の力をまず感じたね。あともう1つは、本当にチームが1つになるとすごい力を発揮できるのだなと。昨季は間違いなく奇跡だよ。慶應しか多分できないよ。ある意味こっちも開き直りで、『じゃあやるぞ』と。それで4年生と話して4年生がそういう1つの気持ちになりましたね。それと戦術的にもガラッと変えて、守備を重視したカウンターサッカー、堅守速攻のサッカーに変えてそれに合うようなプレイヤーを選び直してプレイヤーを当てはめていきました。それがはまって、皆がそこに向かって1つになったというのが奇跡を起こしたよね。それと同時にもう1つは慶應の力というのは伝統なんだよね。OBの方たちが練習に足を運んでくれて色々とアドバイスをくれたり、会場に足を運んで応援してくれたり、伝統の力が奇跡を起こしたと思うね。もう神懸かっていますよ。何かと言ったら見えない力だよね。例えば、自分たちが攻撃する方に風が吹いていたりとか、何か神懸かっていたよね。もちろん最後は運があったと思うよ。でも運は我々がつかみとったものだと思う。それをやってきたんじゃないかな。」

 

―そうなると後期の中大戦(●1-6)と日体大戦(○3-2、後期初勝利)の間にターニングポイントがあったのか

 

「中大に負けて、こっちも気持ち的にガラッと変えちゃったからね。あのときキャプテンの松下(総卒・現松本山雅FC所属)が泣いていたんだよね、あそこで彼らも何か吹っ切れたんじゃない。今まで彼はポーカーフェイスであまり表情に表さないタイプで『だめだったらしょうがないよ』って言っていたのが、あれだけ泣きじゃくっていたので、それが彼を変えたしチームを変えたっていうのはあると思う。それと、連敗するとサッカー的なことよりメンタルが疲れちゃうんだよね。グラウンドに来るのが嫌になる。それって最悪だよね。一番好きなことをするのが嫌になっちゃう。一番人生にとって面白くないことだよね。そこで5日間休みをとった。サッカーがどうだとかコンディションがどうだというよりか、心のコンディションを整えさせないとどうにもならないなと。マネージメントの面でそれはよかったと思う。そのときは『グラウンドに来るな』『サッカーは全員やるな』『遊びなさい』『リフレッシュした気持ちで次の練習に来なさい』という形で伝えました。(5日後は)皆いきいきとしていて、グラウンドに来た瞬間サッカーをやりたくてしょうがないというものがあって、すごく良い練習ができた。チームが一気に変わった。それで何かいけるんじゃないかっていう気持ちになったよね。」

 

―そういう時だからこそ練習量を増やしたりはしなかった

 

「こっちも嫌になっちゃっていたから、もう休もうと。一回リセットしようと。白紙に戻してから残り8試合のリーグ戦を戦おうという言い方はしたかな。もう今までのことは終わりにして、ここから8試合のリーグ戦という形でマネージメントしたね。」

 

―4年生がトップチームに少なかったことでチーム作りに影響は

 

「やはり影響はあったよね。4年生が中心となってチームを引っ張っていくのが自然だよね。例えば、練習でも厳しいことを言えるのは4年生はじめ上級生でしょう。1年生が4年生に対して、ピッチに入ったら年齢は関係ないとはいえ、なかなか言えないよ。毎日の積み重ねが大切で、チームを引っ張っていくのは4年生であるべきだから、厳しいことも言っていかなくてはいけないよね。怪我で試合にあまり4年生が出ていなくて(4年生が)少ないことで締まらないところはあったと思う。それが他の4年生が練習に来てピッチ外から言ってくれたことで締まった部分もあったし、やはり大学スポーツは4年生でしょう。試合に出ている出てない関係なく、その年の4年生が本気で勝ちたいと思って、それで1人1人がどういう行動をするか、そこがしっかりしていればチームは締まると思う。本当に学んだね。ある意味優勝して盛り上がるのが一番良いけど、残留争いを勝ち上がったのがその年はその年で盛り上がるんじゃない。終わった後も彼らと食事に行ったりしたらその話で盛り上がっちゃうんだよね。『奇跡だよね』なんて(笑)。結果的に良い年だったってなっちゃうんだよね。苦しいんだけれども、最後終わってみればすごく良い経験もできたし良い年だったよねと。4年生も優勝した以上に誇りを持って卒業していったからね。おかしな話ではあるんだけど(笑)。」

 

―我々もあの時は少しまずいかなと

 

「いや、かなりまずいでしょう。(中大戦は)1-6だから。選手も結構あのとき入れ替えていて1年生を出していた。だからメンバーもあの後は4年生を入れたし、1・2年生が多かったのを3・4年生主体にガラッと変えました。」

 

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―ここから明るい話題に…

 

「明るかったよ今までだって(笑)。昨季のことは苦しかったけど、終わってみれば最高の思い出かもしれない。リーグ戦3位(2011年)のとき以上に楽しかったね。」

 

―昨季のベストゲームは

 

「ベストゲームはここ(慶大・下田グラウンド)でやった筑波戦(第10節延期分・2-1で勝利)じゃないかな。あれがベストゲームでしょう。1点前半に入れられて、後半は点を取るために前からプレスをかけて完璧にはまったよね。2-1だったけど、4-1、5-1のゲームだったね。ゲーム的には最後支配してコントロールできていたし、あれが1番だったじゃないかな。」

 

―松下主将が点を決めて盛り上がった

 

「そうだよね。彼はあれで松本山雅のスカウトが『絶対に獲得しなきゃだめだ』って言ってオファーがきたんだから。やはりボランチの選手はただボールさばきが上手いだけではだめだよね。さばいた後にゴール前に飛び出すというのが彼の課題だったんだけど、彼がそこで良いプレーをして最後に得点して、あれがベストゲームですね。」

 

―昨季は多くの下級生が出場機会を得たが

 

「今季2年生になった選手たちは成長したんじゃないかな。昨季は良い経験になったんじゃない。望月(環2・静岡学園高)とか溝渕(環2・流通経済大学付属柏高)とか1年生の間ずっと出ていて、昨季の最後の8試合は負けたら終わりだったから、トーナメントと一緒だったんだよね。その中で1年生で出るのは多分ビビっていたと思うよ。本当に緊張したと思うけど、もちろんきつい試合や苦しい試合を経験すればするほど成長するものだから、今季はまだ公式戦が始まっていないからわからないけど、期待したいよね。昨季の経験を生かしてもらいたい。」

 

―昨季最も成長を感じた選手は

 

「久保(環3・済美高)は成長したんじゃない。彼の場合は1年間怪我でずっとやっていなくて、昨季の前半も出したけどまだフィットしていなかったよね。半年間コンディションを上げていって、後期良かったよね。彼の良いところは前への強さだと思うんだよ。特にCBは4枚のディフェンスラインのうち2枚いて、1人が後ろをケアしてくれると彼が思い切って前にいけるというのがあって、自分の良いプレーが出てくると勢いに乗ってくるからね。彼は一番成長したんじゃないかな。もちろん端山(総3・東京ヴェルディユース)もそうだけど、彼は人間的に成長した。彼は技術は抜群だから、右でも左でも50mのパスをピンポイントで出せるし、あれだけの選手はなかなかいないよね。それは分かっていたんだけど、ボールのないところでどう関わるかが課題で、あとメンタルの部分も課題だったけど、そこがすごく成長したね。一気にプロ(東京ヴェルディ)の特別指定に入って、慶應の中心選手になったよね。この2人は目に見えて成長した選手。何人かと言われたらこの2人だね。」

 

―慶大からプロに行く選手が増えていることについては

 

「プロを作る学校ではないけど、とはいえサッカーを追求しているクラブとしては非常に素晴らしいことだと思います。」

 

―特に最近では武藤(経4・現FC東京所属)がJ1の舞台で活躍しているが

 

「非常に嬉しいですね。もう彼の場合は昨季に特別指定としてプロに行かせて、試合にも少ない時間だけど出場して、こっちとしても大学レベルだとずば抜けちゃっていて、彼みたいなスピードのある選手は1年って大きいんだよね。稼げるのもそうだし、サッカーは30歳過ぎまでしかできなくてサッカー人生は短いから、それを考えるともう行かせないとここでやっていてももったいないなと。日本のためにも、彼のためにももったいないなと。昨季の後期の中大戦が終わったあたりだと思うんだけど、『二部に落ちたらもう1年慶大でやらせる』『もし一部に残してくれたらFC東京に行っていいよ』と彼と僕との間で話した。その瞬間、練習への意欲だったり試合や勝負への集中力だったりがさらに良くなった。それまでももちろん頑張っていたけど、更に高まった。彼も成長したんじゃない。そこからさらに良いプレーをしてくれたね。こっちも最終手段だったね。」

 

―プロで活躍するのは嬉しい半面、慶大としてはマイナス要素が大きいように思われるが

 

「俺はそうは思っていないんだよね。皆ハッピーだと思う。なぜかと言えば、FC東京からオファーが来て、FC東京にとってもハッピーだし、武藤も嬉しいでしょう。もし武藤が今季慶應に残ったら、やはり絶対的なエースなんだよね。そこのポジションは彼しかいないんだよ。でもいなくなることによって、ポジションを巡って競争が始まる。そうすると切磋琢磨して他の選手も成長する。それで、昨季は最後の最後で彼に頼る部分があったんだよね。個人の力でやってくれる。頼る部分が全員あるんだよ。俺も含めてね。でも、それってその場しのぎだし、それで結果を残してくれることもあるけど、それよりはそこのポジションを皆で争ってチーム力をアップした方がプラスじゃないかと僕は考えるので、戦力ダウンだとは思わないし、皆ハッピーだから。よく『武藤が抜けて大変でしょう』って言われるけど、全然大変じゃないと僕は思っています。チームだからね。」

 

 

今季はサッカーに取り組む姿勢とかそういうところを含めて一戦一戦謙虚に戦っていきたい

 

 

―今季のチームについて

 

「一言で言うと、よくまとまったチームだよね。1つになっているからね。彼らも教訓として昨季のことを学んでいるよね。まず1つになる。このチームの中でやることは何なのか、それぞれが考えてピッチ内外で行動しているかな。よくまとまっているんじゃないかなと思う。」

 

―その中で昨季のチームと違うところは

 

「サッカー的なところからすると、昨季52失点しているのだけれどもそれを半分にしようと。2月からシーズンが始まってきて、昨季は攻撃のトレーニングの方が7割、守備のトレーニングが3割。最後の8試合は別だけど、シーズンを通してだと攻撃が7割。それが今は逆転して、7割が守備のトレーニングで3割が攻撃になったというところが一番の違いかな。練習内容が変わったんだよね。」

 

―チームの雰囲気は

 

「“自然”だね。2月の最初のミーティングで、もちろん最初だからピリッとするところはあるんだけど、昨季までは過剰な緊張感があったね。それが今季は良い緊張感で一発目を迎えられたね。それはおそらく今度の4年生が僕の監督就任と同時に1年生になって入ってきたから、僕の性格の部分をわかっているし、変な緊張感はなかった。こっちを恐れているような雰囲気はなかったかな。自然な緊張感の中でミーティングを迎えて、『今季は自然だね』と総監督も話していたんだけど、メリハリが上手くいっていると思う。」

 

―このオフ期間に特に取り組んできたことは

 

「守備。52失点しているわけだから、それを半分に減らす。それってすごい大変なことだと思うよ。22試合で52失点だから、1試合平均が2.3失点ぐらいで勝てるわけがないんだよ。上位に食い込めるわけがないでしょう。勝つためには3点4点取らなくてはいけない。それって大変なことだし、それで残っているわけだから奇跡なんだよ。それを1点に減らそうとしているわけだから、まずは個人の1対1の守備力を上げること。それからグループとしてのチャレンジ。ボールにいった後のカバーリングをしましょうと。状況に合わせたポジショニングをとる。そういったトレーニングをしているし、あとはチームとしての守備のトレーニング。これはトレーニングの7割から8割を割いているかな。それからもう1つ変わったのが、体力のところでサッカーのトレーニングの中でサッカーに必要な体力をつけようとやってきたんだけど、今季からはある程度の長距離を、ボールを使わないコンディショニングを取り入れている。昨季まではボールを使って体力を高めようというトレーニングだったけど、今はボールを使わないトレーニングでコンディショニングを高めている。」

 

―先日の霧島での大学サッカーフェスティバルでは早大を倒して優勝したが、そのオフの成果が出たか

 

「出すぎちゃったよね。優勝ももちろんだけど、無失点だったんだよね。それもA・B毎日2試合やっていたんだけど、全て無失点だから、出来すぎだったね。昨季は16チーム中15位で、フェスティバルだから結果はあまり重要でないと思ったけど、勝ち癖って大事なんだよね。自信にもなるじゃない。負けていくとどんなに内容が良くても自信にならないんだよね。勝ったり負けたりがあって良いと思うんだけど、今季は勝負にこだわって優勝を目指そうと最初から言っていて、なおかつAチームの方は失点を5試合で4以内にしようと。平均1点以下を目指そうということでやってきたんだけど、出来すぎだよね。もちろん我々が主導で守れた部分もあるし、相手だって良いチームが多いから守備が突破されてやられるんだけれども、最後身体を張ってGKが出ていった後でもスライディングをしてボールをかき出したりとか、絶対失点をしないという闘争心が全面的に出て、加えてやってきた相手を自由にさせないというところが成果として出てきたので、続けて今もやっていて手応えはあるかな。」

 

―ここまで守備の話をしてきたが、武藤の抜けた攻撃陣については

 

「攻撃も良い守備ができると良い攻撃ができる。我々としては堅守速攻でカウンターを狙おうと。ようするに、手数をかけずにゴールまでいきたい。良いポジションを取って良いディフェンスしていると良い飛び出しができる。ゴールに直結する動きができると。だから攻撃の形はあまり練習していないよ。それでも、良い形で点数も入っているんだよね。(霧島での)早大戦では3点取れているし。攻撃に関しては堅守速攻、まずは裏を狙おうと。今はそういうことしかやっていない。攻撃で一番大切なことは“判断力”と“決断力”だと思っている。例えばボールを奪ったら基本的にはパスでいきましょうと。ドリブルよりはパスなんだよ。“人はボールより速く走れない”。そういう基本的な考え方があるからドリブルするよりパスする方が絶対に速いから。いつも子供たちにもそう言っていて、俺が出すパスと競争させているんだけど、絶対にパスの方が速いからね。だから取った瞬間基本的にはパスを出す。ドリブルは基本はない。ただ、状況によってはドリブルもやるということ。多分人生でもサッカーでもいくつかの選択肢があって、それを判断するのはあなた自身ですよと。人生もそうでしょう。慶應いくか早稲田にいくか、三菱商事にいくか物産にいくか留学するか。生活していてもバスで行こうか電車で行こうか歩いて行こうか常に決断なんだよ。それをどう自分が判断して決断するかそれがサッカーでも大切で、判断のゲームだから。結果としてドリブルが良かったとか、『ここにパスしたけどこっちもあるよね』っていうのが分かっていれば、選手の決断に対してこっちがああだこうだ言うことはない。ただ、パスを出して相手に取られたときに『違う方の選択肢も見ていた?』『ここの選択肢があったのもわかる?』『分かっています、でもこっちも選択しました』。それなら、良いんじゃないかなと。『こっちしか見れていなくてこの選択肢しかなかった』『それだったらこっちもあるんだよ』ということを我々は教えなくてはいけない。それがサッカーなんだよ。我々がサインを送ってああやれこうやれ言ったって、ピッチの中の選手たちはできないもん。ピッチに入ったら選手の判断なんだよ。もちろんチームとしての絶対的な戦い方の方針はあるけどね。でも基本的に攻撃は判断力が大事だから、迷うなと。一瞬で判断しろと。時間かけてたら相手が来ちゃうんだから。そのトレーニングを毎日毎日しているんだよ。なんで毎日トレーニングしているのか、それは判断力を鍛えるためでしょう。今日も技術練習はやったけど、今の年齢では技術上手くならないもん。8~13歳のゴールデンエージまでだもん。パスが上手くなる、コントロールが上手くなる、ボールフィーリングが良くなるのは13歳までだよ。今から上手くはならない。判断のトレーニングを今はやらないと。あとはボールのもらい方であったり、ある意味確認であったり、そのために我々はトレーニングをやっているのだから。だから攻撃に関しては相当判断力を求めている。ただ、我々の方針としては堅守速攻だから、まずは一本のパスでゴールまでいくのが一番良い。」

 

―この堅守速攻のサッカーをやるにあたって監督がキーマンと考えている選手は

 

「主力といったら端山、増田(主将・環4・清水東高)の二人だね。ここがポイントとなるね。彼らがゲームをコントロールする役割を果たす。端山にこっちが求めているのは、彼は50mのパスをピンポイントで蹴れるからボールを供給するのは当たり前で、一試合90分を通してゲームをコントロールすること。今が攻撃するときか守備するときか、ゆっくり回すときかすぐにボールを前に入れるときか、ゲームの流れを読んでほしい。彼が攻守にわたってすべてゲームを支配する。大変だけどね。彼もちゃんとやれば大学レベルではずば抜けているから。それができればプロでもワンステップ上にいけるしね。特にボールを持ったときは周りの選手を上手く使ってやってほしい。もうひとつ言っているのは、今トップに約25人いる中で全員戦力だけども、その中で端山・増田・保田(法4・横浜F・マリノスユース)は自分の実力のうち7割から8割は公式戦で力を発揮することができる。もちろん悪いときは50%ぐらいだけど、だいたい70%ぐらいやってくれるよね。それから、中堅どころで5割、6割ぐらいかな。良いときは7割ぐらいできるけど、悪いと30%から40%ぐらいになるよね。まだ安定していないところがある。それ以下だと5割出せないことが多いね。このパーセンテージを常に7割近く出すことが大事だと言っている。どうすれば発揮できるか、昔よく野球の江川卓(元巨人所属の投手)が言っていたけど、練習だとキャッチャーが構えたところに10球中10球いくんだって。でも公式戦になると、お客さんがたくさんいたりプレッシャーがかかって、それが7球しかいかなくなる。3球はボール1個分ずれるんだって。そうするとヒットやホームランを打たれる。これも面白い話で、エドゥ(元横浜フリューゲルス所属のブラジル人MF)っていう選手がいて、彼がフリーキックの名手だったんだよ。フリーキックの練習で、彼はどういう練習していると思う?普通に蹴れば10本中10本入る。彼はバーとポストの角に当ててゴールに入れる練習をしていたんだよね。多分中村俊輔(横浜F・マリノス)も10本中10本入れることができる。ゲームになるとプレッシャーとかでちょっと狂うんだよね。あえてゲームを想定してポストに当てて入れる練習をする。だから(慶應の)5割、6割ぐらいの選手がステップアップするにはどうすれば良いか、毎日の練習の積み重ねなんだよ。どれだけ本気になってゲームと同じように120%、自分が一番下手だと思ってトレーニングをするか。それで高めていって公式戦に出る。だからリーグ戦って良いんだよ。それが1年で良くなるわけではないし積み重ねだから、望月や溝渕が昨季あれだけのプレッシャーの中でやってきたのは経験になるし、練習もすごく真面目にやっているしこの2人が今季7割から8割ぐらい安定して力を出す選手になってくれると、うちのチームも上位に入ってくれるかもしれない。この中堅の選手たちがポイントじゃないかな。端山ら3人は計算できるしやってくれる。逆にやらないとだめだね。他の選手が3人にどれだけ近付けるかだね。それはトレーニングしかないんだよ。こっちがメニューを与えてそれをこなすだけではだめだし。」

 

―新1年生については

 

「1人トップにいて、手塚(環1・静岡学園高)がすごく良い選手だね。サイドバックとサイドハーフができる。でも昨季の教訓だけど、1年生って経験がないんだよね。だからじっくりと見たいという感じ。もちろん皆良い選手だけどね。今高校選抜に入っている渡辺(総1・國學院久我山高)もBチームでやらせている。これから4月上旬にドイツに行くから中途半端だし、慌てないでじっくりと育てていこうと思っている。1年生は良い選手だけど経験していないもん。高校と大学は子供のサッカーと大人のサッカーの境だから、大人のサッカーに徐々に移行してあげないと、彼らの心もコンディションも気持ちもいきなり高いレベルでやらせすぎてもバランスが崩れるから、良い選手が多いのでそこは育成していこうと思っていますね。」

 

―今季の4年生は須田監督就任1年目の1年生で4年間育ててきたということで、特別な思い入れは

 

「今季は集大成と考えていて、人数も多いしトップチームにも約10人いるし、昨季のことを学んで彼らもしっかりとやってくれているので、楽しみですね。」

 

―増田主将に期待することは

 

「リーダーシップがあるしよくチームをまとめてくれている。今まで彼も全日本選抜の方に行っているから、こっちでは保田や並木(副将・総4・國學院久我山高)がしっかりと副将としてチームを引っ張ってくれているので、トレーニング自体も良いし質ももちろん良いし、サッカー的な部分も良いけど締まっているから、こっちがストレスを溜めることもない。なんでもっとやらないのというメンタルのところで指摘することはないね。皆本当に一生懸命やっている。だけどこっちはもっともっとって言いたくなるけど、全体的には良いトレーニングもできているし、良い雰囲気でできていると思う。それは4年生が締めてくれている部分もあるので、シーズン長いから1年間通して引っ張っていってもらいたいと思いますね。」

 

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―今季の意気込みを

 

「今季はサッカーに取り組む姿勢とかそういうところを含めて一戦一戦謙虚に戦っていきたい。結果はもちろん皆勝とうと思ってやっているし、今季はまずはインカレ出場を目標にして、一戦一戦ベストを尽くしてやっていきたいと思います。」

 

 

(取材 飯田駿斗)

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