第1回の東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に出場し優勝経験も持つ伝統ある慶大競走部。しかし約30年出場から遠ざかっている。箱根駅伝出場に向けて大事な夏合宿。今年もクラウドファンディングを実施する。第98回7区で出走経験のある駅伝ブロック主将田島公太郎(環4・九州学院)がついにラストイヤー、部員一同今年に懸ける思いは一段と強い。
長距離ブロックの3選手、サポートブロックの2人、計5名にインタビューを行った。
♢対談参加メンバー♢
田島公太郎(環4・九州学院):107代長距離ブロック兼駅伝主将
吉川昂希(総4・湘南学園):競走部主務
小林真維(商4・都立三田):駅伝主務
安田陸人(商3・開成):六大3000mSC優勝
成沢翔英(環1・山梨学院):大型ルーキー
プロジェクトページはこちら→第3章 みなさまと、ともに箱根へ|慶應箱根駅伝プロジェクト(慶應義塾体育会競走部 2024/06/24 公開) – クラウドファンディング READYFOR
クラウドファンディングは7月31日(23:00)までです!興味のある方はこちらをご確認ください。
――箱根駅伝プロジェクトについて
田島:競走部は1917年に創部されまして、2017年に100周年を迎えました。そこで、何かしらもう一回競走部盛り上げていこうということをOB現役含めて色々話しあった結果、実は慶応義塾大学の競走部は箱根駅伝第1回の出場校、通称オリジナル4と言うのですけど、なのでそこの古豪としてもう一回箱根時に慶應の名を返り咲かせようという意思の元、始まったのが箱根駅伝プロジェクトになっております。慶應の体育会は基本的に大学からの資金援助がない中でいかにほかの大学と同等またはそれ以上のトレーニングをやったりとか、合宿だったりとかをやっていくかっていうところを箱根駅伝プロジェクトを通して強化している次第です。
――箱根駅伝プロジェクトがチームにどのような影響を与えているか
吉川:競走部107代目として我々は動いているところです。他の競走部や、陸上部と違うのは、駅伝部ではなくて、競走部として箱根駅伝に向かっているというところです。競走部の場合は6つ公式戦があるんですけど、競走部が一丸となって取り組む公式戦として、この箱根駅伝っていうところを掲げているので、決して長距離だけのものではなくて、チーム一丸となってこの箱根に取り組んでいくっていうのは、慶応にしかないところではあります。その他のブロックにとってもこの箱根駅伝で本戦に出場して行くというのは非常に全員が待ち望んでいるところであるっていうのは言えるかなと思います。去年もそうですし、一昨年もそうだったんですけど、長距離の部員が合宿とかで離れていて、練習を見ることができないとはいえ、箱根に向けてすごく頑張っているっていうのは、他のブロックにとってもすごくいい影響を与えてくれているなというふうに思います。
――成沢さんは1年生ですが入学前から箱根駅伝プロジェクトについては知っていましたか?
成沢:えっとそうですね、そんなに知らなくて、入学前に見学という形でちょっと合宿に参加させてもらって、そこで本気で箱根駅伝を目指しているという熱意が伝わって自分は入部を決めて、今そのプロジェクトのもとをやっているという形です。
――昨年の予選会では悔しい思いをされたと思いますが、そこからどういったことを意識して練習に取り組んでいるのか
田島:少し軽く、吉川のところに補足をさせていただきたいのですが、一応箱根プロジェクト、何かしら成果が上げられているのかというところに関して少し言及しようかなという風に思います。 昨年の大会が第100回大会でした。昨年度の大会が箱根駅伝の第100回だったのですけれども。第97回箱根駅の時に当時の主将、杉浦慧(令4・政卒)という者が学生連合の方に選抜されまして、5区に出走いたしました。学生連合でもキャプテンというのを担ってチーム、いろんな大学をまとめて学生連合を臨んでおりました。それで翌年の第98回大会に、私がまた同様に学生連合の方に選抜していただきまして、復路の7区に出走いたしました。 翌年、第99回に当時4年生、自分たちの2個上の代ですね。貝川(裕亮、令6・環卒)選手が同じく学生連合に選抜されまして、10区ですね。アンカーの方に出走いたしました。出走はこの3名なのですが、第97回の杉浦の1年前、第96回においても杉浦と同じ学年の選手、司代(隼、令4・政卒)というのですけど。一応補欠として学生連合の方に選抜されております。というところで、一応4年連続で慶應の名を箱根の方に届けることはできているなというところです。
昨年が第100回というところで、出場の枠が増えたのですね。それに伴って学生連合が一時廃止されまして、本来であればうちの同じ代の木村(有希、総3・葵)という選手が選ばれるようなタイムではあったのですが、残念ながら出走及び選抜はなかったというような状態になっております。確実に箱根に出られる選手は、絶対に箱根に出れば戦える選手はいるような状態で、何人かいるじゃなくて、10人ちゃんと予選会で戦える選手をいかに集めていくかというところを主に注力しながらやっております。1年間をどう気分けして、予選会に合わせていくかのようなところも、コーチの方と話し合ってやったりしまして。スタミナを蓄える、スピードを蓄える期間で、溜めたスタミナに強化したスピードをいかに乗せてトラックレース仕様にしていくかという期間だったり、そういうところをスポーツ生理学に基づいてメニューを組むというところがあったりとかですかね。
安田:昨年の敗退からこの1年間、どう悔しい思いを持ちながらやってきたかというところでありますが、昨年度はやっぱり、その実力ともにチームの雰囲気が一番仕上がってきたという実感を持っての第100回記念大会に臨んだわけですが、本選出場には届かずという。これだけやっても届かなかったというところで、特に自分個人としては、チームの主力として結果を残さなければいけない立場だったにも関わらず、怪我で出走が叶わなかったというところで、自分自身にすごい責任を感じていましたし。敗退が決まった直後の全体集合で田島キャプテンと。田島さんが去年も駅伝主将をやっており、皆の前で挨拶をした時の言葉がすごく印象に残っていて、「とても悔しい」と。本当に悔しいというのをすごく強調していて、でも自分たちはこんなものじゃないとみんなの前で言っていたのが印象的で。やっぱりその時に、来年度は最終学年になる田島さんをもう一度箱根に帰り咲かせなければいけないなと、そこで使命感を感じましたし。
今年に関して言えば、今まで1年時に箱根出走して、そこからチームを引っ張ってきた今の4年生世代を、最後にもう一度箱根に帰り咲かせるというのは1年間、特に3年生がその思いをずっと持っていたと思います。そういう悔しい思いを持ちつつ、箱根だけではなく関東インカレだったり、その他の主要な大会にどれだけ戦える選手を送り込めるかというのを、特に冬の間とかは重点的に見据えて、チームとしてはいかに大事な主要大会にどれだけの多くの選手を送り込めるかを重点的にやっていたと思っております。
これから今回のクラウドファンディングのやる意味でもある夏合宿に向けて、さらに距離を踏んだり、より箱根予選会に向けたロードや長い距離の実践に向けて戦えるような選手を。そこに向けての練習に移行しようみたいなという感じで今やっております。
――主務として選手の為に練習で意識していること
小林:後輩への指示出しと準備っていうところが一番意識しているのかなと思っています。なんでそれを意識しているのかというと、私たちは、箱根の予選会や試合当日っていうところはやっぱり計測であったりとか応援しか、走っている間はすることが出来ないといったところで、それまでの過程である練習であったり、そういうところが私たちが一番貢献できると思っています。それがあるからこそ、準備の徹底であったり、選手が何不自由なく走れる環境っていうところは自分が一番後輩に指示を出さなければならない立場なので、はい、そこは意識しているのかなと思っています。
吉川:自分としては大きく二つあるかなと思っています。一つは、チームとして箱根駅伝に出場していくんだというところ、しっかりと機運を高めていくことかなと思っています。合宿であったりとかがあるところで、なかなか長距離ブロックと一緒に過ごす時間っていうところが短い部分がありつつも、チームで箱根駅伝出場を達成していくんだというところをしっかりとチーム全員が意識できるようにやっていくというのが一つ自分自身としてやっているところ、今後もやっていかなければならないところかなと思っています。二つ目については、長距離ブロックが練習に集中できるような環境を整えていくっていうところがあるかなと思います。合宿の準備であったりとか長距離ブロックと本当に近いっていうところは、先ほど申し上げてくれた小林のほうがやっていることにはなるんですけど、その他の部分で、自分自身が調整できるところであったりだとか、あるいはもうちょっとこういうトレーニングをしていきたいんだ、あるいは食事面のところであったりとか、合宿所の関係であったりだとか、自分のできるところで最大限やっていくっていうというのが意識していることかなと思います。
――皆さんにとって、なぜ箱根駅伝は特別な舞台なのか
成沢:長距離をやっている身からすると、やっぱり箱根駅伝っていうのはどの大会よりも、まぁ、長距離といえば箱根駅伝というのが思いつくというか、野球いえば甲子園だったり、連想させるのが箱根駅伝というところかなと思います。個人的には一度は出てみたい、チームとして出てみたいっていう思いがすごくあって、より慶應競走部の名をあげるためにも、箱根駅伝に出たいなと思っています。
安田:僕は中学から陸上を始めたんですけど、今成沢が言ってくれたように、野球だったら甲子園、陸上とか長距離をやっていたら箱根駅伝っていうのはやっぱり大きて、特別な存在、メディアでも取り上げられる分、注目度も高い。だから、やっぱりそこに出て自分も注目されてみたいっていうのは小さい頃からの憧れであるっていうのは一つ大きい部分です。それに加えて、自分は成沢とか田島さんみたいに中高時代は名の知れた学校とかではなく、長距離部員一人二人とかで練習していたので、長距離部員2,30人いる状態で、チームを組んで襷を繋いでみたいというのが一番思い入れとしてありますし、日頃こんだけ一緒に生活して練習してきた仲間だからこそ、マネージャーも含め、最後皆でチームとして箱根という舞台に出場するのが自分の中での陸上の集大成でもあるのかなというふうに思います。
吉川:箱根駅伝は代として最後の公式戦であるというのがひとつ自分にとってもチームにとってもすごく特別な存在かなと思います。107代目として引っ張っていく中で最後箱根駅伝本戦に出場できるかどうかが部員全員で1年間やりきったと心から思えるためには大きなポイントでもあるというふうに思います。慶應競走部として約30年出れていないなかで、しっかりとここで時代を塗り替えられるような、代としてその後も語り継がれていけばいいなと思っています。何よりも自分自身も昨年予選会を現地で観戦して、かつ、長距離の部員たちが練習する姿であったり、朝練する姿であったりとかを見ていく中で、達成してほしいなという思いがすごく強いです。しっかりと頑張ってきているところが最後本戦出場という形で結んでほしいなというところで自分のそういった思いがすごく強い大会かなと思います。
小林:自分にとって箱根駅伝がどう特別かというと一番はチームを感じられるっていうのは駅伝しかないというふうに思っています。同じ陸上競技でも、100m、200mとなると、やっぱり個人の競走っていうところが大きいと思うんですけど、一方で駅伝は、何人かで襷を組んで、箱根駅伝だったら10人で襷を繋いで1位をとるとか、襷を繋ぎきるとか目標はそれぞれあると思うんですけど、そういうところで、自分のチームメイトが見えないところで待っている、その人たちの為とか、今まで一緒にやってきたチームメイトの為に何としてでも襷を届けたいって思えるところが他の競技と違って、箱根駅伝はより特別なのかなと思います。練習を見ていても、田島とかは結構チームメイトに活を入れたりするんですけど、そういうところで、やっぱり一人だけじゃなくて、チームのみんなでしかたどり着けない景色があると思うので、一人一人ではなくチームとして何かを成し遂げられる、チームを感じられるっていう点で箱根駅伝は特別なのかなと思っています。
田島:個人的な話になりますが、私にとって箱根駅伝とは第一に「帰るべき場所」なのだと思います。一年生のときに出走しまして、当時も生半可な気持ちで臨んでいたわけではないんですけど、分かり切ってなかった状態で臨んでしまったがゆえに、全く太刀打ちできなかったんですね。すごいボコボコにやられて、まさに洗礼を受けたみたいな、本当に出ただけみたいな箱根駅伝になってしまったのですが、僕の中での箱根駅伝はあれで終わらせたくないっていうのが一番強い思いになっています。僕の箱根駅伝はみんなで出て大手町で最後のゴール地点でみんなで抱きあって涙して、最高の笑顔で終われたというのが思い出ですといえるような状態にしたいというふうに個人的に思います。
先程安田の方から、僕が昨年の箱根駅伝予選会で悔しい悔しいという言葉を強く言ったという話がありましたが、昨年度のチームで僕は本当に初めて悔しいと心から思えたんです。それ以前も本気で臨んではいたんですが、残念だったというような思いしか最後残らなかったというのが正直なところです。それまでは、こんなに頑張っても残念な結果なんだなという感じだったんですけど、昨年は、これだけやっても歯が立たなかったのか、これはめちゃめちゃ悔しいなというような気持ちになれたんですよ。そういう気持ちを持たせてくれたチームが、僕にとっては、とても大切なもので、そんな思いにさせてくれるような最高のチームだからこそ、あの時僕が一瞬でも見た景色を皆にもというか、皆で見たいなというふうに思っています。だからこそ、僕自身も何もできなかった箱根駅伝を唯一の思い出にしたくもないし、皆も昭和記念公園で泣いて悔しいがるというのを箱根駅伝の思い出にもしたくないので、今年本当にチームで出るしかないよなというふうに思っている次第です。
――夏の強化合宿に向けてクラウドファンディングを行うと思いますが、そのクラウドファンディングについて詳しく教えてください
田島:今回、第3回目となるクラウドファンを実施させていただく運びとなりました。やはり夏の強化合宿というのが僕たちの1年を通しての練習の中でも特に重要なものとなっています。 本当に予選開始直前というのもありますし、これだけ陸上競技だけに没頭できる期間というのも夏合宿が最たるものとなっているのかなと感じております。なので、いろんな大学を見ても、 本当に夏合宿次第で箱根予選あるいは箱根本選の結果が変わるというぐらい、 僕たち大学長距離もしくは陸上長距離においては夏合宿は本当に重要なものとなっています。冒頭私から述べましたように、学校から潤沢な資金支援がない中でどうやって夏合宿やろうかと、もちろんすごくお金がかかるのですが、その中でじゃあやっぱりいろんな人に応援していただいてそのお金でなんとか合宿をさせていただきたいなという思いのもとクラウドファンディングを過去2回(今年で3回目)にわたって行わせていただいております。慶應義塾体育会およびそれに準ずる組織も、段々クラウドファンディングをやっているチームが増えてきているのですが、その中でもうちの競走部の特徴というのが学生主体でやっているところになるのかなと思います。他のチームを悪く言うつもりは全くないのですが、他のチームだとOB・OGさんだったり大人が主に動くというとこなんですけれども、やはり我々選手が頑張っている姿を見せて応援していただくべきだという理念のもと、本当に学生主体で、こういう企画をやって、こうやって広報活動やって、こうやって宣伝して支援をいただいて、というその実感を得ながらいかに夏合宿をものにするかというのも一つ目的としてやっているので、そこが1個とても大事な特徴になっているかなと思います。 そしてありがたいことに本日(7月3日)開始して10日になるのですが、先ほど無事に200万円は達成することができております。我々の目標、結構挑戦的なものとなっております。今年は第1目標は800万円というところで、正直本当に挑戦的な金額となってはいるのですが、本当に今年が最大のチャンスだというのは チームの全員が思っているところですので、ここからまた残り4週間ほどにはなってはしまったのですが、諦めることなく最後まで勢い絶やさずにむしろ加速していけるように頑張っていきたいなと思っている次第です。
安田:夏合宿の大事さというところでちょっと僕から話したいことがあります。 僕は一般受験で入ったのですが、それまで陸上に対して本当にこんなに向き合ったことはなくて。特に大学に入って寮生活が始まって陸上に対して費やす時間は今までに比べてだいぶ増えたのですが、それよりも遥かに、合計3回の夏合宿の期間約40日間ぐらい行くのですが、その40日間というのは本当に24時間陸上のことしかもはや考えられないぐらい追い込んでいくというのがありまして。で、特に僕のような選手はそこでもう1年目とかは本当に洗礼を受けて、こんなに大学陸上って大変なんだと思い知らされましたし、なんとかここくらいついていかないとやっぱりもっと速い選手にはなれないんだなとも思いました。そういう点で本当に夏合宿というのは貴重だと考えておりますし、だからこそお金はかかりますが本当に自分たちが強くなっていく上で欠かせないものが夏合宿になるのかなと思っているので、もちろんこちらからも自分たちが何をやってるかというのは発信していくつもりですが、 夏合宿の重要さというのをより支援者の皆様とか我々のことについて興味を持ってくださる方には、そこを結構知っていただけたらいいのかなと思っております。
成沢:昨年はクラウドファンディングなどそういった活動に僕は参加していないのですが、今年はかなり部員同士でどうすればもっといろんな人にクラウドファンディングをまず知ってもらえるかみたいなところをみんなで話し合いました。結構いろいろ企画を作って、まだまだたくさんいろいろな企画があるので、ぜひ注目していただきたいなと思っています。
吉川:田島からもあった通り少し挑戦的な金額ではあるのですが、それだけ夏合宿というのがものすごく重要な合宿でもあります。そこに対して皆さんにご支援いただきたいのですが、クラウドファンディングって本来は何かしっかりとギブアンドテイクの関係があるものです。もちろんこちらからも返礼はあるのですが、何よりも箱根駅伝の本選に出場するということが本当に支援者の皆さんには一番返したいところというのが、長距離の部員もそうだと思いますし、競走部一同そう思っているところではあります。まずちょっとクラウドファンディングを知ってもらって、競走部というものを知ってもらって、箱根に行ってほしいという人たちにご支援いただきたいなというところではあります。そして慶應の皆さんにご支援いただくというところが、本当に箱根に出場して正月から慶應の名前があるのは競走部だけではなく慶應の皆さんにとってもすごく喜ばしいことでもあるのかなと。それができればいいなと思いますので、まずはちょっと知っていただいてというところからやっていければなと思っています。
――お忙しい中ありがとうございました!!
(取材:小田切咲彩)