KEIO新時代を告げる風雲児たちがやってきた。2018年慶大野球部の門を叩いたルーキーたちは早くもまばゆい光を放っている。そんなルーキーを取り上げるこの新企画では、2人の対談を3回に分けてお送りする。
最終回・第3回の今回は、大阪二強と呼ばれ、昨春の選抜高等学校野球大会決勝で対戦した大阪桐蔭高校と履正社高校で主将を務めた2人の対談だ。その対戦で勝利し、優勝を果たした大阪桐蔭高校の福井章吾(環境情報学部)(以下福井)と、準優勝・履正社高校の若林将平(環境情報学部)(以下若林)。既に名コンビの感も漂う2人に話を伺った。
――まずは他己紹介をお願いします
福井:若林は日常的には体が大きくて存在感があるというか、いつもにぎやかでまわりを盛り上げてくれるような感じです。野球の中ではやっぱり体が大きいというのもあって長打が多くて試合の流れを変えてくれるような選手です。高校時代から同じ大阪で切磋琢磨してきたライバルなので、もちろん今は仲間ですけど、常にお互い高めあっていこうという意識を持てる人だと僕は思っています。
若林:福井くんはすぐボケてまわりを笑わせてくれます(笑)先輩とも仲良くしてて、コミュニケーション能力が高いなというイメージです。野球に関しては、自分で納得いっていない部分もあるとは思うんですけど、非常にレベルの高いものを持っていてずっと努力していて、いつか開花すると思っています。
――大学入学前と後で相手の印象は変わったか
福井:本当のことを言うと中学の時から知っていました。高校の時は甲子園(選抜高等学校野球大会)の決勝戦で試合もしましたし、お互いキャプテンで日本一を目指して同じ県(大阪府)で争っていたのでその時はもちろん敵対心もありましたし、でもキャプテンとしての若林の辛さというのも遠くから見ててわかりました。お互い同じような立場にいるというようなことは感じていました。今は同じチームになってみて、タイプが違うキャプテンだなというのもわかってたので、将平のユーモアさというか、すごく心が広くて色々なことを受け入れてくれるんだなというのを感じています。そこがギャップですね。もっとしっかりしていると思っていたんですよ。語弊があるかもしれませんが、柔らかい感じだったので、それはすごく印象的でした。
若林:すごい(笑)福井くんは野球では、まわりのことも考えながら、チームのことも考えています。常にリーダーシップを持っていて、1年の中でもリーダーシップを持っています。それは大阪桐蔭で築き上げたものを慶應でも生かしてくれているなという感じです。日常生活でも、ここの寮来て一緒に住んでみてもすごく楽しいですし、変わったところはあまりないですね。
――ご自身のアピールポイントは
若林:さっき福井くんが言ってくれたみたいに、長打力というのは自分の中でも目標にしています。春のフレッシュリーグなどでもホームランを打てたりして、自分はフルスイングが持ち味だと思っています。その中でもホームランにはこだわっています。
福井:よく監督とかコーチの方にも言わますし、僕自身もわかっていますが、突出した何かというのは持っていません。そういうことを考慮するとやっぱり僕のアピールポイントは、さっき若林が言ったようにコミュニケーション能力だったりとか、チームを引っ張って何かみんなが引き出せていない力を引き出すことができるんじゃないか、というところです。そこに関しては、誰よりもできるという自信があります。リーダーシップとコミュニケーション能力という2つは誰よりも持っているという気持ちはあります。
――憧れの選手や理想の選手像は
福井:僕はもうずっと大阪桐蔭のOBで今西武ライオンズで活躍している森(友哉)選手が本当に大好きというか、常に僕の鑑です。ああいう選手になりたいという思いがあります。あとは選手としては、野球の技術はもちろんですけれども、人間力も兼ね備えた選手っていうのも僕の中では1つ大きな目標でもあるので、人間力もあり、森選手のようなプレーもできる野球選手を僕は目標にして頑張ってます。
若林:僕は、追い越したい選手なのですが、高校時代の同級生でロッテの安田(尚憲)です。そいつは高校の時から差が開いてて、僕がこの大学4年間の後にプロ行って、その時にはそいつを追い越していたいな、というのがあります。目指したいのは、試合の流れを変えられるようなバッターになりたくて、ここで1本ヒットが欲しい時に1本打ったり、この打席がこの試合の展開に大きくかかわってくるところで1本を打ったりできるようなバッターになりたいです。
――野球をしていてよかったなと思うこと、一番嬉しかったことは
福井:野球をやっていてよかったなと思うのは、人脈のようなものですかね。人生長いと考えた時に、今日のように取材をしていただいたりというところからの発展もありますし、高校時代のつながりもいまだに続いていたりします。あとはキャプテン同士や対戦した相手などと交流してご飯に行ったりできたので、人間関係という部分では野球をやっていてよかったと一番感じました。一番嬉しかったことは、高校時代に日本一になれたことです。あの優勝旗を手にした瞬間というのは本当に嬉しくて、いまだに忘れられない、僕の中で一番嬉しかったことです。
若林:野球をやっていてよかったなと思うのは、僕が活躍すると親が喜んでくれることですかね。いつもはお父さんなどにはけっこう厳しく言われたりするのですが、結果が出たりして報告した時にはすごく喜んでくれます。お父さんもお母さんも仕事を頑張ってくれていますし、そのために自分も頑張ろうという気になります。
――高校時代主将として苦労したことや成長できたこと
若林:僕がキャプテンになったのは監督にキャプテンにならないかと言われたからです。その前から自分でも少し自分がキャプテンになるだろうなというのは気づいていて、そこから自分もキャプテンをやりたくてやっていたのですが、やっぱり思っていたイメージと違いました。自分が頑張らないとついてきてくれないのですが、きちんとキャプテンシー発揮できたかな、というのがあります。その慣れない中でも一生懸命頑張ったというのは、成長できたと思います。
福井:苦労したことは、チームが勝てないという時に自分に責任があるということですかね。キャプテンは常にチームの頭というかチームの鑑であって、全てにおいて引っ張っていかないといけないと思います。技術もとびぬけてなかったですし、大阪桐蔭という名門の野球部でやっていくにあたって、僕なんかでいいのかな、という苦労が最初の頃はすごくありました。一番成長できたのは、さっき話したように、色々な選手が色々なところから集まって来る中で、その性格を見極める中でのコミュニケーションの能力や引っ張り方、人とのかかわり方というのはキャプテンをしたことを通して成長できたと思っています。
――大阪桐蔭高校の甲子園での活躍を見ていかがですか(この取材日は全国高等学校野球選手権大会の準々決勝があり、大阪桐蔭高校がベスト4進出を決めた後に取材を行いました)
福井:後輩なのですごく気になります。今年は特に僕たちすごく仲が良く、悔しい負けも僕たちと一緒にしましたし、嬉しい喜びも僕たちと一緒に味わいました。そういう後輩たちが頑張っているというのは刺激になります。あと2つなので頑張ってほしいという気持ちしかないです。
――ゲン担ぎはありますか
福井:打席への入り方は絶対一緒で入っています。屈伸して、右足あげて左足あげて、バッターボックスに入って、ピッチャー見て体ひらいて背中そって入るというのはある程度固めています。色々なことを考えて込めているので、ずっとやっています。あとは練習や試合に行ってグラウンド入る時は絶対左足から入るというのは、高校の時からずっとやっています。
若林:すごくしょうもないですけど、試合前に歯磨きをします。それをしたから打てたわけではないですけど、試合前に一回すっきりしたいので。それは、こっちに来てから始めました。フレッシュリーグの頃とかですかね。
――若林選手はスイングスピードについて目標とする数字やそのために取り組んでいることはありますか
若林:入れ違いですけど去年岩見さん(雅紀=H30総卒・現東北楽天)という方がいました。その人もスイングスピードが速く、憧れる部分があって、岩見さんのホームラン記録を越えたいと思っています。岩見さんがウエイトをけっこうやってると聞いて僕も今ベンチプレスを特に意識しながらやっています。胸筋をつけたらスイングスピード上がるのではないかと思っています。
――福井選手の母校、大阪桐蔭高校の西谷監督と慶應の河合主将は高校時代の監督が同じ方(広岡正信氏)です。河合主将と西谷監督に何か共通点などは感じましたか
福井:似てはないですね。でも、西谷先生も人のことをしっかり見るというか、見放さないところがありますし、河合さんも色々な人のことを見て僕にも声をかけてくれたりします。1年でもしっかり話をできるキャプテンで、西谷先生もしっかり話ができたので、人と接する、人をしっかり見るという部分では類似点というか同じようなところがあるのかな、とはまぁ強引ですけど感じます(笑)。
――野球はいつ頃どういうきっかけで始めましたか
福井:幼稚園。
若林:まあそれくらいやろ。本格的にやったのは小学校3年生とかからです。野球のクラブチームに入ったのですが、入りたくて入ったというか、お父さんが野球をやらせたくて入ったら、勝手に好きになってたという感じですね。
福井:幼稚園の年長さんのときです。僕は2つ上のお兄ちゃんが小学校2年生の時について行っていて、気がついたら入っていたという感じです。
――その頃の将来の夢は野球に関係しないことでしたか
福井:いや、けっこうその頃自分自身にセンスを感じていたので、プロ野球選手になるぞという夢は持っていました。でも小学校の卒業式で1人ずつ夢を発表する時に、野球をやっていた子は大概プロ野球選手と言うのですが、僕は甲子園に出場したいですということを言っていました。この頃から甲子園に対する思いはすごく強いちびっ子だったのかなとは思います。
若林:すごいな!僕はなぜかわからないですけど、たまにこれになりたいという夢が出てくるんですよ。それで思っていたのが、保育園の先生になりたいなって。小さい子が好きで。一瞬だけ思いました。でもすぐやめました(笑)。
――なぜ慶應に入学しようと思ったのですか
福井:東京六大学で野球をしたかったという思いが一番ありました。あと、まだ大阪桐蔭から慶應大学にだれも行ったことがなくて、僕のコミュニケーション能力と学校の成績もそこそことってたので、西谷先生に1回受けてみてちょっと頑張って新しい道開いてくれへんかという話をしていただいて、それならやってやろうという気持ちでした。一期は落ちたのですが、二期は受かりました。受けた動機はそういう感じです。
若林:ほとんど一緒です。僕も、(履正社)高校から慶應義塾大学に来る人が全然いなくて、僕が初めてだったので、新しいことに挑戦したいなということです。難しいことはわかってたのですが、もし慶應落ちても人生なんとかなる、と覚悟を決めて受けました。
福井:その割には一期ですっと通ってたけどな(笑)
――実際慶應野球部でプレーしていかがですか
若林:練習時間が長いというわけではないですけど、高校時代よりきついような気がします。A組は午前中練習ですけど、その他の選手たちもテキパキとずっと動いていて、そうなったら自分もしっかりやらないといけないなという気はします。時間に無駄がないように一生懸命ボールを追いかけていたらけっこうしんどいなというのは思います。
福井:僕がイメージしていた大学野球というのは、上下関係があるというか。4・3・2・1としっかり振り分けられている中での1年で、あまりチームに参加していけない、であったりとか4年と1年はなかなか話ができない、というものをイメージしていました。でも、実際入ってみるとそういうのが全くなかったです。1年の僕でもミーティングに参加できたり、発言できたりという感じがあって、これなら自分の色を1年間出していけるな、というのは入った時感じました。今もしっかり出せているのでいいなとは思います。
――普段の生活や授業には慣れましたか
若林:生活は、僕布団とご飯があればどこでも生きていけるので、すぐ慣れました。授業は一生懸命やったらどうにかなりました。レポートなどは高校の時やってなかったので少ししんどいですけど、頑張ってやってます!
福井:高校の時も寮生活してたので、寮入ってのしんどさはなかったですし、学校も遠いですが学生なので当たり前かなという感じで、普通に出来ていますね。
――関東に来て驚いたことはありますか
福井:全然ウケが通じない。突っ込んでも全然返ってこーへんし、突っ込んでほしいのに全然突っ込んでくれへんし、関東人冷たい、というのはめちゃくちゃ思いました。最初2人で「えぇ!?」みたいな感じになりました。それが1番ですね。
若林:たしかに。そこしかない。あと、「~っしょ」っていうのが通じない。関西では先輩に「~っしょ」って言うんですけど、「そうっしょ」とか。それが関西では敬語やと思ってたのに、こっちでは全然敬語ではなくて、ちょっと怒られる。
福井:そうなんです。だから、言語が通じないんですよね。「片しといて」とか僕ら使わない。「なおしといて」と言うので。(関東では)「なおしといて」と言うと、「物を直す」になる。「ほっといて」とかも、「ごみほっといて」って言うと放っておくし。捨ててという意味なのに。というのはありましたね。
――大阪のおすすめスポット、名物はありますか
福井:やっぱり粉ものがおいしいです。お好み焼きはあんまり変わらへんけど、たこ焼きはおいしいと思います。
若林:あとはユニバしかないかな。
福井:梅田の空中庭園もいいですね。あべのハルカスもけっこういいですよ。
若林:ユニバで思い出したんですけど、こっちの人はUSJって言うんですね。なかなか理解できないですね(笑)セブンイレブンのこともセブンって言いますよね?イレブンどこいった?俺らセブイレなんで。
福井:セブンとイレブンでセブンイレブンじゃないですか。ウルトラセブンみたいになってますやん。
若林:いやいやいや、違うから(笑)
福井:あと、マックのことも、マック言うたらパソコンのMacのことやろ。マクドです。
若林:ローソンは?
福井:ローソンは…LAWSON?ローソンはローソンやな。
若林:ローソンはローソンやな(笑)
――オフの日の過ごし方は
福井:若林のオフは濃密ですよ。濃いです。
若林:いやいやいやいや。体調にもよりますけど、体調が悪ければ部屋でずっとTSUTAYAで借りてきた映画を観ながら過ごします。調子がいい時は福井くんと買い物に行ったりとかします。
福井:そうですね、よく行きます。僕は本当にゲームが大好きなので、ずっとゲームしてます。この前のオフも新潟から帰ってきたので、時間があまりなかったんですけど、朝の10時くらいから16時くらいまでぶっ通しでゲームしていました。
――野球部の中で特に仲がいいのは
福井:僕は小原和樹さん(環3・盛岡三)と仲がいいです。僕の兄貴分なので。ずっと一緒にいる感じです。
若林:みんな仲いいので。そんな誰か1人と、とかはあまりないです。
――ではよく話す人は
若林:それは丸谷くん(浩太郎=総1・國學院久我山)ですね。
福井:彼は全国区です(笑)。
若林:ツッコミの天才です。ボケツッコミが面白くて。1年生の中でトップです。
――今1番したいことは
福井:僕野球観戦行きたいです。ずっと野球する側なので、逆に客観的に外から見て感じることないかな、というのが今したいことです。
若林:今は絶対にできないですけど海外に行きたいです。台湾には行ったことあるんですけど、すぐそこなんですよ。だからあまり文化の違いなどもなくて。アメリカとかに行って、どんな考え方やどんな文化があるかを知りたいです。
福井:180度違う概念が欲しいわけや。
若林:そう。日本人がどれだけマイナス思考なのかとかを僕は知りたいです。
――慶應でも他校でも意識している選手は
若林:明治大学の竹田(祐=政経1・履正社)という高校の同級生です。1年からずっとリーグ戦メンバーに入っててリーグ戦で投げてているので、そいつから打ちたいです。
福井:僕は早稲田の徳山(壮磨=スポ1・大阪桐蔭)です。ずっとバッテリー組んでたので。仲間意識も強いですが対戦したいという思いも強いです。
――春のリーグ戦はお2人とも代打でヒットを放ちましたがその時の気持ちは
福井:シンプルにうれしかったです。
若林:僕は初ヒット打った試合が初めてリーグ戦のメンバーに入れた試合で、しかも早慶戦で。最後のギリギリでメンバーに入って打てたというのは、福井と一緒でシンプルにうれしいです。
――昨シーズン全体的に振り返って
福井:僕は若林と逆で、最初ベンチに入って最後はずっと入れなかったので、もっと変えないといけないなというのを感じました。個人としての能力アップと、チームとして福井に何が必要とされているのかというのをもっと考えてやれればよかったのではないかと春振り返って思いました。
若林:僕は日本選手権(全日本大学野球選手権)で結果を出せなかったです。それまでフレッシュリーグ やリーグ戦の代打でいい成績を修めてたのですが、日本選手権で全国のいいピッチャーと対戦して全然自分の技術が足りなくて通用しなかったと感じました。球速の早いまっすぐに振り負けていたというのがあるので、次の秋のリーグ戦には早いまっすぐに対応したいなとは思います。
――夏に強化したことは
福井:すごく太ってたので、7キロくらい落として、動ける体を作りました。
若林:自分の持ち味のバッティングを生かすためにウエイトもしっかり取り組んで体づくりと、バット振って力をつけました。
――秋の目標を教えてください
福井:このままやったら絶対メンバーに入れないので、まずベンチに入ること。もちろん個人の目標も大事ですが、やっぱりチームとしてリーグ優勝、ワセダに勝つ、日本一、という3つの目標を掲げているので、そのために何か自分にできることをやりきる、それだけだと思います。
若林:僕も一緒で、今AかBかもわからない感じなので、リーグ戦が始まるまでにしっかり練習試合などでアピールして、リーグ戦に入って、次の秋は3連覇がかかっているので、その3連覇に何か貢献できるようになりたいなと思います。
――ファンの方へ一言
福井:慶應に染まった福井を出そうと思うので、応援お願いします!
若林:さっきも言ったように、ここで打ってほしい時の一発を打ちます!
――ありがとうございました!
この取材は8月18日に行ないました。
(取材:小嶋華)
♠福井 章吾(ふくい・しょうご)
大阪桐蔭高を経て、環境情報学部1年。内野手。主将・捕手として出場した3年春の甲子園で高校2度目となる優勝を果たした。夏では悔しい敗戦を喫し、今年の中川主将に言葉を託したことでも話題になった。1㍍68、82㌔、右投左打
♠若林 将平(わかばやし・しょうへい)
履正社高を経て、環境情報学部1年。外野手。主将・4番として出場した3年春の甲子園で準優勝。8回に同点劇を呼び込む追撃の適時打を放った。夏も県大会準決勝で大阪桐蔭と接戦を演じたが、敗れた。1㍍81、90㌔、右投右打