本来なら東京六大学春季リーグの開幕日であった4月11日。試合は延期となりましたが、慶應スポーツでは開幕前取材を行い、慶大野球部の選手の様子をお届けします。
第5回は副将の2人、嶋田翔選手(環4・樹徳)(以下嶋田)、木澤尚文選手(商4・慶應)(以下木澤)にお話を伺いました。
ーーまずは他己紹介をお願いします
木澤:嶋田は、チームナンバー1の存在感を持っていて、実際に僕がマウンドに立っていて空気が悪い方向に流れそうになった時も誰よりも声を出してチームを鼓舞してくれます。この嶋田の明るい性格に助けられている部員も多いんじゃないかなと思います。
嶋田:木澤は、野球に対して誰よりも熱意をもって取り組んでいます。ピッチャーであり副将という二足のわらじを履いていて、難しいポジションだと思いますが、そこをみんなに姿勢で見せています。すべての時間を野球に注いでいるところがすごいなと思います。
ーーお2人が副将に決まった経緯は
木澤:以前から副将をやりたいと思っていました。自分が1、2、3年と携わっていく中で、ピッチャーというポジションが、人数が多いにも関わらずチームと距離感があると感じていました。なので副将をやることでピッチャーとチームの関係を深めたいと思いました。僕らの代はピッチャーが鍵を握ると思っていたので、そういう面でもピッチャーである僕が副将になることが必要なのかなと思いました。
嶋田:僕は元々キャプテンに立候補していましたが、結果として瀬戸西(純=政4・慶應)がキャプテンに選ばれました。しかし2年次からずっと試合に出して頂き、優勝も経験させて頂いたので今度は自分がチームを引っ張って優勝して、後輩にいい思いをさせてあげたいなという思いがありました。また、自分が副将という役職に就き、責任感を持って取り組んだ方がチームにもいい影響を与えられると思い立候補しました。
ーー2人での思い出は
木澤:2人でご飯を食べに行くこともありますし、お互いにチームの相談とかもします。嶋田が何考えているのかはもう見たらわかりますね(笑)
嶋田:木澤が一番何考えてるのかわからないんですよ!ミステリアスです(笑)。僕は結構わかりやすくて、隠し事とかもすぐにばれるんですよね。でも最近は木澤が考えてることも少しずつ分かるようになりました。
ーーお互いの性格はどのようなものだと思いますか
嶋田:2人とも強がりですね。何に対しても意地っ張りというか。
木澤:嶋田は表裏がないところがいいところです。不平不満とかがあるとみんなの前でビシッと言いますし、誰かに媚びたりするようなこともなく素直で明るい人間なのでみんなが慕うんじゃないのかな。
嶋田:(木澤は)本当にミステリアスなんです。あとオンオフの切り替えがしっかりしてますね。スイッチが入った時はすごい集中を見せてくれます。
ーーお互いに直してほしいところ
木澤:(嶋田は)寮でもうるさいです。本当に、冗談抜きで、2階の部屋にいても1階の食堂とか風呂にいる嶋田の声が聞こえてきます。ずっとオンなんです。
嶋田:ベッドに入らないとオフにならないという(笑)。木澤の悪いところは責任感が強すぎるところですね。もっと他人に頼っていい場面もあるんじゃないかなと思います。特にマウンドにいる時ですね。もっとチームメイトを頼ってほしいです。
ーー瀬戸西主将の印象は
木澤:僕ら3人でいることが比較的多いのですが、その中でも瀬戸西が一番チームのことを四六時中考えています。皆さんが思っている通り本当に誠実でまじめなキャプテンです。
嶋田:もう本当に、ザ・真面目って感じです。
木澤:瀬戸西こそ1人で背負いこみすぎで、僕らに任せてくれたらいいのですが、僕らが頼りないのか…(笑)。
嶋田:責任感ありすぎ。たぶん僕が責任感なさすぎるんでしょうね(笑)。
ーー昨年を振り返っていかがですか
嶋田:収穫もあり、課題もある年だったなと思います。春に自分の思うようなバッティングができるようになってきて、これからという秋に大不調で。その中でも大久保前監督に使って頂いて、不調の中でも試合でチームのために何かやろうと考えていました。それが今年にもつながっているんじゃないかなと思います。
木澤:不甲斐ない1年だったなあと思います。春は2戦目で先発を任されましたが思うようなピッチングができない試合が多かったです。秋に関しては肩のコンディションが良くなくて、戦力になり切れないままチームの優勝が決まりました。優勝して4年生を送り出せたのはすごくうれしかったのですが、心のどこかで引っかかるというか、自分自身への不甲斐なさを感じました。精神的に成長できたというか、野球についてより深く考える1年だったなと思います。
ーー印象的な試合は
嶋田:立大戦1回戦です。同点で田中誠也投手からライト方向へのフェンス直撃を放ち、勝ち越しました。1年春に代打で出場して三振したのが田中誠也投手でした。その時に自分の中で大学生ピッチャーのレベルの高さを実感しましたし、3年間ずっと監督から「田中誠也、田中誠也」と言われ続けていました。その中で最後に田中誠也投手から打てたというのは自分が今までやってきたことが出せたのかなと感じました。
木澤:僕は秋の早慶戦3回戦です。優勝が決まってもなお最後のアウト3つの遠さを感じました。河合主将(大樹=H31総卒)の時もそうでしたが、アウトを取ることの難しさを実感しました。また、早慶戦独特の雰囲気というか、球場のプレッシャーというか。野球にプラスアルファでもたらされる力というのを感じましたね。技術対技術の勝負ですが、最後は人対人なんだなあと思いました。
ーー個人的ベストプレーは
木澤:明治神宮大会で、城西国際大戦の時に先発したのですが、状態があまり良くなくて、球数が嵩んだり思うように投げれなかったのですが、粘って粘ってなんとか、たった5イニングでしたが今までなら崩れていたところを粘れたということは収穫だったと思います。悪いなりには試合を作れたのではないかなと。
嶋田:ベストプレーは先ほども言った立大戦1回戦ですね。ずっと逆方向というのが課題だったので、逆方向の長打を田中誠也から打てたというのはベストプレーだったのではないかと思っています。
ーー3度目の優勝でした
嶋田:4年生が喜んでいるなというのがどの代も印象的です。やはり4年生の力というのが最後は一番大事になっているのかなと思います。
木澤:4年生がどれだけ熱量を持って取り組めるのかというのがやはり大事だなと思います。優勝したどの代の4年生も、試合に出ている出ていないに関わらず一生懸命チームの勝利に向かって貢献していました。学年が上がるにつれてそういうのを肌で実感しました。学年が近づくにつれて4年生の偉大さを実感しました。
ーー昨年の副将方について
木澤:何か直接言われたということはないですね。柳町さん(達=R2商卒・現福岡ソフトバンク)は何かを多く語る人ではなくて、それでも淡々と練習する姿とか、何も言わずともチームの先頭に立って練習するという、背中で語る方でした。言葉ではないところで引っ張る強さは流石だなと思っていました。
嶋田:(柳町さんは)4年生になってから特に練習量が増えていて、グラウンドで達さんを見る機会がみんな多かったと思います。それが自然とチームにいい影響を与えていたのかなと思います。(もう一人の)爽(金澤=R2商卒)さんは、何でも屋さん(笑)。すべてにおいてサポートしてくれました。
木澤:チームへの貢献度が半端なかったです。心を鬼にして厳しいことも言ってくれました。
嶋田:あの役は絶対苦しいよな。
木澤:人に言うというのは自分も出来ていないと説得力が生まれてこないので、金澤さんほど周りに尽くしている人が言うからその厳しい言葉がちゃんと届くんだろうなと思いました。
嶋田:心に突き刺さる言葉をいつも頂いてたので、それを受け止めて前を向いてやることが選手である僕らのやることだったのだと思います。あきらさんと達さんがいたからこそ、うまくチームが回っていたのかなと思います。
ーー今までで一番影響を受けた人は
木澤:2つ上の田中裕貴(H31環卒)さんです。投手リーダーをされていて、後輩ながら失礼ですが、3年次まではリーグ戦で主力として投げるような方ではなかったです。それでも投手リーダーとしてチーム全体に対して厳しい言葉を浴びせながら最終的に4年次にはリリーフエースとしての立場を築き上げていました。自分に厳しく、他人にもしっかり言って周りに気配りすることの大切さは田中さんから学びました。今も連絡を取っていて、田中さんを手本にしています。
嶋田:僕は一昨年の主将の河合さんです。河合さんは4年春にベストナインを取って、チームの中で欠かせない存在だったのですが、秋は東大戦で手を骨折してしまいました。河合さんはそれまで口数は多くなかったですし、1人で黙々と練習していて、背中で語りチームを引っ張ってくださる方でした。しかしけがをしてから、自分が試合に出られないということを分かると、色々な選手に話しかけてくださるようになりました。リーグ戦での自らの経験談や自分が感じていることを話してくださるようになったことが、僕にいい影響を与えてくれました。河合さんがそういった形でチームに携わってくださったことが、僕だけでなくほかの選手にもいい影響を与えてくれたのかなと思います。これがキャプテンのあるべき姿というか、4年生の役割だったのかなと気づき、僕もそんな4年になり、後輩にそれを伝えたいという思いがあります。
ーー昨季のMVPを選ぶならどなたですか
木澤:森田(晃介=商3・慶應)でしょうね。森田なくして優勝はなかったと思います。春のリーグ戦が終わって、夏から彼が死に物狂いで練習しているのを見て、僕も負けられないなと思いながらもけがで中々歯がゆいところもありました。4年生と森田の頑張りがあったから優勝ができたのだと思います。
嶋田:僕は郡司さん(裕也=R2環卒・現中日)だと思います。結果もそうですし、すべてにおいてキャプテンがすごかったなと。チームの中でももちろんそうですし、六大学一、日本一のMVPだったなと思います。
ーー今年のチームの雰囲気は
木澤:監督が新しくなったというのもあって色々不安があってのスタートだったのですが、堀井新監督も反対意見や思うことがあればぶつけてほしいという方なので、僕らも疑問があれば監督に伝えますし、選手間のミーティングも増えました。選手と監督とでいろいろ話し合ったりしていて、昨年より言葉が飛び交い、考えながら野球をするという雰囲気ができてきたのではないかなと思います。
嶋田:チーム内のことを言うと、本当に家族のようないいチームができてきたなと思います。今年僕らの代の4年生がどれだけベンチに入れるかはわからないのですが、下の学年とすごく仲が良くて、下級生が僕らにどんどん指摘もしてくれます。そして僕らも下級生に言いやすいので、本当に家族のように思ったことを言い合える仲になってきたなと思います。
ーー堀井哲也新監督の印象は
木澤:チームで誰よりも野球が好きです。
嶋田:大好きだよな(笑)。すごいです。
木澤:なので持っている知識を僕らに伝える時間を設けて下さるので、僕らとしても野球の知識の幅も広がりました。監督の熱量をすごく感じる分僕らもやらなきゃという気持ちになります。
嶋田:新しく来た監督というのは不安とかもあると思うのですが、それを僕らに感じさせないくらいエネルギッシュで、それが伝わってくるので勝たせてあげたいなと思わせてくれる監督です。
ーーこの冬特に意識して練習したことは
嶋田:バッティングです。ずっと監督に言われていたのですが、バットを内から出すということと、ピッチャーをしっかり見ること、それだけですね(笑)。今までずっと、量を振ってきて、自分の中ではある程度振る力もついてきたと思うのですが、堀井監督に教えて頂いた2つのことをテーマに練習しました。
木澤:僕はフォームの再現性を出すことをテーマに練習しました。昨年の段階でいいボールは自信を持てるようになったのですが、ムラもありました。今年はそのムラをいかになくすかというところで、毎球毎球同じフォームで投げるというのは現実的に難しいのですが、それに近づけるためにトレーニングしました。
ーー今年のチームの強み、弱みは
嶋田:まず強みをいうと、ピッチャー陣がやばいです(笑)。誰が投げても安心感があります。守備をしていても、このピッチャーなら任せられるというピッチャーが両手で収まらないくらいいるので(笑)。ピッチャー陣がいい分野手がしっかりしなきゃいけないなとは思います。
木澤:弱みは…。難しいですね(笑)。まあ弱みというか、4年生がどれだけ頑張れるかじゃないですかね。4年生が(試合に)出ている人数が少なかったので、4年生(の多く)がリーグ戦を経験できていないというのは現時点では弱みかもしれないです。下級生に頼っている部分はあるのかなと。例えば一昨年の法大戦で延長戦で勝った試合は4年生の底力を感じましたし、リーグ戦は結局、最後は4年生にかかってくるというのは分かっているので、そういう面で僕ら含め4年生がどれだけ頑張るかですね。
ーー4年生の雰囲気はいかがですか
嶋田:みんな仲がめっちゃいいです(笑)。
木澤:結構人に厳しく言える4年生が多いんですよ。なので僕らが何もしなくてもチームの雰囲気を作ってくれるリーダー的な存在が多いです。そういう面では強いのではないかなと思います。
ーー下級生で期待している選手はいますか
木澤:僕は(期待しているのは)若林(将平=環3・履正社)ですね。正木(智也=政3・慶應)とかがマークされると思うんですけど、その後を打つ若林がどれだけ打てるのかが勝率にかかわれるって来ると思います。なので若林にめちゃくちゃ期待しています。
嶋田:難しいね(笑)。
木澤:他にもいっぱいいるでしょ!
嶋田:いるけど…、難しいな。いすぎて困ります。まあでも渡部遼人(環3・桐光学園)かな。1年秋にスタメンでずっと出場していて、昨年は自分の思うようなプレーができていなかったと思います。交代で守備についたり代走で出場という場面が多かったのですが、その中でもはるとの持っている能力を考えたらスタメンで出てチームに与える影響が大きいです。あの守備はだれが見てもすごいなと思う部分なので、チームを救うような選手になってくれるんじゃないかなと期待しています。
ーー今季一番警戒してる学校、選手は
木澤:まあどこも怖いです。
嶋田:怖いな(笑)。
木澤:けどやっぱり、早稲田の瀧澤君は、昨年も僕から打たれていますし今年も状態はいいと聞いています。どこの大学も厳しいですが、とりわけ最後の最後に早稲田に勝つのは難しいなということは3年間でわかってきています。その早稲田のキーマンは瀧澤君(虎太朗=スポ4・山梨学院)だと思うので、警戒しています。
嶋田:僕は、早稲田の早川選手(隆久=スポ4・木更津総合)です。今年キャプテンにもなっていて、責任感もすごく強いと思うので、より一層強くなった早川選手を打たなきゃいけないのは難しいと思います。今まで以上に僕らもしっかりやらなきゃいけないなと思っています。
ーー今季のチーム目標は
木澤:勝ち点5での完全優勝と、日本一です。
ーー個人の目標はいかがですか
嶋田:僕はランナーがいたらすべて返すようなバッティングと、今年は簡単に打席から出たくないので粘り強くいこうかなと思います。また、数値として現れないのですがチームが静かにならないように、ベンチにいてもグラウンドにいても常に声を出してチームを盛り上げていきたいなと思います。
木澤:僕は、数字で言うと年間10勝したいです。やはり1年間投げるというのは絶対条件ですし、苦しい場面とかここぞ、という試合で任される投手でなければならないなと思っています。
ーーファンの方に向けて一言お願いします
木澤:ケイスポをご覧になってくださっている皆さん、日頃より慶應義塾への応援ありがとうございます。今年こそ、昨年は成しえなかった勝ち点5での完全優勝をできるようにチーム一丸となって頑張っていきます。応援よろしくお願いします。
嶋田:日頃よりケイスポをご覧になっている皆さん、いつも応援ありがとうございます。今年は早稲田に勝って、完全優勝してもう1回日本一を獲れるように頑張っていきたいと思っているのでこれからも応援よろしくお願いします。
ーーありがとうございました!
(この取材は3月31日にオンラインで実施しました。)
(取材:左近美月)