インカレで早大に敗れてから1週間。第80回早慶アイスホッケー定期戦という最高のリベンジの舞台が用意された。ワンプレーごとに会場がどよめく異様な雰囲気の中、先手を取られながらも粘り強さを発揮していく。だが、終盤に失点を重ねてしまい、敗れた慶大。約40年ぶりとなる歴史的勝利を飾れなかったものの、内容的には「ベストゲーム」(江口)で今季を締めくくった。
第80回早慶アイスホッケー定期戦
2016年1月16日(土)16:45F.O. @DyDoドリンコアイスアリーナ
慶應義塾大学4-7早稲田大学
Period | 1P | 2P | 3P | Score |
慶大 | 2(9) | 1(8) | 1(6) | 4(23) |
早大 | 3(11) | 1(10) | 3(6) | 7(27) |
※()内はシュート数
超満員のスタンド。割れんばかりの大声援。4年生にとって「勝っても負けても最後の試合」(金村)は、まさに最高の雰囲気に包まれた。慶大は長年、早大に勝つことができていない。有終の美を飾るため、そして歴史を塗り替えるため。様々な思いを胸に秘めてフェイスオフを迎えた。
慶大は立ち上がりから小池玲央(環3)がシュートを放つなど、攻勢を掛けていく。しかし3分に先制を許すと、以降は守備に回る時間が長くなってしまう。さらに高安望(経3)、史習成リック(総1)の退場でキルプレーとなり、ゴール前を崩されて追加点を献上。いきなりチームに暗雲が立ち込めた。それでも、永田雅宗(総1)の得点ですぐさま勢いを取り戻す。14分には抜け出されるが、野崎大希(商1)がスティックを懸命に伸ばして得点を阻止。気迫のこもるプレーでチームを盛り立てた。その1分後のパワープレーでは、阪本航大(環2)のスラップショットが決まる。会場に若き血が響き渡るが、瞬く間に失点。打ち合いとなった20分間は、1点のビハインドで終了した。
第2ピリオドは、互いにディフェンスに重きを置いたことでこう着状態となる。それでも、迎えた14分。滝智弥(政1)、金村知紀(政4)がゴールに迫り、リバウンドを鈴木啓介(環4)が確実に押し込んだ。そして、直後には2人数的有利のチャンスが到来する。だが悪夢の展開が待っていた。次々とシュートが止められると、前掛かりになった隙を突かれてカウンターを浴び、勝ち越されてしまう。一方的な展開に持ち込みながらも、リードを許してインターバルに入った。
このままでは終われない第3ピリオド。キルプレーの序盤を切り抜けると、江口大輔主将(環4)が強烈なショットをたたき込んで三度同点に。その後もテンポよくパスをつなぎながら、押し気味に試合を運ぶ。だが9分にスラップショットを打たれ、田中寛之(経2)の触ったパックが、ポストに当たってゴールに吸い込まれてしまった。応援のボルテージも上がり、多彩な形から反撃を試みる慶大。それでも、少ないチャンスから点差を広げられると、スタンドが静まり返った。そして試合終了のブザーが鳴り、壮絶な戦いの終わりを告げた。
リンク上で呆然と立ちすくむ選手、涙を流す選手。またしても、早大という厚き壁を破ることができなかった。インカレ後の短い期間で、主に「メンタル面」(江口)の準備を重ねてきた慶大。「目の前の一つ一つの勝負に勝つ」(田中)ことに徹した結果、あと一歩というところまで追い詰めた。そんなチームには試合後、惜しみない拍手が送られていた。
最後の円陣で、江口主将は次のように語ったという。「やっぱり悔しいよな。だけど今日みたいな試合をすれば来年、再来年と絶対に勝てるから、お前らで俺らの夢も叶えてくれ。」果たして来季、思いを託された下級生たちは、結果という形で恩返しすることができるか。
(記事 木下 彰)
以下選手コメント
(今季最後の試合を終えた今の気持ちを)悔しかったですね。内容は今季のベストゲームだったので、結果も一緒について来させたかったです。(インカレを終えてからどのような準備をしてきたか)プレー面よりメンタル面の準備のところですね。大観衆の前でいつも通りのプレーすることは、選手たちにとって非常に難易度が高くて。早大の選手は大舞台に慣れている選手が多いので、話し合いを重ねて対策してきました。精神面で充実していたからこそ、良い内容につながったのだと思います。(自身のゴールを振り返って)運良くパスカットができて、絶対同点にしないといけない場面で点を取れたのですごく嬉しかったです。(後輩に伝えたいことは)来季も厳しい戦いが続くと思うんですけど、折れないで、自分たちのやってきたことを信じて、100%発揮することができれば結果が付いてくると思うので。チーム一丸となって戦ってほしいですね。
(最後の試合を終えた今の率直な気持ちを)勝っても負けても最後の試合だったので、今日は始まる前から気合が入っていて、力を出し切れたと思うのですが、最後あのような形で勝ち切れなかったことが少し残念です。ですが、あそこまでチームが一丸となって戦えたということに関しては、本当に満足していますし、宝物になりました。(インカレからわずか1週間で再び早大との試合だったが、心掛けたことは)早大とは何度も戦ってきているので、彼らの特徴は僕らも本当に研究していますし、ヘッドコーチからも言われて、それをとにかく見極めて戦略に変えて臨めば必ず結果がついてくるということで、1週間しかなかったのですが、インカレで出た反省を修正して今日臨みました。(今日の早大はどうだったか)早大自身も慶大に対してはずっと勝っているというのがありますし、インカレで1週間前に勝ったので、今日も普通にやれば勝てるのだろうというくらいの気持ちだったのかな、と思うのですがそこで僕らのほうが、気持ちが勝って第3ピリオドの途中くらいまでは同点でいい試合ができたのかな、と思います。(第3ピリオドで人数的に有利でありながら得点されたときに気持ちの変化はあったか)2人多くて、絶対決めなきゃいけないところでコミュニケーション不足で相手に点を与えてしまったので、やっぱりそこだったのかなと思いますね。そこがターニングポイントで、僕らがパックを取って勝ち越してリードしていれば、という気持ちが本当にあります。(副将として戦った今季を振り返って)今季は例年に比べるとFWは強力ですが、DFとGKが他のトップリーグの大学に比べると劣るので、なんとかそこを補えるようなプレーで副将として引っ張っていこうとしました。春はなかなか結果が出なかったのですが、後輩へトップリーグに残すために入れ替え戦勝利という形で爪痕を残すことができましたし、最後のこの引退試合も春は完敗でしたが、今回はかなりいい試合ができたのでこの1年は満足のいくものでした。(後輩たちへメッセージ)来年もかなり厳しい年になると思うのですが、スタッフの方々が言っていることは間違いがないので、それを信じて日々精進して必ずトップリーグに残って、早慶戦勝利など僕らが果たせなかったことをぜひ果たしてもらいたいです。
(今日の試合を振り返って)折角4-4に追い付いたのにそこで3点入れられてしまいました。そこで何とか粘って勝てたら良かったですけど、そこが課題です。と言っても、もう引退なのでそこに関しては少し悔いがあります。(引退試合だったが今日の試合の意気込みは)本当に今日は勝ちたいと思っていました。結果的にはいい流れでホッケーもできましたし、その中で点数が離れてしまっただけで、みんなで最後にいいホッケーをして終われたのは良かったかなと思います。(インカレの早大戦と比べて良かった点は)インカレではまだひざの痛みもあって思ったようなホッケーができなかったのですけれども、今日に限っては自分の最後の試合ということでアドレナリンが出て全力でがむしゃらにホッケーができたことが良かったと思います。手応えはあったのですけれども、そこで勝ち切れなかったことから、4年生として引っ張っていかなければいけなかったのかなと感じました。(アシスタントキャプテンとして1年を振り返って)僕は部の運営には携わっていなくて、ゲーム中に主将と副将をサポートするという役だったんですけど、ゲームの中では同期に限らず後輩たちも引っ張ることができたのではないかと思っていますし、付いてきてくれた後輩たちにも感謝した一年でした。(後輩に伝えたいことは)僕は今年に限っては結果を出せなかったですが、来年いいGKが入ってきますし、そうした中でロースコアの試合でしっかり勝てるように日々みんなには頑張ってほしいなと思います。
(この試合をどのような想いで臨んだか)今季は鈴木(啓介)さんを始めとして本当にお兄ちゃんのような人が多く、思い入れがとても強かったです。なので勝たせてあげたくて、慶大に来て良かったと思って欲しくて。それでも勝てなくて……本当に来季は勝ちたいです。(3-4で迎えた第3ピリオドの心境は)あの時は、目の前のことを一つずつ勝つ、先のことを考えないで目の前の一つ一つの勝負に勝つということだけを考えて、自分自身も目の前に来たシュートだけ止めていきたいという気持ちでした。ですが最後の連続失点は精神的なところもあったのかなと思います。(3年生として迎える来季に向けて一言)来季はGKにいい選手も入ってくるので、競争に勝たないといけません。4年生が来季頑張れよと言ってくれて、その言葉が試合終わって一番心に残っているので、とにかく自分が成長してチームのレベルアップにつなげたいと思います。とにかく自分の技術向上。みんなを驚かせたいと思います。
(伝統の早慶戦、そして4年生の引退試合となるこの試合にどのような想いで臨んだか)試合前に4年生から「自分たちは体捨てて命がけでいくから、3年生以下も全員付いてきてくれ」という話があったので、この試合が終わったら死ぬぐらいの覚悟でみんな試合に臨んでいました。(永田選手も得点を入れて、非常に緊迫した試合展開でしたが試合を振り返って)気持ちさえ切れなければ、この試合は勝てると思っていました。最終的には点差が離れてしまって本当に悔しいです。(第2ピリオドが終わって、逆転の可能性がある中でインターバルにどのようなことを話したか)まだその時点では1点差だったので、10秒あれば逆転できるスポーツなので、絶対に諦めないで、全員でゴールに向かっていこうと話して、僕もそれに付いていって、試合が終わったら走れなくなるくらいの気持ちでやりました。(試合終了後、4年生に声を掛けたのか)実は自分も泣いてしまっていて、声を掛けることができませんでした。むしろ僕が声を掛けられていたので。鈴木さんから「よくやってくれた」と声を掛けられて余計に泣いてしまって、余裕がなかったです。(江口主将は最後、円陣の中でどのようなことを話していたのか)「やっぱり悔しいよな。だけど今日みたいな試合をすれば来年、再来年と絶対勝てるから、お前らで俺らの夢も叶えてくれ」と言われました。(来季に向けて一言抱負)今季は後半にならないと点数が取れなくて、僕とか滝とか学年が下の選手が点数を取れるようにならないと、これから勝っていくのが厳しいので、点数が取れる選手に成長していきたいと思います。