快進撃を続ける慶大相撲部が、伝統ある十和田の土俵で熱い勝負を繰り広げた。全国から選抜された12校のみで行われる今大会。慶大は東日本でしのぎを削る日体大、東洋大、日大という強豪を前に勝利を重ねる事ができず、全体12位という悔しい結果に終わった。
それでもケガから復帰した大森慎之介(環3・東京学園)が個人戦で3回戦に進出する活躍を見せ、秋のリーグ戦、インカレに向けて弾みをつける大会となった。
第54回全日本大学選抜相撲十和田大会
8月14日(水)9:00~@十和田市相撲場
団体戦
◇慶大出場選手◇
先鋒 長谷川大起(総4・木造)
二陣 大森慎之介(環3・東京学園)
中堅 長谷川貴規(総2・木造)
副将 中村隼輔(商1・慶應義塾)
大将 北原英嗣(政3・慶應義塾)
◇予選トーナメント◇
<1回戦>
慶大 1対4 日体大
長谷川大○ (上手投げ) ●菊池
大森● (押し出し) ○高橋
長谷川貴● (引き落とし) ○中村
中村隼● (はたき込み) ○デルゲルバヤル
北原● (寄り倒し) ○チョイジルスレン
<2回戦>
慶大 0対5 東洋大
長谷川大● (突き出し) ○干場
大森● (突き落とし) ○重松
長谷川貴● (寄り切り) ○大塔
中村隼● (押し倒し) ○羽出山
北原● (はたき込み) ○深井
<3回戦>
慶大 1対4 日大
長谷川大● (引き落とし) ○石岡
大森● (押し倒し) ○榎波
長谷川貴○ (押し出し) ●イェルシン
中村隼● (寄り切り) ○沢田
北原● (押し倒し) ○竹内
結果:0勝2点12位
雨上がりの十和田に全国から選抜された12校が集結し、熱戦を繰り広げた。始めに行われた団体戦では決勝トーナメント進出8校を決めるべく、3回の予選が行われた。慶大は先鋒に主将の長谷川大、続く二陣にケガから10ヶ月ぶりに復帰した大森を並べるなどした新たな布陣で、猛者たちに挑んだ。
予選1回戦の相手は前回大会優勝の日体大。強豪を相手にまずは先鋒・長谷川大が、相手の押し込みを巧みに利用した上手投げで勝利を収めた。続いて二陣の大森。「先につながる相撲をしようと思った。」という取り組みは土俵全体を使う大きな立ち回りとなったが、最後は相手に押し出され敗れた。後続も白星を挙げることは出来ず、1勝4敗で負け越した。
2回戦は東洋大との対決。先鋒の長谷川大、二陣の大森が相次いで相手の突っ張りを前に倒れると、中堅の長谷川貴、副将の中村隼も組み合いで競り負け、大将・北原も相手の変化を前に上体を崩し、はたき込みを決められた。一勝も挙げられず、苦境に立たされた。
決勝トーナメント進出に向けて後が無い状況で迎えた3回戦の相手は日大。7月の金沢大会で完敗を喫した相手に一矢報いたいところだったが、今回も厳しい戦いが続いた。中堅・長谷川貴が相手の激しい突っ張りを柔軟にかわし押し出しで逆転勝利をするのが精一杯。待望の勝利とはならなかった。
以上の結果、慶大は0勝2点の12位に終わった。
個人戦
◇トーナメント◇
<1回戦>
中村隼● (押し出し) ○志賀(東農大)
長谷川大● (寄り切り) ○井田(拓殖大)
大森○ (不戦勝) ●川副(日大)
北原○ (下手投げ) ●斉藤(拓殖大)
<2回戦>
中村一● (押し出し) ○深井(東洋大)
大森○ (突き落とし) ●川畠(同志社大)
長谷川貴● (掬い投げ) ○篠田(明治大)
北原● (寄り倒し) ○日下(東農大)
<3回戦>
大森● (押し出し) ○大塔(東洋大)
団体戦の熱気も冷めやらぬ中始まった個人戦トーナメント。慶大のトップバッターは中村隼。 積極的な攻めの姿勢で挑むも、相手の力に押し出され、 悔し涙を流す結果となった。続いて長谷川大が土俵へと上がる。団体戦初戦では見事な上手投げを決めた長谷川大だったが、相手にまわしを取られ、上体が浮いてしまう。結果、寄り切られ1回戦で姿を消した。このままでは終われない慶大、北原が土俵へと上がる。立ち合いから一気に相手を追い詰め優位に立つが、土俵際の粘りに苦戦を強いられる。しかし最後には見事な下手投げを決め、2回戦へと駒を進めた。
2回戦には大森、北原に加えて1回戦シードの中村一稀(経4・慶應義塾)、長谷川貴が登場。中村一は立ち合いこそ相手と互角にぶつかり合うも最後は押し出された。長谷川貴、北原も終始相手を圧倒する相撲を取りながら土壇場で技をかけられ、敢えなく敗れた。立ち合いから素早い動きを見せた大森が、相手の体勢を崩す突き落としで慶大唯一の3回戦進出を果たした。
3回戦に勝ち進んだ大森だったが、立ち合いから相手の力に苦しめられる。土俵際まで粘りを見せるも最後は押し出され、個人優秀16選手決勝トーナメントには進めなかった。それでも復帰戦でのこの健闘は、慶大相撲部にとって明るい話題となった。
団体戦では十分に力を発揮出来ず、結果として全国の強さを痛感する大会となったが、それでも団体戦、個人戦で選手それぞれが粘りを見せた。特に前回の対戦で勝ち星を挙げることの出来なかった日大から一勝をもぎ取ったのは慶大相撲部の進化の証だ。7月の金沢大会、そして今大会と続いた全国の舞台は、確実に彼らの力となっている。大舞台での熱戦に加え、主力の復帰も果たし、経験と実力を兼ね備える充実した戦力で秋のリーグ戦に臨む。
(記事・写真:栗栖翔竜、小林由和、宮崎柚子)
◇選手コメント◇
長谷川大起(総4・木造)
--団体戦初戦、どのような気持ちで臨みましたか
実は初戦の相手が高校の同級生だったんです。大学四年間で初めて対戦して。それも地元の土俵で。何か巡り合わせのようなものを感じました。だからこそ、思い切って当たっていく自分らしい相撲を取ろうと思い試合に臨んだので、勝つことが出来て良かったです。
--個人戦を振り返ってどうでしたか
自分なりに当たったんですけど、 相手の方が強かった、という感じですね。
--十和田大会、どのような思いを抱えていましたか
この十和田大会は長らく出ることが出来ていなかった大会で、1部のトップオブトップの選手が出られる大会なんです。だから私自身がまず楽しんで、そして光栄な機会だと思ってやろうと考えていました。小学校の頃からこの土俵で育ってきたのでより楽しめました。
--今大会で得たものはありますか
この試合は秋のリーグ戦につながってくると思いますし、怪我から復帰した大森のはじめての試合なので、こういうので相撲を取る感覚は少しでも思い出せたかなと思っています。
長谷川貴規(環2・木造)
--今日の試合を振り返って
1部校との地力の差というのを結構強く感じました。今回団体戦で1勝させて頂いたのですが、それも結構相性だったりとか時の運といったものが強く関係していたかなあと。やはり地力の面ではまだまだ自分の鍛え方が足りないかなと今回の大会を通して実感しました。
--凱旋試合となりましたが、特別な想いなどは
特別な心境は特に無かったですかね(笑)。この青森の十和田大会は、毎年青森の選手は招待選手という形で招待されて(試合に)来れるので、実際去年もそうでしたし例年通りかなという感じはありました。ただ今年は去年と違って、個人だけではなく団体として出場ということで去年よりモチベーションはかなり高く持っていたのかなと思います。
--1部校を破るために必要なことは
とりあえず自分の苦手としている分野のことは今日ある程度わかったので、そこを当然技術面で埋めていくというのがまず一つと、技術面だけではなく身体的な問題もあるのでそっちに関しては今まで以上にまた稽古に励んで克服していけたらなと思っています。
--次戦に向けて意気込みを
今年1年を通して東日本大会を勝ち上がった結果で金沢大会、十和田大会と今までなかなか出ないような大会でトップの選手と戦ったのですが、いずれの試合でも地力の差というのを痛感しました。これからも試合は続くのですが、いつまでも地力で負けていると言っていられないのでそこを克服していけるようまた頑張って稽古に励んでいきたいと思います。
大森慎之介(環3・東京学園)
--復帰戦でしたがどのような意気込みで臨みましたか
1年ぶりの試合だったのでケガに気をつけました。また秋のリーグ戦やインカレにつながる相撲を取りたいと思っていました。
--周りの選手からの期待やエールもありましたね
少しでも早く復帰することでチームに勝ち星などで貢献したいと思っていました。
--団体戦を振り返って
結果は出ませんでしたが自分の相撲を取れたので、次につながったという点で良かったかなと思います。
--個人戦では快進撃を見せました
ケガをしていた時期に自分を見つめ直して練習ができていたので、すぐに実力を発揮出来ました。ケガをする前と変わらない戦い方で戦えた事が大きいですね。
--課題と収穫は
課題はまだまだ体の動きが万全ではなかった事です。トレーニングを重ねながら秋までにコンディションを整えていきたいです。収穫は自分の相撲を取りきれば上位の相手ともしっかり戦える事がわかった事なので自分の相撲を磨いていきたいと思います。