野球とラグビーの架け橋―神宮の熱狂と感動を今度は国立で―

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10月最終週、華の早慶戦が行われた明治神宮野球場には土日で計57,000人、月曜日にも18,000人が集まった。応援席には多くの学生の姿が見え、ゼミやサークルの友達同士で歓喜の瞬間を見届けた。中には応援席で偶然先輩に会ったという声や、早大の友達とも遭遇したという慶大生も。ある應援指導部員は以前、「応援席に行けば今まで会えていなかった人にも会える」と話していた。まさに縦横斜めのつながりをつくっている空間である。

箱根駅伝などとは異なり、早慶戦はたった2校しか関わらないイベントにもかかわらず圧倒的な集客力を誇り、地上波でも放送される。それだけ魅力あふれる一戦である。その魅力は両校がお互いを尊敬し合っていることにより生まれている。試合の時は「慶應には負けられない」「早稲田には負けらない」という意地のぶつかり合いになるが、試合前には相手応援団が自校の応援席に来る「陣中見舞い」や「早慶讃歌」が歌われる。この伝統を両校が協力し守り育んでいる。そしてもう1点、学生が舞台をつくりあげ、学生が学生の試合を応援するという文化があることを忘れてはいけない。

野球部とそれを応援する應援指導部。どちらも慶大生だ。

早慶戦前日の10月26日、明治神宮野球場には應援指導部の姿があった。メイン台の設置や配布するパンフレット・メガホン・新聞の仕分けなど翌日の準備作業に取り掛かっていた。試合当日、早慶戦の運営を行う慶早戦支援委員会の部員はなんと試合開始の7時間前朝の6時過ぎには神宮球場に到着し、観客の誘導のための確認を行っていた。応援席内の団体客・関係者・一般客の席までの誘導ももちろん部員が行う。一方内野席では慶應スポーツ新聞会の部員がメガホンとパンフレットと新聞をセットにして配布している姿も見られた。

試合をするのは野球部。プロではない、同じ大学に通う学生だ。もしかしたら同じ授業を取っていることもあるだろう。応援するのもOB・OGや関係者に加えて應援指導部や多くの学生、そしてその舞台を作り上げているのも学生。大人の力を借りながらも学生が主体となってこそ生まれる空間がある。

印象的だったのは、1回戦(土)の内野応援席で黒いTシャツにがっちりとした体つきの慶大蹴球部員。134人で野球部の応援に駆け付けた。応援歌「朱雀」ではメガホンを回し飛び跳ね全力応援。神宮が揺れた。決して野球部・應援指導部だけではない、慶應義塾が一体になることができるのが早慶戦の持つ力である。

野球の早慶戦で応援する蹴球部員

そんな「早慶戦」が今度は11月23日(木・祝)に行われる。慶大蹴球部と早大ラグビー蹴球部の一戦だ。そして今年は100回記念大会で国立競技場での開催である。互いのプライドが文字通りぶつかり合う。

両校がブライドをかけて戦う

ラグビー早慶戦も野球と同様、大人の力を借りながらも学生が主体的に進めている。生協と連携したチケット販売、グッズの制作・販売。近年、ラグビー早慶戦は秩父宮で行われてきた。国立での開催経験が部員にはない中でも、実現に向けて進めてきた。野球と同じく学生同士の戦いの場を学生がつくりだす。簡単なことではない、世の中にたくさんあることでもない、そんな挑戦に「当たり前」のように取り組み成功させてきている。その学生の勇姿を自分の目で見届けられる機会はそう多くない。自分たちと同じチームに所属する選手を応援することは、学生のうちにしか経験できない特権でもある。

 

野球の早慶戦の3回戦(月)9回裏2死2ストライク、森下祐樹(総4・米子東)が投じた一球が空振りを奪いキャッチャーミットに収まった瞬間、神宮球場は歓喜に沸き涙する人もいた。その熱狂と感動を今度は国立で――。観客席で応援する学生の存在が、両校がくり広げる熱戦をさらに熱くする。

(記事:長沢美伸)

 

※チケットを購入する方は、慶大蹴球部の公式アカウントなどをご確認ください。

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