【競走】ミスはなかった。でも届かなかった箱根路 無念の22位に終わる/箱根駅伝 予選会

競走

東京箱根間往復大学駅伝競走の予選会が行われ、慶大は30年ぶりの出場を目指して12選手が立川の地を走った。主将の田島公太郎(環3・九州学院)を中心に厳しい練習に励んできた長距離ブロックの選手たち。全選手が実力を出し切ったものの、周囲のレベルの高さについていけず。22位で終わり、本戦出場は叶わなかった。

 

2023年10月14日(土)

第100回東京箱根間往復大学駅伝競走 予選会@立川駐屯地・立川市街・昭和記念公園

 

♢結果♢

1位 大東大  10時間33分39秒 
2位 明大   10時間34分38秒 
3位 帝京大  10時間35分8秒 
4位 日体大  10時間36分42秒 
5位 日大   10時間36分54秒 
6位 立教大  10時間37分6秒 
7位 神奈川大 10時間37分20秒 
8位 国士大  10時間37分21秒 
9位 中央学大 10時間37分27秒 
10位 東海大  10時間37分58秒
11位 東農大  10時間39分5秒
12位 駿河台大 10時間39分40秒
13位 山梨学大 10時間39分47秒


22位 慶大  10時間49分20秒

 

♢個人成績(上位10人)♢

順位

No.

選手名

タイム

24

355

木村有希(総3・葵)

1時間2分30秒

45

357

田島公太郎(環3・九州学院)

1時間3分6秒

133

353

安倍立矩(理3・厚木)

1時間4分11秒

200

359

鳥塚健太(理3・市立金沢)

1時間4分46秒

212

364

佐藤瑞(政1・慶應)

1時間4分54秒

278

361

東叶夢(環2・出水中央)

1時間5分41秒

282

356

田口翔太(法3・慶應志木)

1時間5分42秒

292

360

鈴木太陽(環2・宇都宮)

1時間5分46秒

360

363

渡辺諒(政2・慶應)

1時間6分21秒

363

358

橘谷祐音(理3・新潟)

1時間6分23秒

※各大学上位10選手の合計タイムで競う

 

レースのスタート時間より1時間近く前、陸上自衛隊立川駐屯地には各大学の応援団が駆けつけ、アップを行う選手たちの前で応援合戦を繰り広げた。秋晴れの空に若き血や塾歌を響かせる中、開始も刻一刻と迫る。開始5分前、9時30分には応援の音が止まると駐屯地内は静寂に包まれ、一気に緊張感が増す。そして9時35分、57大学の選手がスタートを切った。勝負の21.0975kmが始まった――。

 

来年の箱根駅伝は100回記念大会のため、予選会の出場資格を全国に広げ通常の10校から13校に出場枠は増えた。一方関東学生連合としての出場はなくなり、「K」の字を箱根路で見るためには、チームでの出場が必須だ。慶大競走部長距離ブロックは、ブロック長で1年次に関東学生連合の一員として箱根駅伝出場経験のある田島や今季好記録を連発している木村有希(総3・葵)ら3年生を中心に、経験豊富な4年生の黒澤瑛紀(総4・新島学園)やフレッシュな1年生を加え、箱根を目指せる戦力で臨んだ。選手のコンデションも良く、期待のかかるレースとなった。

2年の鈴木(360番)。下級生も懸命な走りを見せた

スタート直後、留学生らが一気に抜け出すと、その次の集団には田島の姿が。順調なスタートを切った。その後も田島、木村が上位集団に食らい付き、その他の選手も自分の目標タイム通りのペースで走り進める。しかし、全体的なレベルの高さは昨年より大きく上がっていた。10km地点では13位の東京農業大から10人の合計タイムで1分3秒の遅れをとり19位で通過。田島は日本選手の2位集団を走るなど、上位タイムの選手が奮闘する中、そこに他のメンバーがどこまで食らい付けるかが予選突破の鍵となるレースに。15km地点では1つ順位を落として13位と3分27秒差の20位と苦しい展開が続く。公園内折り返し地点の17.4kmの通過タイムではさらに差を広げられてしまう。そして慶大の全選手がゴール。個人では木村が23位、田島が45位と2人が2桁順位を記録する快走を見せたが、全体の結果は22位。本戦出場には届かなかった。

田島(357番)と木村(355番)が引っ張る

その後の全体ミーティング。応援に駆けつけた競走部員のもとに走り終えた選手が戻ってきた。先頭を歩く田島はこわばった表情で、4年生の黒澤の目には涙が見えた。競走部主将の伊藤達也(やり投=商4・帝京大学)は「今年の長距離ブロックは力を上げている。それでも22位は重く受け止めないといけない。長距離ブロックだけではなく、全体の問題。関東インカレにせよトップと戦えているメンバーはいるが、それ以外の部員がトップに食らいついていかないとチームでは強くならない」と話した。今レースも田島と木村がタイムを稼いだが、後続が続かなかった。そしてそれを長距離ブロックに限らず競走部全体の問題としてとして捉えた。

競走部の鹿又理監督も「チームとして出せなかったものであって、走った12人の問題ではない。全員が悔しいと思わないといけない。その悔しい思いを忘れてしまったら意味がない」と語り、「駅伝部」ではなく「競走部」であることの意味を強調した。

この予選会に限らず、競走部は部員一人一人が自分の果たすべき役割をしっかり果たして、チームで動いてきた。主務の業務も円盤投などで選手としても活躍する齋藤恒(経4・山形東)が担っている。齋藤はさらに箱根駅伝プロジェクトにも参画し環境づくりにも注力した。また、サポートブロックのメンバーも選手と同じ志を持ち、一つの目標に向けて支えるだけでなく自らが考えて行動してきた。

応援にも駆けつけた齋藤

それでも届かなかった箱根の舞台。長距離ブロックの保科コーチはこう振り返った。「メンバーたちはそれぞれの力を十分発揮できました。戦前私が出したレースプラン、タイム通りにおおむね走ってくれてそのタイム通りにゴールをしてくれました。他大学のレベルの高さを読めなかったところに敗因はあると感じます。例年は誰かが実力を発揮できないことがありましたが、今年は全員が実力を発揮できただけに、力負けをしてとても悔しさを感じています」。準備が足りなかったわけでもない、ミスをしたわけでもない、それでも勝てなかった。責任感と悔しさをにじませた。

一番悔しかったのは選手本人。長距離ブロック長(駅伝主将)の田島は「甘くないなと、それに尽きるレースでした」と淡々と話し始めた。そして「本当に悔しいなと、すごく悔しいなと思えるようになったこのチーム、そんなチームにできたことをうれしく思っています。すごく光栄に思っています」。チームとして本気で箱根を目指し、本戦出場を「夢」ではなく現実の目標として、達成できる目標として厳しい練習に励んできた。予選会も失敗はしていない。昨年このタイムを出していたら出場できていたのかもしれない。ただ本選出場のハードルは年々上がってきている。そこに食らいつくことができなかった。

さらにこう続けた。「我々はこれで諦めようとは1mmも思っていません。絶対に使いたくなかったと思っていますが、「来年こそは」祝福の若き血を大合唱できるよう、明日からではなく今日この瞬間から頑張っていきたいと思います」。最初は冷静に話していた田島も、悔しさ、これまでに過ごした練習の日々、引退となった4年生への思い…涙をこらえきれなかった。

悔しい報告となった

3年生ながら長距離ブロック長を任された田島が背負っていたものは大きかった。次は100回大会。ここで出るしかないというプレッシャーもあっただろう。自身も箱根駅伝に出走経験があるため、責任感も感じていたはずだ。「今年はチャンスだ」。周囲の人も今年のチームに期待した。そんな声を全て背負って走り抜いた。

主将就任時「来年こそは」という言葉はもう使わないと覚悟を語っていた。しかし今年、それは叶わなかった。誰よりも本人がその言葉をもう二度と言いたくないと強く思っていることだろう。悔し涙をうれし涙に変えるために。新生競走部はより一層の研鑽を積み続ける。

 

(記事:長沢美伸、写真:重吉咲弥)

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