今年も早慶女子サッカー定期戦の季節がやってきた。大きな声援がこだまする格別な雰囲気の中で行われた。慶大は前半で2失点を喫し苦しい展開。後半に入ると選手交代が功を奏し、徐々に得点の雰囲気が高まっていく。65分には点差を3点に広げられるも70分に待ちに待ったゴールが下山田志帆(環4・十文字高)の左足から生まれる。初勝利はお預けとなったが、今後の関東リーグ、大学リーグにつながる好ゲームとなった。
2016/07/06(水)16:30KO@等々力陸上競技場(40分ハーフ)
慶應義塾大学1-3早稲田大学
【得点者】
[慶]
70分 下山田志帆(庄司夏穂)
[早]
10分 河野朱里(中村みづき)
23分 中村みづき(平國瑞希)
65分 オウンゴール
◇慶大出場選手
GK野村智美(総3・作陽高) |
DF松木里緒(環1・常盤木学園高)→76分 竹内瑞穂(理4・フェリス女学院) |
DF下山田志帆(環4・十文字高) |
DF田中康子(総4・常盤木学園高) |
DF宮田あずさ(環4・文京学院大学女子高) |
DF庄司夏穂(総1・聖和学園高) |
MF工藤真子(総1・日テレ・メニーナ) |
MF栃木栞(環4・十文字高) |
MF堀井美月(環4・常盤木学園高) |
FW志鎌奈津美(環2・常盤木学園高)→HT 中島菜々子(総2・十文字高) |
FW宮川渚(理4・成城学園高)→59分 井原美和(薬2・大和高) |
関東女子サッカーリーグでは厳しい戦いの続く慶大。選手、スタッフ、関係者が一体となって目指してきた早慶戦初勝利へ。10日前には0-5で敗れた相手に、「失うものは何もない」(下山田)と果敢に挑んだ。
早大ボールでキックオフ。序盤は早大の雰囲気に圧倒される。6分に1本のフィードから裏を取られピンチを迎えたが、ラストパスが合わずに難を逃れる。慶大も負けじと8分にチャンスを作る。左サイドを駆け上がった庄司がクロスを上げ、クリアのこぼれ球を工藤がボレーで狙う。しかし、うまくミートできず。10分にはFKのピンチを迎える。早大・中村のボールが直接ゴールへと向かうと、野村智美(総3・作陽高)がこぼしたのを見逃さなかった河野にきっちりと詰められ先制点を許す。その後も立て続けにシュートを打たれるが、追加点は許さない。しかし、24分にドリブル突破を許し、スルーパスを出されると、中村に決められ2失点目を喫す。ここから点を取り返そうと慶大も奮起を見せる。33分に志鎌奈津美(環2・常盤木学園高)が中盤からスルーパスを出すと、右サイドからいいタイミングで松木里緒(環1・常盤木学園高)が上がってくる。GKと1対1の大チャンスを迎えるが、惜しくも相手GKに阻まれ得点には至らず。ゴールへの意欲を見せ、士気を高めて後半へと向かう。
後半開始と同時に志鎌に代えて中島菜々子(総2・十文字高)を投入。堀井美月(環4・常盤木学園高)を前線に押し上げ得点を奪いに行く。
開始からすぐさまチャンスを迎える。43分にロングフィードのこぼれ球を栃木栞(環4・十文字高)が拾うと、ドリブルで持ち上がりミドルシュートを放つ。しかし無情にもクロスバーに嫌われてしまう。一方、48分にディフェンスラインでのパス回しを奪われると野村と1対1になるが、シュートは野村がセーブし難を逃れる。50分には再び慶大のチャンス。下山田のロングボールから堀井が抜け出しミドルシュート。しかしわずかに枠を外れる。その直後にも軽快なパス回しからペナルティーエリアに侵入し、最後は工藤真子(総1・日テレ・メニーナ)がシュートを放つも決められず。さらに攻勢に出ようと井原美和(薬2・大和高)を投入。66分にオウンゴールで点差を3点に広げられるが、慶大はゴールに向かう姿勢を変えなかった。
そして70分にようやく待望の時が訪れる。ゴール前で庄司夏穂(総1・聖和学園高)がボールを受けると下山田志帆(環4・十文字高)に落とす。ダイレクトで左足を振りぬくと、バーに当たりゴールに吸い込まれた。「早稲田から点を取りたい気持ちがゴールにつながった」(下山田)。勢いに乗る慶大は、78分に左サイドを駆け上がった井原のクロスを中島が流し込み、ゴールを挙げるが惜しくもオフサイド。80分にはオフサイドで得たFKから田中康子(総4・常盤木学園高)がロングボールを入れるとファーサイドで井原が折り返し、フリーの中島が合わせるが、わずかに枠を外れる。後半に入り、何度も早大ゴールを脅かすも、反撃はここまで。初勝利は持ち越しとなった。
これまでの受け身のソッカー部女子はもういなかった。前半は圧倒的な劣勢に立たされ、決定機もわずかに1つのみ。しかし、後半に入ると「素晴らしい雰囲気」(岩崎監督)の下で水を得た魚のように勢いを増し多くの決定機を作り、総シュート数は8本を数えた。失点をしても何度も前へと飛び出し女王を脅かす姿は今季ここまで見たことのないものであった。結果を見れば、1-3の完敗。「悔しい」と選手たちは口々に語った。しかし、内容では互角とまではいかないものの、早大相手にやれる力を十分に示した。あとは決定力のみ。後半のようなサッカーをすることができれば、高いレベルの相手にも対等に戦うことができるだろう。
(記事 熊谷健二)
試合後コメント
岩崎陸監督
(会場の雰囲気は)素晴らしい雰囲気でした。リードされても最後まで多くの方に応援していただいたことが後半の力につながったと思うし、みんなに喜びを味わってもらえなくて申し訳ない気持ちです。(押し込まれていた前半について)立ち上がりでやられて受け身に回ってしまいました。早稲田も相当戦っていた部分があるので、そういう意味では、前半の失点が最後まで重くのしかかったと思います。(後半は選手交代も含めていい展開となった)頭からの流れの中で、1点取っていれば試合が全然変わったと思いますが、そこで取り切れなくて3点目を失ったことが勝負の分かれ目でした。ただ後半くらいの戦いをいつもできれば次につながると思うし、あの1点は本当に次につながる1点だと思います。(ハーフタイムにはどのような声を掛けたか)前半は0-2でリードされましたけど、後半は見に来ていただいた方に「本当に見に来てよかった」と思ってもらえるような試合をしようと全体を盛り上げる声を掛けました。(今日の試合は関東リーグや大学リーグにつながるのでは)今日は試合が終わった後、選手は泣いていましたけど、泣くんだったらこの後の大学リーグまで死に物狂いで努力して、早稲田との試合で勝つしかないと思います。その一歩を踏み出したいです。(3連戦中だが)インカレも同じような状況が続くので、ここで戦える選手がピッチに立って戦える選手だと思いますし、この3日間練習して全力でぶつかりたいと思います。
田中康子主将(総4・常盤木学園高)
(率直に今の気持ちを)悔しいという気持ちがあります。(最終学年だがどのように臨んだか)前回0-5で負けているので、まず負けないというところで、その上で全力を出し切れば結果はついてくると思っていたので、立ち上がりに失点し、前半で2失点したのが大きく響いてしまったと思います。(後半に互角に戦えた要因は)もう点を取りに行くしかないというただそれだけでした。前回負けてしまったので、その反省を生かして前から行くことを意識したのですが、相手のペースに飲まれてしまったと感じています。(会場の雰囲気は)得点した時は本当に早稲田の応援よりも慶應の応援の方が大きいと実感して、だからこそ本当に勝ちたいと思いました。(大学リーグで戦うが、その試合につながるのでは)前半のまま終わらなかったのは1つの収穫だとは思うんですけど、こういう舞台で多くの人が準備してくれた中で結果を出し切れないのは本当に申し訳ない気持ちと実力のなさを実感しました。(今後に向けて)今日の試合で多くの人に応援していただいているということを実感したので、もう一度こういう舞台を西が丘で作れるように、大学リーグに向けて、インカレベスト4を目指せるように頑張りたいと思います。
下山田志帆(環4・十文字高)
(今日の試合を振り返って)4年目の早慶戦で、今まで一度も勝ったことがなかったので絶対勝ちたいという思いで臨んだんですけど、こうやって多くの観客の方が応援してくれた中で負けてしまって、悔しいというか、それ以上の何とも言えない気持ちです。応援してくれた方々には本当に申し訳ないなと思っています。(先日の0-5の大敗を受けて、対早稲田の修正や対策はしたか)しました。前回はとにかく引きすぎてしまって、負けてしまった以上今回は失うものは何もないと思って試合に臨みました。前半はあまり機能しなかったんですけど、後半どんどん前からプレスをかけてボールを奪ってゴール前で仕掛けていく姿勢を数多く見せられたことは、前回から修正できたところだと思います。(前半と後半ではまるで違うサッカーだった)本当に気持ちだったと思います。このまま負けるわけにはいかないという思いと、絶対に早稲田から点を取ろうという思いに、後半はみんなが溢れていました。それがあの1点につながったと思います。(ハーフタイムに監督から修正の指示はあったのか)監督からはそんなに多くは言われてないです。前からプレスがかかってきた時にどうやってかわして前に運んでいくかとか、それぐらいでした。あとはもう気持ちの面で盛り上げてもらいました。(得点シーンを振り返って)点を取るためにどれだけ前に人数をかけられるかっていうことをみんなが意識していて、あのシーンはつなごうと思ってつないだというよりは、前に人数をかけて、前に前に運んでいった結果が、あの場所でのゴールだったのかなと思います。本当に気持ちでした。(強豪早稲田に対する後半の戦いぶりは、これから続くリーグ戦に向けて手応えを得られたのでは)そうですね。自分たちは早稲田以上に走らなきゃいけないし早稲田以上に体も張らなきゃいけないけど、今日みたいにチャレンジしていけば、早稲田相手でも多くのシュートが打てるし、あそこまで攻め切れるということがわかったので、これからのリーグ戦は本当に今日の後半の気持ちです。無心でサッカーをするというか、感覚で、でも頭で考えながら、みんなで前にいくというような。これからのリーグ戦で、ああいう試合をまたしたいなと思います。
栃木栞(環4・十文字高)
(今の率直な気持ちは)悔しいですね。(
堀井美月(環4・常盤木学園高)
(最後の定期戦を終えての率直な気持ちは)
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