いよいよ本日、東京六大学野球春季リーグ戦はついに開幕を迎えます! 慶應スポーツ新聞会は、チームを率いる堀井監督に、現在のチーム状態や春季リーグ戦の戦い方や展望について、お話を伺いました。
――監督として2年目のシーズンを振り返って
春秋ともにリーグ優勝ということで、よく4年生中心に頑張ってくれたシーズンだったと思います。大学選手権でも30年ぶりの優勝を飾って、非常にいい成果が出ていると思いました。最後の明治神宮大会に関しては残念なところもありましたが、1年通じて本当によく頑張ってくれたシーズンだったと感じています。
――4冠に届かなかったことに関して、何か欠けていると思う部分はありましたか?
最後の中央学院大戦に象徴されるのですが、実はその前の(準決勝・)神奈川大戦も苦しい試合で、シーズンの最後に来て少しチームとして、選手層や投手の枚数など、チーム力が十分でなかったという風に感じています。1年間よく戦ったんですが、最後の負けというところに照準を当てると、1年間戦う体力やチーム力が足りなかったということです。
――下山悠介主将(商4・慶應)について、監督の立場から福井章吾前主将(令3環卒・現トヨタ自動車)との違いは感じますか?
一言でいうと、福井は言葉一つとっても全身から溢れ出るキャプテンシーでチームを引っ張るタイプで、対して下山は口数は少ないですが、練習量や野球に対する姿勢はチームで誰もが認める存在で、姿勢や背中でチームを引っ張る存在だと私は考えています。
――文元洸成(環4・智辯和歌山)、増居翔太(総4・彦根東)両副主将にはどのような役割を期待しますか?
増居はピッチャー陣のまとめ役とも言えますし、ピッチャー目線からチームを支えていくことを期待しています。文元は、人間性の面では下山と甲乙つけ難く、どちらかというと文元の方が熱い言葉でチームを勇気づけたりするタイプです。なので、ピッチャーからの目線と下山とは違ったリーダーシップで、下山を盛り立ててくれればと思います。
――幹部が決まったときに、主将・副主将の3人にかけた言葉はありますか?
新しい学年の幹部が決まって、「前の4年生は立派な成績を残したけれども、それを超えるチームを作ろう。去年のことは去年のこと、これからのチームは1年間君たち3人が中心となって作っていくんだ。チームは生き物だし、前のチームと同じことをする必要はない。全く違うアプローチでもいいから。」という話をしました。
――オープン戦や(2月下旬の)白波リーグでは勝てない試合が続きましたが、振り返っていかがですか?
2月のキャンプの終盤からオープン戦をどんどん入れていったんですけども、テーマは明白で、「4年生が抜けた穴をどうするか」というところでした。投手でいえば増居、橋本達弥(環4・長田)に次ぐピッチャーが欲しいところで若干、生井(惇己=総4・慶應)と渡部(淳一=政4・慶應)が出遅れていることもありましたので、増居と橋本2人では当然リーグ戦は持たないでしょう。なので、そこに次ぐピッチャーを発掘したい思いはありました。それからキャッチャーは福井の後は誰になるのか、正木(智也=令3政卒・現ソフトバンク)、福井、橋本(典之=令3環卒・現大阪ガス)、若林(将平=令3環卒・現日本新薬)の穴を誰が埋めていくのかという命題に取り組んでいました。ピッチャーには多少試合が壊れるリスクを負っても、任されたイニングを投げ切ることを通して色々な経験をしてもらうことで様子を見てきたので、失点が多いことは成長の過程・準備段階であると考えています。でもその失点も、3月中旬から下旬にかけては大分セーブされてきてきました。当初の目的3つに関しては、ほぼ見極める段階は終わりつつある状況です。
――オープン戦の中で様々な試行錯誤がありましたが、中でも下山選手が二塁を守っていたのが印象的でした。これについてはどのような意図があったのですか?
内野の去年からのレギュラーでもある廣瀬(隆太=商3・慶應)と朝日(晴人=環4・彦根東)、そして下山の3人をどういう布陣で使えば一番効果的かということにチャレンジした、ということです。
――昨年との比較で、打力に関してはどのように感じていますか?
確かにリードオフマンの渡部(遼人=令3環卒・現オリックス)、4番の正木という穴は大きいですが、意外と打線は、1番から9番までの打線としてのつながりであったり、走塁との兼ね合いであったり、代打陣であったり、そういう意味の攻撃面では、昨年とそん色ないのかなと考えています。
――外野では、萩尾(匡也=環4・文徳)選手以外はあまりリーグ戦経験が多くない選手が多いですが、外野手は流動的な起用法になりますか?
そうですね、現時点ではレフトは宮尾(将=商4・慶應)、センターは萩尾、ライトは山本(晃大=総4・浦和学院)という3人でスタメンを組むことが多いんですが、ここに紙一重で、代打の北村(謙介=総4・東筑)を使うという案もありますし、3年生の斎藤(來音=環3・静岡)、吉川(海斗=法3・慶應)というバッターを絡めるという考えもあり、色々なバリエーションは準備しています。
――捕手は善波(力=商3・慶應)選手と宮崎(恭輔=環3・國學院久我山)選手をオープン戦では起用していましたが、シーズン中もこの起用法は続くのでしょうか?
それぞれ特徴があって、宮崎はやはり肩、打撃力、体格という部分で、捕手としてのポテンシャルが高いタイプです。一方で、善波はどちらかというとディフェンス型で、投手を上手くリードしながら、扇の要としての捕手の役割を全うしてくれます。非常にタイプが違うので、併用になるのか、適材適所での併用になるのか、あるいは投手によって併用していくのかということを考えています。
――打線の中で軸になる選手、そして期待する新戦力を教えてください。
山本晃がクリーンアップに入ってくることが一つ大きなポイントだと思います。それから萩尾、宮尾の1・2番です。萩尾は昨年から出場していますけども、完全なレギュラーとは言えなかったかもしれないですが、今年は堂々たるレギュラーで、そこに宮尾を絡めて1・2番を形成する、この2人は上位打線に食い込んでくるでしょう。
――投手陣で、生井投手や渡部投手の調整が遅れている中で、出てきてほしい新戦力を教えてください。
まず3年のサウスポーの森下(祐樹=総3・米子東)は、先発を任せられるレベルまで来ています。非常にコントロール良く丁寧なピッチングをしていて、気持ちも強くスタミナもあります。その点で増居、橋本達に続く投手として1番手に挙げたいと思います。それから新2年の両腕で、右の浮橋(幸太=総2・富岡西)と左の白木(英稔=商2・慶應)です。この左右の両輪が非常に落ち着いたピッチングをしますので、森下に次いでこの2人が絡んでくるのではないかと思います。さらに1年生で、左の荒井(駿也=商1・慶應)、右の外丸(東眞=環1・前橋育英)、前田(晃宏=商1・慶應)という投手がいます。この1年生3人が、非常に力があると思っています。
――先程挙げて頂いた1年生の中でも、外丸投手はオープン戦や社会人対抗戦で登板機会が特に多かったと思いますが、新入生に対して堀井監督が求めるものがあれば教えてください。
まず下級生の中で、4年生のチームを誰が助けてくれるのか、というところです。4年生だけでは埋まらない部分を3年生、2年生、1年生が助けるというチーム作りをしてきた中で、特に1年生というのは経験がない代わりに、怖いもの知らずというか、無欲で若さを全面に出して戦ってくれる、そういう1年生としての役割があると思うんです。ですから、結果として無理に使うというのではなくて、力のある選手の中に1年生がいると、チームに勢いを与えるというか、フレッシュな風を起こしてくれるんじゃないかと思っています。
――オープン戦や社会人対抗戦を終えて、リーグ戦に向けて感じた手ごたえはありましたか?
チームとしてのまとまりや方向性に関しては、私も3年目を迎えて今の4年生とも3年目の付き合いになるのですが、だいぶ最上級生がチームの方向性とかを理解してくれた上でチームを引っ張ってくれているので、今年の形というのは出来上がりつつあると思います。
――リーグ戦での戦い方のプランに昨年からの変化はありますか?
今年は特に主力投手の2人が残っていますので、増居と橋本達を中心とした戦い方はやはりうまく計算できますし、ある程度投手力を相手が意識して戦ってくれるので、そういう戦い方になると思います。
――今年のチームのキープレーヤーを投打で1人ずつ挙げてください。
投手は2年生の左の白木です。彼は非常に球の力があり、変化球も良いです。彼がキーマンになってくるのではないかと思います。それから打者では山本ですかね。山本はクリーンアップに入って、廣瀬、下山の後を打つ存在ですが、前の2人が徹底的にマークされた後の彼の存在は、非常に大きくなるんじゃないかと思います。
――警戒する他校や他校の選手はいますか?
各校とも戦力が整っていまして、経験者だけではなくて選手が入れ替わったチームでも、非常に今の六大学のチームというのはどこも力があります。ですから、早大でいえば中川(卓也=スポ4・大阪桐蔭)選手、蛭間(拓哉=スポ4・浦和学院)選手という1年生から出ている選手、チームの顔となる選手が各校にいます。法大であれば齊藤(大輝=人4・横浜)選手、投手の篠木(健太郎=営2・木更津総合)選手、明大であれば主将の村松(開人=情コ4・静岡)選手、投手の村田(賢一=商3・春日部共栄)選手、石原(勇輝=商3・広陵)選手、立大も山田(健太=コミ4・大阪桐蔭)主将、宮崎(仁斗=コミ4・大阪桐蔭)選手、投手陣だと池田(陽佑=コミ3・智辯和歌山)選手、宮(海土=経営4・國學院栃木)選手、荘司(康誠=社会4・新潟明訓)選手と、各校とも顔になるような選手が目白押しで名前が挙がってきますので、どこのチームの誰というよりも全チームに照準を合わせて1カード1カード戦います。まずは東大戦ですが、東大にも井澤(駿介=農4・札幌南)選手という1年生から投げている選手がいますので、しっかり戦っていきたいという思いです。
――最後に、今年の目標や意気込み、慶スポ読者へのメッセージをお願いします。
目標は常にリーグ優勝、それから日本一です! 今シーズンもまずリーグ優勝を目標にします。ただそのためには、1カード1カードの対抗戦を全力で獲りに行く必要があります。特に今年は勝ち点制が復活しますので、まずは初戦の東大戦に向けて、今全力で調整をしているところです。2年間のコロナ禍もあって、社会も非常に閉塞感のある2年間を過ごしています。高校野球も開幕し、プロ野球も開幕しましたけれども、伝統ある東京六大学野球という舞台で、応援し、注目してくださる皆様と一緒に感動を分かち合いたいというその一心で戦っていきます!
――お忙しい中、ありがとうございました!
※当取材は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、4月2日(土)にオンライン上で実施しました。
(取材:宮崎秀太)