9月19日に東京六大学野球秋季リーグ戦が開幕します。それに先立ちまして慶應スポーツでは秋季リーグ戦開幕前インタビューを実施しました。第一回は今年から新たに設置された役職を担う、佐々木勇哉アナリスト(政1・立川)にお話を伺いました。
ーープレーヤー以外のかかわり方ーー
――まずは自己紹介をお願いします
高校は立川高校出身でアナリストとして入部しました。高校時代は水泳部に所属していて野球は選手というよりは見るのが好きです。大学でスポーツの分析に関わりたいと思っていて、その中で野球部を見学させて頂いて今年からアナリストというポジションを置くとのことだったので監督と面談させていただいて入部することになり、アナリストとして活動しています。
――高校時代、水泳部に所属していたとのことですが野球分析に興味を持ったきっかけは
野球をやっていたのは小学校の数年間だったので、ここでやっている選手とはプレーヤーとして共感できることは皆無に近いと思うんですけど、興味を持ったきっかけとしては小さい頃からよく野球は見ていて、僕はジャイアンツのファンなんですけど、プロでも裏ですぐ映像を確認したりVRを使って相手投手の球を体感してみたりするということを知って。あとは侍ジャパンの対戦したことないピッチャーの分析が進んでいることを知って、プレーヤーとしては関われなくても色んなスキルを磨けばチームに関わることができるのではないかと思って興味を持ちました。
――普段は主にどんなことをされているのでしょうか
試合が無い時は練習の動画を僕しかアナリストがいないので全部は撮ることは出来ないんですけど授業の合間にA、Bチームのバッティングを撮ってチーム全体に共有するというのをしています。オープン戦があるとバックネット裏で一球ごとのデータを入力している感じでリーグ戦も同じように試合の映像を見て入力するという感じです。あとは試合後にミーティングがあるのでそこで議事録を取るということもしています。最近は春のリーグ戦が終わったのでチームと個人に対してのフィードバックをしてみるというのをまだ試作段階なんですけどやっています。
――オフの過ごし方は
授業があった期間は結構課題がめちゃくちゃ多くてオフに課題をとにかくやって、部活があるときに持ち越さないということを気をつけています。夏休み期間は地元が東京なので東京の友達と帰って遊んだりたまにはしますけど基本的には日吉の自宅でのんびりしたり(笑)。あとは部活があるとプロ野球がちゃんとは見れないのでしっかりオフのときは見るっていう感じですかね。
ーーチーム全体で勝つーー
――野球部では以前からラプソードを使用しており、さらに昨年からはリーグ戦でトラックマンの利用が始まりました。そのデータから新たに分かったことなどありますか
ラプソード、トラックマンと今まで慶應が使っていたデータ機器との違いは一球ごとのトラッキングデータ、ボールの回転数などを精密に測れるというところですね。今まではピッチャーが投げたボールがストライクボール、またはそれが打たれたかどうかという結果からでしか判断できなかったのがラプソードやトラックマンのデータを見ることで打たれたけどその球は良かったとか回転数とか見てもホップ成分が多いとか球自体の判断ができると思うのでその点は大きいかなと感じています。あとはラプソードに関しては結構投手陣に浸透してきていると思うんですけどトラックマンに関しては項目が多くて送られてきたデータからどう読み解くかという部分がまだ課題があるんですけど、将来的にはトラックマンとラプソードのデータから選手にフィードバックできるようにしたいです。
――プロ野球と比べてアマチュア野球はデータの数に限界があると思いますが
深く入りすぎると逆に分かりにくくなってしまう懸念があるのでセイバーメトリクスに特化した分析というよりは投手なら※1FIPとか打者でいえば※2OPSとかセイバーメトリクスの中でも基本的な指標を使っています。
――昨季は異例のシーズンとなりましたがアナリストという立場から振り返るといかがでしたか
5試合しかないので1試合大量得点をすると一気に打率が上昇してしまうので一概にどのチームどの選手が良かったというのは5試合だけどたまたまというのもあるかもしれないですけど、今回の春のリーグ戦を振り返って各大学のデータを見ると早稲田がかなり数値的には良かったですね。慶應も良かったんですけどそれ以上に早稲田が良かったです。秋も早稲田は早川(隆久=スポ4・木更津総合)投手中心でくると思うので、慶應はそこに対してどうアプローチしていくかが鍵になるという感じです。
――慶應の良かったところは
打撃ですかね。打撃に関してはチーム打率なども良かったかなと思います。それに加えて代打の選手がホームランを打つこともあるなど、一人がすごく良かったというよりはチームとして控えの選手も結果を残したことがチーム打率の良さにつながっているんじゃないかなと思います。
ーー選手が求めるデータをーー
――秋季リーグ戦が近づいていますが現在行なっている取り組みを教えてください
まだ本格的に相手分析は開始していないんですけど、少し前までは春のリーグ戦の振りかえりデータというのを投手に関しても野手に関しても個人ごとでちょっとしたレポートみたいなものを出して振り返る時間を作りたいと思っていて、今まではどうしても相手分析に時間を取られていてどうしても自分のチームの分析はあまりしていなかったのでそこは変えていきたいと思っています。現在やっていることは、慶應はオープン戦が続いているので試合のデータ入力と多少送られてくる他大学のデータ入力をしています。データが貯まってきたら分析ができるんですけどまだ本格的なところには入れていないのですね。春のリーグ戦では分析は前からあったデータ班の4年生中心にやってもらっていて、僕は試合のデータ入力が主な仕事だったのでこれから学ぶことがいっぱいあると思います。秋に関しては少しずつ僕も先輩たちのやっていることを見ながらやっていきたいなと思っています。
――アナリストの目線から優勝のキーマンは誰だと思いますか
誰か一人というのは分からないですけど、打撃と投手陣がバランス良くやることが大事かなと思います。他大学がかなり個人力で来るのに対して、慶應はチーム力で、一人一人の力を合わせて勝つというのを練習からも意識していることなので、全員が力を合わせることが優勝するための道かなと思います。
――他大学で警戒している選手は
有名な早川投手とか各チームのエース級を打てなかったというのが反省としても出て、エースを打ち崩すというところをチームで意識しているのでそこは警戒しています。
――佐々木さん自身のこの4年間の目標は
今年からアナリストというポジションを立ち上げたということでまだ走りながら色んなことを決めている段階で形としてもしっかり確立できていなくて、竹内大助助監督など多くの方が支えてくださって今はできています。どうしても人員不足というのが課題なので来年以降少しずつ新入生にも入ってもらうために僕も努力したいと思います。データ分析において大事なのは選手が求めるデータをしっかり出せるかというところだと思います。データ分析が自己満足にならないように選手の声に耳を傾けないとチームのためにならないのでそこは肝に銘じながら色々な機器を活用して相手分析だけでなくチームの育成ということに僕も関われるように、そして4年間で組織をしっかり確立して慶應がさらに強くなれるように頑張っていきます。
――最後に来季に向けての意気込みをお願いします
春のシーズンは入力でいっぱいいっぱいだった部分があったので秋のリーグ戦は僕も頑張って分析に関わってチームにためになるようなデータを、主に先輩たちがやっていることを見て学ぶのが大きな部分だと思いますけど少しずつ学んで4年生が卒業する頃には自分がやるべき事がしっかり分かっているようにしたいです。秋優勝することも大事ですけどアナリストの組織をつなげていくことが僕に求められていることなので色々な仕事を見て学んで来年つなげていけるように頑張りたいと思います。
※1FIP(Fielding Independent Pitching)
与四球、奪三振、被本塁打という守備が関与しない3項目から防御率を算出し投手を評価する指標。セイバーメトリクスには本塁打以外の打球が安打になるかは運次第という考えがありこの考えに基づいて考案された。
※2OPS(On-base Plus Slugging)
打者の打撃貢献度を評価するために用いられる指標。簡単な計算(長打率+出塁率)で求められる指標でありながらも得点との相関が非常に強く一般的スポーツメディアでも用いられている。出塁全体を考慮した上で長打に重みをつけることで従来の指標よりも打者を適切に評価できるとされている。
――ありがとうございました!
(この取材は9月5日にオンラインで実施しました。)
(取材:國本葉月)