秋春連覇を達成し、全日本大学野球選手権でもベスト4まで駒を進めた慶大野球部。慶大史上2度目の3連覇をかけた秋のシーズンに向けて、注目選手に話を伺った。あと一歩に迫った日本一へ、陸の王者の進化は止まらない。
―リーダーになっていくような
人材を育てていきたい―
秋季開幕前特集最終回の第6回は大久保秀昭監督へのインタビューだ。昨季は野手のレギュラーが6人入れ替わった新チームを率い、見事46年ぶりとなる秋春での連覇を果たした。秋リーグのカギを握る選手や春季リーグ後に行なった様々な取り組みなど、”常勝軍団”を率いる指揮官にお話を伺った。
――春季リーグを振り返って
前評判が高いわけではなかったのですが、頑張って優勝を勝ち取ることができて良かったです。
――連覇を果たすことができた要因は
「チーム力」をさらに上げていくというところで、河合(大樹=総4・関西学院)や泉名(翔大郎=商4・慶應志木)を中心としてよく頑張ってくれた成果かなと思います。彼らの頑張りが勝利につながっていますね。こちらがやりたいと思っていることをきちんと理解して、その上でさらにより良いものを実現していこうとしてくれています。チームをまとめる上で大変なことも多いと思いますが、頑張ってくれていますね。ですが、3連覇に向けて、さらにチームが一つになっていかないといけないなとは感じています。
――春季リーグのMVP選手を挙げていただくと
髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)と郡司(裕也=環3・仙台育英)ですね。キーマンに挙げていた2人が投打に頑張ってくれたので、評価したいと思います。もちろん、他の部員も含め、全員が頑張ってくれました。
――全日本大学選手権について
昨秋はリーグ戦の優勝における達成感もありましたし、その次に向けての準備や心構えが十分でないまま終わってしまったので、「同じ過ちを繰り返さないようにしよう」と言っていました。日本一を目標にしていましたが、最後は投手の数が足りなくなってしまいました。もったいなかったですね。日本一を目指すことができるチャンスはなかなかないので。そういった意味では、投手陣にもうひと頑張りしてほしかったなという気持ちはありますね。ですが、そもそも佐藤(宏樹=環2・大館鳳鳴)や関根(智輝=環2・城東)といった1・2番手候補を欠いた中での9勝ですから、意地を見せてくれたとは思います。
――台湾で行われた世界大学野球選手権大会では、侍ジャパン大学日本代表(六大学選抜)の監督として指揮を執られました
六大学選抜ということで慶大の選手も多く入っていましたし、各大学の監督さんも一緒だったので、安心してやらせていただくことができました。選手たちも頑張ってくれました。慶大なら、特に郡司ですね。自分の力をいつも通りに出してくれました。河合も大学初本塁打を放ってくれて、大学選手権で首位打者となった勢いそのままに頑張ってくれました。河合は本当に成長しましたね。一皮も二皮もむけて、良い選手になったなと思います。卒業後に野球を続けないのがもったいないくらいです。六大学選抜ではありますが「日本を背負う」ということで…今回の結果が日本のランキングに多少なりとも関係すると聞いていたので、優勝することができてよかったです。代表に選ばれることを光栄に思うと同時に、選手はそれにふさわしい選手でなくてはいけないと思います。
――夏季のキャンプについて
テスト休みが長かったので、「野球力の回復」という感じでした。量をこなしながら、こっち(下田)が酷暑だったので、運よく北海道の涼しい中で練習を積むことができました。良い時間を過ごせたかなと思いますね。
――普段からどのようなことを意識しながら選手たちに声を掛けていらっしゃいますか
調子の良し悪しも当然見ますが、見ていて普段とのちょっとした違いを感じたときに声を掛けるようにしています。率直に感じたことをそのまま伝えるようにしていますね。なので、代打を出したりメンバーを変更したりすることも、僕からしたら必然的なことなんです。単なるひらめきではなく、毎日見ているからこその、ある程度の確信を持った上で判断です。実際に結果を出してくれることも多いですし、選手たちは期待通りの働きをしてくれます。河合の成長もそうですが、「瀬戸西(純=政2・慶應)はこの1年で力がついてきたな」と感じたり、「この選手はここまで頑張れるようになったな」と思ったりすることはとてもうれしいです。また、心配していた部員が学生スタッフとして一生懸命にチームのことを考えて行動してくれていることもうれしいですね。
――TEAMMATES事業で8月から岩田遼さんを部員として迎えられたことをはじめ、幅広い活動や取り組みをしていらっしゃいますが
僕たちの一番の目標はもちろん「リーグ戦での優勝」ですが、あと2つの柱が「地域貢献・社会貢献」と「国際交流」です。僕はオールスターの方に行っていて彼の初日の練習にはいなかったのですが、これは2つ目の「社会貢献」につながることだと思っています。また、部員たちが自らいろいろなことを気づけるような場面が増えてきていますが、これはチームとして良いことだと思いますね。そういった中で、地域への貢献の一つとして清掃をしていることなどを下田の地域の方から表彰していただけました。「見ていてくださっていたんだな」と嬉しかったです。3つ目の「国際交流」については、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学との交流だったり、アメリカへの遠征だったり…。こういったことが少しでも部員たちにとって何かのヒントになればいいなと。人として成長し、社会に出たときにしっかりとしたリーダーになっていくような人材を育てていきたいと思っています。「視野を広く持つ」ということが最終的には野球にもつながってくると思います。
――オープン戦を通して、現在のチーム状態はどのように感じていらっしゃいますか
オープン戦の成績自体は昨年くらいから勝率も高くなっていますし、内容も良くなっていると思います。投手陣も、誰が投げても試合をきちんと作っていけるようになってきています。「KEIO」を背負う以上は、どんな場面でも慶大の歴史を感じながら一生懸命に取り組んでほしいです。そういったものは今、できはじめていると思います。スローガンの一つである「敬意」にもつながっていますね。みんなよくやってくれています。
――秋季リーグに向けての注目選手は
投手陣だと髙橋佑樹(環3・川越東)です。最近、球の強さを感じるので、大いに期待しています。野手陣だと内田(蓮=総4・三重)ですね。4年としての役割はもちろん、打線の中でも内田の役割は大きいと思います。もちろん、河合や柳町(達=商3・慶應)、髙橋亮たちは持っている力を存分に発揮してくれたらいいと思います。その上で、先ほど挙げた2人(髙橋佑、内田)が目立つ成績を残してくれたら、ぐっと優勝に近づくのではないかなと思います。
――最後に、秋季リーグに向けての意気込みを
(昨秋から昨春にかけての)「連覇」というのは代替わりを経てのものだったので、とても難しいこととして評価できます。それを成すことができたチームがこの秋で成績を落としてしまうことは非常に残念なことなので、「さらに強くなったね」と言っていただけるような戦い方をして勝ちたいと思います。3連覇を狙います。
――お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!
このインタビューは8月29日に行いました。
(取材・川下侑美)
6回に渡る開幕前特集インタビューは今回が最終回です。
取材にご協力いただいた慶應義塾大学體育會野球部の方々、ありがとうございました。
そして読者の皆様もお読みいただきありがとうございました。
今季は慶大史上2度目の3連覇を目指すシーズンです。
神宮球場でのより一層のご声援をよろしくお願いいたします。