東京から200キロ離れた長野県・松本アルウィンにて関東大学対抗戦A第2戦、日体大戦が行われた。縦にボールを繋いでいくアタックを貫いた慶大はトライを量産。計11トライを奪い67-12で成蹊大戦に次ぐ連勝を飾った。だが好アタックを見せた一方でハンドリングエラーやタックルのミスも目立ち、今後の強豪校との戦いに向けて課題がはっきり見えた一戦でもあった。
関東大学対抗戦A 対日本体育大
2011/9/24(土)12:00 K.O@松本平広域公園総合球技場(アルウィン)
得点 | ||||
日体大 | チーム | 慶大 | ||
前半 | 後半 | VS | 前半 | 後半 |
1 | 1 | T | 5 | 6 |
1 | 0 | G | 2 | 4 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
7 | 5 | 小計 | 29 | 38 |
12 | 合計 | 67 |
T=栗原2、宮川、服部、仲宗根2、小川3、浦野2
G=中村6
出場選手 | ||
ポジション | 名前(学部学年) | 交代選手 |
1.PR | 古田 哲也(環4) | |
2.HO | 渡辺 祐吉(経3) | →後32分16.土岐 昇平(総4) |
3.PR | 平野 裕馬(環3) | →後0分17.山田 亮介(環3) |
4.LO | 栗原 大介(総4) | |
5.LO | 藤本 慎二郎(環4) | →後14分18.熊倉 悠太(政4) |
6.FL | 明本 大樹(総4) | →後28分19.木原 健裕(総1) |
7.FL | 石橋 拓也(総4) | |
8.NO8 | 鹿児島 昌平(経3) | |
9.SH | 宮澤 尚人(法1) | →後14分20.猪狩 有智(経2) |
10.SO | 宮川 尚之(環2) | |
11.WTB | 服部 祐一郎(総1) | |
12.CTB | 仲宗根 健太(総4) | |
13.CTB | 中村 圭介(総4) | |
14.WTB | 小川 優輔(環4) | |
15.FB | 新甫 拓(経3) | →後6分22.浦野 龍基(政1) |
試合は日体大のキックオフから始まった。序盤、慶大はハンドリングエラーなどのミスが目立ち、なかなかテンポをつかめないでいたが、流れが変わったのは10分。敵陣内でマイボールラインアウトを得ると、これをしっかりとキープしてLO栗原(総4)のゲインなどでゴール前まで進む。ここで日体大のオフサイドを誘うと、クイックリスタートから最後はWTB小川(環4)へ渡って先制した。さらに15分にもこの日好調だったラインアウトを起点にアタック。順目に振っていき、対抗戦初スタメンのWTB服部(総1)のトライで得点を重ねた。2本のトライを挙げて順調であるかのように見えたが、相手に「飛び込んでタックルするシチュエーションが多かった」(田中監督)というように、セブンス代表経験もある日体大FL高井を中心とした相手のテンポの速いアタックに苦戦。18分には自陣でディフェンスが中央に寄ったところを突かれてピンチを迎えたが、最後はスローフォワードに助けられた。攻め込まれる時間も出てきたが、今度はワンチャンスをものにして流れを引き戻す。22分にはこちらも対抗戦初スタメンのFL石橋(環1)が自陣で相手キックをチャージすると、こぼれた球をSO宮川(環2)が拾い、そのまま50m以上を独走して中央にトライ。CTB中村圭(総4)のコンバージョンも決まり、17−0とした。その後相手に1トライを許したものの、モールトライやパスをインターセプトしてのトライで得点を積み重ね、29−7で前半を折り返した。
後半は春シーズンから取り組んでいた「コンタクトシチュエーションから足を一歩でも二歩でも掻きながらいく」(監督)ことを意識したアタックでさらに点差を広げていく。7分に相手を引きずりながらCTB仲宗根主将(総4)がトライを決めて幸先よく追加点を挙げた。その後一旦は日体大にボールキープされるものの、石橋が1対1の場面でこれぞ慶大伝統のタックルといわんばかりに突き刺さり再び流れを慶大に引き戻す。1年生のナイスプレーに応えたい慶大は、途中出場のSH猪狩(経2)を中心にテンポアップ。そこから3分間の間に2トライを挙げて日体大を一気に突き放した。そして後半も中盤を過ると相手の疲労も色濃く見え始め、フィットネスの差が出た形のトライが生まれていく。30分に宮川が裏へ蹴ったボールを対抗戦初出場のWTB浦野(政1)が相手と競り合いながらもキャッチ。そのままトライを決めた。さらに33分にはチャージされたボールを拾った宮川が、後半途中からFBに入った小川に回し、60m以を走り切って後半チーム7本目のトライを決めた。しかしながら終了間際には「点差がついてきた時にさぼっていた面があった」(栗原)と集散の寄りが遅くなった上にペナルティも連発。一方の日体大も少しでも点を取り返そうという気力を見せ、ロスタイムに1トライを許してしまう。慶大は67−12とスコア的には圧勝したものの、最後の最後にトライを挙げられてノーサイドを迎える後味の悪い締めくくりとなってしまった。
計11トライを挙げ、大勝したものの、チーム全体の課題がはっきりと見えた一戦であった。「筑波、帝京と強豪チームと戦っていく上ではディフェンスの修正をしていかないと厳しい」(田中監督)と語るように、相手を一発で仕留めるタックルなどは相手の個々のレベルが上がるこの先は必須になる。またハンドリングエラーを減らすことで、チャンスを確実にものにし、マイボールを持ち続けることも接戦では重要になってくるだろう。また、この日は「1人が複数のポジションをできるように取り組んでもらった」(田中監督)と古田や小川が試合中に別ポジションでプレー。一本目の選手が複数ポジションをこなすことで各ポジションの厚みも一層増しただろう。
次戦の相手は筑波大。今年7月に、Fwd戦では善戦するもBksに走られ、大敗を喫した相手である。しかし夏を越え、さらにこの一戦で課題を再認識した。縦に突破することを意識したアタックも冴えており、慶大は確実に前進している。チームでも筑波大戦をターニングポイントとしており、気合いは十分。次戦まで残された時間は1週間と短いが、課題を修正し筑波大に勝利し、対抗戦優勝に向けてますます波に乗っていきたいところだ。
【ケイスポ的MOM】魂のタックルで相手を仕留める!石橋
Jr.選手権での活躍から、対抗戦ベンチ入り、この日は対抗戦初スタメンとグレードを上げていく石橋拓也(環1)は期待に応えて大活躍を見せた。タックルミスがチームとして多かったこの試合の中で、後半17分のビッグタックルは、「ローファストタックルを意識した」という言葉通り、相手に低く刺さり、慶大の連続トライの流れを引き寄せる結果へと導いた。本来の慶大らしい「伝統の低いタックル」はチームの流れを変え、歓声が上がるなど観客までも魅了した。また、タックルだけでなく相手キックに対し好チャージをし、トライに繋がるシーンも見られFLとしての機動力の高さも披露。「強いFwd相手に自分が通用したなと思える」と大学レベルの試合でも自身のプレーに手応えも感じた。これからさらなる自信をつけて挑んでいく1年生、石橋に注目だ。
By Akane Takahashi
コメント
田中監督(試合を振り返って)長野県信州の素晴らしい気候と素晴らしいグラウンドと長野県協会さんのスペクタリティ溢れる対応に感謝します。今回の日本体育大戦は対抗戦の2試合目でした。初戦は舞台が秩父宮の上、暑さもあって大変緊張した選手もいて、ハンドリングエラーなどが多いゲームとなりました。今日は自分たちの持ち味である超高速ラグビーを仕掛けるべく、調整をしてきました。しかし、ゲームの序盤は少しイージーなミスがありまして、中々テンポがつかめないままゲームが展開していきました。春先から取り組んでいる「圧力」というテーマでディフェンスでは前に出る、オフェンスでもコンタクトシチュエーションから足を一歩でも二歩でも掻きながらいくという原点に帰っていったところ、スコアが重ねていったと思います。最終的には67-12で勝利を収めることができました。ですが、ゲームの最後でトライを取られて終わった。最後に取って終わるのか取られて終わるのかでは違いますので、最後にディフェンスが甘くなってしまったのは次戦に残る反省だと思います。ディフェンスでは飛び込んでタックルするシチュエーションが多かったため、一発で相手を仕留めきれなかった。これから対抗戦では筑波、帝京と強豪チームと戦っていく上ではディフェンスの修正をしていかないと厳しいと思います。残された時間でどこまで修正できるか課題もあるんですけど、しっかりと今日の反省を生かして一つでも二つでもプレーのレベルを上げて次戦に臨みたいと思います。(選手起用について)初戦で高橋浩平が足首の怪我をしたこともあって、次に来るHOは誰かとなったら渡辺祐吉となりました。HOはラインアウトのスローやスクラムも真ん中で組む特殊ポジションでもあります。渡辺祐吉の次に来るHOは誰かとなったら、高校時代に国学院久我山でHOをやっていた経験もあるので、彼を試したいということで古田をHOに起用しました。SHの猪狩は昨年のジュニア選手権にも出場していて、大変素晴らしい選手ですが、春先から怪我をしてしまって夏も出遅れていました。今日は彼が入ってからテンポアップをして、スピーディーなラグビーができました。彼の復帰、成長は大きな収穫ですね。小川については元々FBができる選手で、FBでのプレーも試したいということで、新甫を下げて浦野を起用しました。なるべく1人が複数のポジションをできるように取り組んでもらった形ですね。(キック処理について)陣地を取っていくこと、エリアマネージメントが大事で自陣で戦うよりも敵陣で戦っていく方がメンタリティでも余裕が生まれるのでその点に関しては今後意識していきたい点ですね。キックを蹴ることは自分たちの手元にあるボールを手放すことになるので、それを取り返すだけのストーリーを持っていって、レベルを上げていかなければいけないと思います。強豪校が相手になってくると、パンチ力のあるキッカーが増えてきますので、どこでキックを蹴るのか、誰に蹴らせるのかについてはきちんと分析しながらやっていきたいです。
CTB仲宗根主将
(チームとして今日フォーカスした点)ラック付近の1人目2人目が前に出て、しっかり止めようということでしたが、なかなか相手のテンポが速く、やりきれない部分が多かったです。なのでしっかり次までに修正したいと思います。(試合を振り返って)反省点が明確に出た試合でした。大きくわけ2つあると思います。1つはラストパスの部分でミスをして、なかなか得点につなげられなかった点です。もう1つはタックルがしっかり出来ていなくて、相手に抜かれてしまったシチュエーションが多くありました。この2点を修正すれば、次の筑波戦は勝てるのかな、と思います。(自身のトライについては)1本はごっつぁんトライという感じで、フォローしたくらいです。もう1本もFwdがしっかり押してくれて、良い形でボールがもらえたので、取らなくてはいけないところを取ったのかな、という感じです。(縦の「圧力」をかけてアタックしていたということだが)自分はBksで最初にボールを触り、前に出る場面が多いプレイヤーだと思うので、次のアタックにつながるように自分の役割がきちんと果たせたことに関してはすごく良かったな、と思います。(課題として今日出たのは)やはりタックルとハンドリングの2つですね。(次戦の筑波大戦に向けて一言)チームとしては、春にスタートした時から対抗戦の筑波戦というのにはフォーカスをあててやってきたので、しっかりここで勝って、大学選手権までいい形で臨めればな、と思います。個人としては、高校時代からすごく良いプレイヤーだった、トイメンのCTB中鶴選手をライバル視しています。だからしっかり1対1の部分で勝って、チームの勝利に貢献したいです。
LO栗原副将
(試合を振り返って)良いところも出たと思いますが、最初の方に小手先でやろうとしてしまいました。その辺りの序盤の修正と、ディフェンスが良くなかったので一つ一つのタックルやセットを修正していきたいと思います。(自身のトライシーンについて)正直どっちもごっつぁんトライなので、特に気にせずですね。モールと最後にワンパスもらうだけで、助けられた感じです。(モールについて)今のところは不意打ちみたいな感じですね。慶應がモールをするとはあまり考えていないと思うので。この先使っていく上で、対策してきた相手にどれだけできるかがこれからの課題ですね。精度を上げていきたいと思います。(運動量について)点差がついてきた時にさぼっていた面があったと思います。もっと自分たちのラグビーをする上でもっとプレゼンスをしなければいけないと思います。(ラストのプレーについて)ブレイクダウンでボールが出てしまってカウンターを食らったりとか、ディフェンスが一個一個悪かったのが合いまったりして、悪い動きが重なってしまったと思います。そこは修正点ですね。(途中、古田選手がスローワーになったラインアウトについて)高橋浩平が怪我をしてしまって、その下が渡辺祐吉で、厚みを出していくためにも古田に練習してもらいました。(猪狩選手が入ってから、アタックのテンポが上がった印象があるが)この前のジュニア帝京戦から乗っている選手なので、それにFwdも乗って行けました。(次戦に向けて)同じようなディフェンス、同じようなアタックをしていては勝てないと思います。もう一つ動き出しを速くしたり、セットしてコールをしていって、一つ一つの精度を上げていきたいですね。
PR/HO古田
(振り返って)前半ミスが多かったところが反省点として残っているが、後半テンポよく流れに乗れたところは良かった点かなと思う。(セットプレーの出来は)前半、相手の特殊な組み方に対処できなくてプレッシャーをかけられなかったが、後半最後の方は修正できてプレッシャーをかけられたと思う。(Fwd戦について)ブレイクダウンの部分でもある程度こっちの方が優勢だったので、テンポが出ると良いアタックができたが、まだまだ精度の部分がちょっと甘いので、そこを詰めていければと思っている。(前半一つモールからのトライがあったが)そんなにモールにこだわっているわけではないが、組んだら絶対押せるという自信はあるので、一つの強みにはしているところですね。(後半途中からHOに入ったが)スローで1個ミスがあったが、セットプレーも安定できたので、もうちょっとスローを練習してという感じですね。(今日はHOのスタメンに渡辺祐が入ったがFwd陣の連携は)やっぱりずっと一緒にA、B問わず練習しているので、替わったところでそんなに大きな違いはないと思うので、連携は取れているとい思う。(前半苦しんだ原因は)スクラムは突っかけが遅れてしまっていて、僕たちも大きいチームではないので、そこでこだわって早く出るという意識に変えて後半臨んだという形になった。(次戦・筑波大戦は一つの山場になると思うが)春は大差で負けていて、春夏と意識してきた相手であるので、気持ちの部分で毎試合高いモチベーションでやっているが、屈辱を晴らすという意味で、みんな気持ちを持って入っていっていると思うので、一つ一つ熱のこもったプレーをしていきたい。
FL石橋
(今日の試合を振り返って)相手のFwdが強くてFwd勝負になると思っていたんですが、Fwd相手に自分が通用したなと思える試合でした。(日体大相手に対策していた点は)やっぱり相手が大きいので、普通のタックルじゃ倒れないだろうと。なので足首に入るようなローファーストタックルを意識していました。(前半に自身のビッグタックルがあったがそのプレーを振り返って)自分が期待されているのはタックルなので、チャンスがあればビッグタックルを狙っていた。前半にあったビッグタックルはチャンスだと思って飛び出て出来たので、実現出来て良かったと思います。(今日のプレーはJr.でのプレーが糧になったか)そうですね。Jr.から積み上げたものが大きかったかなと思います。(プレーだけでなく)気持ちも大事だと思います。ポイントが掴めればビッグタックルが生まれると思うので、そういったことを今後も狙っていこうと思います。(自身のルーズボールに対する反応について)FLとしてサポートは大事なのでボールへの反応を(タックルの次に)2番目に大事にしている。今日はボールに反応出来たので良かったと思います。(ハーフタイムに修正した点は)Fwdは内に抜かれていたので、そこを皆で話し合って内からしっかり抑えていこうという対策を練っていました。(次戦に向けて)春は怪我をして出られなかったので、あまり筑波のことはわかりませんが自分のプレーが出来ればなと思います。
SO宮川
(試合を振り返って)ディフェンスが悪かったと思います。相手の速いテンポにこっちがついていけなかったのが終わっての印象ですね。(ゲームメイクについて)まずは敵陣に入って、前半は早めにスコアしようと。敵陣に入ってペナルティをもらえれば、PGの3点でも良かった。ゲームプランとしては敵陣に入ることでした。そこについては割と上手くいったと思います。(SHに猪狩選手が入ってから、テンポが変わった印象があったが)そうですね。有智はすごく良いテンポを持っているので。今まではBチームとかでやっていて、鬱憤が溜まっていたと思うんですが、爆発した感じですかね。僕は有智が一番やりやすいので、とてもやりやすかったです。(チームとしてのアタックについて)もう少し順目に走って欲しかったんですけど、シェイプもしっかり保てていて良かったと思います。(運動量について)前回は暑さでバテテいた感じはありました。今日は松本の気候も涼しくて、みんな走れていたと思います。(課題は)ディフェンスのセットが遅かったのと、もっとブレイクダウンで相手の球出しを遅らせないと筑波戦は厳しいと思います。そこはこの1週間で修正していきたいと思います。(次戦に向けて)次は山場で厳しい試合になってくると思うんですけど、まずは僕から流れを作って、勝ちにいきたいと思います。
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