慶應義塾大学体育会には現在、43の部活がある。そんな体育会各部は普段どのような雰囲気で、どのような練習を行っているのか。試合などでは見られない、体育会の知られざる日常に迫る。第2回となる今回取り上げるのは庭球部。長い歴史と輝かしい実績を誇る慶應庭球部の練習にお邪魔し、広報部門の有延一樹(法4・慶應)選手にお話を伺った。
昨年男子が24年ぶりに早慶戦勝利、女子が王座優勝と好成績をおさめた慶大庭球部。慶應義塾塾長を務めた小泉信三の「練習ハ 不可能ヲ 可能ニス」という教訓のもと、早慶戦に勝つこと、全国制覇を成すこと、国内はもちろん国際チャンピオンをつくってデビスカップを日本に持ってくること、良き部をつくることを四大目標に掲げて活動している。
庭球部の今年のスローガンは「Breakthrough(ブレークスルー)」。チームとしては昨年の成績からのブレークスルー、個人としてもそれぞれの目標でブレークスルーするという意味が込められている。
平日の賑やかなイチョウ並木から一転。落ち着いた雰囲気の土曜日の朝9時前、イチョウ並木を抜け、日吉記念館横の階段を下った先にある蝮谷テニスコートではすでに庭球部が練習を始めていた。
総部員数50人以上の大所帯であるテニス部は、男子はA、B、C、Dの4チーム、女子はA、Bの2チームに分かれ練習を行っている。平日は火水金曜日に練習、木曜日にミーティングを行い、土曜日は平日同様通常練習をする日もあれば、練習試合をおこなうときもある。この日も9時頃には男子2チームと女子1チームが通常練習を行い、11時頃からは練習試合を行っていたチームもあった。
部員数が多く、練習もチーム別に行っているが、「あえてチームを混ぜて練習したり、トレーニングも男女混ざって練習したりすることで、コミュニケーションをする場は作れている」と有延選手は話す。団体戦を戦う上でも選手同士のコミュニケーションが欠かせない。普段はチーム別に練習を行なっていても、時にはチームを混ぜることで慶大庭球部の一員としての意識が芽生えチームとして団体戦で強さを発揮できるのだろう。
各部員が所属している「部門」とは?
庭球部では部員一人一人が「部門」所属し、練習の他に各部門としての活動もしている。例えば、フィジカルなどを管理するトレーニング部門や部内、部外での情報発信を行う広報部門、テニスを定量的にデータとしてどのように見ていくか動画撮影したりする情報システム部門、実際に動画から得たデータをエクセルなどでまとめて戦略を分析していく戦略部門がある。入部した際に自分のやりたい部門に所属するが、活動する中で別の部門がやりたくなったら部門を移動することもできるという。
今回お話を伺った有延選手は1年生の頃から広報部門に所属。入部からずっと続けている広報部門の魅力は「情報を発信することで部員同士とつながることだったり、部外では違うメディアに取り上げてもらったりと本当にいろんな人とつながれること」だ。
競技の枠を超えた取り組み
部員それぞれが部門に所属し、テニスに様々なアプローチをしている庭球部。現在はテニスの枠を飛び出し、SDGsの活動も計画しているという。坂井利彰監督もSDGsに対して関心が高いことから、昨年末ごろから活動の話が部内で立ち上がった。部員のリテラシー向上のためSFCキャンパスの蟹江憲史先生にSDGsの講義してもらえるよう調整をしたり、部活で使わなくなった靴や古着で「古着deワクチン」という取り組みをしたり、江ノ島海岸でゴミ拾いをしたりすることを計画しているという。
體育會としてただ競技の練習に励むだけでなく、部門での活動やSDGsの取り組みを行なっている庭球部。そこにはチャレンジャーとして、テニスの試合はもちろんのこと新たな取り組みにも臨む姿勢があるのだろう。テニスを先輩方が残してきた数々の功績を突破し、試合での活躍、SDGsの取り組みと慶大庭球部の歴史に新たな1ページを刻んでいく。
(取材:船田萌恵)