雨降る8月の開幕戦から4カ月、慶大は全日本選手権準決勝でクラブチーム・NeOに敗れ、今季の日本一への挑戦に終止符を打った。思い描いたゴールには辿り着けなかったものの、関東リーグでは日本一に輝いた昨年のチームも成し得なかった「全戦勝利での優勝」という偉業を達成し、その確かな実力を見せつけた。今回はこのリーグをもって引退する4年選手のインタビューを3回に分けてお届けする。
第一弾では、攻めるディフェンスを武器に後方でチームを支えたG大沢かおり(経4)、DF櫨本美咲(経4)、MF石川のどか(政4)の3名、そしてマネージャーとして選手と共に戦い抜いた柳井純央主務(商4)、合わせて4名のインタビューをお送りする。
#28大沢かおり(経4・学芸大附属国際)
――全日本選手権準決勝から数週間が経ちました。改めてNeO戦を振り返って
「勝ちたかった」と「やり切った」が同時に並列している感じです。
もちろん今思い出しても悔しいですが、NeOさんのように技術もスピードもある強いチームに対して、全員で食らいついていけたのは良かったですし、本当に50分間ずっと楽しく幸せでした。ただ、やっぱり本当に勝ちたかったです。
――正ゴーリーとして臨まれた今シーズンを振り返って
ただシュートを止めたり、クリアをうまく運んだり、指示を出したりするだけではなく、試合中辛いときにチームを鼓舞できるゴーリーを目指して試合に臨んでいました。
日本一をとった翌年は絶対に厳しいシーズンになると全員が意識して臨んでいました。予想通り苦しい試合が多かったですが、チーム全員で最後まで諦めずにプレーすることができたのは本当に良かったです。
――関東リーグでは最優秀選手賞を受賞されました。5月のインタビューでは今シーズンの目標を「チームを勝たせるゴーリー」になることだと言っていましたが、今季のご自身の成長を振り返って
今季は六大戦、早慶戦から始まってリーグ計10試合を通じて、自分で言うのもあれですが結構成長したな思います(笑)
特にメンタル面でラストイヤーの「覚悟」を持って、良い意味で気楽に挑めるようになったのが大きかったです。「止まるときは止まるし、止まらないときは止まらない。まあ出来ることやろう」くらいの気持ちでいれました。信頼できるDF陣たちのおかげです。
大会MVPも嬉しいですが、チームメートが「ゴールにいると安心する」と今年になって初めて言ってくれたことは一番嬉しかったです。
――怪我に苦しまれた時期もありましたが、4年間のラクロス部での活動を振り返って
冬にトップチームに上がって浮かれていた1年生の頃から、怪我で苦しんだりチーム編成で自分の存在意義がわからなくなって、自分に同情し、やさぐれてクズ人間だった2年生(笑)、2枚目としてまた存在意義を失って模索した3年生。今振り返ると本当に色々なことを経験させてもらいましたし、こんな私を見捨てずに最後まで信じてくれた同期やコーチ陣には感謝しかありません。9割方楽しくないことが多かったですが、生まれ変わってもまたこの慶應でラクロスしたいと今では思います。
本当に充実した4年間でした。
――4年間を通してご自身の中で成長を感じる部分はありますか
ゴーリーの魅力に気付けたことと、シュートを決められた後に励まされるのではなく、励ましに行けるようになったことです(笑)
はじめの2年間は今考えても恥ずかしいほど「自分が活躍したい」「自分が誰よりも上手くなりたい」というようなことしか頭にない偏狭な人間でした。そのせいもあり、ゴーリーというポジションの”孤独さ”しか見られず、ゴーリーになったことをひたすら後悔していました(笑)
3年の途中の試合を機に、チームを最終ラインから支えて、全員の覚悟ある背中を見ながらプレーできるポジションとしてのゴーリーの魅力に気付けたときに、自分だけでなくチームのために戦える人間に成長したかなと思います。
――苦楽を共にした同期の仲間へ何か伝えたいことはありますか
1996年に生まれてこの同期と一緒にやってこれて本当に良かった。ありがとう。
――部に残る後輩たちへメッセージをお願いします
誰よりもラクロスを楽しんで。
引退して慶應ラクロス部での日々の貴重さをしみじみと感じるので、一瞬一瞬を大切にして、心でぶつかって、辛い先にはきっと何か良いことあるんで、前を向いて頑張れ!
――最後に一言お願いします
この4年間本当に沢山の方にお世話になりました。OGOBの方はもちろん協会の方、浅田さん、慶應スポーツの方、コーチ陣、先輩同期後輩、他大学の仲間、そして家族。今までお世話になった分の恩返しが出来るよう、今後は一社会人として素敵な大人の女性になれるように頑張ります(笑)
本当にありがとうございました。
#62櫨本美咲(経4・慶應女子)
――全日本選手権準決勝から数週間が経ちました。改めてNeO戦を振り返って
試合前からコーチに「うまい下手は関係ない。気持ちの勝負になる。」と言われていて、全員が高い集中力を持って臨めたと思います。先制点を決めたり、前半1点差で折り返したり、想定していた以上に手応えの感じられた試合でした。だからこそ、そこで勝ち切れる力が及ばなかったことがとても悔しいです。
――DF陣の柱として臨まれた今シーズンを振り返って
あっという間のシーズンでした。5月の早慶戦が終わったと思ったらすぐ開幕戦があって、気づいたら12月になっていたっていう感じです。今年のDF陣は個人の特徴がとてもはっきりしていたので、例年以上に練習外のミーティングやビデオ見を重ねてきました。それぞれの強みをお互い理解して補い合うことで、プレーでの信頼感と自信に繋がったと思います。結果として1試合の最大失点を6点に抑えられたことは来年の自信にしてほしいです。
――昨季のDF陣の先輩方が抜けて、シーズン初めは大変なことも多かったのではないでしょうか
3年生のときはただ自分のプレーに集中してできることを精一杯やっているだけで良かったものが、チームを引っ張る立場になるとそうシンプルにはいかないことを痛感しました。チームとしてどう成長するべきか、今何が足りていないのか、チーム全体のことを考える機会が圧倒的に増えました。特にシーズン初めは、チームの形が定まってないなかで全体の方針などを話し合いながら、自分のスキルアップもしていかなければいけない状況に苦戦することもありました。
――4年間のラクロス部での活動を振り返って
泣いたり笑ったり、悔しかったり喜んだり、感情の起伏が激しい4年間でしたが、総じて楽しかったです!慶應に入ってラクロス部に入部して本当に良かったです。コーチ陣、先輩同期後輩に恵まれ、日本一を目指せる環境で常にラクロスできていたことがどれだけ贅沢だったかをしみじみと感じています。
――4年間を通してご自身の中で成長を感じる部分はありますか
たくさんあります(笑)
プレー面はもちろんですがメンタル面もみっちり鍛えられました。4年前に比べるとだいぶ打たれ強くなったと思います。毎年100人前後を率いるチームで活躍する難しさとか結果が出ない悔しさとかいろいろ経験して、何言われても落ち込まないってわけではないんですけど、確実に立ち直りが早くなりました(笑)
――苦楽を共にした同期の仲間へ何か伝えたいことはありますか
みんなが同期だったからこの4年間やってこられたことがたくさんあって、心の底から感謝しています。ほぼ毎日会っていたので、3日顔を見ないだけでも寂しくなりました(笑)
――部に残る後輩たちへメッセージをお願いします
本当にありがとうでいっぱいです。1・2・3年生の頑張りやサポートがあったからこそ、本気で日本一を目指すことができました。
私は高校から7年間ラクロスしていても最後まで新しい発見がたくさんあったから、18チームとそれぞれの立場は変わっても現状に満足しないで新しいことを追い求めていってほしいです。
みんなの成長が見られるのを楽しみにしています!
――最後に一言お願いします
勝って笑って終わることはできなかったけど、とても楽しい密度の濃い4年間を過ごすことができました。今まで私たちを応援しサポートしてくださった方々に感謝しています。本当にありがとうございました。
#66石川のどか(政4・品川女子学院)
――全日本選手権準決勝から数週間が経ちました。改めてNeO戦を振り返って
悔しいですが、日本一を取るには、DFもATもまだまだ実力が足りなかったです。
関学戦で負けてから、NeO戦に向けた練習の成果は出ていたので、最後まで成長できた点は良かったです。
――今シーズンを振り返って
本当にあっという間でした。日本一という気が遠くなるような大きな目標を目指しながらも、日々小さな挑戦の連続で、充実していました。
振り返りができないほど、いろんなことがあり、もう思い出せません(笑)
――幹部としてチームを仕切ることが多かったそうですが、困難だったことはありますか
現役のときは気づいていませんでしたが、今振り返ると困難なことばかりだったと思います(笑)
どんな練習をすれば、試合で力を発揮できるのか、一番必要なトレーニングの方法や量を考えて、みんなの疲労度を見ながら調整したり。練習中の雰囲気を作ったり。下級生ももっとレギュラーを狙ってほしくて、下級生のモチベーションを上げることだったり。
色んな立場の人がいる中で、チームを1つの目標に向かって、引っ張っていくことはやはり大変なことが多かったです。だからこそ、その立場を私に任せてくれたみんなに感謝しかないです。ありがとう。
――4年間のラクロス部での活動を振り返って
本当に贅沢な日々だったと思います。毎日最高な先輩、後輩、同期、コーチ陣と一緒に、日本一を目指して一生懸命やって、本当に本当に楽しかったです。
――4年間を通して成長を感じる部分はありますか
成長しかしてないですね。
ラクロス部のみんなと出会って、価値観も人間性も考え方も全て変わったと思います。
辛いことがあっても仲間や応援してくれる人がいれば、とことん頑張れるようになりました。
――苦楽を共にした同期の仲間へ何か伝えたいことはありますか
これまでみんながいたから、頑張れたと思う。これから長い人生もずっとずっとみんなのことが大好き。言葉じゃ表現しきれないくらい、みんなが大好きです!
――部に残る後輩たちにメッセージをお願いします
後悔しないように全力でやりきって!
やるかやらないかは自分次第。ずーーーっと応援してます。がんばれ!
――最後に一言お願いします
私たちを応援してくださって、本当にありがとうございました!応援してくれる皆様のおかげで、これまで頑張ってこられました。これからも慶應女子ラクロス部をよろしくお願いします。
柳井純央主務(商4・県立下関西)
――全日準決勝から数週間が経ちました。改めてNeO戦を振り返って
いくら振り返っても、日本一を取るための準備が1年間足りなかったということです。
NeO戦に向けて、2週間の猶予がありました。しかし、1週間前の時点で勝算が見えませんでした。なぜなら、2年ぶりに敗戦したため、負けの受け入れ方が分からなかったから、また負けて初めて結果に捉われラクロスの完成度に拘ることから逃げていたことに気付いたからです。その時点で私は負ける覚悟を持ちました。そこから野生の勘で、もうリスクは無視してチームに刺激を与えなければ立て直せないと感じ、、強行で練習してしまいました(ごめんなさい)。
結果が出せなかったことに対しては、とても悔しいです。しかし、NeO戦まで1週間を切ったあたりからみんなで最善を尽くし、当日は魂を見せられたという自信がありました。だから、試合終了のホイッスルが鳴ったときは晴々した気持ちでした。
――主務として過ごされたこの1年間を振り返って
慶スポさんやその他メディアさんに取り上げられる華々しい選手の姿や試合結果とは裏腹に、部の運営側としては困難の連続でした。日本一の翌年という状況も相まって、日本一を目指せることは当たり前でない、毎日そんなことを感じていました(笑)
――4年間のラクロス部での活動を振り返って
4年間チームをマネジメントする立場で関わらせてもらいましたが、印象深いのはラスト1年です。日々異なる状況の中、多くの予期せぬ問題に直面しました。その度に判断を迫られ続けた1年は、今までの人生の中で最高に不安定で濃くて面白かったです。
――マネージャーとしての仕事を全うする中で、何か意識していたことはありますか
決して選手を支えず、共に戦う、寧ろ率いる意識を持つことです。私が大学4年間マネージャーを務めようと思ったのは、スポーツマネージャーがサポーターのように見えた違和感が発端だったからです。そうでないことを自ら証明したいと思っていました。
――4年間を通してご自身の中で成長を感じる部分はありますか
人として当たり前すぎて恥ずかしいですが、、、相手を理解することです。マネージャーや主務として、部内外様々な方と目標・目的を共有することがありました。しかしいくら同じ目標を掲げていても、相手と自分(達)では気持ちや状況などの背景は異なっていて。その度に折り合いをつけなければならなかったので、成長できたと感じています。
――同期の仲間へ何か伝えたいことはありますか
毎日みんなが日本一を目指し、真剣に試合準備を重ねてくれたからこそ、私は充実した4年間を過ごすことができました。個性豊かな25人なので、春からそれぞれ別の道で努力し、ラクロス以外でも社会に対してまた皆で貢献したいです。その日まで私も頑張ります。
――部に残る後輩たちへメッセージをお願いします
これからの慶應ラクロス部を創るのは後輩のみんなです。だから、偉そうに言えることは何もないです。
――最後に一言お願いします
最後になりましたが、1年間弊部に携わってくださった皆様には感謝の気持ちで一杯です。
皆様のご協力があったからこそ、18チームは最後まで駆け抜けることができました。
来年以降もどうかラクロス部を宜しくお願い致します!
(取材:堀口綾乃)
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