出会いと別れの季節。大学4年間の苦楽をともに過ごした仲間と別れ、大きな期待を胸に新天地へと旅立っていくーー。今回ケイスポでは〈4年生卒業企画〉と題して、これまでの部活動を支え率いてきた4年生に焦点を当て特集する。
今年度、慶應義塾体育会バレーボール部からは、大学卒業後もV.LEAGUE(ブイリーグ)でプレーを続ける選手が2名いる。キャプテンを務めていた島田航希選手(経4・慶應)とエースとしてチームをけん引してきた松本喜輝選手(環4・九州産業)だ。島田選手は大分三好ヴァイセアドラー、松本選手は富士通カワサキレッドスピリッツの内定選手として2023-24シーズン途中からチームに合流し、目覚ましい活躍を見せてきた。
先日、2月17,18日(土,日)の大分三好ヴァイセアドラー対富士通カワサキレッドスピリッツの試合では島田選手・松本選手の直接対決が実現。大学の公式戦ではネットを挟むことはなかったが、次のステージでは好敵手として切磋琢磨するであろうと予感させた。
今回の島田選手のインタビューでは、松本選手との直接対決の話はもちろん、大分三好ヴァイセアドラーのチームの話もたっぷりと伺った。
ぜひご一読ください!
――大学卒業後もバレーボールを続ける選択をした理由は
島田:自分がバレーボールを始めた時から、実業団に入ること、Vリーグの選手になることを目標にずっとやってきました。
運良く大学でも関東一部(関東大学男子一部バレーボールリーグ)でプレーができて、最初は自信がなかったんですけど、途中から自分でもやっていけるんじゃないかと思い始めてVリーグの道に進むことを決めました。
普通に就職する先輩方が多いと思うんですけど、自分はやっぱりバレーボールを続けたいなと思って、ビーチバレーかインドアのバレーかで最初迷いました。でもやっぱりインドアのバレーは6人制の団体競技で、そういう人数が多い中で勝つことの喜びだったり楽しさというのが大きかったので、まずはインドアのバレーで頑張りたいと思いました。まだ分からないですけど、後々ビーチバレーもできたらなと思っています。
――夏になったらビーチバレーの練習も始めるんですか
島田:そうしたい思いはあるんですけどそれが難しいのであれば、インドアの競技を辞めたあととかですかね。インドアからビーチっていう流れでやっている方も多くいるので、インドアを引退してからでも遅くはないのかなと考えています。
――長くバレーを続けていきたいという思いなんですね
島田:はい、今のところは(笑)。
――先程、大学の途中で将来もバレーを続けられるのではと思ったというお話がありましたが、何かきっかけがあったんですか
島田:最初自分が入学したときは二部スタートだったんですけど、大学2年の時の全日本インカレ(全日本バレーボール大学男子選手権大会)で日本体育大学さんと対戦したときにフルセットまでいきました。その当時、日体大は秋リーグ優勝していたので、1番強いチームとでも十分戦えるなと手応えを感じることができました。そこで自信がついたというか、もっと上を目指したいなと思うきっかけになりましたね。
――慶大バレー部、Vリーガーの大先輩である星谷健太朗監督とは何かお話されましたか
島田:厳しい世界だよ、みたいな話はされたような気がします。あまり覚えてないんですけど(笑)。
――そうだったんですね。三好のチームに入る決め手は何かあったんですか
島田:サイドの選手がけっこういなくなってしまうので不足してるよというお話があって、自分がVに進むからにはやっぱりすぐ試合に出たいという気持ちがあったので、すぐ試合に出られるようなチームに行きたいなと思っていました。あと練習も大学と同じようにいっぱいしたいと思っていたので、三好は週6日で練習があって午前が自主練、午後が全体練習でけっこうがっつりやっているのでいいなと思いました。
――チームの雰囲気はどうですか
島田:外国人の選手もいるのでコミュニケーションが難しいところはあるんですけど、多様な価値観があって互いを認め合う風潮があります。先輩方もとても優しくて居心地が良いです。
――尊敬する先輩はいますか
島田:本当にたくさんいるんですけど、2個上の安部翔大さんと仲良くさせてもらっています。
――他に仲の良い選手はできましたか
島田:森田(森田元希選手、日本体育大学卒)をはじめ、同期と仲良いです!
――もともと仲良かったんですか
島田:いや、それまで全然絡みはなかったんですけど、合流してから仲良くなりました(笑)。
――三好と慶應の共通点や相違点は何かありますか
島田:似ているところで言うと、試合中とか自分たちで考えてプレーするところですね。あんまり監督とかが指示出したりする感じじゃないのでそこは三好も慶應も似ています。基礎練は大学の方が多かったんですけど、三好では午前も午後も練習しているのでやっぱり今の方が疲れますね(笑)。
――慶大バレー部での4年間が生きた経験はありますか
島田:そうですね。慶應だと自主性を重んじるっていうのがあってそこで培われた部分ではあるんですけど、Vリーグってそれまでバリバリやってきた人たちが集まるので、そもそも自分で考えて動けないと生き残れないので、できて当たり前という感じがあります。大学だとスパイク、レシーブ、サーブって一通りの練習がありますけど、Vだといきなり連携の確認だったり総合的な練習から始まることが多いので、そこでできなかったところをそのままにするのではなくて、自分で時間を作って自分で練習を考えて、時には手伝ってもらったりしてやらないといけません。自分で行動しないと落ちぶれてしまうというか…。なので、練習の仕方を大学で学べたというのは今にも生きていると思います。
――三好の内定選手としてスタメン出場もされていました。率直にいかがですか
島田:大学バレーを引退してすぐVの試合に出たいと思っていたのに、合流して1カ月半くらいスタメン出場はできていなかったのですごく悔しくて、かなり悩みました。どうしたら試合に出られるかを考えて、日々の練習だったり、試合に少しでも出られたら与えられたチャンスで精一杯アピールするしかないと思ってそこは意識していました。
――Vの試合に出ることに対して緊張はありましたか
島田:最初は緊張していましたね。小田原アリーナでの試合の時は、地元だったというのもあってリラックスして試合に臨むことができました。
――2回もVOM(V-leaguer Of the Match,試合で最も活躍した選手を指す)を受賞されていましたね
島田:なんだろう1回目(※2024/02/18 富士通カワサキレッドスピリッツ戦)は忖度みたいのがあったと思うんですけど、2回目(※2024/02/25 クボタスピアーズ戦)の方はそこそこ手応えがありました(笑)。その日はサーブが調子良かったです。
――島田選手のサービスエースで試合終了でしたよね
島田:はいそうです。その日は気持ちがノっていて、最後自分のサーブで終わらせてやろうと思ってやりました。
――すごく強気だったんですね
島田:いつもはそんな強気じゃないんですけど(笑)、その日はホームゲームだったのもあって気持ちが入っていました。
――慶應でも攻守の要として活躍されていましたが、自分の強みをどう捉えていますか
島田:自分は身長がある方ではないし、慶應でもそうだったんですけど三好にも大エースが他にいてそこにトスが集まるのは当然で、自分はそこを目指しているわけではないです。サーブレシーブやつなぎを磨けばチームは勝てると思うので、それが自分の役目かなと思っています。
――逆に自分に足りないところ、もっと頑張りたいところはありますか
島田:頑張りたいのはバックアタックとサーブですかね。サーブもちょっと波があるので、安定して強く打ちたいなと思っています。
――今年は慶大バレー部からVリーガーが2人誕生しましたが、松本喜輝選手(富士通カワサキレッドスピリッツ所属)はライバルとして意識されますか
島田:意識はします…ね(笑)。でもライバルって感じじゃないです(笑)。だけど、試合で対戦するとなれば、オポジットとサイドはブロックとスパイクでマッチアップするので、その時は負けないようにはしたいです。自分は大分で、喜輝は川崎で、そういう離れたところで同期が頑張っているのは自分も頑張ろうというモチベーションになります。
――先日の試合では松本選手との慶應対決が実現しましたが、いかがでしたか
島田:まさかサーブ狙ってくると思わなくてビックリして弾いちゃいました。普通に良いサーブでしたねあれは(笑)。大学の時は公式戦でサーブを受けることがなかったので、あのサーブを久しぶりに受けてうれしい気持ちもありましたね。
――その試合の際に、何かお二人でお話はされましたか
島田:話はしたにはしたんですけど、試合の話じゃなくてめちゃくちゃどうでもいい話しかしませんでした(笑)。今の慶應のバレー部の話とかしました。
――慶大バレー部の同期の皆さんも試合を見に来ていましたね
島田:めっちゃうれしかったです!
――うちわも見えていましたか
島田:はい(笑)。試合前に見て気づきました。でも試合中は見ないように集中しているフリをしていたんですけど、実はけっこう見ていました。視界に入るのでチラチラと確認したりして(笑)。
――慶大バレー部の同期の皆さんはどういう存在ですか
島田:みんなの顔を見たら和むというか、懐かしい感じがして安心しました。かけがえのない存在です。大学より成長した自分を見せたいので、頑張りたいと思います。
――応援しているファンの方々へメッセージ
島田:ファンの方の応援の力はとても大きいなと実感しています。差し入れもいただきますし、素敵な写真を撮っていただいたり、SNSでメッセージをいただいたりするので、それがとてもうれしいです。もっと活躍して応援してくださっている方々に楽しんでいただきたいなと思っています。
――今後の目標、意気込み
島田:まずはもっと自分の技術を高めて、島田がコートにいれば勝てると思ってもらえるような選手になりたいなと思います。具体的には、ディグ拾ったり、大事なところで得点したり、スーパープレーでなくていいので普通のプレーを精度高く安定してできるようにしたいです。もっともっと有名な選手になって、支えてくださる方々や応援してくださる方々に恩返しができるように頑張りたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材:田中瑠莉佳)
★松本喜輝選手のインタビューは明日公開予定です!お楽しみに!