秋春連覇を成し遂げた慶大野球部。他大学と比べて明らかに戦力が優れているわけではない中での連覇は4年を中心としたチーム力による野球の勝利でもある。特に今年はレギュラー野手に4年は2人、4年の投手もメンバーには2人だけと出場選手が少ない中でそれぞれがチームを支えるために動き、栄冠を勝ちとってみせた。今季は各週末に4年を特集したインタビューを掲載。”ラストシーズン”となる秋への意気込みを語ってもらった。
第5回は六大学初の女性主務となった小林由佳主務にお話を伺った。試合中には記録員として、グラウンド外でも運営や財務など慶大において欠かせない大事なメンバーだ。そんなベンチで慶大の戦いを見守り続ける小林主務に迫った。
――まもなく秋季リーグが開幕しますが、現在の心境はいかがですか
春優勝することができて、そこから秋に向けて、というところですが、春と同じことをやっていては勝てないので秋は秋で気持ちを切り替えてやっていこう、とチームみんなでやっているところです。
――自身にとって、昨季はどのようなシーズンでしたか
春は、あまり実力がない中での戦いで、そもそもうちはあまり優勝候補とは言われていなく、法政明治が強いのではないかと言われていた中で優勝できたというのはすごい大きかったと思いますし、個々の力だと他大学に劣ることも多いのでそこをどうやってチーム力でカバーするかというところを大事にやってきた結果がうまく優勝という結果に結びついたのかなと思います。
――主務として、チームを支えた昨シーズンはこれまでと違って見えることや違って感じることはありましたか
今までは、ベンチに入ることもベンチ裏に行くこともできなかったので、試合の緊張感などを肌で感じることがあまりなかったのですが、ベンチに入ってみて、一球に対する皆の気迫をすごい感じるようになり、一試合やっただけでどっと疲れるんだなというのを改めて感じました。
――主務の仕事について教えてください
普段は、オープン戦の時のベンチだったり、あとは大まかに全体のスケジュールの管理と、細かいところで言ったらキャンプや遠征試合の運営とか、後は決算とか…沢山あります。一言で言えばチームを支える全般をやっているところが大きいです。財務系総務系、SNSの更新なども含めて満遍なくやっているという感じです。
――主務を任されると聞いたときはどのような心境でしたか
一番最初は、驚きもありました。誰になるのかな、と思っていましたが、前々からなるんじゃないかと言われていたので、驚き半分不安半分という感じでした。
――普段から主務としてどのようなことを心がけていますか
チーム全体が円滑に回るようにすることと、“一歩先の気遣い“を大事にしています。監督や助監督に言われる前に動くことができるようにしなければといつも思っていて、まだなかなかできないところもあるので、そこは秋に向けてしっかりやっていきたいなと思っています。
――主務としてのこだわりはありますか
外部へのレスポンスはなるべく早くしようと心がけてはいるのですが、仕事が立て込んだりするとそう上手くはいかなかったりはします。
――主務としての理想像、チームにとってこんな存在でありたい、というものはありますか
主務に聞けばなんでもチームのことが分かるという風になるのが一番かなと思っています。監督の意向が全部選手達に伝わることは難しくて、選手の中で齟齬があったり、マネージャーが伝えても実は選手に伝わっていなかったりということがあるので、何を聞かれてもちゃんと答えられるように、そしてその後ろには監督や助監督の意図があるんだよということをしっかり伝えられるような主務になりたいなと思っています。
――尊敬している人はいますか
親ももちろん尊敬していますが、私自身が、幼稚園から中学校までキリスト教の学校で育ったので、マザーテレサの奉仕の心というのはマネージャーにすごい通じるものがあるのかなと思って尊敬しています。
――自身の長所、得意なこと、仕事に役に立っていると感じることはありますか
長所は、いい意味での明るさというか、あまり落ち込むことは少ないので、強いハートは長所かなと思っています。あとは、割と要領がいいほうなので、あまり抱え込まないところだと思います。仕事をやる上においても、主務という立場にいると沢山仕事はあるのですが、それを上手く後輩に振って優先順位をつけつつ割り切ってやっていくのは今の仕事にも役立っているのではないかと思います。
――逆に短所はありますか
ちょっと口下手なところと、あとは一人でなんでもやってしまうところです。先ほどの話と矛盾しているかもしれないのですが、一人でなんでもやってしまうところは改善しようと思って、徐々に主務になってから後輩に振るようには心がけています。口下手のほうはまだ治らないですね(笑)上手く伝えられていないのかなと思うときがあるので、それも日々訓練です。
――入部したての頃に比べて大きく成長したと感じる面はありますか
一年の時は、女子マネージャーと男子マネージャーで仕事が全然違っていました。正直部全体のことを把握しきれておらず、運営自体に関わることはあまりなかったです。そういう面で1年ではあまり知らなかったところを4年になって初めて知ることも多かったので伸びしろというのは自分の中でも感じています。視野を広く持つということは自分の中でも大きく成長した部分かなとも思います。
――大学野球人生で、マネージャーをやっていてよかった、と思えた瞬間はありますか
やはり4年の春に優勝できたことが一番嬉しかったです。1年の時にこの部活に入ってチームメイトを見て、私の代は人数があまり多くないですし1個下2個下みたいにAOとかで甲子園組が何人も入るような代ではありませんでした。しかし、それを4年の力でカバーして優勝できて皆でパレードしたときはすごい嬉しかったです。ただ、全国ベスト4で敗れてしまってその時はもちろん悔しかったですね。
――逆につらかった、困った場面はありましたか
大学4年間を通したら、やっぱり男子マネージャーが1人辞めて、もう一人出たのですがまた辞めてしまって、その時が一番辛かったというか、どうしようという不安に駆られた時期でした。主務にならないと運営とかはやらないので、運営面とか全く知らない状態で辞めてしまったので、この先どうなるのかと不安に思う時期はありました。
――野球という競技のどのようなところに魅力を感じますか
個人の力ではなくチームの力で勝つことができるスポーツであるところです。私自身はずっと器械体操をやっていて、もちろんチームで戦うこともありますが、基本は個人競技でした。なので、個人の結果が一番大事だと思って当時はやっていました。野球部に入ってから本当にそれだけじゃないんだなということ、個人の力を上回るチームの力があるというところに気付いて、それが野球の魅力だと感じます。あとは、ホームベースでみんなで喜べるというのが私はすごい好きです。サッカーとかだと点を決めた人が走って喜びを表現すると思うのですが、野球だとホームには違う人が返ってくるじゃないですか。なのでそれがチーム全員で取った点という感じがするのでそれがすごい好きです。
――春の個人的なベストゲームは
明大戦3回戦だと思います。あの試合勝っていなかったら優勝もできていたかわからないですし、自分がじゃんけんで裏を取って(先攻後攻はリーグ開幕前に主務同士がじゃんけんで対決して決めている)明治戦両方サヨナラ勝ちできたというのはちょっとチームに試合の中で貢献できたかなと思えた試合でした。あの試合で二戦ともサヨナラで劇的な勝ち方をできたというのはすごい大きかったかなと思います。
――試合の中でチームが成長していると感じる場面はありましたか
やはり内野を見てもらえばわかるのですが、昨年の4年が全員抜けて今年の新チームでいきなり神宮に立ったことのない、スタメンで出たことのない選手たちがスタメンに名を連ねています。最初は春のオープン戦ではエラーしない試合がないくらい沢山エラーをしていましたが、東大戦から始まって法政戦、立教戦と試合を重ねていくうちに、どんどん皆上手くなりました。あとはやはりピッチャーが頑張って投げてくれて、それに野手がちゃんとバッティングで答えてくれたっていうのが大きいので、そこをしっかりやれば秋もチャンスはあるんじゃないかと思います。
――今季の自身の目標は
早稲田に勝ってリーグ戦優勝して、神宮大会も昨年みたいに一回戦負けしないで日本一を取るというところがチームとしても個人としても目標です。引退まで勝ち続けられるチームというのは多分神宮大会で優勝するチームだと思うので、優勝して笑って終わりたいなというのはあります。なので春に残された課題を一掃したいなという思いです。
――最後のリーグ戦、4年間の集大成として迎える秋リーグに向けて意気込みをお願いします
この四年間ほぼ大学生活これしかやってきてないので、最後これをやってきたんだ、と胸を張って言えるように最後まで諦めることなくチームをサポートしていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・國分萌々子、左近美月)
この取材は8月14日に行ないました。