5日、日吉記念館にて少林寺拳法の早慶戦が行われた。例年は新体制の船出となる今大会だが、今年は4年生までの全学年が出場し栄冠を争った。本戦の部では早慶戦初出場となる佐藤生一(文2・日大豊山)が逆転勝利で勢いをもたらすと、山内嶺央(経3・西大和学園)、西山航生(文3・厚木)もそれに続き、優位に試合を運ぶ。最後は大将・多田光伯(商4・逗子開成)が圧巻の立合で快勝し、見事慶大が二年連続の早慶戦勝利を果たした。
≪対戦表~新人の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 庄司(法2・一級) | ●0-3 | 三森菜々香(法2・早稲田実業・三段) |
次鋒 | 林大志朗(理2・成蹊・五級) | ●0-4 | 小川泰平(法1・金沢大学附属・見習い) |
中堅 | 鈴木(経1・四級) | ●0-2 | 関音葉(文構2・都立西・二級) |
三将 | 青木天使(理2・日比谷・二級) | 〇2-1 | 門田憲樹(商1・広島城北・二段) |
副将 | 田川千鶴(政2・清泉女学院・一級) | 〇2-1 | 小圷紗愛(法2・水戸第一・二級) |
大将 | 木下新大(経2・早稲田佐賀・二級) | ●0-2 | 宇田樹(教2・早稲田実業・三段) |
4勝2敗で早稲田大学の勝利
≪対戦表~本戦の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 佐藤生一(文2・日大豊山・一級) | 〇5-3 | 江川小次郎(商2・保善・二級) |
次鋒 | 高澤理沙(文3・洗足学園・初段) | ●0-3 | 上重美桜(商4・長岡・初段) |
中堅 | 山内嶺央(経3・西大和学園・二段) | 〇1-0 | 鬼頭良空(文4・明和・初段) |
三将 | 岡田希美(政3・女子学院・初段) | ●0-6 | 籾実吹(社3・大阪産業大付属・四段) |
副将 | 西山航生(文3・厚木・初段) | 〇4-0 | 藤井陸(社2・早稲田実業・二段) |
大将 | 多田光伯(商4・逗子開成・初段) | 〇3-0 | 下村裕太郎(政経4・聖光学院・三段) |
4勝2敗で慶大の勝利、本戦の部の結果から慶大が早慶戦優勝
《競技説明》
今大会は2年生以下が出場できる「新人の部」と、4年生までの全学年が出場できる「本戦の部」に分かれて行われる。試合は前後半ともに1分ずつで、間に1分間の休息を挟むという形式だ。判定は技ありのみで、その本数の差によって試合の勝敗が決する。また、最終的な早慶定期戦の勝敗は、本戦の部における勝ち数で決定される。
《新人の部》
先鋒戦 庄司(法2・一級) ●0-3 三森菜々香(法2・早稲田実業・三段)
詰めかけた観客から万雷の拍手が送られるなか、新人の部が始まった。先鋒戦に臨んだのは2度目の早慶戦の舞台となる庄司。入りは慎重なものになったが庄司の思い切った攻めから突きの応酬が始まる。前半戦は互角の戦いとなったが後半戦で連続して技ありを奪われ、0―3で悔しい敗戦となった。
次鋒戦 林大志朗(理2・成蹊・五級) ●0-4 小川泰平(法1・金沢大学附属・見習い)
続く次鋒戦は、開始から押し込まれ苦しい展開となる。林の豪快な蹴りも見られたが、前半戦30秒までに2本の突きで技ありを奪われる。後半戦にも技ありを重ねられ、0―4で敗北した。
中堅戦 鈴木(経1・四級)●0-2 関音葉(文構2・都立西・二級)
先鋒、次鋒と2連勝を飾り勢いに乗る早大。中堅の鈴木もその勢いに押されてしまう。相手に押し込まれ引いてしまうシーンが目立ち、試合は早大・関のペースで進む。蹴りなどで技ありを取られ、苦しい展開に。攻め手を欠き0―2で敗れた。
三将戦 青木天使(理2・日比谷・二級) 〇2-1 門田憲樹(商1・広島城北・二段)
3連敗と崖っぷちで迎えた三将戦。青木が意地を見せた。前半戦、見事な突きで慶大にとってこの日初めてとなる技ありを奪うと、慶大側応援席もこの日一番の盛り上がり。勢いに乗る青木は後半戦開始直後、対戦相手が決まった1週間前から特に力を入れて練習してきたという渾身の中段突きで技ありを奪う。終了間際に技ありを取られたがリードを守り切り見事な勝利を収めた。
副将戦 田川千鶴(政2・清泉女学院・一級) 〇2-1 小圷紗愛(法2・水戸第一・二級)
負けられない副将戦に田川が臨む。昨年の早慶戦も新人の部に出場し1―4で敗北している。雪辱を期す田川は開始10秒、鋭い上段突きを決め早々に技ありを奪う。相手を吹き飛ばす威力十分の突きで勢いに乗った田川。30秒にも上段突きが決まり2点差をつける。後半戦に技ありを奪われたが、そのまま終了。慶大の2勝3敗で勝負は大将戦にもつれ込む。
大将戦 木下新大(経2・早稲田佐賀・二級) ●0-2 宇田樹(教2・早稲田実業・三段)
勝負は大将戦に託された。木下が対するは昨年の早慶戦にも出場し圧倒的な強さを見せた難敵の宇田。独特の緊張感からか両者とも慎重な入りとなり、なかなか技を繰り出せない。膠着した展開のなか、早大・宇田に見事な蹴りで技ありを奪われる。盛り返したい後半戦、木下は強烈な突きを決め、技ありかと思われたが、ここは無効の判定。協議でも覆らず同点とはならない。その後もう1点を奪われあえなく試合終了。悔しい敗戦となった。
この結果をうけ、新人の部は4勝2敗で早稲田の勝利となった。
《本戦の部》
先鋒戦 佐藤生一(文2・日大豊山・一級)〇5-3 江川小次郎(商2・保善・二級)
二年生ながら本戦の部先鋒という大役を担った佐藤。「生一からは絶対に良いバトンが回ってくる」という周囲からの信頼、そして勝利への重圧を力に変えた。
3点を先制されながらも「自分でも驚くほど」の冷静さで技を返し、前半終了間際に2点差に詰め寄る。「リラックスして自分の得意な中段突きのカウンターで逆襲しにいこう」。相手の動きに対応してからの佐藤は強かった。後半10秒、34秒にそれぞれ綺麗な中段突きを決めて、同点。残り11秒に勝ち越しの突きが決まると、会場に詰めかけた慶大ファンから大きな拍手が起こった。最後に会心の拳が相手の防具を高らかに弾いて、5―3。
見事な逆転勝利、と書くとどこか言葉負けしてしまう。期待の二年生がそんな価値ある一勝を慶大にもたらした。
次鋒戦 高澤理沙(文3・洗足学園・初段) ●0-3 上重美桜(商4・長岡・初段)
次鋒を務める高澤はこれが早慶戦初出場。対する上重は今年11月のインカレで全国1位を獲得した実力者だ。そんな強敵相手に高澤が健闘する。
カウンターから先制を許したものの、その後は間合いをとって相手の攻勢を防ぐ。大会前、「いかに善戦するかという所に全てを懸けたい」と語った通り、粘り強い戦いぶりで中堅の山内へとバトンを繋いだ。
中堅戦 山内嶺央(経3・西大和学園・二段) 〇1-0 鬼頭良空(文4・明和・初段)
拮抗した展開が試合の重要性を表していた。互いに見合って時計が過ぎた前半の60秒間。この前半戦について山内は「思い通りに戦えた」と振り返る。
勝負の後半戦、先に仕掛けたのは山内だった。17秒の先制点は中段突き。対戦相手が決まって以降、研鑽を積んできた技だった。会心の得点に山内の拳が小さく上がる。見守る部員たちの両腕が高々と上がる。最後まで隙を見せずに戦った山内が緊迫の一戦を制し、対戦成績を2勝1敗とした。
三将戦 岡田希美(政3・女子学院・初段) ●0-6 籾美吹(社3・大阪産業大学附属・四段)
「リベンジのチャンス」。二年ぶりの再戦となるこの対戦カードについて、岡田はこう語った。前回対戦時(2019年新人の部)は0-3で敗れている。舞台を本戦の部に移し、いざリベンジマッチ。
近い間合いと逃げない姿勢は、雪辱への決意表明だったのだろう。部員から「絶対勝て!」と激が飛ぶ中、前半46秒には相手を場外付近まで追い込み、攻勢をかけた。全日本王者の牙城を崩すことは叶わなかったが、自身初の本戦の部出場はラストイヤーに向けて大きな意味を持つはずだ。
副将戦 西山航生(文3・厚木・初段) 〇4-0 藤井陸(社2・早稲田実業・二段)
トータル2勝2敗で迎えた副将戦は、試合開始直後から激しい展開となった。開始早々、両者前に出て突きを繰り出す。慶應側の技ありを示す白旗が一本上がったものの、得点は認められず。さらに26秒にもお互いの突きが胴を叩いたが、先取点とはならなかった。
試合が動いたのは前半終了間際。まず48秒、仕掛けてきた相手の中段に西山の長い脚が炸裂し、先制。続いて上段突きが決まり、2点のリードを奪うことに成功した。
優位に立った西山は、後半も攻撃の手足を緩めない。開始早々、中段蹴りで点差を広げると、中盤にも突きが入って4-0。大将戦に向け、2年連続の早慶戦優勝に向け、文字通り「大きい一勝」を慶大にもたらした。
大将戦 多田光伯(商4・逗子開成・初段) 〇3-0 下村裕太郎(政経4・聖光学院・三段)
「最後に俺が決めてやるから、お前らは安心してやってこいよ」。大会前のインタビュー、多田は立合への絶対的な自信を覗かせた。裏付けは、ある。昨年の早慶戦、2勝3敗と劣勢の状況から大将戦・代表戦を続けて制し、チームを3年ぶりの優勝へと導いた。今年は3勝2敗、つまり引き分け以上で勝利という状況。慶大は理想的な展開で大将を畳の上に送り込んだ。
落ち着いた、あるいは笑っているようにも見える表情だった。じわりじわり時間を使いつつ、前半終了間際に上段への突きを打ち込み、先制。
後半は完全に多田のペースとなった。30秒、前に出てきた相手をいなして中段蹴り。43秒には再び上段に拳が刺さって勝負あり。2年連続の栄冠をその拳と脚で手繰り寄せた。
「4年間やってきて、この代が最強のメンバーだと思っています。あとはそれが結果になって出てくるだけ」。大将の言葉通り、今年度は慶大少林寺拳法部にとって飛躍の一年となった。創部以来最高となるインカレ総合3位、そして二年連続の早慶戦優勝。充実の秋と結実の冬を越え、見据える先は「日本一」(佐藤)だ。
(記事・写真:野田快 松田英人)
少林寺拳法部アーカイブ
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