4月13日に開幕した春季リーグ戦も、残すは最終週となる第8週のみとなった。春季リーグ戦の最後を飾るのは、早慶戦。両校のプライドがぶつかる伝統の一戦である。第7週を終えた時点で、優勝の可能性があるのは早大と明大の2校。勝ち点3で現在3位の慶大は、早慶戦の結果次第で2位の可能性が残されている。と同時に、ワセダから勝ち点を獲得できない場合、ワセダの優勝を目の当たりにする可能性も。宿敵の胴上げを阻止すべく、早大をどう攻略するか。注目の集まるカードとなる。
慶大は、東大・法大・立大相手に3カード連続で勝ち点を獲得したが、明大相手に勝ち点を獲得できず、ここまで11試合を6勝4敗1分の勝率6割でリーグ3位。法大は3戦、立大は4戦までもつれる苦しい戦いが続いてきたが、試合を重ねるごとに上がった「チーム力」で勝ち抜いてきた慶大。勝ち点3を獲得し、迎えた第6週・明大とのカード。1回戦は、明大投手陣攻略の糸口が見つけられず、完封負けを喫した。2回戦は、9回裏に1点差まで追い上げるものの、反撃及ばず敗戦。勝ち点を逃した明大との戦いで得られた課題の1つである「守備力」を修正し、ワセダとの試合に臨みたい。
現在早大投手陣はリーグ1位の防御率1.58を誇り、チームとして安定した投球を続けている。第1戦は、早大・伊藤樹(スポ3・仙台育英)の先発が予想されるが、昨秋と比較すると、今季の伊藤はすべての投手部門の数字が良化しており、強敵相手に先制点を取れるかが鍵となる。第2戦は宮城誇南(スポ2・浦和学院)の先発が予想されるが、直近2試合で無失点投球を披露し、状態の良さがうかがえる。早い回から得点を重ね球数を投げさせることが重要だが、ワセダは先発陣だけでなく、救援陣も強力だ。ここまで早大救援陣の許した失点は、わずか2失点。チェンジアップを武器にリーグ戦初登板で初勝利を挙げたルーキー・安田虎太郎(スポ1・日大三)や1年からリーグ戦に出場し、経験豊富な香西一希(スポ2・九州国際大付)の左右2枚が揃っており、優勝への死角はない。
また今季の早大は全試合で1番から4番を固定し、切れ目のない打線で他の追随を許さない。特筆すべきは、やはり首位打者争いを展開する3選手だろう。第7週を終えて現在首位打者に立つのは、1番・尾瀬雄大(スポ3・帝京)。ここまで打率・安打数でリーグ1位を記録している。明大3回戦には、延長11回に無死二、三塁から勝ち越しとなる適時打を放つなどチャンスに強い打撃も魅力の尾瀬ゆえに、慶大としては必ず抑えなければならない存在だろう。2番・山縣秀(商4・早大学院)はリーグトップタイの9犠打を決め、走者を進める役割を果たしながら、打率はリーグ2位の記録を残し、「つなぎの2番」として躍動している。そして、4番・印出太一(スポ4・中京大中京)はリーグ3位となる打率を記録するとともに、打点・本塁打ともにリーグトップタイと、「三冠王」を射程圏内に収めている。3番・吉納翼(スポ4・東邦)は、チーム最多の四死球数で4番・印出につなぐ役割を果たしており、吉納の持ち味である長打力は鳴りを潜めているが、慶大としては相性の悪い相手だけに警戒したいところだ。
今季の慶大投手陣を振り返ると、第1戦先発予定の絶対的エース・外丸東眞(環3・前橋育英)はここまで7試合を投げ、3勝2敗。慶大の中で唯一規定投球回に到達している外丸の防御率は1.69であり、今季も安定した見事な投球を披露している。また3勝のうち2試合で完投を果たし、チームの勝利を自ら引き寄せる外丸の気迫のこもった投球は、早慶戦でも注目だ。2戦目の先発は渡辺和大(商2・高松商業)が予想されるが、明大2回戦で制球に苦しみながらも、要所を締める投球で得点を与えなかった。強力な早大打線に対して、走者を溜めないテンポのよい投球に期待だ。救援陣は、広池浩成(経2・慶應)が最多の6試合に登板し、今季リーグ戦初登板を果たした沖村要(商2・慶應)やサイドスロー右腕・木暮瞬哉(法3・小山台)が5試合に登板。早慶戦でも総力を結集し、その投球に注目が集まるが、特に期待したいのが荒井駿也(商3・慶應)だ。今季は明大1回戦と2回戦に登板し、防御率0.00。昨春の早慶2回戦で8回のマウンドを任された荒井は、無失点という完璧な内容で早大打線を封じた。今季も強気の投球で早大打線に立ち向かいたい。
慶大野手陣は、ここまで全試合で4番に座っている清原正吾(商4・慶應)が安打数・打点でチームトップの成績を残しているが、未だ本塁打0。早慶戦で待望のリーグ戦初アーチを描けるか、注目だ。また、慶大の勝利には主将・本間颯太朗(総4・慶應)の覚醒が欠かせない。飛躍の昨秋とは一転、今季は怪我の影響で調整が遅れ、苦しむシーズンを送っている。しかし明大3回戦では初回に安打を放つと、その後は四球を選ぶなど全打席で出塁し、復調の兆しを見せた。昨秋の早慶3回戦では7回表に追加点となる本塁打を放ち、チームの勝利に貢献する一発を放った本間。主将の熱き一打で、慶大打線を奮起したい。そして、遊撃手でフルイニング出場を果たしている水鳥遥貴(商4・慶應)。今季は副将に就任し、背番号「1」を着用。スタメンに定着した昨秋の経験を生かし、走攻守全てにおいてチームを引っ張ってきた。特に盗塁数は、チームトップの3個。水鳥の「足」でかき回し、攻撃の流れを作っていきたい。また昨秋の早慶3回戦では適時二塁打を放ち、ワセダからの勝ち点を決定づける一打を放った水鳥。今季の早慶戦でも、試合を決める一打に期待がかかる。
今季の慶大は、多くの選手がリーグ戦初出場を果たすとともに選手一人ひとりが求められている役割を果たし、その活躍が光った。特に東大に2連勝し、1勝1敗で迎えた法大3回戦。リーグ戦初出場・代打でサヨナラホームランを放った渡辺憩(商1・慶應)の鮮烈デビューは、観客の度肝を抜いた。怪我で主力選手の離脱が重なる中でも、スローガンでもある「ALL in」でここまで戦い抜いてきた慶大。その結果、今季も3位以上が確定した。これは2016秋以降、16季連続の偉業である。今季の総括ともいえる早慶戦。最高の舞台で、ワセダから勝ち点を獲得し、秋に向けて良い形で繋げていきたい。
(記事:加藤由衣)