【ラグビー】仲宗根組始動特集⑦“情熱の新指揮官” 田中真一監督

仲宗根組始動特集の最後を飾るのは今季から指揮を執る田中真一監督(政卒)。昨年は母校であり慶大の付属校でもある神奈川・慶應高を花園の舞台に導き、3回戦まで進出した。今季はその実績を買われて監督に就任し、慶應高監督時代からタッグを組む野澤HC(政卒)と共に熱心に指導に当たる。誰よりも熱い思いを持つ監督に就任の経緯から現在のチーム状況、今年の目標まであらゆることを語っていただきました! 

今季からチームを率いる田中監督

主体性・個性を重んじた指導を

  

――監督就任の経緯をお願いします 

僕が監督に就任することになったのは正に晴天の霹靂でしたね。2008年から2010年まで慶應高校で監督をしていました。最終年には神奈川県から2校出れるということもあり花園に出て、2回戦で長崎北陽台に勝って、次の3回戦で1月1日に元旦早々残念ながら国学院久我山高校に負けてしまいました。1月2日に日吉に帰ってきてけじめをつけるつもりでした。高校の監督で初めてフルタイムでやって、環境が整った中で3年間やったので。そうしたら1月8日にOBの会長と強化委員長から声が掛かって、監督就任の要請を受けました。第一声は断りました。3年間全力でやったこともありましたし、次のステージに向かうということもあったので。しかし、自分の曾祖父がラグビーを伝えた田中銀之助であり、今日自分がここにあることは塾蹴球部のお陰であると思っているので、塾蹴球部に対する恩返しの気持ちもあって1月15日に受けることにしました。 

――野澤HCの就任は監督ご自身が希望されたんですか 

OB会も野澤をコーチングスタッフに入れたいという希望もありました。最終的には田中に一任するということになったんだけれども、自分としては慶應高校の2年目の時から野澤にはスタッフに入っていてもらっていて、慶應‐神戸製鋼と同じ文化で育ってきたこともあって気心の知れた仲でもあるし、彼の指導はとても素晴らしいので自分の片腕というかHCとして入って欲しいということで僕から声を掛けました。 

 

今季は野澤HC(右)と共にチームを率いる

――その他のコーチ陣は 

そこは野澤HCと相談しました。ただ、あまり一つの世代に偏ることなく、多世代に渡ってお願いしようと。慶應のラグビーはラグビー自体のルールが変わっていることもあって時代時代によって変わっているんですよ。ラグビーもダイナミックに変わったのはアマチュアリズムからトップリーグでプロ化して、という変遷もある。その中で慶應のラグビー自体も日々進化をしてきている。進化をする中で変わってきたものと変わってはならないものがある。僕が大事にしたいのは変わってはならないものと変えていかなければならないものの分別をしっかりつけていくこと。そうするには多世代に渡るコーチに集ってもらって、慶應の源流を大事にしつつも新しい技術・指導方法を取り入れていけるように、なるべく多くの世代のコーチングスタッフを選んでいきました。 

――今の学生たちの色は 

本気でラグビーを好き、愛する気持ちは変わらないと思うね。今の学生の方が僕たちの時代と比べてメディアが発達したりだとか、インターネットの普及もあって、ラグビーに対する知識が非常に高いと思う。ラグビーに対する基本的な知識は今の子たちの方が優れていると思うね。ただ反面、人数が多くて、僕らは80~90人くらいだったんだけど150人くらいいるので人と人、選手と選手のつながりが希薄になっているというのはあるね。今は一つの部屋で分かれて2人らしいけど、僕らの頃は合宿所も一部屋に6人で長屋文化のような感じになっていて、縦のつながり、横のつながりといった連帯感が濃厚だったかな。今が無いというわけじゃなくて、環境的にも人と人の距離が近くて、チームとしての一体感は僕らの時代の方があった気がするね。 

――高校と大学の指導の違いとは 

端的に言えば、高校生は昨日まで中学生だった子からもう少しで大学生になる子までいるので、子供から大人になる転換期を指導することになるんだよね。ある程度教育者的な立場を持たなければいけないと思います。ただ、大学生というのは基本的に成人を越えている選手が多いので、大人として扱う、彼らの主体性・個性を重んじた指導をするべきだと思います。大きな違いはどこですね。 

――大学で指導を始めての印象は 

みんな熱心ですね。第一印象はみんなが意欲的に練習に取り組んでいること。林監督から僕に代わって、林監督はコーチングスキルを含めて知識も豊富な本当にプロフェッショナルな指導者だと思う。選手たちは林さんから僕に代わって、どちらかというと「大丈夫かな」と心配する面もあると思うけれども、今まで頑張り切れなかった子たちが芽を吹き返す可能性もある。僕はフラットに見ようと思っていて、過去の実績よりも見ているものを大事にしていきたいですね。この春先から厳しい練習が多くなっているんだけれども、非常に可能性を感じます。ダイヤの原石と思われる選手が沢山いると思います。 

――林監督とお話は 

監督就任前にしましたね。慶應は1期2年、最長2期年というのが決まっているので監督が代わるのは仕方のないことですし、僕は監督が代わってどんどん新しいものが入っていく新陳代謝が起こることは良いことだと思います。ただデメリットとして、選手が戸惑ってしまう。今の4年生からすると3年間は林監督に指導されたのに、最後の大事な一年だけ監督が代わるのがとても不安があると思います。なので、僕は林さんの指導の延長戦上で指導をしなければいけない。林監督には何度もお目にかかり、お話を伺い、その中で林監督が大事にされてきたことをきちんと継承しつつ、つなげていくことを心がけています。 

 

今は徹底的に個人の力を高めていく

  

――主将、副将をはじめとした幹部の選手たちと話した印象は 

最初は様子見だったと思いますね。僕は仲宗根君とも栗原君とも話すのは初めてだったし、他の人とも初めてでした。やっぱり初めての人、というのはどうしても探り合いから入ってしまうんですけれど、僕はそこで腹を割って僕が考えていることをぶつけました。そして日が60~70日経って、今は大分相互理解が高まったと思いますね。 

ダイヤの原石の代表といえる活躍を見せる設樂(経2)

――今のチームの雰囲気は 

4月9日、30日にセレクションマッチという位置付けで試合をしました。非常に活気があるという印象を受けましたね。僕はチャンスを与え続けたいというのがあって、選手を先入観で見ることは一切したくはなくて、目の前の姿勢を大事にしたいですね。頑張れば上のチームに行ける、という部内の競争を激化しようとしていて、普段の練習から緊張感を持たせようとしています。今はみんな集中力があって、緊張感があって、熱のある練習ができていると思いますね。メンバーもダメだった人を下げるのではなく、良かったメンバーを上げる、という風に固定せずに週替わりでやっています。なので打ち合わせ等で抜けることはありますが、なるべく全てのグレードの練習を見ようとしています。マザーテレサの言葉で「愛の反対は無関心」と言いますし、やはり見てあげることは大事ですし、そうしないと気持ちが離れていってしまう。慶應の良さは部員150人が一つの方向を向くことが、最後の土壇場で出る結束力であり人間力であると思います。一人一人がモチベーションを高くするために、一人一人を見ることは個人のため、ひいてはチームのためなので、これからも選手に対して声を掛け続けていきたいと思います。 

――これからは対外試合が絡む日程となるが、練習で変化はつけていくか 

基本的にはないですね。この春は強い個人を作ろうと思っていてパワー、フィットネス、基本スキルなどのこの力を高めることがこの春に考えていることです。試合に勝つことを追いかけるのは夏以降と思っていて、今は徹底的に個人の力を高めていこうと思います。もちろん勝敗もありますが、個人が相手より勝っていたか、対峙できていたかをチェックしていきたいです。私たちが掲げた“超高速ラグビー”に向けてどういうプレーをしていくのかの落とし込みを今やっていますね。 

――チームの実力を客観的に見ると 

まだ分からないですね。まだ対外試合をやっていないし、他校も戦力は変わりますし、どこも原石と言われる選手たちが出てくるんですよ。本当のチームは常に日進月歩で進化し続けていく。春やっても秋どうなるか分からない、秋やっても冬どうなるか分からない。今の立ち位置は分からないですけど、去年慶應はFwdでやられてしまった。運動量の多いラグビーをして、走れるFwdだったけれども、サイズ・力で負けてしまった。そこをどうするかは考えて取り組んでいるところではあります。 

――春の試合ではFwdの勝負をどんどん試していく 

ガチンコ勝負だね。真っ向勝負して勝てたのか、と。試合は文字通り「試し合い」なので、今まで取り組んできた自分の力を試すということで、取り組んできたことをぶつけていきたいですね。 

精神的にも実力的にも欠かせない大黒柱・仲宗根主将

――現時点で「欠かせない選手」というのは出てきましたか 

欠かせないというか、多くの意味で精神的な主柱はキャプテンの仲宗根ですね。今年のチームは仲宗根のチームです。彼はこのチームに欠かせないスキッパーなので、彼がどうあるか、どういうチームを作るかが重要ですね。彼はどちらかというと姿勢で引っ張るタイプでそのキャプテンに対してどれだけ選手がついていくか、また、各選手がキャプテン同等の意識で引っ張っていけるか。そこに今年のチームの浮沈が掛かってきていると思います。 

――春は遠征試合が多く、下のグレードの試合を見れない機会も多いと思うが、そこはどのようにカバーしていこうと考えているか 

鹿児島と日吉の試合は同時に見れない、のように物理的に不可能なことはありますからね。僕は良いチームを作るにはコーチングスタッフのコミュニケーションがとても大事だと思っています。自分たちが何を大事にして、何を指導しているのかみんなが共有化していくことが重要で、「田中はこういう面を大事にしている」というのが分かってきていると思います。週末の練習でも僕は留守であってもシニアは野澤を中心に、ジュニアは林洋光コーチを中心にやっていて、練習の前と後にはコーチングスタッフで必ずミーティングを行うんです。きちっとレビューをして、良かった選手をどんどん上に上げるという形でやっているので自分がいなくてもきちんと評価をできると思うので、遠征が多いことは影響は無いですね。 

――フルタイムの指導者は田中監督お一人だと、学生コーチの存在は大きいと思うが 

そうですね、とても大きいです。今、大橋君(環4)と長井君(経3)の二人が学生コーチとしてついていてくれますが、本当に良くやってくれていると思います。自分たちの次同級生や上級生を指導、時には叱咤する立場にならなければいけないわけですよ。チームが勝つために一歩上の視点で見ていかなければいけないわけで、戸惑いもあると思います。だけれども一生懸命チームが日本一になるために貢献してくれていて、模索をしながらやっていると思いますが、彼らがいるからこそ指導が行き届くと思っています。一人で150人全てを見ることは物理的に限界なので、彼らがいることで非常に助かっていますし、このチームというものはできていると思います。 

学生スポーツであることを忘れてはいけない

  

――超高速ラグビーに向けての課題は 

まず、超高速ラグビーとは何なのか、そして超高速ラグビーを実現するにはどうすればいいのか、というのを考え切れていないんですね。コーチというよりも選手たち自身が。今年のチームは「こういうラグビーをするからこういうプレーをしなさい」というのを選手に与えるのでなく、考えて行動することを大事にしてもらいたいんですね。超高速ラグビーは選手たちの希望でしたが、具体的にどうしたいかにはまだ迷いがある。実現のために何をすべきかといのをもっともっと深く掘り下げて考えていかなければならない。やりたい理想のラグビーは、シンプルにボールを動かす運動量の多いシンプルなラグビーということで、大分みえてきてはいるけれども、どうアプローチをしていけばいいのか細かいディテールについて落とし込みができていないですね。 

――Fwd、Bksそれぞれの強化のイメージは 

Fwdは安定したセットプレーですね。スクラム、ラインアウトの部分です。自分たちの権利のボールを確実に自分たちのものにするのが一つの課題だと思うので。ただ、もちろん一試合あたりのセットプレーの数はブレイクダウンの数と比べると数は少ないですし、接点の練習をもっとした方がいいのではないかと言われるかもしれませんが、物事の起点というのはセットプレーから始まるので安定したセットプレーは大事ですね。BksはFwdが強い思いを持ってつないだボールを必ずゲインラインの向こうまで持っていくこと。スコアにつなげることを全うできるBksをつくりたいと思っています。ラグビーは後ろにボールを回しながら前に出るというある意味理不尽なスポーツなんですよね。最低限ゲインラインの向こうまでもっていくのはBksの責任だと思います。あとはBks、Fwd共通に1対1のディフェンスで相手を必ず仕留める力強いディフェンスもテーマです。 

――Fwdの強化は野澤HC中心ということだがBksの強化は誰を中心にやっていくのか 

林監督の最終年にもやっていて、野澤と同期で日本一になった時のCTBである東京ガスの田中豪人君を中心にシニアチームの強化を行っています。もう一人その時のWTBだった浦田修平君も中心の一人ですね。田中君はSOの経験もあるし、コーディネーターとしてのスキルもあるので、Bksがどのように組み立てていったらいいのか指導してもらっています。全体的にハンドリングスキルを高めていくのと、前を見て状況判断してプレーを選択していくプロセスを重点的に指導しています。 

――田中監督自身はスキルのどの点を中心に指導していこうと考えているか 

僕自身は基本スキルを大事にしたいと思っています。強いチームと弱いチームは突き詰めていくと、最後はミスをするかしないかなんですね。なんでミスをするのかというと、ハイプレッシャーになっていくとミスをしがちになってしまうんですよ。ハイプレッシャーの中でもミスをしないベーシックスキルを身につけようと、ハンドリングスキル、個々人のタックルスキル、ブレイクダウンのスキル、この3つのスキルはきちんと身につけようとしています。あとは前を見る力、判断をする力を身につけようとしています。その先は応用、活用編になってくるので、そこがきちんとできていないと小手先のラグビーになってしまうので、そこが大事にしている点ですね。 

――田中監督の指導のモットーは 

高校の時もそうだったんだけど、僕らは学生スポーツであることを忘れてはいけないと思います。学生スポーツというのはラグビーをしてお金をもらっているチームではない。そういったチームであれば試合でトライを取る、スコアをすること、チームが勝つことが最大の目的で、チームが勝てば自分のサラリーも増えますから。学生スポーツの源流というのはそのスポーツを通じて人間を育てること、人間力養成の場が慶應義塾の体育会だと思います。なので、ラグビーを通じて強い人間を育てることが目的で、力強い人間を育てて試合に勝つことにつながり、それが日本一につながっていくと思います。目の前の苦しい、厳しい練習を打ち破る、乗り越えること、真っ向から当たっていき、力強い人間を作ることが僕のチームを作るに当たってのモットーですね。強い個人を作らないと強いチームはできないと思います。 

――そこは今年の春にもつながっていく 

去年は大学選手権で慶應は帝京に負けてしまって、振り返ると個人の力で差で負けてしまった感がある。組織では慶應は勝ったと思います。1対1の勝負で勝てる個人を作るのが大事で、衝撃は質量×スピードなのでいくらスタミナやスピードがあっても質量が少なければ相手に対する衝撃は薄れていく。コンタクトはものすごくエネルギーを消費するので、体が小さいのにコンタクトを繰り返していくとダメージが溜まって足が止まってしまったりもする。なので、まずは質量を大きくして、その上で走れる大きな個人を作っていきたいですね。強い個人を作るという自分の指導方針もある一方、チームに必要なことであると思います。 

テンポアップが持ち味のSH猪狩

――HBは去年までの試合経験が少ないポジションだと思うがHBの強化のイメージは 

経験を積ませるしかないですね。百聞は一見に如かずで、ラグビーの試合を自分でこなして感じてみないと分からないことはありますし、経験を積まないと力は付かないんですよね。HB団に求められるスキルはSHならパスワーク。超高速ラグビーで大事なのはSHがいち早くポイントに行って、ボールを捌かなければいけない。それが大前提になるので。SOでは前を向いて、どこに相手のスペースがあるのか、どこが相手の弱点なのか、どこに自分たちとのギャップがあるのか見極めて、チームに伝達し、そこを整備していくかを求められる。それは机の上でもグラウンドの練習でもできないので、経験を積ませなければいけないと思っています。 

――部内マッチで中村圭介選手(総4)がSOを務めていたことは意外だったが 

彼は前を見る力がとてもあって、ハンドリングスキルが高い。ただ、ディフェンスのスキルはCTBからSOになったこともあってまだまだですし、キッキングスキルもまだまだですね。ただ、前を見る力とハンドリングスキルは卓越したものがあって、その二つはテンポの速い超高速ラグビーをするのに当たってとても大事な要素なので彼をSOで起用しました。本来ならば宮川君(環2)なんかがSOにはいるけれども、結局大事なのはいるメンバーで戦うしかないということ。そうなるとチーム力全体を上げなければいけないと思います。中村圭介にも経験を積んでもらって、体得をしてもらいたいと思います。今年は去年まであまり試合に出られなかった選手たちが、一生懸命頑張っているね。4年生が頑張っている姿はチームに活力を与えているし、それがチームのけん引力になっていて、チームの良いムードを作っていますね。去年の帝京では鬼海君がずっと学生コーチをやっている中で、怪我があって最後に抜擢されて、最後にあれだけ大学選手権で活躍した。だからどこにチャンスが転がっているか分からないんですよ。そういう意味でも、最後の最後まで4年生には諦めないでやっていってもらいたいです。 

――コンバートは監督の判断ですか 

そうですね。僕と野澤で相談して決めました。もちろんCTBに良い選手が沢山いるということもありますが。もちろん中村圭介をCTBで出すことも考えていますよ。 

今自分たちがラグビーをできていることに対して感謝したい

  

――今年のスローガン「for」の印象は 

ラグビーらしくもあり、慶應らしくもあって良いと思いますね。学生たちに一番大切な要素でもあると思います。人間が一番力が湧くのは自分のためじゃないんですよ。自分のためだとどこかで諦めが出てきてしまう。仲間のために、家族のために、というのは限界を超えたところまで力が出る。○○のためにというのは計り知れない力を生む。もちろん自分のために、日本一のためにということはあるけど、「for」というスローガンを掲げたことはとても良い事だと思います。この「for」というのをもっと学生たち、選手たちには突き詰めて考えて欲しいですね。絵に描いた餅にするのではなくて、何のための「for」なのか。言葉を言葉にするのではなくて、本当に「for」というスローガンを体現して欲しいと思います。 

――春シーズンの展望は 

展望は分からないですね。やってみなければ分からないですし、今の段階でどうなるかなんて分からない。ただ、試合に勝った負けたで一喜一憂少するのではなく、今取り組んでいることをできているかという評価軸をしっかり持ってもらいたいですね。 

――ターニングポイントとなる試合は 

全ての試合が大事になってくると思うので、特にどの試合が大事だとかは考えていないですね。特に春先は課題を見つけることが一つの目的だとも思っているので、全ての試合がターニングポイントだと思いますね。大事なのは今週できなかったことが来週できるようになるかどうか。そして次の試合でできて、その次の試合でできなかったらどうしてだと突き詰めていくことが重要ですね。一戦一戦が良い経験の場であり、学びの場である、という位置付けでやっていきたいと思います。 

――コンディション面の不安は 

今は試合より練習の方が厳しいから。試合で怪我してしまうのは、日頃練習でそういうことをしていないので怪我してしまうのであって、日頃から厳しい鍛錬をしてむしろ試合が楽くらいになんないと意味がない。試合が厳しくて試合で怪我してしまうのであれば、日頃の練習が足りないということ。相手が付くといってもたかだか80分なので、日頃はそれよりも激しくて長い時間をやっていけば、試合が楽になっていく。そう感じないのであれば日頃の練習が足りないんだと思いますね。もちろん選手の試合をやった後には乳酸を抜くように、選手のコンディショニングもしっかり意識していきます。トレーナーとコンディショニングコーチがいるので、その辺のコントロールもしつつ、春は週末の試合に向けてコンディショニングを整えるということはしていかないつもりです。練習の延長線上に試合がる、試合という練習があると僕は考えています。 

――1年間での強化のイメージは 

春から夏にかけては徹底的に強い個人を作っていくことに注力していきます。夏以降にチームとして組織として何をしていくかの落とし込みをして、浸透を図っていきます。そして秋のシーズンを迎える、というのがざっくりした強化のイメージですね。 

――年間目標をお願いします 

目標は選手一人一人が慶大蹴球部で過ごして良かったな、と思えるように充実した日々を過ごしていってもらい、力強い人間になって欲しいです。人間力を高めていきたいですね。そして高まった人間力を組織として終結させて、力がより強くなっていく。そして戦っていくことで一戦一戦勝ち上がっていく。まず自分に勝ち、そして相手に勝つ。自分に勝てなければ相手に勝てませんから。強い自分、強い組織を作って相手に勝って、一戦必勝でやっていきたと思います。最初からJr.選手権優勝、対抗戦優勝、大学選手権優勝を頭から掲げるのではなくて、目の前にある一戦に勝っていくことで先にある優勝に向かっていきたいです。 

最後に伝えておきたいことがあります。今回東日本大震災があって当たり前の生活が当たり前ではなくなってしまった。いつもと同じ昼下がりがいつもと違ってしまった。今、自分たちが当たり前と思っていることは当たり前じゃないかもしれない。今こうしてラグビーをできていること、恵まれた環境で暮らせていることに対して感謝をすることだよね。感謝の気持ちを持つことは凄く大事で、感謝というのは究極的には「for」だと思うんですよ。誰かのために――というのは感謝。ありがたいと思うからこそ「for」である。僕は「for」を突きつめて、今自分たちがラグビーをできていることに対して感謝したいと思います。なので、日の目を見ないところでチームを支えてくれるマネジャー、トレーナーの方たち、ご父兄、OBなど様々な塾蹴球部を支えてくださっている方々がいる。そういう方たちのためにも頑張るというのが僕は今年のチームで大事にしていきたです。 

By Tomoki Kakizaki 

 

今回のインタビューをもちまして、仲宗根組始動特集「for」~全てはチームのために、勝利のために~は終了します。お忙しい中取材を受けてくださった監督、選手の皆さま、マネージャーの皆さまにこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

また、今年度も慶應スポーツでは慶大蹴球部を精力的に取材して参りたいと思っております。読者の皆さまに慶大蹴球部の姿を少しでも多く、早く、正確に伝えていけるよう、日々努力を続けていきますので、何卒よろしくお願い致します。

慶應スポーツ蹴球班一同

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