今大会、慶大はけして良い結果を残せたとは言い難いものだった。しかし、その中で、慶大一の結果を残したのがこの男子舵手付きペアだった。
【M2+】使用艇:CLAREMONT
C:米澤一也(政4)
S:吉田高寅(経2)
B:高林拓海(理4)
| 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 着順 | 結果 |
予選A組 | 1:51.98 | 3:49.44 | 5:48.61 | 7:46.61 | 3着 | 敗復へ |
敗復A組 | 1:54.12 | 3:52.81 | 5:53.07 | 7:52.65 | 1着 | 決勝へ |
決勝 | 1:52.92 | 3:50.41 | 5:47.32 | 7:42.62 | 2着 | 銀メダル |
予選ではスタートで飛び出すが、立大に前に出られ2位で500mを通過。立大と争う中、日大が王者の追い上げを見せてくる。慶大もついていこうとするが、漕ぎに精彩を欠いてきたのか中盤で落ち込むとスパートでの巻き返しも叶わず、3着でゴール。残念ながら予選はそのまま上がることはできず、翌日の敗者復活戦に臨むことになった。
そして予選での反省を生かし、中盤の切り替えを意識したという敗者復活戦。ここでも慶大はスタートで飛び出した。500m地点までに頭一つ抜けると、今度は中盤でも安定した漕ぎのまま1着でゴール。予選から成長を見せた慶大が決勝進出を決めた。
決勝の当たりは、予選で敗北を喫した日大、立大。それに早大と強敵が揃う。対する慶大も金メダルを取ると意気込んだ戦い。レースは期待のルーキーの吉田高虎(経2)が「スタートは絶対に出る」と語ったように、慶大の会心のスタートで幕を開けた。予選では出られてしまった立大よりも前に出ると、1000mまでその差を広げていく。しかし、ここで日大がその牙を剥いてきた。大きく広げた差を瞬く間に詰めてくると、1600m過ぎで並ばれてしまう。「あの段階まで来たら二人でどれだけ出し切れるか(米澤一也・政4)」と、そう簡単日大に出られはしないよう上げていくが、王者の力の前に慶大は数歩届かなかった。リードを許すとそのまま2着でゴール。観客席からは漕手の二人が悔しがる姿がよく見えた。
今回の大会でメダルを獲得したのはこのクルーのみ。しかし、その表情に笑みはなかった。「日本最速」この言葉が示すのは何も花形のエイトだけではない。この舵手付きペアもまた日本最速を現実にするために日々練習を重ねてきた。高林拓海(理4)は決勝の感想を「本当に悔しかった」と語ったが、一方で今回の結果を3人とも「地力の差」と素直に受け止めている。この言葉を口にしてくれた選手たちの悔しさは計り知れない。しかし、だからこそ、この言葉は全日本選手権への布石だ。「土台の部分からじっくり漕いでいくことが近道(米澤)」と、目線はすでに前に向いている。この道の先に今大会で登った表彰台よりも高い場所が彼らを待っているだろう。それを信じて今日もまた、彼らは練習に取り組んでいる。
(記事・岩本弘之)
選手コメント
決勝レース前
高林拓海
(予選から振り返って)
昨日のレースは出だしが決まっていたけど、中盤で落ち込んできてしまって、差し切れずに終わってしまっていて、今日はそれを直すために、中盤で変なリズムに入ったときに切り替えていこうということで、試合中はコックスのコールで切り替えて行けたので中盤出られた。今日に関していえばスタートで出られたので余裕をもって漕げた。
(どこを基準に切り替えを)
前回りが遠回りするようになってしまっていたので、最短距離でキャッチを狙ってリズムを作るようにしていた。しっかり足から水中をということを意識した。
(吉田選手と漕いで)
あいつはエルゴも回るし俺よりも強いから、俺が漕ぐというよりもあいつが漕ぎやすいように漕げば艇速は出るので合わせることを意識した。
(夏の練習で重視したこと)
しっかり漕ぎこむことと、二人の漕ぎの細かいイメージがずれていたので二人の感覚を合わせることを重視してきた。
(決勝に向けて)
今日は前に出ていたので余裕をもって切り替えられたが、明日は出られることを想定して今日のように切り替えの時に1発で切り替えるということだけを集中してできればいいかなと思う。今日はスパートの第4クォーターがあまり上がらなかったので、第2、3でしっかり粘って、ラストで上げられればいいレースができると思います。
以下、決勝レース後
(レースを振り返って)
高林)3つやったレースの中では1番よかったと思う。スタートが1番決まっていてそこで出られたので余裕を持てたレースだった。
米澤)敗復では予選ででた課題を潰して、敗復ででた課題をまた決勝で潰してやると3人で話して決めていて、そこを毎回確認していった成果がスタートにでたと感じている。自分たちのやりたいことはできたので負けたのは地力の差かなと思う。
(先輩たちと乗って感じたこと)
吉田)予選敗復といろいろ言われていて、決勝ではスタートは絶対に出るという意識はしていたので、最後周りは4年生なので自分がラストスパート出そう思って漕いだ。タイムはあれだけど、漕ぎに悔いはない。
(最後に刺されたというレース展開についての印象)
高林)日大は予選から最後に上げてくるレースをしていて、来るなとは思っていたが、してやられたという印象。こっちとしては最初からいい感じでいたのでレース内容としては悪くなかったが、完全に地力の差。
(コックスとしては)
米澤)あの段階まで来たら二人でどれだけ出し切れるか、なので僕もコールは盛り上げる感じでいった。詰められている中でも二人は落ち着いて漕げていたので本当に出し切るだけだった。ただ、詰められるまでにもう少し差を広げたかったというのが本音で、第2,3クォーターでもう少しタイムの落ち幅を小さくして、ラストクォーターで勝負する力をつけるというよりも、中盤で自分たちの艇速を出すというところが足りなかったと思う。
(最後の300mはどのような気持ち)
吉田)日大に出られているのはわかったのでスタートとラストだけは出さなきゃいけないと最初から決めていたし、高林さんも後ろから煽ってくれたので本当に出し尽くした。
(高林さんはゴール直後に悔しそうな表情をされていましたが)
本当に悔しかった。最後、高虎から水中を出してあげてくれていたけど、自分が合わせられていたら勝てたかなと。
(全日本の目標)
高林)とりあえず優勝。これ1本で。そのほかのメダルには意味がないので。練習から全力でやっていきたいと思う。
米澤)クルーリーダーとしてインカレ期間やってきて、練習メニューや方針は主に僕が決めていた。全日本でもやっていく方針は変わらなくて、ただ、今回1部自分たちで定めていた目標が達成できなかった部分があって、それは低いレートのベースの部分で自分たちの目標を達成できなかったというところなので、まずはもう一回土台の低レートの部分からじっくり漕いでいくことが近道だと思うので、そこから妥協なく3人でやっていければいいと思う。
吉田)次は4年生最後のレースになるので2か月弱で2年生の僕が上達して、金メダルで終えたいと思っています。