10月24日(日)、味の素フィールド西が丘にて「JR東日本カップ2021 第95回関東大学サッカーリーグ戦1部 第21節」兼「第72回早慶サッカー定期戦ー早慶クラシコー」が開催される。慶應スポーツでは早慶クラシコにあたり、計14人の選手にお話を伺った。第1弾は國學院久我山出身の4選手、松本雄太(商4・國學院久我山)、山本献(商2・國學院久我山)、村上健(法1・國學院久我山)、山口紘生(商1・國學院久我山)である。高校時代のお話、今季の戦いぶり、早慶クラシコへの意気込みなどサッカーに関することから、人間関係のことまで多岐にわたる内容となった。
(取材日:2021年9月16日)
――まず自己紹介を松本選手からお願いします
松本:慶應義塾大学商学部四年の松本雄太です。久我山からは指定校推薦で商学部に入学したので、紘生と献と同じルートです。ボランチやシャドーなどのいろいろなポジションをやっています。
山本:慶應商学部二年の山本献です。指定校推薦入試で大学に入って、雄太君の直属の後輩になります。三年の宮本稜大(商3・國學院久我山)っていう久我山らしからぬ人も指定校推薦で入ったので、サッカー部が指定校推薦をとっていく流れがありますね。ポジションは右のウィングバックをやっています。
――久我山「らしい」とか「らしくない」というのはどういうことですか
山本:久我山はパスサッカーが特徴なのですが、フォワードの宮本稜大は身体能力を売りにしているので久我山らしくないということです。
――ここにいらっしゃったらよかったですね!それでは、山口選手と村上選手お願いします
山口:慶應義塾大学商学部一年の山口紘生です。自分も指定校推薦で大学に入ったので、雄太君と献君と一緒の流れです。ポジションはボランチをやったりセンターバックをやったりしています。
村上:法学部政治学科一年の村上健です。自分は山口紘生に指定校をとられてしまったので、AOという選択をしてこの大学に入りました。ポジションはキーパーをやっています。
――山口選手と生年月日も同じですよね!
村上:クラスも三年間一緒で、席も三年間前後で、同じ日に祝われて本当に恥ずかしかった高校生活でした(笑)
――三人から見て松本さんのプレーの印象はどうですか
村上:久我山時代には年も年代も重なっていないので、雄太君のことは大学に入るまで知らなくて、大学に入ってから久我山の先輩であることを知ってプレーを見ていました。久我山って知らなくても久我山卒なんだってわかるプレーヤーで、大学では一番技術が高いなって思うし、自分も毎回驚かされるようなテクニカルなプレーでゲームをコントロールしてくれる先輩なので、本当に頼もしいと思っています。
山本:僕は久我山の時から雄太君のことを知っていて、その時から体のキレが段違いでした。僕が高校に入学したときにBチームでやっていたんですけど、キレキレなドリブルでギュンギュンにやっていていつの間にかトップチームに行ってました。
――松本選手は最初、Bチームでやってらしたのですか
松本:僕が高2の時はトップにいたのですが、怪我で変動が大きくて、三年生の時は献とBでやっていました。
――続いて、山口選手、松本選手のプレーの印象はどうですか
山口:自分は雄太君と一緒にダブルボランチで何試合か一緒に出たことがあるのですが、隣にいてくれるだけで安心感がめちゃくちゃあります。自分はあまりボランチをやってこなかったので動きや立ち位置が分からなかったのですが、雄太君が的確に指示を出してくれるし、ボールもおさめてくれるので、一緒にやっててすごいなと思います。
――松本選手からご覧になって、三人のプレーにはどのような印象を持っていますか
松本→山本:献は一年生から慶應のトップチームにいて、僕も大学三年からトップチームにいるので、トップチーム歴はあまり献と変わらない状況です。献は二年ですが、上級生と変わらないような堂々としたプレーを常にやってくれて、彼のストロングである右足のキックやクロスは慶應においてかなり武器になっています。献の後ろにいる酒井が強く言うのですが、そういった人たちとうまくコミュニケーションをとりながら、セットプレーのキッカーを務めるなど、周りに上級生が多い中で二年生ながら堂々とプレーをしている印象です。
松本→村上:健と高校はかぶってないけど、選手権を見にいってかなり活躍していたので、村上健というキーパーがいることは知っていました。Nack5の時は華持っているキーパーだなって思いました。一緒にプレーしてみて、一年生だけれども積極的に声出すし、今までの慶應にないうまいキーパーっていうイメージがありますね。ごつくて力強くてでかいキーパーはいましたけど、キックでチャンスメイクするキーパーはいなかったので、一年生ながら堂々とゴールを守ってくれている印象です。
松本→山口:紘生とは一緒にボランチを組んでいるのですけれども、紘生は僕ができないプレーをできる選手です。ヘディングの競り合いも強いし、対人の守備やカバーリングもうまいし、攻撃の時の縦パスも鋭いものをさせるので、そのような久我山っぽいものもありつつ、僕にはない力強さも持っている逞しい一年生だと思います。
――村上選手と山口選手、お互いのプレーの印象をおしえてください
村上:自分のポジションはずっとキーパーですが、紘生は高校時はずっとセンターバックをやっていて、自分の目の前でゴールを一緒に守ってくれたディフェンダーでした。大学に入ってからは、ボランチというディフェンダーよりも一個ラインが高いポジションを務めているので、多少のプレースタイルは変わったと思います。ディフェンダーをやっている時の力強さとか競り合いの強さとかで、後ろの守備力を増してくれる選手だなという印象に変わりました。
――高校時と大学時で山口選手のプレーに変化があったということですね
村上:今までの守備だけとではなく、攻撃の比率も増した選手になったと思います。
――では、山口選手にとって村上選手のプレーの印象を教えてください
山口:自分は健と練習試合で一緒になったことはありますが、高校の時は一年二年と自分がTOPチームで試合に出ていなかったので、一緒に公式戦に出たのは三年の一年間ですね。健は高校の時からうまいキーパーで、さらにキーパーなのにキックやビルドアップがうまい選手でした。大学に入って今までよりは足元以外の部分が求められるように変わったのですが、それでも一年ながら試合に出ています。プレースタイルは変わってはないと思いますが、求められることが変わってもしっかり出ているのはすごいなと思います。
――山本選手に対しての印象はどうですか
山口:ピッチ内では技術もあって運動量もあって頼りになるんですけど、ピッチ外ではそんなに頼りにしていません(笑)
一同:(笑)
――普段の様子の話題が出たので、他の皆さんにもお尋ねしたいと思います
山本:僕は二年なので、一年生が仕事をやっている時にそれを最後にチェックするので一緒にいることは多いのですが、基本的になめてますね。めっちゃしっかりしているのでなめられる要素はないはずなので、そこは理由を聞きたいです!
村上:久我山高校はあんまり上下関係がないというか、自分たちと献君の代とか、自分よりも下の代では仲いい先輩後輩がため口使うことがよくある感じなんです。献君は高校の時はしっかりしていてまじめだったんですけど、大学に入っていざ一個上の先輩だってなると先輩って感じが一切しないので仕方ないと思います(笑)
――山本選手、納得しましたか
山本:(うなずく)(笑)
松本:みんな高校の時、応援練習とかなかった?
山本・山口・村上:ありました!
松本:あれちょっとビビんない?
山口:めっちゃ怖かったです。
山本:応援練習は怖かったです。
松本:久我山入った時、やばい上下関係なのかなと思ったけど、それが終われば余裕だったけど。
山本:「行け」が一個多くなっちゃうと怒られる(笑)
松本:一人は面白い奴いるよね(笑)
――「応援練習」というものがあるのですね!
松本:高一で入学してすぐの時に、一年生に一個上の先輩が応援を指導するのですが、厳しい雰囲気でした。一年生が並ばされて、一人一人応援を叫ばされるのが怖かったです。
――他の高校ではやってないですよね
松本:たぶん。新入生を締める意図があるのかなと。
――他に久我山のサッカー部に特有なものはありますか?
松本:練習の時も試合の時も絶対に足首にバンテージを巻かなきゃいけなかったんですよ。
山本:僕は高校から一度も巻いたことがありません(笑)
松本:あ、そうなんだ(笑)
一同:(笑)
山本:だから、足首怪我したのを見せにいけないっていう(笑)
松本:そうだよね(笑)バンテージしないで足首ひねったらめっちゃ怒られるっていうからね。
ーーそれでは、大学の話に移っていきたいと思います。山口選手は以前のインタビューで、慶應ソッカー部を「サッカー以前に人としてのふるまい方というところに重きを置くクラブ」とおっしゃっていましたが、具体的に教えていただけますか
山口:久我山の時は高校生というのもあるのですが、ピッチ上でどういうプレーをするかの方がより大事でした。ですが大学生になると、二十歳を超える人も出てきますし、社会に出る一つ手前という位置付けになるので、例えば掃除といった地域社会にどのように寄与するかなどのようなピッチ外の部分に時間を割いていると思っています。監督の教えやチームの伝統としても、ピッチ外でも礼儀・礼節を大切にする文化があります。
ーー今年の前期をチームとして振り返っていかがですか
松本:現時点で降格圏内にいるという事実があって、前期開幕5試合やって勝ち点1というかなり苦しい状況からスタートしました。一回連勝はありましたが、なかなか勝ち点を積み上げられないという状況が今も続いていて、正直苦しいです。ここから自分たちがどれだけ歯を食いしばってこの苦しい状況を乗り越えて、難しい試合で勝ち点を持ってこられるかという戦いになってくると思います。チームは良い雰囲気で、切磋琢磨して苦しい練習に立ち向かっているのですが、何としても後輩に一部の舞台を残すためにも、これからどれだけ試合でよいパフォーマンスを出せるかがカギになっていると思います。
ーー今チームに足りないことはどのようなことですか
松本:全部足らないような気がしますね、正直。他の大学と比べてスポーツ推薦で選手をとれるわけではないという面で、戦力は落ちると思います。攻撃・守備いろんな面で、他の大学との実力差はあると思います。ただ、そのようなところを言い訳にせず、自分たちが日々の練習で成長してどれだけ差を埋め、勝ち点を積み上げられるかにこだわりを持っています。足りない部分はたくさんありますが、そこをどうやって乗り越えられるかを楽しみながらやっていこうと思います。
ーー前期を個人として振り返って、自分自身への評価、課題を教えてください。
松本:怪我が多くて、ベストパフォーマンスでコンスタントに試合をこなせるという状況ではなくて、それが自分の中で一番苦労したところでした。四年間を通じて怪我をしてサッカーをしていない時間の方が多いくらい怪我に悩まされてきました。振り返って怪我がなければもっと上のレベルにいけたと思うこともありますが、怪我があったからこそ成長できたという側面もあります。課題としては、タフさが自分の中で足りないなと思っています。強度の高い試合が続く中で体に不調が出てきたり、自分がずっと抱えている股関節の慢性的な怪我が再発してきたりしました。痛み止めを飲みながら体がボロボロになりながらやろうとは思いますが、チームに迷惑をかけている面もありました。「自分がもっとタフにできていたら」という面はたくさんあるので、残り少ない時間を歯を食いしばってやっていきたいと思います。
――いつごろからの怪我なのですか
松本:大学一年の時からで、大学一年の時は半年くらいサッカーができませんでした。
――山本選手、個人としての振り返りをお願いします
山本:前期は1得点と1アシストをできたことはプラスに捉えています。ただ、関東一部の中ではチーム全体の得点数は一番少ない中でゴール数を上げるには、自分のポジションが関わってくるところだと思うので、そこで得点を生み出す力を上げていかなければならないと思います。加えて、チーム全体から自分のポジションの役割を見たときに、守備もできなければなりません。後ろに酒井(=綜一郎、政4・慶應)さんという頼もしい存在がいますけれども、自分でも自立して守ることができたら失点が減るのではないかと思います。
――山口選手、個人としての振り返りをお願いします
山口:ボランチはあまりやったことのないポジションで、しかも関東リーグのレベルがすごく高い中で、自分に与えられた役割を精いっぱいやるだけで、周りを動かしチームを見ながら自分が与えられた役割以外のプラスアルファの部分は全くできなかったです。自分のポジションは声を出して周りを制御しながらバランスをとる役割だと思うので、試合に出させていただいたときはもっとリーダーシップを発揮して、自ら発信できるプレーヤーにならないといけないと思います。
――ありがとございます。最後に、村上選手、個人としての振り返りをお願いします
村上:前期の明治戦から試合に出させてもらって、一年ながら貴重な経験をさせていただきました。個人としてレベルアップを感じ、この大学で経験したことは大きいと感じた一年間でした。一方で、課題は、チームを勝たせられるキーパーとして試合に出ているとは感じていないことです。自分のミスから失点をしたり、試合の立ち上がりや終了間際の失点が多くて勝ち点を取りこぼしてしまったりするゲームが多かったです。一年というくくりはなしにして、自分がもっと頼もしいキーパーとしてリーダーシップをとっていかないといけないと思っています。今の四年生のストッパー陣から関東リーグでの戦い方を吸収して、自分が来年以降チームを引っ張ることができるよう、まとめていかないといけないと思っています。
――前期リーグで一番印象に残っている試合はありますか
松本:流経戦かなとおもいます。理由としては、開幕から5戦未勝利で勝ち点1という苦しい状況を抜け出すことができた試合だからです。あまり試合に出ていなかった4年の山田(=大敬、総4・京都サンガF.C.U-18)が点を決めて、タフで苦しかったですが勝ち点3をとれたのは印象に残っていますし、すごく大きかったです。
――それでは早慶戦に話を移します。早慶戦に対してどのような思いがありますでしょうか
松本:僕が一年、二年の時の早慶戦は定期戦で、リーグ戦とは別の枠で開かれていました。ただ、去年と今年はリーグ戦の一試合を定期戦にあてているので、ニュアンスは違うのかなと思っています。リーグ戦ではない早慶戦は、観客がバカ騒ぎをしている中で、サッカー部員は本気で早稲田を倒しにいこうと思っていて、勝つことしか頭にない試合でした。一方で、去年と今年はあくまでもリーグ戦の一試合なので、早稲田だから燃えるという面もありますが、お祭りのような感覚にはなっていません。残留のために少しでも勝ち点をとろうと考えています。早稲田は定期戦では自分たちが全然勝てていない相手ではあるので、慶應としてプライドを持って臨んでいこうと思います。
山本:自分が入学する前の早慶戦はお祭り騒ぎという感じで、観客席から見ていて「こんなに大学サッカーで人が入ることがあるのか」と感じることがありました。定期戦という形にはなくなったけれど、早慶戦へのあこがれは強くあります。
山口:個人としても早慶戦に対するあこがれはありますし、慶應にとっても早稲田は重要な意味を持つと思いますが、関東リーグの一試合でもあるので、今まで自分がやってきたように精いっぱい自分の役割を全うして、他の試合と同じようにいい準備をしたいです。どの試合も同じくらいの重要度を持つ大切な試合なので、今まで通り自分がやってきたことをできたらなと思います。当面は控えている関東リーグに全力を注いで、その結果一か月後に自分がピッチに立てていたら最高だと思います。
村上:大学選びの際に指定校推薦でどこか行ければいいなと思っていた中で、慶應にAOで入りたいと決意したのは早慶戦を見た日でした。自分にとって早慶戦はあこがれの舞台で、誰しもが一度は出てみたいと思う舞台だとは思います。チームの関東リーグ一部残留という一番の目標に向かって一か月取り組んでいき、全力で戦いたいなと思っています。
――早慶戦でチームとして必要なことや個人としての目標はありますか
松本:今年のチームには目立ちたがり屋の四年生が多いので、人が多く集まる試合に強いと思います。僕は自分が結果を出すことよりも、目立ちたがり屋の彼等を輝かせ、チームが結果を出すことに対して全力になっていきたいと思います。定期戦では4年間で一度も早稲田に勝てていないので、四年として早稲田に勝って有終の美を飾りたいという思いはあります。そのためには、どんなに泥臭いことでもどんなにきついことでもしっかり走りまわって、チームが結果的に勝利することができればいいなと思います。
山本:去年はメンバーに入れなくて、スタンドから早慶戦を見ていたんですけれども、ピッチの中で自分は戦いたいなと切実に思いました。慶應に入った理由でもありますが、今年こそは試合に出て慶應を勝たせるという目標を体現できればと思っています。個人的な目標としては、この人生でヒーローになったことがないので、人生に一回ぐらいはヒーローになりたいなと思って、ゴールを決めて試合を勝たせればなと思っています。
山口:もともと自分は点を決める選手じゃないし、目立つようなプレーをする選手ではないので、ヒーローになれたら最高ですけど、チームを支える一人として自分が目立たなくてもチームが勝つことができればそれでいいなと思います。
村上:毎試合リーグ戦で目標にしているのは無失点で終わることなので、早慶戦でも無失点で終わりたいと思います。ビッグセーブで自分がチームを救うというよりは、チーム全員でゴールを守るということを目標として準備したいと思います。
――最後に慶應を応援して下さる観客の皆さんにメッセージがあればお願いします!
松本:慶應は早稲田よりも泥臭く走って魂のプレーを見せるので、一緒に勝つ瞬間を共有したいと思います。
山本:自分たちができることはすべてやって、自分たちが戦っている姿を見れば、慶應を応援してくれる皆さんの勇気づけにもつながると思います。魂を込めて戦うので、皆さんも一緒に戦ってください!
山口:いつも通り魂のこもったプレーをして、熱いプレーで誰かを勇気づけたり見ている人を楽しませたりすることができるよう、自分がどの役割であれ全力を尽くそうと思うので、応援よろしくお願いします!
村上:慶應ソッカー部の一員である誇りとプライドをかけて闘います。応援宜しくお願い致します。
お忙しい中、ありがとうございました!
(取材:田中清暁)