「学生日本一」と「社会人クラブ日本一」の直接対決を以て「真の日本一」を決める、ラクロス全日本選手権大会A1。(以下、全日)前半から副将・小川健(政4・慶應)らDF陣とG・浜地航太郎(経4・慶應)の好守が光り、社会人王者相手に0ー2のロースコアで後半へとつなぐ。すると第3Qには、AT・田代豪(商4・慶應NY)が慶大に待望の得点をもたらし、1ー2の1点差でラスト15分へ。田代の得点で勢いに乗る慶大だったが、第4Q立ち上がりで2失点。6分には、AT・池田朋史(商3・慶應)のビハインドシュートで相手Gの不意を突き2ー4とするが、追加点を挙げる前に試合終了のホイッスル。慶大は、2ー4でGrizzliesに敗戦。悔しくも「日本一」にはあと一歩届かず、チーム藤岡の戦いは幕を閉じた。この試合を以て、4年生は引退となった。
◇スタメン
AT
#3 藤岡凜大(政4・慶應)
#7 田代豪(商4・慶應NY)
#9 落合優椰(政4・慶應)
MF
#51 石村嶺(経4・慶應)
LMF
#21 小川豪(商4・都立青山)
DF
#16 奥澤拓馬(商4・慶應)
#19 増田友翔(経3・慶應)
#22 小川健(政4・慶應)
G
#2 浜地航太郎(経4・慶應)
FO
#33 鈴木ケン春海(商3・慶應NY)
♢得点♢
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 |
慶大 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 |
Grizzlies | 1 | 1 | 0 | 2 | 4 |
慶大得点者 | ー | ー | 田代 | 池田 | ― |

西陽が差し込む味の素スタジアムと選手たち
日本ラクロスの頂上決戦。緊張感と高揚感に包まれた味の素スタジアム、その中央でFO・鈴木ケン春海(商3・慶應NY)がフィールドに膝をつく。試合開始のホイッスルと共に、電光掲示板がチーム藤岡の「ラスト60分」を刻み始める。社会人王者が猛攻を繰り広げる一方で、慶大が誇るツインズ、DF・小川健とLMF・小川豪(商4・都立青山)を筆頭に鉄壁の砦を築き上げる。開始5分には、ゴール前で発生したグラウンドボールをDF・増田友翔(経3・慶應)が冷静に掬い上げ、クリアに成功。チャンスを掴んだ慶大は、主将/AT・藤岡凜大(政4・慶應)とAT・池田朋史の2人を軸にパスを回しながら好機を伺うが、シュートを打つことができない。混戦での慶大ファウルにより1人少ない状態での守備を強いられるが、G・浜地航太郎がファインセーブを連発。残り3分で悔しくも先制点を献上するも、MF・鈴木駿平(法4・慶應)の厳しいマッチアップで相手ファウルを誘うと、そのまま慶大ポゼッションで第1Qを終える。

好守でチームを支えたG・浜地航太郎(左)とDF・小川健(右)
0ー1で迎えた第2Q。相手ポゼッションで試合再開も、MF・石村嶺(経4・慶應)が迫り来る社会人選手を強靭なフィジカルで突き飛ばす。さらに、G・浜地航太郎のセーブから石村がクリアに成功すると、AT・藤岡凜大が「DF3枚+G」という厳しいマークを受けながらもクリース付近まで侵入。相手ファウルを誘い数的有利を演出するが、相手Gに阻まれて得点を奪うことができない。Grizzliesのタイムアウトを経て迎えた慶大のDF。ここでも守護神・浜地が圧巻のセーブ力でピンチを凌ぎ、慶大ポゼッションとする。しかし、直後にフィールド中央でパスを弾かれグラウンドボールが発生すると、そのままゴールを許し0ー2。それでも、DF・小川健、MF・石村がダブルチームで相手のボールダウンを誘い、残り1分で攻撃に転じる。藤岡や落合優椰(政4・慶應)らAT陣が懸命に攻め続ける中、0ー2のロースコアで前半を終える。

この日は守備で活躍のMF・石村嶺
着実に点差を縮めていきたい第3Qは、村田陽世(環4・慶應)のFOで幕を空ける。DFで試合が再開も、奥澤拓馬(商4・慶應)の厳しいチェックで相手のボールダウンを誘い、DF・増田友翔がまたもグラウンドボールで魅せる。華麗にボールをスクープすると相手選手をかわしながら敵陣へと駆け上がり、OF陣へボールを託す。仲間の好守に応えようと、ATの落合優椰と福田天真(法2・國學院久我山)が立て続けにシュートを放つも、ゴールネットを揺らすことはできない。それでも5分、ゴール裏から藤岡凜大が左に旋回すると、視線の先にはクリースに侵入する田代の姿が。早慶戦の先制ゴールを彷彿とさせる展開に胸が高鳴る中、パスを受けた田代が相手Gの上から豪快なシュートを叩き込み1ー2。慶大に待望の1点目をもたらし、味の素スタジアムに歓喜の「若き血」を轟かせる。その後もDFではLMF・小川豪がボールダウンを誘い、ATの落合や池田朋史を中心にゴールへ迫るなど良い形で試合を運び、1点差でラスト15分へと繋ぐ。

AT・田代豪がゴールを決めた瞬間
最終第4Qの幕開けを務めるのは、FO・増成琉之助(政3・慶應)。相手ファウルを誘ってポゼッションを勝ち取ると、仲間にボールを託し力強いガッツポーズとともにベンチへ駆け抜ける。慶大サイドが高揚感に包まれる中、ポゼッションを奪われるとそのまま立て続けに2失点。1ー4とリードを広げられ、DF・小川健も思わず崩れ落ちる。そんな中、立ち込める暗雲を晴らすように3年生が全日の舞台で躍動する。鈴木春海のFOから慶大ポゼッションで迎えた6分、ゴール前に侵入したAT・池田朋史がゴールに背中を向けたままノールックでクロスを一振り。相手Gの意表をつくビハインドシュートで1点を返し、味の素スタジアムに熱狂の渦を巻き起こす。約9分を残して再び2点差。「Be Ambitious」のチャントを背に、MF・岸敬太郎(政2・慶應)、AT・福田天真ら2年生も立て続けにシュートを放つが相手DFに阻まれる。

AT・池田朋史のビハインドシュートに会場が沸く
2点を追う展開の中、試合時間は残すところ1分半。G・浜地航太郎の素晴らしいセーブから、副将/DMF・佐藤孝紀(政4・慶應)が敵陣へと駆け上がる。スタンドからは、全日の舞台に立つことを許された「慶應ラクロスの選ばれし者たち」に精一杯のエールが送られる。主将の藤岡凜大は仲間の声援を一身に受けてシュートを放つが、Gと交錯して得点ならず。立ち上がれずにいる藤岡に「凜大まだ終わってないぞ!」とベンチからは激励の声が。LMF・小川豪も、藤岡の気持ちを繋ぎ止めるかのように必死で相手OFにくらいつく。そして再び慶大ポゼッションを迎えると、タイムアウトで最後の円陣を組む。おそらく次がラストプレー。ボールを託された藤岡は、無我夢中でゴールに向かって突き進む。ゴールまであと数m。藤岡がシュートを放とうとしたその瞬間、無情にも「1年2ヶ月の戦い」に終わりを告げる笛が鳴り響く。直後に放たれたボールは虚しくゴールの中に転がっていた。慶大は2ー4で社会人王者・Grizzliesに敗れ、あと一歩のところで「日本一」に届かなかった。

最後までゴールを諦めなかった主将・藤岡凜大
西陽が差し込む味の素スタジアムと、そのフィールドに並ぶ慶大の背番号。ついにこの日がやってきたなというワクワクと、これでチーム藤岡の戦いが終わってしまうという寂しさが入り混じった思いで選手たちの背中を見守っていた。試合では、目の前の1プレーに懸ける選手たちの強い想いと執念のようなものを感じた。最後の最後まで1点を争うゲーム展開、選手たちが紡ぐ1プレー、1プレーには心を揺さぶられた。試合終了後、フィールドに膝をつき立ち上がれずにいる藤岡の涙と背中が、この1年2ヶ月の全てを物語っていた。そんな藤岡のもとに4年生が歩み寄り声をかける姿、挨拶後のベンチで藤岡を囲むように部員たちが涙する光景は、「主将」「エース」そんな言葉では表せない「藤岡凜大の存在」を象徴していた。この試合を以て4年生は引退。チーム藤岡の戦いは幕を閉じるが、慶大ラクロス部の戦いはこれからも続いていく。来年はスタンドで見守る4年生に、頼もしい下級生たちが「日本一の景色」を見せてくれると信じて筆を置きたいと思う。

挨拶を終えた後のベンチ

チーム藤岡・最後の集合写真
(記事・取材:長掛真依、取材:長沢美伸、竹腰環)
【選手インタビューについて】
たくさんの選手にご協力いただいたため、別の投稿にて掲載させていただきます。
全日を戦い終えた、選手たちの思いをぜひご覧ください。インタビューはこちらから。