慶大の水泳部各部門が出場した早慶対抗水上競技大会。その中でもひときわ大きな声援を浴びて登場したのが慶大水球部だった。創設101年目、新たな歴史を歩み始めた今年の水球部には、24年ぶりの早慶戦勝利という期待がかかっていた。第1ピリオドを1対1で折り返し、迎えた第2ピリオド。早大に立て続けにゴールを奪われる。慶大のエース井上翔太(商2)や主将の小沢鷹士(経4)のゴールで早稲田に反撃するも、第2ピリオドでつけられた3点差を最後まで挽回することができず、24年ぶりの勝利は来年へ持ち越しとなった。
2016年7月3日(日) 第88回早慶対抗水上競技大会
@東京辰巳国際水泳場
得点 | 1P | 2P | 3P | 4P | 合計 |
慶大 | 1 | 2 | 5 | 3 | 11 |
早大 | 1 | 5 | 5 | 3 | 14 |
得点者(慶大のみ)井上翔5、小沢2、谷川2、木村1、吉澤1
早慶戦直前の関東学生水球リーグでは早大と2度対戦し、初戦で20年ぶりの勝利を挙げた。2回目の対戦では惜しくも敗れたが、1勝1敗で迎えたこの早慶戦は両校にとって負けられない一戦となった。
井上翔がセンターボールを獲得し始まった第1ピリオド、先制点を挙げたのは早大だった。開始2分、カウンター攻撃から確実にゴールを決める。その後は一進一退の攻防が続き、このまま1点ビハインドで第1ピリオドを折り返すのかと思われた残り18秒、小沢が相手ゴールキーパーの頭上を越すループシュート。「チームを鼓舞することができた」という技ありシュートが決まり、同点に追いついた。
続く第2ピリオド、早大がセンターボールを取り、慶大は守備から入った。前半は早大が次々とシュートを放つ展開に。慶大のディフェンスの統率が崩れる中、ゴールキーパー熊谷晶(環4)が持ち前の脚力を活かしてゴール前に大きな壁を作り、何度もファインセーブをする。悪い流れを断ち切りたい慶大はタイムアウトを取り、直後の攻撃で谷川展大(法4)、木村亮太(法4)がシュートを決めるも、相手校のエースのシュートを止め続けることはできず、慶大はこのピリオドで早大に5点を献上してしまう。
3点ビハインドで前半を終え、迎えた第3ピリオド。これまで得点のなかった慶大のエース井上翔がついに本領発揮する。「守備からのカウンター攻撃」という慶大の型通り、早い展開でボールをつなぎ最後は井上翔がシュート。このピリオドだけで2点を挙げた。しかし早大も黙っていない。力強い泳ぎから、ゴール前でフリーとなり、確実に得点を重ねていった。結局このピリオドは両者とも5点を奪い、8対11と点差が縮まらないまま、最終ピリオドに突入した。迎えた第4ピリオド、開始早々慶大が立て続けにシュートを放つも、決きれない場面が目立った。一方の早大は少ないチャンスをしっかりとものにし、得点に繋げていく。井上翔のチーム最多5得点の活躍で最後まで早大に食らいつくも結果は11-14、3点差を残したまま試合終了のブザーがなった。
試合後、観客席に向かって挨拶をした選手の目には涙も見えた。「惜しかった、食らいついたという言葉は僕たちにとってはあまり意味がない」(小沢)と語るように、今回の早慶戦で慶大が目指していたのは勝利のみだった。そして何より今年の慶大水球部の勝利への筋書きは、ミラクルではなく、現実に起こす力があると多くの人が認めていた。惜しくも今回の早慶戦で24年ぶりの悲願達成とはならなかったが、水球部の戦いは終わったわけではない。秋にはインカレ、日本選手権予選が控える。この敗戦の悔しさを飛躍への力に変えて、秋には嬉し涙を見せてほしい。
(記事:長田ゆり)
小沢鷹士主将(経4)
(今日の試合を振り返って)本当にここ1年間、この大会しか見ていなかったし、勝ちを狙っていた試合だったので、惜しかった、食らいついたという言葉は僕たちにとってはあまり意味のない言葉で、勝てなかったことが本当に悔しいですね。来ていただいた方に申し訳ないです。(第1ピリオドで小沢選手が慶大の初ゴールを決めて同点で折り返しましたが)あの場面は失点が1点だったので、そのまま折り返しても追いつける点差だったんですけど、あそこで自分がゴールを決めてチームを鼓舞することができたんじゃないかなと思います。(第2ピリオドで早稲田に連続失点を許した際タイムアウトを取ったがどんなことを話したのか)前回の早稲田戦で、悪い流れのまま負けてしまったことがあったので、ここで一回切り替えて自分たちの練習してきたところは、守ったところからのカウンターだから、そこを無理に攻め急がないで、自分たちの型に持ち込もうという話をしました。(今日のディフェンス面を振り返って)相手のカウンター攻撃に対するディフェンスが機能していなかったと思います。早慶戦という独特の雰囲気と応援の中で、ゴールキーパーの熊谷晶の指示があまり通らなかったっていうのと、僕らも動きの統率ができていなくて指示が遅れたっていうのはありましたね。でも応援の声が沢山あったというのは本当にありがたいことでした。(4年生として最後の早慶戦でしたが)この間の特集記事で色紙に書いた「不撓不屈」という字にもあるように、何があっても最後まで立ち向かうし、途中で諦めないという気持ちで臨みましたね。小池百合子さんじゃないけど崖から飛び降りる覚悟で行きました(笑)でも今日の試合は点差以上に僕らのしたいことができなかったので本当に悔しかったです。(試合後の涙はそういった悔しさからきたものですか)そうですね、本当にここしか見てこなかったから、試合終了のブザーがなったと同時に気持ちが切れて涙がでました。最後だから泣くまいと思っていたんですが、いざ終わると泣いてしまいました。(今後改善していく課題は)ディフェンスの判断は、ゴールキーパーの熊谷晶がけがをしてしまうこともあるので、僕たちフィールダーだけでも統率をとっていくことができるようにしたいです。あとは相手が退水した時のオフェンスを確実に決められるようにしていきたいです。(今後に向けて)勝てないと試合は意味がないので、1つ1つ勝ちにこだわって、その中で自分たちのチームの分析もしっかりしていきたいと思います。
谷川展大副将(法4)
(今回の試合を振り返って)24年ぶりの早慶戦勝利を目指していましたが、3点差で負けてしまい悔しいです。焦って本来の力を発揮できなかったし、まだ早稲田に勝てるだけの実力がないことを実感しました。(第2ピリオドで3点を連取されたあと、タイムアウト明けからいい場面で得点しましたが)3点差をつけられて、次の点をとられたら流れが完全に相手にいってしまうと思ったので、次の点は絶対にとってやろうという気持ちで臨みました。(4年生として最後の早慶戦でしたが)入学当初から早慶戦で勝ちたいと考えていたので、とても悔しいです。来年以降、後輩たちにこの雪辱を果たしてほしいです。(今後、インカレ・日本選手権と続きますが、副将としてどのようにチームを引っ張っていきますか)泳ぎで圧倒できるように、慶應というチームを作ってきました。今後も相手を圧倒できるように体力強化して、その泳ぎを生かしたカウンターを磨いていきたいです。
熊谷晶選手(環4)
(今日の試合を振り返って)最終的に第2ピリオドの点差がこの試合全体の点差になってしまったので、第2ピリオドの5失点が悔やまれるかなという感じですね。(具体的な敗因は)相手のエース12番の深川幹徳選手にいいようにやられてしまった。特に第2ピリオド彼に連続で点を取られてしまったというのが流れも悪くしてしまったので、直接的な敗因かどうかはちょっと分析してみないとわからないんですけど、それが大きな要因なのかなと思います。(第2ピリオド以外は点差は開かなかったが)そうですね。でも結局第3ピリオドもこっちは5点取ったんですけど、早稲田にも5点取られてしまったので、1つのピリオド中に5点取られてしまうと、なかなか勝ちに結び付くのは難しいかなという感じです。(24年ぶりの勝利はならなかったが)期待されていた方がすごく多かったので、これだけ観客の皆さんも来てくれた中で、勝利できなかったというのは本当に申し訳ないなと思います。(今日のディフェンスへの指示は)中盤までは高い位置を下げて中のディフェンスを固めるというディフェンスにしていたんですけど、正直それがあまりうまく機能していない部分があったので、中盤以降はマンツーマンのディフェンスに変えてみました。それでも早稲田の勢いを止めることができなかったというのは、僕のディフェンスへの指示というのも、もっと考えていかないといけないのかなと思います。(他の4年生は試合後に涙も見られたが)僕自身としては自分の力をすべて出し切った結果だったので悔いはないという、まあ悔しいは悔しいですけども、これで負けてしまったらもう仕方ないなという感じだったので、どちらかというとやり切ったという気持ちのほうが大きかったのかなと思います。(今後インカレと日本選手権に向けて意気込みは)インカレ、日本選手権では僕個人としては、どうしてもメダル、形に残るものが欲しいと思っているので、3位以内というのを狙っていきたいと思っています。そうなると早稲田や日大、専修を倒していかなければいかないので、インカレまであと2か月間、厳しい練習を積んでいけるように頑張りますので、応援して下さると嬉しいです。
井上翔太選手(商2)
(今日の試合を振り返って)今年は1勝1敗で、僅差の良い勝負になるということはわかっていたのですが、第2ピリオドで3点差をつけられて、その3点差がなかなか縮まらなかったので、連続失点をしてしまったことが良くなかったと思います。(前半は相手からのマークが厳しかったように見えたが)自分は尻上がりのタイプなので、自分が最初に全然点が取れなくて、チームに貢献できなかったのも敗因の1つだと思います。(初ゴールの時の気持ちは)ほっとした気持ちが大きくて、自分は1点取ったら波に乗るタイプなのですが、1点取らないとそのままズルズルといってしまうので1点取れて良かったです。(得点を決めた時には何か対策したことはあったか)とにかくチームが勝つために打たなければならないところで打つという気持ちだけ持ってやっていたので、早く1点取りたいという気持ちがあり、チームの1点につながるような動きをしていました。(チーム最多得点を挙げたが)期待されている中で、5点取れたということにはほっとしていますし嬉しいのですが、結果が全てなので負けたことは悔しいですし、本当は嬉し涙を流して終わりたかったのですが、悔し涙で終わってしまったので、来年は絶対に勝ちたいと思います。(涙を流した時の気持ちは)今年は勝つつもりでいました。そのためにベストコンディションを整えてきましたし、チームもみんな万全の状態で臨めたので、お互い万全な状態で臨んだ結果が3点差、14対11だったので、実力不足として早稲田と慶應の差がまた出てしまったのかなと思います。(インカレや日本選手権が控えるが)自分たちがやるべき、ボックスで守ってカウンターというスタイルはずっと変わっていないので、そこの精度を上げて、少しでも失点を減らして、カウンターでいける本数を増やしていきたいと思います。
木村亮太選手(法4)
(自身のゴールシーンを振り返って)ボールを一回失って、そのあと気迫みたいなもので押し込んだなと思いました。あれで流れを変えられればなと思ったんですけど、そのあと連続失点してしまったので悔しいです。(直前の試合では早稲田に勝利したが)一度勝っているということでフランクな状態で相手と戦えるというのは今年が初めてだったので、気持ちの面では一切負ける気はなかったです。(最後の早慶戦の感想は)今年が1番自分の中では実りのある早慶戦だったかなと思います。後輩の飛躍が非常に感じられたので、またここから今の2年生3年生、また1年生が次の早慶戦で活躍する姿を今度は観客席から見たいなと思います。(相手のプレッシャーは感じたか)早稲田の方も気迫はすごく感じました。リーグ戦でやっていた時と同じ早稲田ではないことは確かでした。(次のインカレ、日本選手権に向けて一言)今年は何としても表彰台に乗る。この悔しさをバネにインカレでは観客やOBの期待に応えられるように精進していきたいと思います。