いよいよ明日4月6日(土)、春季関東大学男子1部バレーボールリーグ戦が開幕する。昨年の秋季リーグ戦では1勝10敗と最下位に沈んだ慶大バレー部。新体制が発足してから4か月の練習を経てひとまわり強くなった慶大が、「挑戦者」としてこの戦いに臨む。そんな今年、慶大を任されたのが、マルキナシム新主将(総4・川越東)だ。いかに強いチームを作り、完成度の高いバレーを実現するのか。マルキ主将に、今季に懸ける熱い思いを語ってもらった。
(※この取材は、3月29日(金)に行いました。)
2018年シーズンを振り返って
――まずは、昨年を振り返ってください
去年は、初めの時点では4年が1人も出ていないという若いチームの中で、伊藤祥樹前主将(H31総卒)がチームを作り上げていったという1年間だったと思います。最後の方にはチームが形になって、4年の岩本先輩(岩本龍之介前副将=H31商卒)もスタメンで出るようになり、全日本インカレベスト16という最近の慶應では良い結果を残せたものの、日本一を目指す半ばで終わってしまったという1年間でした。
――個人としては
夏に腰のけがをしてしまって、そこからなかなか復帰することができないまま最後の入替戦、全日本インカレを迎えてしまいました。思うようなプレーができなかった印象が強いです。
――目標に届かなかった要因は
日本一という目標を立てて、それに少し焦ってしまいました。個人としては、練習でもオーバーワーク気味になってしまうところが僕の癖としてあって、1年間体を作りながらやってきたにもかかわらずけがをしてしまったというのが一番の原因だったと思います。
――全日本インカレ終了後、同期で何を話されていたのですか
4年が引退して自分たちが最上級生になるので、練習などを自分たちが引っ張っていかなくちゃいけないので、「どういうメニューをやっていこう」などの12月の内容を話し合っていました。直後に修球杯という控えメンバーを中心とした大会があって、それに向けて練習をスムーズに始められるように話し合いをしていました。
「決意を固めて主将を引き受けた」
――続いて主将になってからの3ヶ月間についてお聞きします。まず、主将に選ばれた経緯は
監督に同期全員集められて、僕か富澤(富澤太凱副将=経4・慶應)のどちらかに主将を任せたい、僕にキャプテンという役目を与えた方が主将の役割を全うする中で良い人間に成長するんじゃないか、という監督の思いを受けました。僕は前々からそういう話を聞いていたので、やってくれと頼まれるのだろうなと思っていました。
――ご自身が選ばれた理由は何だと思いますか
同期の中でも実際に試合に出ているのが僕と富澤ぐらいだったので、どっちかになるだろうとは思っていました。
――今までに主将のご経験はありますか
高校でキャプテンと部長をどっちもやっていました。その2つは別々の役職だったんですけど、両方とも僕が。中学のときは最初は違ったんですけど、途中で任されたりもしました。中学は一瞬経験したみたいな、変わった形でしたね。
――大学で主将に選ばれたときのお気持ちは
中学、高校とキャプテンを経験しても、どれも成功したという実感はあまりなくて。というのも、キャプテンをやって成功したと感じることができるのは、そのチームの目標を達成できたときだと思うからです。その点では中学も高校も結果を残せていないので、自分がキャプテンをやるのは違うのかなと思っていたところがあり、最初はちょっと嫌だなと思っていました。キャプテンもプレーヤーもやるということはある意味そういうプレッシャーがかかってしまうので、大学に入ってからずっと上の先輩を見て挑戦し続けてきた僕からすると、ちょっと荷が重くなるのかなと思いました。でも、最後は決意を固めて引き受けました。
――同期の反応はいかがでしたか
自分は「すごく不安」「この先どうなるかわからない」というようなことを言っていたんですけど、同期は「お前しかいない」「絶対に大丈夫だ」と。しかも「支えてくれる」とも言ってくれたので、心強かったです。
――後輩からは
考えていることはちゃんと考えているというふうにみんな思ってくれているとは思うんですけど、少し優しすぎると言われることもあります。僕は他人に厳しくすることがあまり得意ではなくて…。バレーに関して言うまでもない後輩がたくさんいるっていうのもあるんですけど、私生活に関しては厳しいことを言っていかないといけないとは思いつつも、得意ではないので同期に任せたりもしています。
――その役割はどなたが
そういうことを言う係があるわけではないんですけど、主務の山田(山田大智主務=政4・慶應)がバレー以外のところは仕切ってくれています。僕も合宿中の移動などを山田に任せっきりにしてしまっていて。富澤や五味渕(五味渕竜也=環4・習志野)も練習の雰囲気が悪ければ一回止めて注意してくれたり、本多(本多一大=商4・慶應)は声がデカいので自分から声を出してチームを盛り上げてくれています。そういう意味ではみんな主将としての心構えはあるのかなと感じます。
――マルキ主将から見て、富澤副将はどのような方ですか
僕以上にプレーで引っ張っている選手ですね。太凱が以前着ていたTシャツに「流れを変える男」って書いてあったのがすごく印象に残っていて。本当にその通りの男で、自分のプレーでチームの流れを持って行ってくれる力を持った副将だと思います。トレーニングも中心になってトレーナーの方と連絡を取ってくれていて、後輩の面倒見も良くて…。細かいことを言うと、もっと自分が思っていることを言ってくれたらなとは思います。
――4年の雰囲気は
最近はリーグ戦が近づいていくにつれて、メンバーも絞った練習をしていて、チームの良いところ、良くないところをみんなが見て、僕にもっとこうした方がいいと言ってくれるような雰囲気ができています。
――同期のカラーは
僕らはすごく仲が良いと思われていると思います。自分もそれは感じていて、オフの日に遊んだり、練習後によく食事に行ったりとかもするので、仲の良い代なんじゃないかと思います。
「不安やプレッシャーはない」
――主将として、普段から心がけていることは
しっかりと準備をして練習に臨もうとしています。一日も練習を無駄にしたくないと思っているので、練習が始まる1時間前にはもう気持ちを作れている状態にしています。たとえば部室に1時間前に来たりとか。自分の中で細かくは決めていないんですけど、そういう準備を怠らないようにしようとしています。思いついたことを忘れないようにノートに書き留めたりなど、そういうところで抜け目のないようにやっています。
――意識の面で変化したことは
これまでは先輩たちが僕に指導をしてくれていて、挑戦者という気持ちでコートに立ってきたんですけど、キャプテンという役割を与えられてからコートに立ってみて、もっと自分以外の選手の能力向上とかもしていかないとと思うようになりました。たとえばチームの雰囲気だったり、締まったゲームをするにはどうしたらいいのかだったり、そういうことを考えるようになって意識が変わりました。
――主将になって大変だと感じる点は
めちゃめちゃ大変だと思うことはそんなになかったんですけど、やっぱり人前で思い付きで喋ることはあまり得意ではないです。たとえば集合のときに何か良いことを言ってチームを鼓舞してから練習を始めたいと思っても、なかなかそれが上手くいかなかったり、試合が終わって解散する前に何か一言言って締めるときにも、気の利いたことが言えなかったり。そういった面ではもっとできることがあるんじゃないかと思います。ちょっと自分には向いてなくて大変だと思うこともあります。
――楽しいこと、やりがいを感じることは
今までは試合の結果がどうであれ、正直自分の調子が良かったのかという点にフォーカスしてしまっていたんですけど、主将としてチームのことをこれだけ考えてゲームに臨んだら、勝ち負けが決まったときにチームでこういう風に取り組んできたから勝ったんだ、と実感できる立場なんじゃないかと思うので、それはすごくやりがいだと感じています。
――主将にエースと大役を任されていますが、プレッシャーは
特にプレッシャーは感じていないです。ただ、しっかりやって結果を残さなくてはという使命感は強くあります。それは監督が僕を今までずっと使ってきてくださったことや、先輩含めOBの方々がずっと見守って指導してくださっていることがあるので、不安やプレッシャーはないです。やってきたことを全て出さなくてはいけないという使命感だけです。
――主将として、チームにどんな影響を与えていきたいですか
さっきも話した通り、言葉で良い雰囲気に持っていくことは得意ではないので、他の人に協力してもらいながら、自分の良いプレーを出して、部活以外の時間もチームがどうやったら良くなるのかということを考えることを続けていきたいです。たとえば、動画を見て、何が問題で、どう解決したらいいのかというのを練習以外のところで考えて、みんなに還元するというところでチームを1年間まとめ上げられたらいいなと思います。
「高いバレーに注目してほしい」
――新入生が加わり、チームの雰囲気は
4年生がいなくなってから人数が減ったことに良くも悪くも慣れて、活気がなかったところもあったんですけど、2月中旬くらいから新入生が入ってきて。彼らの「追いつけ追い越せ」という姿勢のおかげか、下に負けないようになのか知らないですけど、全体の雰囲気がすごく良くなったっていうのはありますね。
――同じく新しく入られた間宮秀太コーチは
間宮さんはバレーの知識を全部兼ね揃えているような人で。もっとこうしたほうがいいとかっていうのを、言ってくれる。言いにくいことだと思うんですけど、すごくズバッとチームの良くないところを言ってくださったり、技術的なところもやり方まで教えてくださったり。でなんか、実際合ってたりするんですよ。たとえば、サーブレシーブのオーバーカットのやり方とか、スパイクのコースの打ち方とかを教わったときに、その人に合ったやり方とかがあるのでしっくりこないはずなんですけど、間宮さんの教えることは、すぐに体現できて、フィットした感じがする。魔法みたいなことを教えているっていうわけではないと思うんですけど、間宮さんの教え方がすごくて。だからそういう意味ですごい先輩だなって思います。全カレでも結果を残している先輩ですし。
――このオフシーズン、力を入れて取り組んでいることは
まあこれに1番力を入れたっていうことは特にないんですけど、とにかく慶應が苦手なプレーを中心に改善していったっていうのがあって。その1つが、サーブレシーブ。サーブレシーブの練習の時間を全体で増やしたり、アフターでやってもらったり。個人個人で、その人が何%あげないと勝てないよっていうのをアナリストもミーティングで話してくれて。あとは個人面談みたいなのもしてくれて、データとかも見せてくれて。そういう取り組みをしてきましたね。というのと、去年までは体幹トレーニングしかやってこなかったんですけど、今年からはウエイトトレーニングを少し始めました。みんな少し身体が大きくなったんじゃないかなって思います。まあ早稲田さんがやっていたことなんですけど、勝つ上で必要なことを全部やっていかなきゃだめだなって思ったので、それを同期みんなで何回もミーティングで話し合って。課題を解決しないままリーグ臨むのは嫌だったので、1つ1つ洗い出していったっていう感じですね。
――練習試合での手応えは
サイドアウトの練習を中心にずっとやってきたんですけど、サイドアウトのところは、どのチームとやってもあまり変わらず、ずっと力を発揮できるっていう状況まで持ってこれました。課題として出てくるのは、試合中盤でちょっとがたついてしまうところ。リードして勝っているのに、あと1点取らなきゃっていうところで少し焦ってしまって、ミスが連続して、ちょっと追いつかれた状態で勝つっていうゲームが多くあって。そういう最後の詰めのところを、これから改善していかなきゃいけないなって思っています。
――以前、個人練習に取り組めていないってお話しされていましたが、現在は
だいぶ改善されましたね。基礎練をやっていたときは、同じメニューがずっと続いて、みんなのモチベーションをコントロールするのが難しくて、結構悩んでいました。でも今は、リーグが近付いて、みんな試合に向けて結構雰囲気が上がってきていて。特に僕が何か言わなくてもみんな個人個人やってくれるので、僕もその分個人の練習ができていますね。
――今年、試合を見ている人にどこに注目してほしいですか
やっぱり、高いバレーですね。1本目の高さだったり、祝太郎(吉田祝太郎=政3・慶應)のトスアップの高さだったり。そういうところで、他の大学とはちょっと違うスケールのバレーをできたら。それを武器に、相手を怖がらせるっていうバレーで、勝っていきたいですね。
――チームの目標を教えてください
前半シーズンは、春リーグ優勝、早慶戦も今年はすごく勝ちたいっていう気持ちがあって。東日本インカレももちろん優勝目指しています。最終的に全日本インカレでベスト4に入るためには、まずはそこで優勝を目指していかないと、優勝に絡むチームになっていかないとだめだなって思っているので、目標は優勝ですね。
――ご自身の今年の意気込みを聞かせてください
1年間を通してぶれないことですね。それは、チームをまとめるうえで考えたこと、同期で決めたことをぶらさないこともそうですし、自分がコート内でプレーする立場としても、ぶれない、調子の波をあんまり大きくしないことだったり。そういう意味で、ぶれないっていうのを1年間通して頑張っていきたいと思います。
――応援している方々に一言お願いします
今年は必ず結果を残して、最後、後輩たちに良いものを残してチームを去れるように頑張ろうと思っているので、応援のほどお願いします。
――ありがとうございました!
(取材:堀口綾乃・藤澤薫 写真:堀口綾乃)
◇プロフィール◇
マルキナシム (まるき・なしむ)
1997年7月27日生まれ/総合政策学部3年/川越東高/身長192センチ/最高到達点335センチ/主将・サイド
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