延期となっていた東京六大学春季リーグが8月10日に開幕する。
それに先立ち、慶應スポーツでは開幕前インタビューを実施した。
第4回は2年内野手、古川智也選手(環2・広島新庄)にお話を伺った。
2番、サード、古川くん。お馴染みのアナウンスを受けた古川智也(環2・広島新庄)は、わずか15歳にして甲子園の土を踏んでいた。高校野球において1年夏にレギュラーを掴み取る選手は珍しい。数ヶ月前まで中学生だった少年は2番打者としてチームの繋ぎ役を務め、先輩からの楽しめという言葉を胸に甲子園で堂々のプレーを見せた。そんな夢の舞台で苦汁をなめさせられた因縁の相手は今も神宮のマウンドで存在感を放っている。早川隆久(スポ4・木更津総合)。今年度のドラフト会議で1位指名が確実視されている早大のエースだ。抜群のコントロールと高い球の質に圧倒され、ヒットを打つことができなかったという相手。チームとしても木更津総合に2–0で敗れたあの夏から4年の月日が流れた。広島新庄で主力として活躍し、最高学年では主将も務めた古川は六大学の高いレベルで野球がしたいと考え、尊敬している広島新庄・迫田監督の出身校である慶大を志した。慶大野球部の自分たちで練習を作り上げる姿に驚き入部した際にはレベルの高さを痛感するも、決して自分を見失うことなく基礎を固めて着実に実力を伸ばしていった。
フレッシュリーグでは憧れのユニフォームに袖を通し、神宮で躍動。2年春のOP戦ではセカンドのレギュラーをほぼ手中に収め、目標とする瀬戸西純(政4・慶應)とともに鉄壁の二遊間を形成した。そんな中、コロナウイルスの影響でOP戦は中止。春季リーグ戦は延期が決まり、練習も満足にできない日々が始まった。調整が順調だった古川にとっては思いもよらぬ逆境だったことだろう。しかし、「自粛期間があったからこそ気づいたこと、成長したことがあったので良い期間になったと思う」と話すように逆境を前向きに捉え、その苦難すらも成長につなげて見せた。自粛期間では2年になってから力を入れて取り組んでいるウエイトトレーニングで身体づくりに励んだという。
彼を一言で言い表すなら、野球が上手い選手だ。身体のサイズは大きいとは言えず、目を見張るような長打があるわけではない。しかしながら、堅実な守備と繋ぎのバッティング、ファールで粘る技術や選球眼など、投手からすればこれほど嫌な打者はいないだろう。迫田監督の「力がなければ頭を使え」という言葉を信条に掲げ、常に相手の嫌がることは何かを意識してプレーする古川は、自身のプレースタイルについて「いぶし銀」だと照れ笑いを浮かべながら答える。また、「下山だけにこの学年を引っ張らせたくない」と話すように、チームを引っ張りたいという気持ちは人一倍強い。チームを引っ張る存在になるためにも、今季はとにかくセカンドのレギュラーに定着する。強い意志を持って挑む古川の一番の武器は、守備力だ。高校時代に雪上ノックで鍛え上げた強靭な足腰によって発揮される守備力には誰よりも自信を持っているという。あの夏から4年の月日が流れた。借りを返す舞台は甲子園から神宮へと変わり、袖を通すユニフォームも変わった。それでも気持ちは変わらない。打倒早川、打倒早稲田。リベンジに燃える古川智也の勝利をもぎ取る一打から目を離すな。
(この取材は7月22日にオンラインで実施しました。)
(記事:林亮佑)