【少林寺拳法】早慶戦直前!本戦の部出場拳士インタビュー

少林寺拳法

12月5日(日)、日吉記念館にて第56回少林寺拳法早慶戦が行われる。先日行われた全日本学生大会において創部史上最高の総合3位を獲得し、勢いに乗る慶大少林寺拳法部。今年度のチームが掲げてきた「三大目標」のうち、残された最後の目標こそが「早慶戦優勝」だ。2年連続の宿敵撃破を果たし、62期の花道を飾ることはできるか。今回は、本戦の部に出場する拳士6名のインタビューをお届けする。

「No Passion! No Victory!」をテーマに2年連続の早慶戦優勝を目指す

 

2021年度早慶戦本戦の部出場拳士(6名)

先鋒:佐藤生一(文2・日大豊山)  一級
早慶戦出場歴:初出場

先鋒として勢いをもたらす

次鋒:高澤理沙(文3・洗足学園)  初段
早慶戦出場歴:初出場

「絶対に負けない」と覚悟を口にする

中堅:山内嶺央(経3・西大和学園)  二段
早慶戦出場歴:’20本戦の部

昨年度先鋒として大勝

三将:岡田希美(政3・女子学院) 初段
早慶戦出場歴:’19新人の部 ’20新人の部

因縁の相手にリベンジを誓う

副将:西山航生(文3・厚木)  初段
早慶戦出場歴:’19新人の部 ’20本戦の部

「私の役目は勝つこと」と明言

大将:多田光伯(商4・逗子開成)  初段
早慶戦出場歴:’18新人の部 ’19新人の部 ’20本戦の部

「慶應に多田光伯あり」その存在感は絶大だ

 

――初めに左隣の方のご紹介をお願いします。簡単なプロフィールと合わせて、「その人の強み」と「その人に直してほしいところ」もご紹介いただけると幸いです

「真面目すぎて…」(佐藤→高澤)

佐藤(→高澤):高澤さんは同じ文学部の3年生になります。真面目かつ実直で一番信頼できる先輩だと感じています。ただ、真面目すぎるゆえに冗談が通じないところは直してほしい。

一同:(笑)

――では高澤拳士にはあまり冗談を振りすぎない方がいいということで…

高澤:そうですね。

岡田:やっぱり真面目…(笑)

「単に強いだけでなく、見栄えのする立合」(高澤→山内)

高澤(→山内)こちら経済学部3年の山内嶺央です。彼は努力家で、動画研究とかにも本当に熱心に取り組んでいます。同期として見ていても本当によく頑張っていて、すごく上手くなったと感じています。

立合に関しては、攻撃の速さと大きさという所が素晴らしいです。単に強いだけではなくて、見ている側からしても綺麗で華のある、見栄えのするような立合をするのがすごいところだと思います。

直してほしいところは特に思い当たらないんですけど…お金はすぐに返して欲しいですね(笑)

一同:(笑)

山内:すみません(笑)

「僕は尻に敷かれているので…」(山内→岡田)

山内(→岡田):岡田は法政3年で今段位としては初段、大学初めの拳士です。

部員としての彼女は、パワフルかつ女性拳士とは思えないほどの突き蹴りを持っていて、立合においても攻撃力のある選手だなと。彼女がいると部活に活気が出るし、そういう意味でも楽しい選手だなと思っています。

早慶戦では相手(=籾実吹・大阪産業大付属)が日本チャンピオンで、厳しい戦いになるかもしれませんが、そんな中でも果敢に攻めていってくれるのが彼女だと思うので、そこに期待したいです。

(直してほしいところは)こんな間近では言えないんですけど…(少し間を空けて)僕は尻に敷かれているので何も言えないです…。

――若干岡田拳士の強権政治が垣間見えたような…

岡田:とんでもないです(笑)

「まるで『獲物を食べてやるぞ』というような力強い立合」(岡田→西山)

岡田(→西山):文学部3年の西山航生です。彼の立合の持ち味はスタイルのよさ、足の長さから繰り出される蹴りです。

立合の雰囲気でかっこいいと思うのは、普段はすごく穏やかでスマートな青年なのに、立合になると人が変わったかのような、まるで「獲物を食べてやるぞ」というような本当に力強い立合をするので、こちらも見ていてすごくワクワクするところですね。

演武(インカレでは男女初段部門に出場)でペアを組んでいたんですけど、性格的に本当に優しくて、私のトイレの心配もしてくれるくらい(笑)。 

ただ、一点直してほしいところがあるとすれば、コンプライアンス違反をしがちなところ…。

西山:心当たりはないんですけど…(苦笑)。

「全幅の信頼をおいてバトンを託せる」(西山→多田)

西山(→多田):こちら多田光伯先輩です。商学部の3年生です。

多田:4年生です!(笑)

一同:(笑)

――留年のご予定が…?

多田:大丈夫です!ちゃんと卒業予定です!(笑)

西山:すみません(笑)。

段位は初段で、大学初めの拳士です。光(テル)さんは、2年生の大会出場時から実績を残されていて、部内ナンバーワンの実力を持っています。「慶應の立合といえば多田光伯だ」と、他大学から認識されているくらい少林寺の立合界で今、名を馳せている選手です。

反射神経も動きのキレもいいですし、左脚の鞭のような蹴りが本当に素早くて、僕は本当に全幅の信頼をおいて大将にバトンを託せる状態でいます。

改善してほしいところは、テルさんにはおっちょこちょいなところがあって…。部の風紀を取り締まる「統制」という役職についているんですが、けっこうポカをするときがあるんですよね。この前は、統制という身でありながら、自身の罰走としての階段ダッシュの姿を全体ラインに載せるというすごくみじめな姿をさらしていました。

――本来は多田拳士が取り締まる側なのに…

多田:本当は僕なんですけど、ちょっと言いづらいといいますか…(苦笑)。まずは自分から、ということで走ってけじめをつけました。

――紹介の途中ではありますが、ちょうど話題に上がったので多田拳士に一つお伺いします。多田拳士は2年次新人の部で大将、昨年は本戦の部大将と代表戦で見事勝利を挙げました。立合における自身の強さはどういうところにあるとお考えですか

多田:「楽しいな」って思えるんですよね。僕はこの競技が大好きなので。

立合って勝ち負けが出てしまうので、そこはある種残酷なんですけど、自分が頑張った結果が見えますし、相手と戦って勝つという経験は、自分にとって次の活力になります。もちろん負けたことはあるんですけど、「どうして負けたのか」というのを次に生かしてやっていけることが自身の強さの源なのかなと思っています。

「先鋒にはベストの男」(多田→佐藤)

多田(→佐藤):こちらは佐藤生一君、文学部2年生です。僕の一つ上の佐藤先輩(=佐藤ひかり・R3卒)の弟さんなので、下手なことを言うと(生一拳士を)経由して怒られちゃうかもしれません。

彼の強みは、とにかくアツイ男でパッションをもっているところ。競技だけではなく、部活全体のことも考えています。

またフィジカルがものすごく強いので、一対一になった時に、「ああ、こいつなら絶対に負けないな」と安心して見ていられますね。相手に怖気づかずに、どんどん突っ込んでいくというのは、見ているこっちも元気をもらえますし、先鋒にはベストの男なのかなと。

直してほしいのは、惚気がひどいところ。

一同:(笑)

多田:自分のロッカーに彼女の名前を書いていたりするくらい。彼女を盾にとると何もできなくなるところを直してほしいですね。

佐藤:その話はヤバいです…。

――そんな佐藤拳士は、今回の早慶戦のテーマ「No Passion! No Victory!」の発案者だと伺っています。この言葉にはどんなメッセージが含まれているのでしょうか

佐藤:私が少林寺を始めてから、自分の中のスローガンとして「圧倒的熱量、研究量、練習量」というものがありました。圧倒的なパッションをもって目標を定め、競技を研究・分析し、練習にいかすというルーティンを自分の中で決めています。

やはり「はじめにパッションがなければ勝つことはできないんだ」という自分の想いがありまして、今回はこういう言葉を選びました。

「歴史に名を刻みたい」(岡田)

――ちょうど早慶戦のテーマについての話になったので、今度は早慶戦の位置づけについて簡単にご説明をお願いします

山内:皆さんがどう思っているか分からないので、個人的な意見を述べさせてもらいます。
僕は62期(現4年生)の皆さんに非常にお世話になったので、その引退の花道を飾ってあげるためにも全力で勝ちに行きたいなと。62期の皆さんの最後の思い出となる試合にできればと思っています。

岡田:私が63期で、60年以上続いてきた部の先輩方全員が(早慶戦に)注目しているといっても過言ではないのかなと思っています。それこそOBの方には練習にも来ていただいてご支援いただいているので、このチーム全員で勝てたという報告をしたいです。歴史に名を刻みたいな、とも思っています。

――岡田拳士は2年前に新人戦の次鋒、昨年は新人戦の大将として早慶戦に出場されています。そして今年ついに本戦の部で出場することになりました。出場が決まった瞬間の心境を教えてください

岡田:新人戦とは本当に違った緊張感といいますか、「ついに来たな」という想いです。私の対戦相手は全国チャンピオンなので、「勝つ勝つ」と言っていても、自分の中の弱気な部分が最近も出始めています。そこを練習量と熱量でカバーして、当日は勝てるという自信を持てるように頑張りたいです。

――対戦相手は2年前の次鋒戦で対戦した籾拳士、あの時は0-3で敗れました。当時と比べて成長したポイントは何かありますか

岡田:相手選手の2年前の様子を見たくて動画を見た時に、「自分、無茶苦茶にやってるな」という印象を受けました。この2年間を経て、試合の中である程度「相手がこう来たらこうしよう」と考えられるようになったのかなと思います。ただ、相手の偉大さは全然変わっていないので、その部分は自分の努力で補っていこうかなと。

――早稲田大学の脅威についての話が出てきましたが、早稲田について他に警戒している点はありますか

西山:早稲田大学の全選手に共通する特徴としてカウンターがものすごく早くて、かつ反射神経も良いというところがあると思っています。工夫しない状態で正直に入ってしまったら、得点しようと思った側が逆に早稲田のカウンターにやられてしまうというのが容易に想像できます。ですので、攻撃の仕方を工夫すること、速さを磨くことが求められていると思います。

――今のお話からも西山拳士の立合に対するモチベーションの高さが伺えます。その源泉はどこから来ているのでしょうか

西山:一番は「早慶戦で勝ちたい」という想いです。

1年生の時に出場した早慶戦新人の部では、逆転負けをしてしまって、悔しい想いをしました。それが自分の部活人生における挫折の一つだと感じています。2年目も出場することになって、その対戦相手が一年前負けた同じ相手でした。その相手に自分が努力して勝利することができたこと、そしてチームの勝利に貢献することができたのが嬉しかったです。

もちろん今年も負けるわけにはいかないですし、またあの喜びを味わいたいなと。その想いが根底にあって、私のモチベーションにつながっていました。

――「早慶戦への想い」というところでいくと、高澤拳士は新人の部・本戦の部を通じて初の早慶戦出場になります。本番を今週末に控えて今どんな心境ですか

高澤:やはり緊張しています。経験で言ったら絶対的に浅いですし、対戦相手になる人は全国レベルの強い相手です。経験値やキャリアで相手に圧倒的に負けていることに加えて初めての早慶戦ということで、けっこう緊張しています。

ただ、早慶戦って部員だけじゃなくて関係者全員が注目している舞台で、自分だけの問題ではないというところが大きいですね。出場するメンバーとして「なんとかして勝たねば」という想いです。

――ありがとうございます。今回皆さんには先鋒から大将まで順番に並んでインタビューを受けていただいているわけですが、今回6名の出場順はどのようにして決定したのでしょうか

多田:まず6人のメンバーが最初に決まって、それから6人が話し合って順番を決定しました。

「早慶戦に出るなら先鋒で」(佐藤)

――今回の配置の狙いをお伺いしたいと思います。まず先鋒を務める佐藤拳士からお願いします

佐藤:先鋒については、私から志願しました。「早慶戦に出るなら先鋒で行きたいです」と。

というのも、歴代の早慶戦を見ていても、3年生がメインで出場する中で、2年生は先鋒をやっている方が多いなという印象がありました。次世代のエースみたいな人たちが先鋒をやってきたという伝統もあって。

また、去年の早慶戦で山内先輩が圧倒して帰ってきた(先鋒戦に出場し、5-0と大勝した)シーンを見てきたので、「自分もこういう風になりたいな」と思って先鋒を志願しました。

――前回先鋒で大活躍を見せた山内拳士は今回中堅ということで、後半に繋いでいく役割になるかと思います

山内:手前の方で思いっきり勝ちに行くことが狙いですね。自由度が高いのが前半だと思って前半を選ばせてもらいました。

「リベンジのチャンス、ここしかない」(岡田)

――次鋒と三将はいかがでしょう

高澤:女子枠が2番目(次鋒)と4番目(三将)で決まっているので、二人でどちらに入るかということを話し合いました。

自分の位置に関して言うと、おそらく先鋒の彼(佐藤)が勝ってくれると思うので、それを引き継いでいく立場になります。早稲田の次鋒もすごく強いので、私の立場としては、いかに善戦するかというところに全てを懸けたいです。少なくとも引き分けに持ち込んで、チームの士気を落とさずに次につなげたいと思っています。

岡田:(籾拳士とは)1年生のときにも対戦していて、リベンジのチャンスと言いますか。相手が三将に来るだろうなというのは予想できていたので、私としてはここしかないと。この位置(三将戦)は勝敗に大きくかかわってくると思うので、弱気にならず、勝ちに行こうと思っています。

「誰が大将をやっても大丈夫」(多田)

――残り2枠、副将と大将についてお願いします

西山:私は中堅になるか副将になるのかというところにあまりこだわりがありませんでした。
可能性として全てのポジションをやる可能性があるのかなと、夏くらいから思っていました。いずれのポジションであっても変なプレッシャーを感じずに勝つことだけを考えてきたので、今回も副将というポジションをすっと受け入れることができました。大将はテルさんが引き受けてくださるので、私は勝つことだけ考えてやりたいなと思っています。

多田:正直ここにいるメンバーの誰が大将をやっても大丈夫だと思っています。彼らは色々なことを言っていましたが、僕には「実力的に早稲田に勝てないかもしれない」という疑いは全くありません。

とは言っても試合の流れ、空気みたいなところはあるので、その時にどう転がるかは本番になってみないと分かりません。僕は彼らより長くやってきた分、試合の流れを最後に受け止めることが少しだけ得意なのかな、と思うところはあります。

「最後に俺が決めてやるから、お前らは安心してやってこいよ」という感じで、試合を見守って最後に出ていくという気持ちですね。

「これからは慶應の時代だ、と宣言したい」(西山)

――では皆さんから早慶戦に向けての意気込みを一言ずつお願いします

佐藤:私は2年生として先鋒という大役を務めさせていただくので、先鋒に恥じないよう絶対勝って皆さんにバトンをつなぎたいなと思います。

高澤:初めての早慶戦で次鋒という立場をもらったので、「絶対に負けない」という心意気で臨みたいです。

山内:僕も微塵も負けるとは思っていません。次に控えているのぞみに良いバトンをつなげられたらなと思っています。

岡田:私はビビらず強気で攻めるというのをやっていきたいと思います。

西山:私の役目は勝つことだと思うので、しっかりと一勝をもぎとりたいです。去年3年ぶりの勝利を奪還したので、今年も勝って「これからは慶應の時代だ」と早稲田に宣言してやりたいという意気込みでやっていきたいです。

多田:楽しんでやりたいなと思っています。4年間の最後の試合なので、「ああ楽しかった」と思って終わりたいですね。

――最後に大将の多田拳士から他の部員に向けてメッセージをお願いします

多田:4年間やってきて、この1年間、つまり62期の代が歴代最高だったと思っていますし、最強のメンバーだと思っています。そこは絶対にそうなんですよ。あとはそれが結果になって出てくるだけというか。

支えてくれたみんな、ここまでついてきてくれたメンバーのために、最後締めて、勝って、笑って終わりたいなと思います。

(記事:野田快)

取材後記

取材のために道場を訪れたのが午後8時30分。少林寺拳法部の全体練習はこの時間まで続きます。分厚い靴下で畳の上にお邪魔すると、地面の温度がひんやり伝わってきました。その日は11月も暮れの頃。それでも道場にはたしかな熱気がありました。それもそのはず。インタビューをお願いしていた6名の拳士の方以外にも、多くの部員が道場に残り鍛錬を積んでいました。なかでも印象的だったのは、インタビュー後に自主練を再開した拳士がいたこと。

「ああ、きっといい試合になるだろうな」。凍える季節に待ったをかけて、熱い戦は今週日曜。

少林寺拳法部の皆さん、お時間いただきありがとうございました。

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