今年で創部100周年を迎える慶大相撲部が第98回東日本学生相撲選手権大会でAクラスベスト8に食い込む大躍進を見せた。今大会により慶大は悲願の1部昇格を達成。また、6年ぶりに全国大会への出場権を手にするなど、多くの収穫が得られた大会となった。
第98回東日本学生相撲選手権大会
6月9日(日) 9:00~ @両国国技館
団体戦
◇慶大出場選手◇
先鋒 中村隼輔(商1・慶應義塾)
二陣 中村一稀(経4・慶應義塾)
中堅 北原英嗣(政3・慶應義塾)
副将 長谷川貴規(総2・木造)
大将 長谷川大起(総4・木造)
◇Bクラストーナメント◇
<準々決勝>
慶大 3対2 立大
中村隼○(押し出し)●長谷川
中村一●(上手投げ)○玉真
北原●(足取り)○横田
長谷川貴○(寄り切り)●井坂
長谷川大○(寄り切り)●小佐野
<準決勝>
慶大 3対2 早大
中村隼●(叩き込み)○田太
中村一●(寄り倒し)○長谷川
北原○(寄り切り)●二見
長谷川貴○(突き出し)●佐藤
長谷川大○(寄り倒し)●鳥居
<決勝>
慶大 2対3 法大
中村隼●(上手投げ)○上平
中村一●(突き出し)○望月
北原●(寄り倒し)○島村
長谷川貴○(上手投げ)●小湊
長谷川大○(極め倒し)●雑賀
結果:Bクラストーナメント準優勝 Aクラス予選進出決定
午前中に行われた団体戦。Bクラスに所属する慶大は1回戦をシードとし、準々決勝からの出場となった。負ければ屈辱のBクラストーナメント敗退となる大事な初戦、先鋒の中村隼輔(商1・慶應義塾)がゆっくりと構えたかと思えば、開始直後に速攻で相手を押し出し、1勝目をもぎ取る。これに続きたいところだが、二陣の中村一稀(経4・慶應義塾)と中堅の北原英嗣(政3・慶應義塾)が共に倒れ、慶大は窮地に立たされる。しかし、残る副将と大将の長谷川兄弟がこのピンチを救う。まずは弟の長谷川貴規(総2・木造)が相手に隙を与えずに寄り切ると、最後は兄の長谷川大起(総4・木造)が力強い突っ張りで相手を土俵際へ追いやり寄り切りで勝利。土壇場からの2連勝で見事準々決勝を突破した。
勝負の結果が大将戦にまでもつれたBクラス準決勝は宿敵・早大との対決となった。勝った方が決勝に進む両校のプライドを賭けた大一番であったが、先鋒、二陣が相次いで星を落とし劣勢に。後がない中で流れを変えたのは中堅・北原だった。立ち合いから相手を土俵際に追い詰める速攻を見せ、寄り切って待望の白星をあげる。続く副将・長谷川貴も相手の喉輪による攻め立てを落ち着いてかわし、突き出しで勝利を収め、対戦成績を2勝2敗の五分に戻す。決勝進出へ望みを託された大将・長谷川大は、立ち合いから相手による投げ技を狙った攻めに苦しむも、力強い四つ相撲で粘りを見せ、最後は寄り倒して下した。劇的な逆転勝利で準決勝を突破し、場内は大歓声に包まれた。
法大を相手に戦った決勝戦。Bクラス優勝を目指して臨んだ一戦だったが、立て続けに3連敗を喫し、最短で慶大の敗戦が決まってしまう。それでも長谷川貴が冷静な相撲で相手を投げ1勝を挙げると、長谷川大も相手の差し手を極め倒しに持ち込んで勝利し、慶大の意地を見せつけた。悔しくも優勝を法大に明け渡したものの、Bクラス準優勝と好スタートを切った慶大陣であった。
◇Aクラス予選◇
<1回戦>
慶大 0対5 拓大
中村隼●(叩き込み)○勝呂隆
中村一●(寄り切り)○ジャミン
北原●(送り出し)○勝呂歩
長谷川貴●(寄り切り)○井田
長谷川大●(下手出し投げ)○山市
<2回戦>
慶大 1対4 日大
中村隼●(勇み足)○春山
中村一●(押し出し)○石岡
北原●(寄り切り)○沢田
長谷川貴○(上手投げ)●イエルシン
長谷川大●(押し出し)○宮崎
<3回戦>
慶大 3対2 駒大
中村隼○(押し出し)●安ヶ原
中村一●(寄り切り)○三浦
北原●(寄り切り)○間地
長谷川貴○(押し出し)●千葉
長谷川大○(引き落とし)●高橋
結果:Aクラス8位 Aクラス優秀8校決勝トーナメント進出決定
Aクラス初戦の相手は、昨年の団体戦準優勝の強豪、拓殖大。土俵際で粘りを見せるものの、相手の変化を混じえた立ち合いと素早い押し込みの前に勢いに乗れず、5戦全敗で勝ち星を挙げることはできなかった。
切り替えて臨みたい2戦目は、昨年3位の日大との対戦。格上相手に一矢報いたいところだが、体格差を生かされあっけなく場外へ出される慶大陣。副将・長谷川貴が相手を場外に倒しこむ華麗な上手投げを披露するも、奪った勝利はこの1勝だけ。強豪との試合が続き格の差を見せつけられながらも、1部昇格へ残る希望を持って予選3戦目へ続いた。
決勝トーナメント進出への可能性が残る中で迎えた予選最終戦の相手は、駒大。予選突破のため一つでも多く星を挙げたい慶大は先鋒・中村隼が奮闘。相手の変化をつけた立ち合いに素早く対応すると、体勢を低く保ったまま速攻で圧倒し、押し出す。その後連敗して迎えた副将戦で長谷川貴が力量で相手を上回り、押し出しで勝利。大将・長谷川大も相手の押し込みをうまく利用する技ありの引き落としで退け、強豪相手に3勝2敗と勝ち越した。以上3試合戦って1勝4点でAクラス8位となり、壇場で決勝トーナメントに駒を進めた。またその結果、7月14日に石川県で開催される第9回全日本大学選抜相撲金沢大会と8月14日に青森県で開催される第54回全日本大学選抜十和田大会への出場が決まった。
◇Aクラス優秀8校決勝トーナメント◇
<1回戦>
慶大 0対5 東洋大
中村隼●(押し刺し)○干場
中村一●(押し出し)○深井
北原●(送り出し)○羽出山
長谷川貴●(叩き込み)○重松
長谷川大●(寄り切り)○浅野
結果:Aクラス優秀8校決勝トーナメント1回戦敗退
6年ぶりの出場を決めた全国大会へ弾みをつけるべく臨んだ優秀8校決勝トーナメント1回戦の相手は、昨年の団体戦覇者・東洋大。Aクラス予選を全勝で突破した相手の勢いに圧倒され、あっけなく全敗。善戦したものの、一敗地に塗れる結果に終わった。それでもAクラス昇格と全国大会出場を決める、大躍進の団体戦となった。
個人戦
◇予選トーナメント◇
<1回戦>
北原●(送り出し)○チョイジルスレン(日体大)
胡華興(薬4・慶應義塾)●(寄り切り)○長谷川(早大)
中村一●(寄り切り)○井田(拓大)
中村隼●(押し出し)○宇都宮(明大)
長谷川貴●(寄り切り)○加藤(日本大)
好成績を残した団体戦の余韻に浸る間もなく行われた個人戦。慶大からは5名の選手が出場した。初めに登場したのは団体戦の中堅を務めた北原。立ち合いからまわしを取られると、上体が浮いてしまい押し出されてしまう。続いて今大会個人戦のみの出場となった胡華興(薬4・慶應義塾)が土俵に上がるも、相手に一瞬で寄り切られ敗北を喫する。団体戦では二陣を戦った中村一は開始から強豪校の選手に一気に場外へ追いやられ、手も足も出ずにここで敗退。相手に下手に入られ押し出された中村隼も1回戦敗退となり、残るは長谷川貴のみとなった。仲間の声援を受け土俵に上がる長谷川貴だが、立ち合いからまわしを取られ、寄り切られてしまった。個人戦に出場した慶大の選手は皆一回戦敗退に終わり、この東日本大会は幕を閉じた。
個人戦での結果は振るわなかったものの、団体戦ではAクラスの強豪との厳しい戦いを強いられる中、見事ベスト8に食い込み悲願の1部昇格を達成した。東日本学生相撲選手権大会での8強入りは昭和39年以来と、実に55年ぶりの快挙となり、主将の長谷川大も「今はよく頑張ったと褒めてあげたい」と笑顔でチームの健闘を称えた。さらに今回の収穫については「今日で1部の強豪校と言われるようなところとも試合ができるし、勝機があるということが分かった」とコメントし、今後に向けての確かな手応えを感じたようだった。チームの次なる指標は6年ぶりの出場となる全国大会。今年で創部100年を迎える慶大相撲部の快進撃に今後も目が離せない。
(記事:堀口綾乃・栗栖翔竜 写真:結城和臣・宮崎柚子)
◇選手コメント◇
長谷川大起(総4・木造)
――今日を振り返って
そうですね。本当に良い内容で相撲を取れました。各々がまぐれではなく、ちゃんと自分の相撲を取れた結果かなと思います。
――ご自身の取り組みを振り返って
4年として、主将として、試合の懸かった2対2の大将戦で何度もやらせてもらえて、そこでちゃんと勝ち星を挙げられたことは大きく評価していいと思っています。
――特に評価できる取り組みは
やっぱり早稲田戦は意識しているので、そこで勝ち星を挙げられたことは大きいなと思います。
――Aクラスベスト8入りに繋がった駒大戦を振り返って
後輩の2人が頑張ってくれました。ベスト8はうちの監督ですら覚えていないぐらいのことなので、何としても1部昇格を目指してやろうという気持ちで入れました。
――ベスト8という結果に終えられたお気持ちは
本当にすごいことです。入部したときは2部から絶対に上がれないし、まさか私の代で東日本の1部に上がれるとは思っていなかったので、今はよく頑張ったと褒めてあげたいです。
――今大会に向けてやってきたことは
明確に部の目標を決めて、ミーティングもたくさん重ねてきたので、部の目標をちゃんと一本にできて頑張ってこれたかなと思います。
――今大会の収穫は
部員の中にも、私の中にも、「1部の大学とは戦えない。勝負にならない」という意識があったんですけど、今日で1部の強豪校と言われるようなところとも試合ができるし、勝機があるということが分かったので、今後のシーズンに向けて良い弾みがついたと思います。
――今後のチームの目標は
とりあえずは7月14日に金沢で全国大会が行われるので、そこに向けてしっかりと稽古していきたいです。
長谷川貴規(総2・木造)
――どのような気持ちで大会を迎えましたか
去年は4年がいなかったから気持ちの面で楽な部分はありました。今年は4年の先輩がおり、負けたら後がない先輩への恩返しとして自分にできることを精一杯やっていこうと思っていました。
――自身の活躍もあり決勝に進出しました
とりあえずホッとしました。去年は金沢に行けませんでしたが、目の前のことを精一杯やって結果が出たので、これまでの努力は間違ってなかったと認識できました。
――方で課題は見えましたか
気持ちの面でムラがあると感じたので、安定した相撲を取っていきたいです。団体戦で気力を使い果たし、個人戦では思うような力を出し切ることができませんでした。金沢大会ではチームの一人としてだけでなく、一選手としても自覚を持って相手に立ち向かっていきたいです。