「箱根駅伝プロジェクト」が本格的に始動してから半年。世間からの注目を集める中、チームは発表後初の予選会を迎えた。結果は10時間42分42秒と塾記録を13年ぶりに更新し、昨年を上回る27位。さらに、エースの根岸祐太(経3)が全体で76位に入る快走を見せ、関東学生連合チームに選出された。
第94回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
2017/10/14 9:35発走
@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園
総合結果
慶大 | 27位 | 10:42:42 |
個人成績
選手名 | 記録 | 順位 |
根岸祐太(経3・慶應志木) | 1:00:58 | 76位 |
永野裕也(文3・土佐) | 1:03:46 | 276位 |
石井克弥(環2・長野日大) | 1:03:50 | 282位 |
田島爽也(政2・熊谷) | 1:03:56 | 288位 |
大木康生(経4・慶應志木) | 1:04:04 | 294位 |
藤井一樹(法4・慶應湘南藤沢) | 1:04:09 | 299位 |
下川唯布輝(環4・明石城西) | 1:05:15 | 335位 |
前表幸作(経4・慶應義塾) | 1:05:23 | 341位 |
森下衆太(理1・國學院久我山) | 1:05:35 | 346位 |
佐伯拓海(環3・松本深志) | 1:05:46 | 357位 |
渡邊亮(理3・慶應湘南藤沢) | 1:06:34 | 381位 |
永井翔(法4・慶應志木) | 1:06:52 | 393位 |
(上位10人の合計タイムで順位を決定する)
小雨が降り続く昭和記念公園。箱根駅伝本戦への出場権を懸け、49校のランナーたちが熾烈な争いを繰り広げた。
慶大は、昨年・一昨年と塾内トップでゴールしたエースの根岸が序盤から抜け出す。5㎞を15’06”、10㎞を30’24”、15㎞を45’47”と終始安定したペースを刻み、その勢いを保ったまま60’58”でフィニッシュ。61’00”という目標タイムを上回り、「すごく楽しい20㎞になりました」と笑顔で振り返った。
また、根岸は本戦への出場が叶わなかった大学の選手で編成される関東学生連合チームにも選出。「ずっと狙ってこの3年間やってきた」という努力の結果が見事に報われた。今後、その中から当日出走するメンバー10人の選考が行われるが、このまま実際に箱根路を走ることとなれば、慶大の選手としては12年ぶりの快挙となる。
後続の選手たちも10㎞までは3つのグループに分かれていたが、その後は徐々に単独走へ移行。根岸のフィニッシュから3分48秒後、永野裕也(文3)、本職は競歩選手である石井克弥(環2)、田島爽也(政2)、大木康生(経4)、藤井一樹(法4)の順でレースを終え、それぞれ過去の予選会での記録を更新する走りを見せた。その後は、駅伝主将としてこの1年間チームを率いてきた下川唯布輝(環4)、最初で最後の予選会となった前表幸作(経4)がゴール。さらに森下衆太(理1)、佐伯拓海(環3)、渡邊亮(理3)、永井翔(法4)と続き、全員が無事にレースを終えた。
今回出走した12人のうち、9人が2年連続での出場。そのうちの8人が昨年のタイムを上回り、涼しい気候にも助けられながらチームとしても塾記録を13年ぶりに更新。10時間42分42秒で、昨年を上回る27位に入った。
「陸の王者」復活へ。今年創部100周年を迎えた慶大競走部では「箱根駅伝プロジェクト」が始動し、保科光作コーチのもとで様々な改革が行われた。北海道で1ヶ月間に及ぶ夏合宿を行い、1000㎞以上もの距離を走り抜いた選手たち。チームとしても変わり、「みんなの気持ちが同じ方向に向いた」(下川主将)という。
塾記録は更新したものの、手放しでは喜べない。本戦出場ラインとはまだ32分8秒もの差がある。「来年は確実に10位台に入っておかないとなかなか上との差が縮まってこない」という保科コーチの言葉にもあるように、1994年以来のチームとしての出場を果たすため、越えなくてはならない壁は高い。正月の風物詩である箱根駅伝での本戦復帰に向けて。多くの期待を背負った新・慶大競走部長距離ブロックの挑戦はまだ始まったばかりだ。
(記事:川下 侑美 写真:染谷 優真)
保科光作・競走部長距離専任コーチ
(今日の予選会を振り返って)やはり厳しかったですね。箱根駅伝に出るというのは甘くないことですし、道は遠いなと最初に思いました。
(塾記録を大幅に更新したことについては)それは選手が頑張ってくれた結果ですね。しかし一方で順位が(昨年から)一つしか上がっておらず、箱根に行くためには10位以内に入らなければいけない中でそういう結果になってしまったのは私の責任です。もっと私自身が成長しないと選手を上手く導いていけないのかな、と強く感じました。
(今日の予選会に対するチームとしてのレースプランは)63’30″で走るメンバーが6名、65’00″で走るメンバーが5名で根岸が61’00″、というプランを立てていました。しかし私が選手の状態などの把握を見誤ってそのプランを立ててしまったかな、ということです。
(今日のタイムには満足していないということか)僕自身は満足していないです。箱根駅伝に出るためにどうするかというプランを立てていたので、そこに僕の甘さが出てしまったと思います。
(学生連合への選出がほぼ決定的な根岸選手については)それも彼自身が頑張ってくれて残してくれた結果なのでそれは素直に嬉しいですし、箱根路の経験をチームに持ち帰ってみんなに伝えていって欲しいなと思います。
(就任されて半年だが振り返って)あっという間でした。色々と変えなければいけない所もありましたし実際変えてきたこともありました。まだまだチームを作っていく上でやらなきゃいけないこともあります。完成したチームで出られた訳ではないので、来年に向けてこの先一年かけてチームを作り直さなきゃいけないかなと思っています。
(半年の間でチームの変化は感じられたか)やっぱりみんな本気になってくれたんじゃないかな、とは感じています。箱根駅伝に向けて一生懸命、気持ちの面で前向きに頑張ってくれていると思います。
(来年に向けてチームで期待されている選手は)やはり田島爽也(政2)、森下衆太(理1)あたりは成長していって欲しいなと思っています。
(来年に向けての意気込みを)タイムは今年上がってはいるんですけど、順位として来年は確実に10位台に入っておかないとなかなか上との差が縮まってこないと思うので。10位台を目指して頑張っていきたいなと思います。
下川唯布輝(環4)
(今日のご自身の走りを振り返って)個人の結果としては非常に悔しい部分の方が大きいです。コンディションが良い中ではあまり納得のいかないタイムでした。でもこの1年間で僕が目指してきたのは「チームで結果を残す」ということだったので、そこに関しては達成することができたかなと思っています。
(今日のレースプランは)先頭のエース根岸は学連選抜入りを狙い、その次は63’10’’前後で走るグループと64’00’’〜65’00’’で走るグループの2つに分かれて集団走をしていました。
(チームとして塾記録を更新することができたのは、やはり今年からの強化の効果が出ているからか)強化の効果も当然あると思いますが、やはりチームみんなの気持ちが同じ方向に向いたということが一番大きいかなと思います。
(長距離ブロック長として今シーズンを振り返って)いろいろなことが起きましたし、本当に大変な1年だったなと思います。最初はチームのみんながいろいろな方向に向いていて、箱根駅伝やその予選会に対する目標も明確ではありませんでした。それを同じ方向に向けていくというのが、最も苦労したことだと思います。ですが1ヶ月に及ぶ夏合宿に臨んだことで、チームとして変わることができました。合宿明けからは練習での足並みも揃いましたし、予選会に向けて良いチーム作りができたのではないかなと思います。来年以降につながるチームの雰囲気が作れたと思います。
根岸祐太(経3)
(今日のレースを振り返って)今年は学連選抜というものを狙って走っていて、タイム的には61’00″というのを狙って走っていたので、その記録を超えることができたので本当に良かったと思っています。
(今日のレースプランは)昨年は序盤早く入って後半の失速が激しかったので、今年はずっと同じペースでいって、最後余裕があったらまた勝負ができるようなレースを心掛けて走ったので、そのプランはうまくはまったので、いい感じに結果を残すことができました。
(昨年は暑さが厳しいなかでのレースとなったが、今日のコンディションについては)涼しくてちょっと雨が降っているような気候のほうが自分的には得意だったので、天気予報を見てこれはきたなと思って調整することができたので、とても良かったと思います。また、チームとしても塾記録というタイム的な目標が強いので、コンディションが良いに越したことはなかったので、今日は涼しく良い気候で良かったです。
(レース中はどのようなことを考えて走っていたか)強豪校や箱根出場校と走ることができたので、こんな人たちが遅れているとか、こんな人たちについていっているという気持ちで高揚感もありましたし、また15km地点くらいになってからは、今日は本当に自分も最後までいけるんじゃないかという気持ちになって、すごく楽しい20kmになりました。
(塾記録を更新し、チームに大きく貢献したが)今年は、20km、来年から距離変更があるので、今年出してしまえば、来年以降記録として残るので、それだけ塾記録というものへの気持ちも強かったですし、それに見合うような練習もみんなこなせていたので、当然の結果だと自分は思っているのですが、素直にその記録を出す一人になれたのはすごい嬉しく思います。
(夏合宿などを通してどのような練習を積んできたか)夏合宿も全体的に練習量もガラリと変わって、練習の距離で言えば8月1000km以上の距離も踏んだり、また去年までは朝なども各自で練習することが多かったのですが、集団でジョグとか、ペーラン(ペースランニング)することが増えて、それによってチームで走っているという意識が強くなって、その点において保科コーチが来たことによって大きく意識的な部分に関しても、練習内容に関してもすごい変わったと思っています。
(関東学生連合への選出について)それをずっと狙ってこの3年間やってきたのでぜひ選ばれたいと思います。
(箱根路への目標と意気込みは)今頭の中も落ち着いていないので考えられないのですが、良い走りができるようにこれからも精進していきたいと思います。