昨年、関東大学テニスリーグ戦と全日本大学対抗テニス王座決定試合(王座)で無敗を記録したのが下村亮太朗(法2・慶應)だ。早大に敗れて成し遂げられなかった王座優勝を果たすために、主将の藤原智也(環3・東山)と共にチームの大黒柱になるべく、技術的にも精神的にも成長し、チームを背負って戦うと決意していた。
躍動の昨季、今季はさらなる飛躍を
昨年の王座で庭球部男子は、大会17連覇を果たした早大を追いつめるも、あと一歩及ばなかった。王座を制した女子と共に悲願のアベック優勝に向け、全日本学生テニス選手権大会(インカレ)優勝経験のある主将で絶対的エースの藤原智也に加え、新3年生の下村の活躍が期待される。
リーグ戦と王座で16戦16勝と準優勝の立役者となった下村は、宿敵・早大相手にも「早稲田相手だけは強気でできて、ここは絶対勝てるなという感覚があった」という。「リーグ戦序盤は余計なこと考えて危ない場面もあった」が、王座ではチームの優勝ということだけを考えて「自分のプレーに集中して結果的に全勝できたと思います」と躍動の昨季を振り返った。全勝は、目の前の一勝とチームの勝利のために全力を尽くした結果だ。
「自分の武器であるサーブなど技術的には良かったが、精神的に先輩たちが頼もしくて(下級生の)自分がノープレッシャーでやることができたのが大きかった」。団体戦でも積極的なプレーを選択できたことが自身の勝因だと分析したが、今季からは3年生で上級生になる。「昨年の結果も考慮して勝たないといけない立場になってきて、団体戦との向き合い方が昨年と全く変わってくると思います」。上級生として責任感を感じるとともに、今のままではチームを引っ張っていける存在になれないと危機感も感じている。主将の藤原からキャプテンシーや粘り強さ、勝負強さを吸収したいとも語り、技術だけでなく精神面のさらなる成長を誓った。
全てを背負って戦う覚悟
王座優勝に加え、個人戦でも継続して上位に食い込むことも目指している。インカレでは第1シードの選手に勝利するもその後すぐに負けてしまい、「爆発力はあるのですが、継続する力がまだ足りないなと思う」と感じた。また、ダブルスでも昨年ペア組んだ藤原と共に優勝を勝ち取りたいと話し、「団体戦王座優勝、シングルでインカレベスト4以上、ダブルス優勝」を目標に掲げた。
大きな大会がないこのオフ期間にもいくつか試合を行っているというが、格下の相手に勝ち切る力を身に付けることを意識している。また、「練習していると苦手な部分に目が行ってしまうのですが、いざ試合になって頼れるのが長所なので、練習中でも長所をなるべく使って伸ばすようにしています」と、武器である長身から繰り出されるサーブとバックハンドにより磨きをかけている。基礎を大事にする下村の姿勢が、プレッシャーがかかる場面でも結果を出すことにつながっているのだろう。
そして最後に下村は自分が大黒柱になる強いという覚悟を語った。
「昨年の結果が良かったこともあって他校からマークされることも増えるだろうし当然周囲からの期待も大きくなる。さらに上級生になるためコーチ陣などから求められることはより増えると思う。間違いなく昨年よりも苦しい1年になるだろうが、期待や責任、重圧を背負って戦う義務が自分にはある。全てを受け入れて戦い、松山(王座の開催場所)の地で藤原さんを胴上げしたい」。
「チームのために、藤原さんのために」という思いは、宿敵へのリベンジに燃える慶大を頂へ導くのだ。
(記事:長沢美伸)