いよいよ、今年もラクロスのシーズンが到来。男子ラクロス部は、昨年の全日本選手権決勝で味わった悔しさを胸に、悲願の日本一を目指す。今回は、各ポジションを代表してAT井上裕太(経4・慶應義塾)、MD田中聡貴(商4・福岡大附属大濠)、FO青木裕太郎(商4・早稲田)、DF原拓輝(経4・慶應義塾)、石山博貴(法4・慶應志木)の5名にお集まりいただき、最後のリーグ戦にかける思いや、ラクロス初心者でも楽しめる観戦のポイントなどについて語ってもらった。
――プレーヤーとしてどのような選手なのか、また性格などについて互いに紹介していただけますか
田中→青木:青木裕太郎君です。早稲田高校上がり。非常に気持ちが強くて、勝負どころでしっかりプレーする。少し気性が荒いところもあるけど、一番勝ちにこだわってる選手です。
青木→石山:人としては、多少虚言癖があって、たまにラクロス中にも出てしまいます(笑)。彼とは、アーセナルのゴーリーとして一緒にやってきました。後輩にもいいゴーリーがいますけど、やっぱり彼とは一緒にやってて楽しいです。
石山→原:すごい新しいことを思いつく選手です。ディフェンスでも今まで通りじゃなくて、自分が考え付いたことをドンドンやっていくところがあると思います。そしてとことん考える人。一緒にプレーしていて安心できますね。人としては、結構周りをいじるけど、愛があって優しい。後輩とも仲が良いと思います。
原→井上:人間としてはいいやつだけどクズな部分もある(笑)。高校の時に数学の授業で隣でずっと話しかけてきて、ラクロスの勧誘をしてきたことが、僕がラクロスを始めたきっかけの一つです。そういう面では感謝しています。頼りになるプレーヤーだし、周りを引っ張っていくキャプテンシーもあって、熱い男。ラクロスやってるときは頼りになるけど、私生活では嫌い(笑)。
井上:僕も彼の私生活は嫌いです(笑)。ほんとは仲良いんですよ。
井上→田中:名門大濠高校出身の九州男児で、チームを支える男。ほんとにかっこいい。私生活もイケイケです。お調子者キャラだけど、真剣にラクロスのことを考えていると思います。アーセナルの中で、一番ラクロスIQが高いという印象です。ずっとケガしていたんですけど、復帰後はすごい頼りにしています
――アーセナルの皆さんは、なぜ大学からラクロスを始めたんですか
田中:僕は、NY高出身の友達からめちゃめちゃ勧誘されたのがきっかけです。他の体育会も考えていたんですけど、日本一への思いを一番熱く語ってくれました。しかも誰に聞いても同じような思いを持っていると感じたので、ここなら自分も情熱を注いでプレーできると思いました。あとは、やっぱりやってみて楽しかったというのが大きいです。
青木:僕がラクロスを知ったきっかけが「猫の恩返し」っていうジブリ映画なんです。そこで女の子がラクロスをやっていたんですよ。あと、毎日多摩川を通学で通るんですけど、そこでラクロスの練習をやっていたので印象に残っていたというのもあります。入部した一番の理由は、日本一になれるというところです。正直、ラクロスをやりたくて入ったというよりも、最初はそっちの方が大きかったですね。
石山:自分はずっと野球をやっていたんですけど、あまり強くない学校だったので県大会で優勝というところすら狙えませんでした。それで、大学から始めても日本一を目指せるのがラクロスでした。決して口だけじゃなくて、しっかり実績を出していたり、全員が同じ思いを持っていたりするというところに惹かれて入部しました。
原:僕は裕太に誘われたというのもあるんですが、ラクロスをやってみてすごく難しかったので、それがむしろ楽しく感じたんです。
―― 一人の選手としてレベルアップすることはもちろんですが、観客に向けてプレーするということは意識していますか
原:知名度を上げたいという気持ちはありますね。今年、新しいチームとして始まる時に「皆の憧れの存在になろう」ということを決めたんです。ラクロス界でもそれ以外でも。そういった意味で、見られることは意識しています。
井上:ラクロスのルールって難しいと思うんですよ。でも、ルールをよく知らなくても「かっこいい!」って思えるプレーがあるので、そういった部分を出せれば良いと思っています。そうすると自分たちを楽しいし、見てくれたお客さんも「もう一度見に行きたい」という気持ちになってくれると思うので。僕の個人的な考えなんですけどね。
田中:僕も見てもらいたいです。そのためには競技人口を増やさなくちゃいけないので、男女ラクロス部合同で小中学生向けにラクロスの体験会をやっています。
――面白いラクロス観戦のポイントがあれば教えてください
井上:ラクロスってオフェンス有利なところがあって、1対1になると大抵オフェンス側が抜くんですけど、慶大のディフェンスはそれが強いんですよ。特に一人モンスターみたいな奴がいて(笑)。そういう強固なディフェンスを見てもらえると楽しいですし、その後のグラウンドボールの処理なんかは原が上手くて沸かせるプレーをすると思います。僕はATなのでいつもそういうのを見てるんですけど、観客のような感覚で見ちゃいます(笑)
――逆に、ディフェンス側から見たオフェンスのすごいプレーというのはありますか
原:性格が悪い選手ほど、ディフェンスのことをよく見てるんですよ。それで動きの駆け引きをするんですけど、こういうのってボールがない時のプレーなんですよね。ゴールの瞬間だけじゃなくて、それまでの過程にも様々なプレーがあるので、そこが分かるともっと楽しくなると思います。
井上:難しすぎでしょ(笑)。
一同:(笑)。
井上:まあ、首の振りの駆け引きみたいなのは、分からないながらも見てみると面白いかもしれないです。ディフェンスの目にわざと入って、自分が視界から外れた瞬間違う方向に行く選手とかはよくいます。そういったプレーひとつがきっかけで簡単に点が入ることがあるので、それが分かった瞬間、観客としてワンランク上がるんじゃないかと思います。
――プレーにも性格が出るんですね
井上:僕は性格が良いのであんまり得意じゃないんですけど(笑)。
田中:嘘つけ(笑)。
――慶大でそういうプレーが上手いのは
原:ジャッキー(田中)です。
田中:性格は真っ直ぐなんですけど、人のことをしっかりと見極めようという思いでディフェンスと向き合った結果です。
井上:真面目に言うと、3年の川上(川上拓純=経3)と松平(松平悠希=経3)は超上手いです。
――ラクロスというのはフィジカルだけでなく、そういった頭脳プレーも大事になってくるんですね
井上:全部大事です。でも、慶大は比較的体が小さい選手が多いので、フィジカルで勝負できない部分は頭を使おうという考えが自然に出てきますね。だから、そういうプレーヤーが多い気がします。体が小さいなりに筋トレなどをしつつも、自分たちの強みであるラクロスIQを追い続ける、というような感じです。
――フェイスオフの魅力について
青木:自分が1年の時は、4年の陣野さん(陣野クリス=法卒)がいつもフェイスオフを務めていました。その人が早慶戦で点を決めたんですよ。自分もポゼッションを取って終わり、というだけじゃなくて得点に繋がるようなプレーをしたいと思いました。ラクロスって残り10秒で1点ビハインドでも、フェイスオフが強ければ勝てるんです。だから、僕も派手なプレーというのは常に意識しています。
――観客に見てもらいたい部分は
青木:まさにブレイクの瞬間ですね。そこで勝って、味方にボールが渡ってゴールに繋がるところを見てほしいです。あとは、足の速さです。ラクロス界で一番速いです(笑)。
田中:ギリそうだね(笑)。
青木:選手交代の時に相手より少しでも早いと次に有利にできるので、地味にそういった局面を作るのも楽しいと思います。選手交代の場面では、その頑張りを見て欲しいです。
――ゴーリーの魅力は
石山:僕が今のポジションに就いたのは、1年当時に主将だった安藤さん(安藤圭祐=商卒)という方が言った言葉がきっかけです。「ディフェンスの要で、オフェンスの起点というのがゴーリーの良いところ」という言葉なんですが、特に「オフェンスの起点になる」という部分は、他競技のキーパーにはあまり無い部分だと思うんです。ラクロスのゴーリーは、ボールを取ったら自分で持って上がることもできるので。そのやり方次第で、オフェンスにも繋げられる役割ができるのが魅力でした。
――早慶戦前の下級生対談では、「4年はすごくキャラが濃い」という話を聞きました
井上:濃いというよりは、個性的な人が集まっている感じですね。
田中:僕は心当たりが無いですね。
一同:(爆笑)
井上:色々なタイプの人がいると思います。僕と原みたいにプライベートでは真逆の人がいたり、田中みたいな人がいたり(笑)。
――4年から見た下級生というのはどんな印象ですか
田中:3年はめっちゃ仲が良い。まあ、僕たちが悪いってわけじゃないんですけど(笑)。
――2年は
田中:2年は格好つけてる奴が多いんですよ(笑)。
井上:代によって結構個性がありますね。
――最上級生として、大所帯のラクロス部をまとめる難しさは感じていますか
井上:Aチームにいる下級生にはしっかりと声をかけられるんですけど、下のチームやアーセナルの選手になると、なかなか顔を合わせる機会が無くてなかなか厳しいことを伝えるチャンスが無いというのはあります。
原:ラクロス部全体が集まる機会というのはあまり無いですね。
田中:これから合宿なので、それくらいですね。
――早慶戦を振り返って
井上:あの試合って、慶大の実力が2割も出せていなかったと思うんですよ。というのも、個々がどこかでセーブしてしまっていて攻めきれなくて、この前の早慶戦はそれが顕著に出た試合でした。この点が今年の慶大にありがちで、負けた試合でも終わった後に全然疲れてないんですよ。そういうことがあると、いくら練習して100の力を付けても20しか発揮できなくて勿体ないと思います。こういうメンタルの弱さが今年の慶大の弱点だと思うので、合宿でしっかり修正して、リーグ初戦の早大戦後には26人全員が倒れているくらい出し切れるようにしたいです。僕たちのやっていることは間違っていないと思うし、学生の中では一番上手い自信があるので、あとはそれを出し切るだけです。
――ラクロスのリーグは勝ち進めば12月にまで及ぶ。その長いシーズンの間、自分の調子を維持する大変さは感じていますか
田中:早寝早起きですかね。
青木:早寝は自動的にね(笑)。
原:ちゃんと練習をやっていれば体が強くなっていくので、特別なことはしなくてもしっかりとシーズンを戦うことができると思います。まあ、一番最初が一番キツいですね。8月の熱い時期が一番辛いので、(12月開催の)昨年の全日はすごくやりやすく感じました。
青木:あとは、トレーナーがしっかり管理してくれます。
――食生活は気にしていますか
青木:試合前は気にしますけど、普段は結構好きな物を食べています。試合前は栄養バランスと量に気を付けているんですが、それもトレーナーが管理しています。
井上:トレーナーも学生なんですが、すごく勉強してくれています。毎日食事の写真を送ると、野菜が少ないとか色々とコメントをくれます。それを一人一人にやるので、かなり大変だと思います。あと、田中とか青木とかとは温泉に行きます。銭湯が大好きで、3時間くらい入ってます。
青木:(井上は)水とお湯の行ったり来たりが多いんだよ。
井上:これ、3年間で初めて言われましたよ。
田中:あと、何回も鏡で自分の体チェックしてる。
一同:(爆笑)
井上:それは嘘!
田中:だからシャワーも長いんですよ。
井上:信じないで下さいね!
青木:でもサウナはすぐ出てくる(笑)。
――ラクロス部での4年間で特に印象に残っている出来事や試合はありますか
青木:二つあるので、どっちにしようか今悩んでます。
原:じゃあ真面目なの、先に行きます。僕は、昨年の全日の決勝です。あの試合って早慶戦よりも人が集まっていて、多分日本で一番人が多いラクロスの試合だったと思います。その中で試合ができたのはすごく幸せだったと思います。僕は3年でそれを経験させて貰ったので、今年はそれを生かすということはもちろん、後輩にも同じ経験をさせてあげたいという思いがあります。
――実際にFARCONSと戦ってみていかがでしたか
原:点差以上の実力の差は感じなかったですけど、やっぱりあの時点では越えられない壁ではありました。でも、思ったより高くなかったというのが正直なところです。なので、昨年感じたものをしっかり生かせれば、今年は勝てると思います。
青木:自分も同じく昨年の全日の決勝です。それまでもずっとAチームの一員として日本一という目標は共有していたんですが、正直「遠いもの」という感じでした。それで、実際に戦ってみてやっと手が届くものだと実感しました。自分が今まで3年間やってきたことは間違っていなくて、4年目でしっかりとそれを出し切れれば勝てるという自信になりました。昨年の先輩方が引退して、僕たちの新しいチームがスタートする時に、本心から「日本一になる」と言うことができました。
――真面目な流れになってきていますね
石山:自分も全日です。
田中:ふざけんなよ(笑)。
石山:(笑)。自分はそこで試合に出ていたわけじゃなくて、ベンチで応援する立場でした。それでもさっき裕太郎が言っていたように、「絶対に越えられない壁」という今までのFARCONSのイメージが無くなりました。あの時は、たぶん人生で一番声を出して叫んでいたと思いますし、勝手に体が震えて、最後の方は本当に泣きそうになっていました。昨年は負けてしまいましたが、あと一年やれば勝てるという自信になって、来年こそは絶対に自分がゴーリーとして出ると強く思いました。
井上:結局僕も一緒になっちゃうから変えようと思っていたんですけど、昨年から練習とかで辛いことがあった時に思い出すのは、やっぱり全日が終わった瞬間の感情なんですよね。あの悔しさは、今思い出しても体が震えます。それがあるから頑張れている部分があると思います。あの試合は、「もっと自分が頑張れていれば」というのがすごく大きいので、モチベーションになっています。
もう一つ挙げるとしたら、1年の頃にアーセナルの大会を見に行った時に「こいつら大丈夫か」って思ったことですね(笑)。
青木:あ、これ俺の2個目(笑)。
井上:どれが、というよりも「こいつらと一緒に戦うのか…」って思ったことですね(笑)。
田中:弱かったんですよ。
井上:めちゃくちゃ弱くて、いくら応援しても全然勝てなかったです。1年の頃から、ずっとこの代には厳しいことを言い続けてたよね。
青木:そうだね。
井上:なので、それは結構印象的でしたね。彼らなりにはやっていたと思うんですけど、最初は色々と指導されてここまで上手くなったと思うと懐かしく感じますね。ガミガミ言い続けて来た時期があったので。
――伸びるきっかけというものはあったんでしょうか
井上:全員があると思います。
青木:学年でミーティングをしていて、マネージャーにも言われちゃったんですよ。ダサいじゃないですか。恥ずかしいと思って、そこから燃えましたね。
田中:僕たちアーセナルの試合で負けたミーティングの後から、努力を写真に残してそれを共有することで、皆で刺激を与え合うということをずっとやってきました。まあ、裕太とかはタンクトップでキメて撮ってるんですけど。
――井上さんがどんどんナルシストキャラになってきていますね
井上:本当に違うんですよ!そういうキャラ設定です(笑)。
田中:まあ、そういうのを続けていくうちに、LINEグループのアルバムが溜まりすぎちゃうくらいになりました。
――ポジションごとにも同じことをやっていると聞きました
井上:そうですね。それをやっている人たちは実際に上手くなるんですよ。しかも、絆も深まるし。こう、「SNS上で繋がっていただけなのに…」みたいな感じで(笑)。次第にそれがチームに浸透していって、今は自分たちが言わなくても下級生同士でやっていると思いますよ。
――最後に、リーグ戦での意気込みを聞かせてください
田中:一応昨年から試合に出ていたメンバーとして、皆を引っ張っていきたいという思いはあります。でも、半年近くケガをしていたせいで、なかなかプレーで引っ張ることはできませんでした。代わりにその間、ヘッドコーチ的な視点で全体を見ていたので、組織の運営やベンチワークといった部分の知識を付けることができたと思います。それを、今年自分がプレーするときにも役立てたいです。あとは、継続して広い視野を持ちつつ、皆と連携して日本一まで勝負していきたいと思います。
青木:シーズンが始まる前に、相方である叙臣(曽根叙臣=理4)と「どの試合でも70%ポゼッションを取る」と決めました。だから派手なプレーよりも、まずそこを必ず達成することを目標としています。個人的には、2年から試合に出させてもらってきて先輩方にはすごく感謝していますし、フェイスオフは、唯一所属チーム関係なく全員で練習しているので、皆に上手くしてもらったという思いがあります。今年は練習の時点から結構手応えがあるので、感謝の意味も込めて必ず結果を出したいと思います。
石山:昨年の全日から、しっかり試合に出ることとFARCONSに勝つことを目標としてきました。現時点ではあまり達成できているとは思いませんが、リーグ戦を勝ち進んで絶対に12月まで試合があると信じているので、チームの日本一に貢献できるような選手になりたいです。そのために、とにかくシュートを取り続ける練習をやっていきたいと思います。
原:ディフェンスには井上君みたいなスタープレーヤーはいないんですが、地味に上手い選手がたくさんいるんです。彼らが上手くかみ合った時にはすごく良いディフェンスができるので、今年はそこを上手く機能させたいというのが個人的な目標です。あと、僕は先輩・後輩が好きで、昨年はずっと先輩を見て成長してきたので、自分が受け継いだものをしっかりと後輩を見せてあげたいです。自分の姿を見て、「かっこいい」と憧れてもらえるようなプレーをするというのも目標としてあります。
井上:僕は日本一になって、江戸陸(江戸川陸上競技場)でトロフィーを掲げることが目標です。さっきも言ったように、昨年の悔しさは常にこみ上げてくるので、それを喜びに変えて、社会人になっても思い出してにやけちゃうくらいにしたいです。そのためには、皆が言うように僕が点を決めるしかないと思っています。でも、そのためには石山がセーブして、原が拾って、田中が繋いでくれなきゃいけないです。プレーだけでなく、チームとしても皆の支えがあってできていると思うので、僕はそれを受けてただ突っ走っていきたいです。
――ありがとうございました!
♢リーグ戦日程
日付 | 開始時間 | 対戦相手 | 会場 |
8/14(月) | 10:00 | 早大 | 富士通スタジアム川崎 |
8/28(月) | 10:00 | 武蔵大 | 明治学院大学ヘボンフィールド |
9/10(日) | 15:00 | 明大 | 駒沢第二球技場 |
9/23(土・祝) | 17:30 | 成蹊大 | 武蔵大学朝霞グラウンド |
9/30(日) | 未定 | 法大 | 慶應義塾大学日吉陸上競技場 |
(取材・下川薫/写真・内田貴啓)