2017年秋季・2018年春季と慶大が連覇した東京六大学リーグ。慶大史上2度目の3連覇という偉業を目指す慶大の前に、五大学が立ちふさがる。今季は対戦校各大学の主将と4年の選手2人にお話を伺い、ラストシーズンに向けての意気込みを伺った。神宮をこれ以上、慶大の独壇場にはさせない。
第6週で対戦するのは立大だ。春季リーグは絶対的エースと一発のある打線を擁し、慶大明大と激しい優勝争いを繰り広げた。一足先に脱落してしまったものの、慶大と1勝の差で2位。勝ち点の差こそあったが好成績で秋も期待されていた。しかし今季は既に早大法大に勝ち点を奪われて、2カードを残し優勝を逃す結果となった。それでも勢いに乗れば止められない立大を侮ることはできない。立大を持ち前の明るさでけん引する主将の松﨑健造選手(文4・横浜)、今季打率.393を残している種田真大副将(経営4・大垣日大)、ここまで通算80安打・立大屈指のバットマン飯迫恵士選手(社会4・神戸国際大附属)にインタビューを行った。
松﨑健造主将
――春のリーグ戦を振り返って
優勝を目指した中で2位だったので悔しいシーズンでした。
――印象に残った試合は
慶大戦は1勝1敗で3戦目に慶大が対策してきたのに自分たちは同じ負け方をしたので、徹底力の差を感じて印象に残っています。
――春の出場機会について
最初けがをしていて、早大戦ではシートノックも入っていない状態で、春は代打かなと思っていたんですけど試合に出させてもらって監督には感謝しています。
――ご自身の打撃はどうでしたか
四球が多かったのでそこは良かったと思います。
――スローガン(Go all out! Be aggressive.)の達成は
序盤は良かったんですけど最後までやれたかっていうとやれてないと思うので、課題かなと思います。
――主将として迎えたリーグ戦でしたが
去年は試合で活躍することだけしか考えていなかったんですけど、キャプテンとなるとそういうわけにはいかないのでいろいろ考える日々でした。
――主将として心がけていることは
部員が多いのでなかなか一体感を生み出すのは難しいんですけど、いろんな人と多くコミュニケーションをとるようにしています。
――春のチームの雰囲気は
春は良くなかったというのがあって、ミーティングを開いてどうしたらいいのかを話したこともあったし、ミーティングを開かなきゃいけない時点であまりいい状態ではなかったのかなと思います。
――チームの課題は
同じアウトのとられ方が続いてしまうのでそこが課題です。
――春慶大と対戦してみてどうでしたか
毎年手ごわい相手でまず投手がいいなというのと、打線も去年ほどの破壊力はないけど一人一人が役割に徹して嫌な野球をしてくるなという印象です。
――慶大の対策は
春のリーグ戦が終わって秋に向かうときに負け越した慶大、明大になぜ勝てなかったのかをずっと考えていて、野手なら変化球の見極めだったりいくつか上がった課題をこれまで向き合ってきました。
――投手陣について
オープン戦通して結構成果が出ているなと感じていて、田中誠也(コミ3・大阪桐蔭)以外の投手も今頑張っているので春よりはいいんじゃないかなと思います。
――野手陣については
野手はいまいちですけどかなり練習を積んで、残り少ないですけど兆しも見えているので、試合が近くても調整するんじゃなくしっかり練習して上手くなれるように取り組んでいます。
――夏の練習を振り返って
今までは量をやることを意識していたんですけど、今回は量をやる中で質を考えたうえで野球をしてきたので考えてプレーすることは得られたと思います。
――秋のチームの目標は
リーグ戦の優勝です。
――個人での目標は
具体的な数字は決めていないんですが相手にとって嫌な選手になり、2番打たせてもらったときには繋ぎに徹したいです。
――秋に向けての意気込みをお願いします
このチームの集大成のシーズンなので優勝できるように頑張ります。
種田真大副将
――春のシーズンを振り返って
個人としてはスタメンで出る試合がかなり多く増えたので、調子をキープするのが難しかったです。規定打席にあと1試合ほど足りず、クリアできたと思うので、ちょっと悔いが残る終わり方でした。チームとしてはここ数年あと1勝すれば優勝というシーズンがあったと思うので、そこをクリアできていないという現状を突きつけられたかなという感じです。
――後半の慶大明大とのカードを続けて落としてしまいました
あのカード(慶大戦)でやられて、一気に崩れたなという感じでした。最後の明治もなんとか初戦をとって、あと1勝すれば可能性はかなり残る展開だったと思うので、そこをもう一つ決めきれない弱さというか現実を突きつけられたという印象です。
――春で印象的な試合は
明治の2戦目の雨の中の試合です。慶應の2戦目もすごい印象的ですね。流れ的にはどちらも悪くなくて、どこかで1点入っていたらよかったのかなと思いますが、あたふたしているうちに突き放される展開でした。結構もったいない試合だったなという印象です。シーズンに2、3試合はあるもったいない試合をどこかでラッキーでもいいので、結果として勝ち切って星を増やすのがあと1勝という壁には大事になると思います。そういうもどかしい試合をなんとか勝ちきれるようなゲーム運びがまだ足りないと思います。
――悪い流れを止められなかったということですか
全体的には止められなかったなと思います。
――いい意味で印象的な試合はありますか
明治の1試合目ですかね。明治の森下がかなり良くて前半は打てなかったですが、6回くらいに自分が二塁打で出たあたりから一気に流れが変わって、同点に追いついて最後は逆転しました。前半の流れからして「立教は打てないだろう」という感じから後半は相手を上手く捉えた感じだったので、あの試合はかなりいい意味で印象に残る試合でした。
――副将として意識していることは
ベンチでは一番気を配るというか、ゲームに対して効果的な一言やパフォーマンスを出すことを考えています。チームが盛り上がるような振る舞いを持てればいいですが、なかなか発揮できなかったかなと思います。
――その部分は松﨑主将を見ていかがですか
そういうところをうまく使い分けられる人だと思うので、すごく頑張っていたかなと思います。その振る舞いをうまくチームに浸透させていかないとダメだなと思いますし、もっと言えば4年が率先してやっている姿勢を出していかないと思います。
――自身の成績は
固め打ちが多かったので、そこで打率が跳ね上がったと思います。全体としてみれば三振が多く、出塁率という面では試合ごとに偏りがありました。今シーズンは全部の試合を通して打率は3割を絶対超えないといけないかなと思いますし、出塁率を5割くらいには持っていきたいかなと思います。
――チームとして打線は粗さもあったと思います
チームとしてストレートに負けないタイミングというのを掲げていて、それは収穫があるシーズンだったのは確かだと思います。それが悪く言えばそれが振りすぎや突っ込みすぎるという面にもなっていました。大事になりすぎてもダメだとは思うので、秋に向けてみんなが意識を高く持って調整していますし、うまくはまればいいかなと思います。
――1番という背番号にこだわりは
こだわりはないですが、1番をつけている以上グラウンドに出てパフォーマンスで引っ張っていきたいですし、それなりの結果を残さないといけないと思います。プレッシャーは感じませんが粋には感じて頑張ろうかなと思います。1をつけた歴代の先輩はすごい方ばかりなので、それに恥じないように頑張りたいです。
――慶大の3連戦を振り返って
投手の差が出たかなというところが印象的です。相手と5分で対戦できる投手の枚数は慶應の方が多いと思います。相手を研究して攻められ方もわかっていましたが、相手の投手陣を打ちきれなかった3連戦かなと思います。逆に初戦と3戦目で田中が投げた中で慶應は徹底して逆方向からセンターに打ち返してきたところに執念を感じました。投手の力の差と勝負所での集中力かなと思います。
――田中誠投手以外はなかなか抑えられませんでした
2戦目に計算できる投手がシーズン通して出てこなかったので、それが顕著に出たのが慶應戦じゃないかなと思います。
――3戦目にはどう挑みましたか
この1勝が優勝を大きく左右するという試合が早くも3カード目で来てしまい、少し意識してる感じがありました。優勝というワードがすごい飛び交っていたので、なかなかいつも通りの雰囲気ではなかったですね。のびのびプレーする立教らしさが出せてなかったかなと思います。
――野手陣は本来の力を出せなかった印象です
変化球を仕留めきれなかったことと、ボール球をよく振ってしまった印象があり、それが三振やゴロに繋がってしまいました。向こうが細かい投球をしてくる以上バッターも最後の細かいところでの勝負を強いられて、大胆に行くよさがある裏目に出ていた、かわされたなという感じです。
――慶應の強さを感じた場面は
一体感というか、勝ちに全員がコミットしているような雰囲気を勝負どころでは感じました。もっと言えば試合前の補助の人や、試合中のスタンドの振る舞いを見ると野球部として優勝するという体制が浸透しているなと感じました。
――慶應で警戒する選手は
バッターでいえば郡司(裕也=環3・仙台育英)、柳町(達=商3・慶應)の前にランナーを出さないことがカギです。それよりも大事なのは投手です。投手陣は六大学の中でも全国の中でもかなりレベルの高い投手陣だと思うので、それをどうやって打つかですね。春はやられているので、同じようにやられないにしたいです。
――投手で意識する選手は
あまり慶應の試合に出てないんですよね(笑)昨年の秋含めても石井(雄也=商3・慶應志木)しか対戦してないと思います(笑)オールスターでは髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)とやりました。誰がではないですが、低めのボールへの対応をどう組み立てていくかがカギになると思います。
――オールスターで話した慶大の選手は
みんなと喋ったりしました。そんな凝った話はしてないです。(松崎)健造は話してるかもしれないですね(笑)
――河合大樹主将(総4・関西学院)と松崎主将は仲がいいですね
どっちかがスパイなんじゃないかなと思います(笑)
――夏にキャンプで取り組んでいたことは
チームとしては4年が今までにないくらいAチームに帯同して練習していたので、それがいい雰囲気を作り出していました。野球に関しては打てなかったり、思い通りの試合運びができていないときにどうするかという最大のテーマを考えました。9イニング通してどうやって流れを持ってくるか、バッティングやポジショニングや守備をみんなで考えて徹底してできました。打てない苦しい試合で最後の勝負になる1点をどうやってとるかという野球を詰めてやりきったキャンプだったので、秋にはしっかりつながるんじゃないかなと思います。
――個人ではいかがですか
僕はずっとバッティングを言われていました。毎日早出か居残りの練習を組まれて、その中でしっかり振り込みをやったので、調子は大丈夫だと思います。
――自身の調子は
むしろいい状態にはあると思います。出塁率5割と打率3割は絶対ほしいです。監督からは4割を狙って打てと言われているので、そのノルマをしっかりクリアしたうえで得点に絡めるようにやっていきたいなと思います。
――秋季リーグの目標を
優勝だけだと思うので、そこを目指して頑張ります。
――最後に、ラストシーズンに向けての意気込みを
自分はこれで野球は最後なので、悔いのないように完全燃焼して、頑張りたいなと思います。
飯迫恵士選手
――春季リーグをチームとして振り返って
結局優勝ができなかったので、非常に悔しかったです。
――チームとして状態などはいかがでしたか
チームの雰囲気などはとても良かったのですが、後半になるにつれて負け出してから、少しずつ元気が無くなってきていたので、そういったところが優勝できなかった要因かなと思います。
――2位という結果はどう捉えていますか
本当に悔しいですね。優勝しなければ意味がないので、自分の中では2位でも最下位と変わりはないかなという感じです。
――慶大戦と明大戦が鍵となるカードだったと思いますが
野手が相手に翻弄されっぱなしで本当に打てませんでした。対応力があまりなかったので、そこが負けにつながったかなと思います。
――慶大戦前までの野手陣の調子は
野手陣の調子はリーグ戦を通してそこまで変わりはなかったです。最初の法政と早稲田の時は「真っ直ぐを狙っていこう」という対策の中である程度打てていたのですが、相手にデータが入るにつれて変化球が多くなってきて、それに対応することができずに、ヒットの数が減少してしまったと思います。
――優勝を逃してしまった一番の要因は何だと考えていますか
最後の3戦目で勝ち切れなかったことですかね。結果的には、慶應と明治のどちらかで1勝していれば優勝できたので、そこが取れなかったのが一番の要因かなと思います。
――3戦目で勝ち切れなかった要因は
ピッチャーに頼り過ぎていたという部分だったり、気持ちの部分で負けていた部分があったからだと思います。
――野手陣から見て投手陣の調子はいかがでしたか
(田中)誠也の調子が良くて1戦目は取れていたのですが、2戦目に誠也に並ぶピッチャーがいなくて、2枚目のピッチャーは必要だなと思いました。
――個人として振り返るといかがでしたか
満足いかないシーズンでしたね。最低でも3割は打ちたかったですし、安打数とかも期待されていたので。去年の秋とかと比べても、あまり調子が上がってきていないので、ふがいない結果だったなと思います。
――春のオープン戦から調子はそこまで良くなかったのでしょうか
春のオープン戦では調子は悪くなかったですけど、リーグ戦を戦うにつれて疲労もたまってきて、自分の調子を把握できなくて、ずるずるといってしまいました。
――リーグ戦中に打撃で心がけていたことはありますか
自分ではあまり考えられていませんでした。ヒットを打たなきゃいけないみたいな気持ちがあって、自分で自分を追い詰めていたなと思います。
――気持ちに余裕が無かったのはなぜなのでしょうか
やっぱり100安打ですかね。いろんなところから声をかけていただいていたので、そういったプレッシャーとか、意識をしていた部分はあります。
――優勝した昨年の春と、昨季の違いは
やはり3戦目で勝ち切れるかの違いですかね。去年は粘り強い野球ができて、3戦目に勝ち切れていたと思いますが、この春はあっさり負けてしまった試合が多かったというのが、違いだと思います。
――この夏に重点的に取り組んだことは
チーム的には野手が打てないことが分かっているので、振り込みをかなりしました。今年は新座でキャンプをしたのですが、自分としては一番きついキャンプでした。振り込みも今まで以上にみんなが真剣に取り組んでいました。
――現時点で取り組みの成果は
安打数とかは春に比べるとかなり多くて、チームで2桁安打に乗ることも多いのでいい傾向かなと思っています。個人としても、ヒット性の打球は多くなってきています。
――立大での野球生活ここまでを振り返ってみていかがですか
自由に野球をやれていますね。自分の好きなようにやっていいので、高校や中学と違ってがちがちの野球をすることはなくて、そういった点で野球の楽しさをもう一度実感していますね。
――そういった野球生活を通じて成長できた部分などはありますか
自分で考えることですね。高校までだと監督やコーチに指示されて動くのが当たり前でしたけど、大学に入ると自分たちでメニューを組んだり、自分の調子を見極めることが必要だったので、そういった部分は成長できたと思います。
――春季リーグで慶大が優勝できた要因はどう考えていますか
ピッチャー陣ですかね。140㌔を投げられるピッチャーが多くいて、どのピッチャーもレベルが高いですし、低めに変化球を投げて空振りが取れるので、そこが慶應の強みだったと思います。
――実際に対戦していかがでしたか
嫌でしたね。真っ直ぐと同じ腕の振りでフォークとかを投げてくるので、それに対応するのが本当に難しかったです。
――自チームとの違いはどういった点で感じましたか
ピッチャー陣の層の厚さであったり、勝負強いバッターがいる点ですね。取るべきところで点を取っているイメージがあって、郡司とか柳町とかがいるので、やはり強いなと思います。
――昨年の秋との違いなどはありましたか
そこは特に感じなかったですね。単打だったり、送るところで送ったりと、スモールベースボールをしっかりとやっているイメージですね。
――今季は慶大とどういった戦いをしたいですか
ピッチャーが低めにボールを集めてくるので、ボール球をできるだけ振らないようにしあたいですね。そうすればもらえる四球も増えてくると思うので、そういった対策もしていかなければいけないと思います。
――警戒する選手は
柳町ですかね。慶應で一番いいバッターですし、一番センスもあるので、警戒しています。ピッチャーだと菊地(恭志郎=政4・慶應志木)ですかね。安定してくると打つのが難しいピッチャーだと思います。
――現時点でチームと個人の状態はいかがですか
チームとしてはみんな明るく野球をできているので、雰囲気はとてもいいです。個人的にもラストシーズンということでどこかで吹っ切れたと言いますか、気楽にバッティングもできているので、調子も徐々に上がってきています。
――秋季リーグでの数値的な目標などはありますか
3割は絶対に欲しいですね。できれば4割打ちたいです。自分が3割打てれば、チームにも貢献できると思うので、しっかり打ちたいです。
――チームで鍵になる選手をあげるとすると誰でしょうか
種田は今調子がいいので、この調子をリーグ戦でも続けてくれればというのはありますね。
――今季はラストシーズンとなりますが
やはり大学最後なので、優勝したいです。最後はみんなで笑って終わりたい、そういう気持ちは強いです。
――4年として心がけていることはありますか
楽しくやることですかね(笑)。自分は野球を続けますけど、続けない人の方が多いので、そういう人たちとのびのび野球をしたいと思います。
――チームの雰囲気は4年が作るといった感じなのでしょうか
そうですね。プレー中以外でもベンチとかでは4年が積極的に発信をするようにしています。
――最後に改めて意気込みを
秋季リーグは笑って終われるように、優勝したいです。
(取材:相川環、尾崎崚登、重川航太朗)
ご協力いただいた立教大学野球部の方々、ありがとうございました。
なお3名への取材は9月5日におこないました。