大学アメリカンフットボールのTOP8チャレンジマッチ、慶應義塾大学ユニコーンズは明治学院大学セインツと対戦した。明学大RB・橋本一輝(社2・明治学院)に苦しめられながらも、QB・相馬大輝(商3・麻布)が走・投の双方で躍動。逆転から相手を突き放し、苦しくもなんとか明学大を撃破した慶大は、来年度のTOP8残留を確定させた。
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12/17 関東大学アメリカンフットボール大会 チャレンジマッチ @アミノバイタルフィールド 13:45キックオフ
明治学院大学セインツ | 慶應義塾大学ユニコーンズ | |
第1Q | 0 | 3 |
第2Q | 3 | 0 |
第3Q | 7 | 7 |
第4Q | 0 | 9 |
計 | 10 | 19 |
今年の関東大学アメフトのトップリーグ・TOP8は前年度の新型コロナ感染症の影響で10校で開催され、9位と10位は無条件降格、7位と8位が下位リーグ・BIG8の2位・1位との入れ替え戦を行うことになっていた。今季昇格を果たしたばかりの慶應義塾大学は序盤から苦戦続きで、今年のTOP8リーグ戦を8位で終え何とか無条件降格は逃れた。しかし依然として、このチャレンジマッチで明治学院大学に敗北すればBIG8降格が決まるという崖っぷち。ユニコーンズはこの試合に一戦必勝で臨んだ。
第1クォーター(以下第1Q、他Qも同様)は互いに陣地を押し合う状況で、実力が拮抗しているのは明らかという態勢。慶應はQBの相馬大輝(商3・麻布)を起点としてパスやラン、さらには相馬自身のフェイクランなどを織り交ぜて攻撃を行うものの、なかなかファーストダウンを獲得できない。一方の明学大も慶應の守備の前にパスを通すことはなかなかできない。明学大が誇るRB・橋本のランに撹乱され前進こそ許すものの、決定機を与えずノースコアに持ち込む。0-0で迎えた10分に玉川雄基(環2・都駒場)がキックを見事に成功させなんとか先制に成功するも、タッチダウンを奪うことはできなかった。
第2Q、第1Qの続きで攻撃を継続した明学大。陣内への進入を許した慶大はフィールドゴールを成功されて同点に追い付かれてしまう。その直後に慶大は玉川がフィールドゴールを狙うもこれは枠を捉えることができず失敗。なかなか点差を離すことができない。慶大はこの後の明学大の攻撃を藤田快人(政4・慶應)が見事なインターセプト。4年生として引退直前に強烈な存在感を放つプレーが飛び出し、このまま27ヤードのゲインで慶大が有利に試合を進めるかに思われたが、この後の4thダウンが失敗してしまったため追加点を奪えず、結局前半は3-3の低空飛行となった。
第3Q、最初の攻撃ターンで魅せたのは明学大・橋本だった。キックオフのボールを持って一気に自陣40ヤード付近まで戻したかと思えば、RBながらQBをも兼務。10分にはタックルを仕掛けた慶大を華麗にかわし、53ヤードの爆走で一気にタッチダウンを決めてみせた。慶大からすればこの攻撃シリーズをほぼ全て橋本に明け渡してしまったとも言える。「光速の21番ランニングバック」というまるで漫画の主人公のような強い印象を会場中が抱いたことは間違いなかっただろう。
とはいえ慶大からすれば逆転もされてしまい、ひたひたと忍び寄るはBIG8降格の足音。これは脅威以外の何者でもなく、いよいよ後がない慶大は反撃を開始する。自陣40ヤード付近から相手のプレッシャーをかわした相馬は自分でボールを持ってサイドライン側を35ヤードほど走り抜け、一気に敵陣へ突入。この後は近藤条(総3・慶應)へのパスで前進すると、最後はまた相馬が自ら冷静に相手をかき分けタッチダウン。キックも決め同点に追いつく。さらに相馬は9分にも明学大にサックされかけたのを華麗にかわして15ヤードほど前進するなど、パスを投じるだけではない彼の魅力が光った。
第4Qは慶大の攻撃パターンから再開。1分に玉川のゴールポストギリギリに叩き込むキック成功で13-10とし、明学大を再びリードする。3分に再び攻撃権を得た慶大は時間を稼ぎつつも攻撃を続ける。QB相馬から又平憲人(商3・慶應)への弾丸の如きパスが次々と決まり、順調にファーストダウンを獲得していく。最後も相馬からのロングパスをサイドライン側で又平が捕球。フィールド外での捕球だったものの、線の中に左足を残しての着地だったためタッチダウンが認められた。これで19-10と突き放した。この時点で残り時間は2分と少々にして1タッチダウンでは追いつけない点差。勝利を大きく手繰り寄せた慶大だったが、最後の明学大の攻撃ターンも戦意を失うことなくしっかりと抑え、ゲームセットとした。
最終スコアは19-10。慶大はTOP8残留を決め、来年も関東最高峰の舞台で日本一を目指すことになる。
この試合のキーマンとなったのは明学大RB・橋本と慶大QB・相馬だろう。橋本は自身の持つ高いポテンシャルで慶大を出し抜き、明学大がTOP8に負けずとも劣らないということを誰よりも証明してみせた。一方の相馬も、数々のロングパスを的確に放つQBながらこの試合の慶大選手で最長距離のランを稼ぎ出しており、さながらその姿は移動砲台。最終戦で彼は今年1年間の進化を見せつけた。さらには彼に応えて確実な捕球を見せた又平・近藤・加藤豪介(経3・慶應)らも、今季最後の調布で輝きを放った。
この試合をもって今年度のアメフト公式戦は終わりを迎え、4年生は引退となる。来年もTOP8で戦うことができる喜びを忘れることなく、選手たちが健闘してくれることを期待したい。
選手インタビュー
#29 玉川雄基
ーキックの出番は多かった
機会はそこそこ回ってきたんですが、その後サインミスをしてしまってチームの流れを持って来れなかったのは悔しいです。最後のキックはメンタル的に厳しいシチュエーションでしたが、決めないとなという思いで、集中しました。
ー来年に向けての目標
来年は試合を試合を作れるようにしたいですね、しっかり決めるべきところで決めたいです。チームを下から支えられるキッカーになれればと思っています。
#1 近藤 快<主将>
ー今日の試合を振り返って
見ての通りひどく苦労したというか。今シーズンの中でも緊迫した試合は多かったですが、その中でも一番でした。
ー追いつき追い越されの中でチームにかけた言葉
最後に自分たちが勝ってるんだというのはずっと言っていまして。どんな点差でも最後に勝っているのは自分たちだ、と。最初の日大戦の時も負けてる状況から逆転しましたし、本当にどんな点差でも目の前の1プレーに集中して、最後に勝っているのは自分たちだというのは言い続けました。
ーTOP8残留決定。
個人的に言ったらそんないい結果ではなかったんですけど、もちろん日本一を目指していたシーズンですし。ただ、残留できたっていうのは来年に繋げたということで。良かったとは言えないけど、良かったんじゃないかと思います。
ー今日で引退の主将として
4年間経験しないようなことをたくさんしまして、アメフト部としては辛かった時間の方が多かったかもしれないです。ただそれ以上に、そこから得たものは大きかったんじゃないかな、と今になって思います。
ーこの秋シーズンにかけた思い
未完成のままスタートして、試合を重ねるごとにチームとして成長できたんじゃないかなと思います。
ー後輩にかけた言葉
苦しい思いをしたこの1年のシーズンを忘れることなく、この学びだったり得たものをしっかり生かして次のシーズンを戦って言ってほしいと伝えました。
ーやりきれましたか?
胸張って言えるかはわからないですけど(笑)、やりきれたと思います!
(取材:東 九龍)