早慶戦まであと2日。部内企画第3弾では、夏まで部をけん引し続けた前幹部3人にお話しを伺った。奇しくも塾高出身の3人。同期のこと、慶大ボクシング部で過ごした大学4年間、引退を直前に迎えた心境、早慶戦への思いを余すことなく語ってくれた。(この座談会は11月9日に行われました)
団結力というより、個々で突っ走っている感じ(梅津)
4人がそれぞれの役割をしっかり持っている(岩田)
———まずは他己紹介をお願いします。
梅津→岩田: 岩田は一言で言えば、コンピューター付きブルドーザー。体力もあるし、頭脳も優れている。田中角栄さんのあだ名ではあるんですが、これが一番フィットすると思います。
岩田→木村 :木村くんは普段は無口なんですけど、いじると面白いんですよ。けど、いじる人がいなくて。僕はよくいじるんですけどたまに嫌な顔をされますね。でもボクシングを人一倍努力してるのも知ってますし、いろんな意味でほんとにいい男だな!と思います。理工学部で頭もいいですし。
木村→梅津 :梅津くんは塾高のときから同じで今年で7年目の付き合いになるんですけど、今の他己紹介を聞いても人と発想が違う人がと思うので、そこが彼の魅力だと思うし、そういうのが練習する時も人と違う発想でできているのかなと。それが彼のサイクルにつながっていると思います。
———それぞれ部内ではどんなキャラですか。
梅津:どうだろう?
岩田:部内が見ての通りフランクな雰囲気で、それが練習にも出る時がたまにあるから、俺は主務とトレーナーの立場として結構厳しめだった。日常生活の言動だったり、身だしなみも含めて口うるさかったかな。嫌われている人には嫌われているんだろうなっていうのもわかってたし。
梅津:岩田は規律を与えているかな。体育会とはなにか、どうあるべきかみたいなものを突き詰めていると思います。木村は実は一番いいやつなんじゃないかなと思います。余計なことを言わないんですよね。すごいなって思います。やっぱり口を挟みたくなるときがどんな場面でもあるんですけど、木村は口をはさまないんですよね。俺にはできないから、憧れっていうか。
岩田:俺ら4年で部活のことで何回か話し合ったことがあるんですけど、俺と志門と和樹は熱くなっちゃうんですよ。けど木村はいつも客観的に見ていてくれるんです。
梅津:ある意味、一番俯瞰的に見えているんだと思います。
———木村さんは3人をどう見ているんですか。
木村:熱くなれるってところが逆に羨ましいなって思います。思ったことをはっきり言って、部を盛り上げようとしてくれるので、いいなって思います。
———よく話し合いをするということで仲は良いほうなんですか。
岩田:良くなったよね。
梅津:まあ良くなったよね!毎年なんだかんだ揉めることはありましたけど。大人になりましたね。
———では、4年生の色というのは。
岩田:一言で言えば、「ボクシング部の縮図」かな。和樹みたいな言い出しっぺみたいな人もいれば、志門みたいに部をすごく盛り上げてくれる人もいるし、木村みたいに客観的な目を持つ人もいれば、俺はサポートっていう立場もあって厳しい面がある。4人がそれぞれの役割をしっかり持っているなって思います。
梅津:なるほど。確かにそうかもしれないね。
木村:全員ボクシング経験者っていうのも一つの特徴かもしれないですね。
岩田:良くも悪くも、群れないじゃん。いろんな意味で独立している。
木村:自分のことは置いといてなんですけど、事務をやる岩田だったり、練習中盛り上げる梅津だったり、主将として引っ張る和樹だったり、グループを思う気持ちが強い気がします。
———団結力というのは意識していますか。
梅津:団結力というより、個々で突っ走っている感じです。
岩田:俺ら4人がチームのなかで前に立って団結しようとしているよりは、散らばってそれぞれでチームをまとめている感じですかね。
梅津:僕らは各自の分野のエキスパートだと思います。それぞれのポジションを極めているんですよ。多分その分野だったら誰にも負けないと思います!
———ではボクシングの話に移りますが、普段ボクシングは見ますか。
梅津:僕はめっちゃ見ます!たぶん部内で一番のオタクです。海外の試合も見たりしますよ。
岩田:僕は見ないですね。ボクシングをする前はサッカーをしていたんですけど、その時からずっとスポーツをあんまり見てないです。というのもプライベートの時間は一切スポーツから離れて、何にも考えないで過ごしたい。ただ、やる時には集中してやりたいです。切り替えのためですね。
木村:自分のスタイルに近い人を探して分析するために、たまに見ます。けどまわりの人がめっちゃ見てるので、その人たちに比べたら見てないほうだと思います。
———普段の生活でボクシングのために心がけていることはありますか。
木村:飯ですね。ボクシングは体重のスポーツなので、試合1ヶ月前くらいになると気にしたりします。
梅津:僕はストレッチと睡眠時間ですかね。トレーニング、食事、休息っていうのはこの部活でもよく言われていることなんですけど、トレーニング以外のことは個人に任されていることなので気を使っています。ストレッチは欠かしたことはないです。睡眠も十分とっています。
岩田:いい意味で遊んでる!練習後とか程よく遊んだほうが部活にも集中できるし。でも部活に影響でるほど遊んでもないです。別に終電超えるまで遊んじゃったなんて絶対ないし、そこは規則正しい生活をしてます。
———日常生活でついつい出てしまう職業病は。
木村:肩抜きって動作があるんですけど、それはよくやっちゃいます。
梅津:あーわかる。鏡の前とかで
岩田:俺もよくやっちゃうな。
木村:誰もいないところで自然と出ちゃいますね。
梅津:誰かの肩をポンって叩く時に、最近の自分の課題である「拳で打つ」ことを意識しちゃって拳をいちいち返しちゃいます。実際力入れてないのに、痛いってよく言われます。
———もしボクシングをしていなかったら、どんな大学生活だったか想像したことはありますか。
岩田:俺は程よくサッカーやって、もういろんな女の子と恋してバラ色の大学生活にしていたと思います。
木村:僕は逆に灰色の大学生活だったと思います。ボクシングやっていなかったらダラダラしちゃって、勉強もせずにいたと思います。ボクシングをやって生活にメリハリがついたので、やっててよかったなと思っています。
梅津:僕はお笑いサークルに入っていたと思います。人に注目されることが好きなので、そういう意味でボクシングも好きで。お笑いもステージに立つところがボクシングと同じじゃないですか。だから、O-keisとかに入ってたかもしれませんね。でもあんまり想像できないですね。
———引退間近の今だから言える懺悔したいエピソードなどありますか?
岩田:主務の仕事の失敗は、表立って出てくるからもうみんなに知られちゃってますね(笑)。
梅津:高校のときに中央大学で練習があったんですけど、ヘッドギアをなくしちゃて。大学の先輩に話したら隠蔽しようぜってなって秘密にしてました。すみません!
木村:高校生のときに大学の早慶戦の手伝いで僕はパンフレットを持っていく係だったんですけど、会場に持っていくのを忘れちゃいました。バレずにすんだんですけど、いまでも自分の家に4年前くらいのパンフレットが大量に山積みされています。
一同:(爆笑)
梅津:もう時効だわ(笑)。
下級生の意識がすごく高くなっている(木村)
まだ全然かな(岩田)
———夏に代替わりがありましたが、やはり変化はありましたか。
岩田:俺は主務とトレーナーだったので、練習メニュー組み立てたりして全責任がありました。代替わりをして、問題がないかとか指導方法に間違えはないかとかを見てる側になったから、良くも悪くも楽になったかな。
木村:当たり前かもしれないですけど、下級生の意識の突き上げがすごい高くなったなと思いました。夏に研究会の兼ね合いもあって少しだけ休んでいたんですけど、復帰したときに下級生の意識がすごく高くなっているなっていうのに気づいて、それはいいことだなと思いました。
梅津:練習メニューどうこうってより意識の変化かなと思います。
———最近強くなってきていると感じる下級生は。
梅津:古山(貫太郎=経3・慶應義塾)も戻ってきてるし、徳山(雄太=理3・南山)も、杉山(知義=商3・大宮)、2年だと宮内(龍ノ介=政2・慶應湘南藤沢)…。多いですね。
岩田:俺は主務の立場から宮内かなと思います。2年生なのにリーグ戦期間にライトフライ級でずっと頑張ってくれて、関学戦でも一発目に出てくれて。徐々にチームのポイントゲッターになっているなと思います。それに比例して練習態度とかも変わってきています。やっぱり下級生のほうから上を盛り上げてくれている意識を感じてます。
木村:2年の林(麟太郎=経2)ですかね。僕が夏の休みから復帰した時期に林と対人練習したとき、すごい技術伸びてるなと感じました。
———では、現幹部の働きぶりはどうですか。
岩田:厳しいことを言うと、主務はまだ全然かな。チームマネジメント的なとことろで情報の共有であったりっていうのがまだ弱いと思います。俺らの代でいろいろなくしてった流れをまだ汲み取ってもらえてないかな。例えば、易しい練習メニューとかを和樹がいらないって言ってなくしたんですけど、いままた復活してきて。それがいいのかもしれないけど、流れとしては惜しいな。これからに期待です。
梅津:声出てるし、いいと思います。
木村:厳しい意見もあると思いますけど、練習中とか声出てるしいいと思います。岩田は厳しく見れるからさすがだなと思います。
部活やってたからって社会に出て役に立つのかとか。けど、そうは言っても途中でボクシングやめるわけにはいかない。その意味で葛藤はありました(木村)
この葛藤に悶えながらボクシングをする僕たちの最後の舞台をみなさんに見てほしい(梅津)
———引退が近づいていますが、大学でのボクシング生活を振り返ってどうでしたか。
岩田:僕は2年生からトレーナーになって、チームの表舞台に立つことは無くなって、裏方としてチームを支えるようになりましたが、もともと選手としてこの部活に入ってきたので、同期が活躍しているのを見てやっぱり羨ましいなという気持ちもありました。そういう思いと葛藤している時期もありました。でも志門とキム(木村)と和樹には感謝しているし、俺は支えることしかできなかったけど、3人は試合出て活躍してくれて自分も頑張ってこれたし、監督やOBにも認めてもらえるような代になったと思います。
梅津:岩田は常に波紋を投げかけてきたところがあって、良くも悪くも最初は大衆が岩田の意見を消している時期がありました。けど代を重ねてきて、少数派の意見を大事にしていかないといけないなと思うようになって。なんでこの組織はそれをピックアップしないのかなと。そうしていろいろ話し合っていくうちに、最終的にボクシング部ってなんだろうってところまで考えました。岩田のおかげで常に疑問を持つようになったので、これからどんな組織に入っても客観的に物事を見れるかなと思います。
木村:僕は同期がこの3人で良かったなと思います。僕はこんな性格でしゃべったりすることがあまり得意じゃないんですけど、それでも続けることができたので、それはこの3人が同期だったからだと思います。3人には感謝しています。
梅津:4年になるといろんなことを考えます。無駄に哲学的なことを考えちゃう。昔は「ボクシングが好きだ」って気持ちだけでやっていたんだけど、それもできなくなっちゃう。なぜ殴りあっているのか。ただ全力に打つことができなくなってしまって、葛藤しています。僕らにとっては、ボクシングやるよりTOEICや簿記をやったほうが絶対役に立つはずなんですよ。かといってここでやめたらどうなるのか。この葛藤に悶えながらボクシングをする僕たちの最後の舞台をみなさんに見てほしいです。みんなも葛藤あるでしょ。
岩田:さっきも言ったけど、正直出場したいよ。けど2年間練習してきてないやつが最後に出ますってのは違うと思う。やっぱり早慶戦って最高の舞台で勝ってなんぼだと思うから、頑張って練習してきた人に出て欲しい。出場したいけど出ないこの葛藤を抱えたまま部を去るって決めました。後悔は残るけどね。
木村:僕は進学するんですけど、就活をしようか迷ったときに、「エントリーシートに部活をやってた」って書いても売りになるのかなと考えたことはあります。部活やってたからって社会に出て役に立つのかとか。けど、そうは言っても途中でボクシングやめるわけにはいかない。その意味で葛藤はありました。でもそこを断ち切ってこそ悔いなくボクシングができるのかなと感じます。
梅津:ほんとなんでボクシングやってるんだろうって考えちゃう時期がありました。突き詰めていくと、本当に俺ボクシング好きなんですよ。結局そこが重要なのかなと思います。僕も進学するんですけど、そうなったら勉強のほうが大事で。でも今やっていることって全部将来に繋がっているわけではなくて、振り返ってみないとわからないと思います。それなら今好きなことを全力でやりたいです。でも、それでいいのかと考えてしまう自分もいます。葛藤ですね。
———最後に早慶戦に向けて。
岩田:僕はもうサポート側なので、3人にとって最高の早慶戦になるようにしたいですね。3人に勝ってほしい。それだけですね。
梅津:まずは早慶戦に出られるということを確実にしないと…というところですかね。
木村:確かに。
梅津:出られるように頑張ります。後輩強いです(笑)。早慶が殴り合うという、端から見れば単なる部活の一対校戦に過ぎないことかもしれませんが、それでも全力を注ぐことの大切さというものを観客の皆さんには見てほしいですね。
———ありがとうございました!
(取材:佐野ちあき)
最後は「大学4年間を体育会に捧げることの意味」という難しいテーマについて、率直な気持ちをぶつけ合ってくださった4年生座談会でした。明日は主将・前主将対談。部内企画のラストを飾るにふさわしい内容となっております。乞うご期待!
岩田慎平(いわた・しんぺい)
前主務。経済学部4年。神奈川・慶應義塾高校出身。身長175cm。主務として慶大ボクシング部、早慶戦の運営に携わる一方で、学生トレーナーとしても活動。その厳しくも愛情たっぷりの指導で、ボクシング未経験者の後輩もいっぱしのボクサーに育て上げてきた。今季はリーグ戦平国大戦で選手として電撃復帰を果たした。
梅津志門(うめず・しもん)
前副将。商学部4年。神奈川・慶應義塾高校出身。身長177cm。ウェルター級を主戦場とする。陽気な性格で部の雰囲気を盛り上げるムードメーカー。先日は三田祭のステージ企画にも出演し、会場を大いに盛り上げたそう。距離感とディフェンスの技術に優れたアウトボクサーだ。
前副将・木村優志(きむら・ゆうじ)
前副将。理工学部4年。神奈川・慶應義塾高校出身。身長181cm。ライトウエルター級を主戦場とする。慶大ボクシング部でも数少ない理系ボクサー。高校1年の時、クラスメートだった梅津に誘われたのが、ボクシングと出会ったきっかけ。寡黙な男が、熱い魂で最初で最後の早慶戦出場を目指す。