いよいよ明日から優勝、そして両校の意地とプライドをかけた早慶戦が行われる。春の悔しさを胸に王座奪還を誓う慶大の前に立ちはだかるのはやはり早大。昨年の秋にも全勝優勝、完全優勝の可能性を目の前で消滅されられるなど、慶大の快挙を幾度となく阻止してきた永遠のライバルだ。今年こそ「早稲田に勝って優勝」を達成するために。慶大ナインが今年最後の大一番に望む。
今年の早大は早川隆久(スポ4・木更津総合)のチームだ。主将を務める本格派左腕はラストイヤーに覚醒。今季ここまで4戦4勝2完封を挙げ、防御率0.25と圧巻。特筆すべきは奪三振の多さと与四死球の少なさだ。奪三振率(9回を投げた場合に奪う平均奪三振数)が14.64なのに対し、K/BB(四死球を1つ与える間に奪う三振の数)は8.29。試合を通して半分のアウトを三振で奪い、四死球は出しても2つという支配的な投球を見せている。また、打率.308を記録するなど、自らの打撃、走塁で1点を狙う姿勢も見られる。春の早慶戦こそ新美貫太(政3・慶應)、藤元雄太(商4・慶應)の一発で3点を奪ったが、1ヶ月で難攻不落と化した早川を攻略するのは非常に難しいだろう。1試合に数球あるかないかの失投を見逃さずに捉えることが大切だ。早川と投げ合う木澤尚文(商4・慶應)が1イニングでも長くスコアボードに0を並べ続けられるかどうかが勝負の鍵を握る。
一転して第2戦は継投で戦う今季の早大。先発は徳山壮磨(スポ3・大阪桐蔭)か西垣雅矢(スポ3・報徳学園)だろう。徳山は法大戦こそ打ち込まれるも、その後は復調。西垣は曲がりの大きいスライダーを武器にここまで防御率0.64を記録している。また、終盤にリリーフする柴田迅(社4・早大学院)は力のある速球を武器にここまで無失点と安定感抜群。ハイレベルな投手陣による継投が早大の躍進を支えていることは間違いない。また、第2戦で予想されるのが早川のリリーフだ。もしも第1戦で負け、あるいは引き分けということがあれば、早川が終盤複数イニングを投げ抜くことは間違いない。早川が出てくる前に1点でも多く奪わなければ勝機は霞んでしまう。まずはしっかりと先発投手の立ち上がりを攻め立てることが大切だ。
一方、早大打線に対する評価は難しい。大量得点を奪う爆発力こそあるものの、1点しか奪えないことも。エース・早川が先発する第1戦で4勝を挙げているのに対し、第2戦では1勝3分と、勝ちきれないチームという印象は拭い切れない。早大打線で要注意なのが早慶戦男だ。今季ここまで目立った活躍のない3番・瀧澤虎太郎(スポ4・山梨学院)、4番・岩本久重(スポ3・大阪桐蔭)だが、両者ともに早慶戦通算.350を超える打率を誇り、本塁打も記録するなど好相性を発揮している。早慶戦男の出塁を許すと後ろに控えるのが5番・丸山壮史(スポ3・広陵)だ。今季ここまで10打点を挙げているクラッチヒッターであり、丸山の前に走者を出せば得点につながる確率が高い。さらに、今季からレギュラーに定着している6番・野村健太(スポ1・山梨学院)、春の早慶戦で本塁打を放った7番・熊田任洋(スポ1・東邦)の1年コンビの活躍も光る。中でも野村は打率.357を記録するなど好調であり、2人で1点を奪う連打には気をつけたい。瀧澤、岩本が出塁し、丸山に返され、野村や熊田にたたみかけられるような攻撃をされると大量点を奪われかねないため、慶大投手陣には早大打線を爆発させないことが求められる。第1戦先発の木澤、第2戦先発の森田晃介(商3・慶應)がしっかりと試合を作り、ロースコアの接戦に持ち込むことで勝機が生まれてくる。
勝負のためには最低でも1点が必要。慶大打線が得点を奪うために求められるのは1番・宮尾将(商2・慶應)、2番・渡部遼人(環3・桐光学園)の出塁だ。今季の慶大は3番・廣瀬隆太(商1・慶應)、4番・正木智也(政3・慶應)、5番・福井章吾(環3・大阪桐蔭)のクリーンナップが好調。3割を超える打者たちの前に走者を置くことによって得点が見えてくる。また、8番ながら今季ここまで9打点を挙げている主将・瀬戸西純(政4・慶應)にも期待したい。これまで早慶戦で幾度となく活躍を見せてきた頼れる主将の前に塁を埋めてお膳立てをすれば、最高の結果で答えてくれることだろう。
1勝すれば優勝という状況は一見有利だと思われがちだが、決してそうではない。仮に第1戦で早川を打てずに敗戦ということになれば形成は逆転するだろう。早大に勢いをもたらさないためにも、優勝のための1勝は意地でも第1戦で早川から奪わなければならない。優勝の行方は土曜日の結果で決まるだろう。
(記事:林亮佑)