8月25日(日)、国立競技場にて第75回早慶サッカー定期戦(早慶クラシコ)が行われる。早慶クラシコ開催にあたり、ソッカー部の選手、スタッフたちを取材した。第7弾は3年マネージャーの関梨帆(文3・香蘭女学校高等科)、竹島彩夏(総3・慶應義塾湘南藤沢高等部)、岡﨑寛大(法3・慶應)の対談。普段は光が当たらない立場だからこそ、3人がどのような思いを持って早慶戦を創り上げているのか、仕事のやりがいや選手たちとのエピソードなど、幅広くお話を伺った。
ーーそれぞれが担っているマネージャーの仕事内容を教えてください
岡﨑:僕がやっているマネージャー業務は、基本的にOB会とのやり取りと、経理業務、特に部費のような部内の経理ですね。あとはチームグッズの注文も行っております。
竹島:私は主に広報と経理をやっています。広報ではサッカー部のインスタや、今回の早慶戦のインスタ、その他のSNSを動かしています。あとは、同じ経理でも岡﨑とは少し違って、OBOGの方々から毎年お支払いいただく年会費の管理をしています。
関:私は主に広報と体育会と延世をやっています。広報は彩夏と似たような感じのものと、Iリーグのスタメン画像などを作っています。体育会のお仕事は、体育会とのやりとりをしたり、必要書類の提出などの事務的な業務です。延世いというのは、1年に1回ある「延世定期戦」に向けて準備をしています。延世定期戦は韓国の大学との試合なので、結構力を入れて準備しています。
ーー(岡﨑さんと竹島さんは)選手としてもサッカーを経験していると思うが、マネージャーをやろうと思った理由は
岡﨑:僕は小中でサッカーをしていました。中学の時は一切試合に絡めず、基本的にはもうずっと応援部員として部活に所属していました。そういう中で一時期サッカーを嫌いになりかけていた時に、当時の中学の監督が、重要な公式戦のメンバー1枠を削って僕をそこに入れてくれて。ただ、試合には絶対に出さないけれども、いわゆるマネージャーとして働いてほしいっていうことを言われました。今までプレイヤーとしてしかサッカーに関わってなかったけれども、実際に裏方で選手を支える楽しさとか、その試合で勝った時に今までにない喜びがありました。そういった経験から、選手からマネージャーになろうかなと思いました。
竹島:私がサッカーをやっていたのは高校の時です。高校の部活は結構初心者歓迎の風潮があって、私の代もほとんどの人が初心者で女子サッカーを始めていました。やっぱり大学で続けるには正直技術が足りなかったっていうのが1番と、あと走りたくなかったっていうのが2番。(笑)あと1個思ったのは、 私が教わっていたコーチでこの部にも関わっていた方がいて。その方に、ピッチ外から見るサッカーとピッチ内から見るサッカーの違いを教えていただきました。その中で、何かに関わり続けるためには自分が主役側じゃなくてもいいっていう風に言ってくださって。私の中では、自分が出てチームを勝たせたいというよりは、勝った瞬間の場に自分もいたい、っていう気持ちの方が強くなったので、マネージャーをやろうと決めました。
ーー(関さんは)ソッカー部のマネージャーになった理由は
関:これは自分が1年生の時に4年生だった先輩からの教えで、「マネージャーは唯一選手を平等に見られる立場だよね」って言ってくださいました。これをお風呂の中で聞いていたんですけど(笑)まだ入りたてだったから、、
岡﨑:お風呂に?(笑)
一同:(笑)
関:違う!どっちかというと長風呂(笑)それで段々深い話をするようになってきて。(笑)自分の入部したての頃はカテゴリーが多くて毎日が競争で。サッカーは上手ければうまいほどいいみたいな風潮が少なからずある中で、マネージャーは唯一カテゴリー関係なく選手たちに平等に接せられる人だと言う風に教えていただきました。だからこそ、自分がそういう立場であることを自覚して寄り添うことを意識するようになったと思います。
ーー今季のベストゲームを挙げるなら
岡﨑:関東リーグ開幕戦です。新しい体制になってある程度選手たちも自信をつけていた中で、リーグ1部から2部に来たチームに対してどれだけ戦えるのかマネージャーとしてもワクワクして観ていました。塩貝のハットトリックを含む4得点、そのあと3点取り返されてヒヤヒヤはしたけれども、あの試合を経て、「なんか今年のチーム違うな」というのを感じた部分もありますし、あの試合で初めてメンバー表に名前が並んだ同期もいたので、その姿をみて、今年のチームは3年が盛り上げて行くんだなというのを感じて印象に残っています。
関:迷ったんですけど、アミノバイタルの亜細亜大戦がかなり印象に残っています。因縁の相手に対してギリギリまで同点だった中で、雄大のアシストから惠風がゴールを決めて、見事に勝って全国大会出場が決まりました。雄大と惠風は1年の頃からソッカー部の中心として試合に出ていたので、その2人が結果を出したところを見て、驚きと感動と、尊敬と、色々感じるものがありました。全国が決まった嬉しさと、2人の連携でゴールが決まった嬉しさで、この試合が1番印象に残っています。
竹島:私もアミノバイタルの城西大戦です。私は合宿所で普段リサーチやっている人とその試合を観ていたので、私が現地で観ていない試合の中で唯一ここまで印象に残っている試合なんですけど、最初負けている中で同点に持っていってPKを制して。PK戦で勝って皆が抱き合っているのを観た時に、「全員がキーマン」っていう慶大のサッカーがよく表れている試合だなというのを感じました。
ーー早慶戦にはどのような形で携わっていますか
岡﨑:僕は大きく分けて2つです。場外、場内問わず企画の部分と、チケット関連を担当しています。企画に関してはアイデアを形にする仕事を1年の頃からやっているんですけど、今年はその統括をしていて、チケットは慶應のOBや団体様に対する案内を中心にやっていますね。
竹島:私は大きく分けて3つです。広報と、岡﨑が言っていた企画統括に加えて、アナウンスにも関わっています。広報でSNSを動かすのもあるんですけど、企画は上級生として、実働というよりは俯瞰した立場で見るようになっています。
関:私は主に3つで、協賛とグッズ、場外のコンコースを担当しています。場外コンコースは、クラシコフェスティバルのような縁日や、のぼり作成などをメインでやっています。
ーー(岡﨑さんは)以前ブログで「この部が今の自分の夢を創った」と書いていましたが
岡﨑:自分は、入部当初は国立開催への思いはまだなかったんですが、この部で成し遂げたいことみたいなことを当時の先輩マネージャーと話していたときに、先輩が「俺は国立に2万人集めて、会場に来た人全員を笑顔にしたい」と言っていて。その言葉に感化されて、自分もこの部において「選手たちが輝ける場所があるのであればその舞台をより大きくして、その輝きをより多くの人に観てもらいたい」という思いを持って、国立開催を目指すようになりました。去年は国立開催が難しかったのですが、早稲田と一緒に国立開催の意義を話し合う機会があって、僕はその時にパワーポイントを用意して、自分の思いを伝えたんです。本当にありがたいことに、早稲田の今の主務の方が思いを汲み取ってくださって、「一緒に国立開催を目指さないか」と言っていただきました。僕はあくまで熱意を伝えただけのような感じですが、国立の舞台に選手を立たせられるというのは僕が掲げた夢2つのうちのひとつであるからこそ、今年叶えられるのはすごく嬉しいなと思います。
ーーもうひとつの夢は日本一?
岡﨑:日本一です。この夢も今年全国で叶えられる可能性があるので、ワクワクしています。
関:1番楽しい時期だね。
ーー運営・事務の面では何か新しい試みをされましたか
竹島:正直全部新しいですね。これまでの西が丘は、先輩方がベースを創り上げてきてくださったからこそそれに沿ってやっていく形だったんですけど、国立は自分たちが直接話を聞ける代が残っていないので全てが初めてでした。企画をあんなに大きな場所でやるのも初めてで、今年は(塩貝)健人(政2・國學院久我山)がマリノス決まったり中町監督が新任されたりと、ソッカー部でも早慶戦でもこんなにSNSを見ていただけるっていうのが初めてなので、本当に全部が新しいこと続きかなと思います。
ーー集客が大変だと思うがそこのところは
岡﨑:今年ほどビラ配りをした年はなかったかなと思います。
竹島:マリノスの試合にも行ったし、駅でも配ったね。
関:たしかに。日吉の商店街でも配ったよね。
岡﨑:SNSでは流し見が多いかもしれないけど、ビラを直接渡すことで興味を持っていただけることもあったので、今年は特にこだわりました。あとはやっぱりマリノスとか、スポットライトが当たったからこそそこに関係のある方たちを巻き込めるような形を考えてこれたのかなと思います。
ーー(岡﨑さんは)慶應普通部出身、(竹島さんは)慶應湘南藤沢高等部出身ですが、そのときに観ていた早慶戦の舞台を創る立場になってみて、何か思いはありますか
岡﨑:自分は普通部の頃に1-5で負けた試合が自分にとって初めての早慶戦で。その試合を観て、「ここに関わりたい」と強く思いました。当時は選手として出たいという思いがあったけれども、実際にそれを運営する立場を選んで、あの空気感、熱気を創る側に携わることができる機会はなかなかないと思うんです。早慶戦は「夢を表現できる場所」だと感じていて、誰かの夢を表せる場所だし、誰かの夢を創り出す場所が早慶戦だと思っているから、当時の自分のような形で、今幼稚舎や普通部、中等部にいる子たち、慶應に関係なくても観にきてくれた子たちの夢を創れるような運営ができるといいなと思っています。
竹島:私は高校3年のときの早慶戦を現地で観ていんですけど、自分は学生スポーツをあまり観に行ったことがなかったので、Jリーグや代表の試合と比べて早慶戦はいい意味で運営面が露呈する試合だなと思いました。それを肌で感じることができたし、勝って感動したのもあります。Jリーグとかって観客者数が多い分、家族や一人ひとりの思いまで汲み取ることができない試合で、それが良さでもあると思うんですけど、早慶戦は保護者の方が近くで応援していたり、「あいつ俺の友達なんだよね」っていう声がそばで聞こえたり、一人ひとりの「観にきた思い」にも寄り添うことができる試合なのかなと思っています。
ーー早慶戦のキーマンは
岡﨑:僕は柳瀬文矢(法3・駒澤大学高)でお願いします。今季はけがであまり出場機会がなかったけれども、1年生の頃から関東リーグに出ていて、2年生はIリーグでストライカーとして活躍していた選手です。どうしても塩貝が目立つと思うけれども、間違いなく彼の実力は凄いもので、シーズンインする前は練習試合でほぼ毎回点を決めるストライカーだし、誰よりも視野を広く持って、俯瞰して部を見ている人だなと僕は思っています。色々な思いを抱えて、3部に降格したプレーオフにも出場していた彼だからこそ、早慶戦の舞台で輝いてくれるのではないかと思っています。
関:まず雄大と惠風は、安定感というか、慶應の勝利にとっては絶対的な存在かなと思っています。あと、私が挙げるとしたら(西野)純太(総3・駒澤大学高)です。純太は関われば関わるほど本当に良いところが見えてくる人です。純太は、自分の意見を相手に伝えるのも上手だし、皆の意見を汲み取るのも上手だなっていうのを凄く感じていて、純太がいるとチームがまとまるなと思います。もちろんサッカーの実力もあるので、技術と人柄で安心感のある純太を挙げました。
竹島:私は村井亮友(商3・ザスパクサツ群馬 U-18 / 桐生高)かなと思います。さらっとなんでもやってくれる癒しキャラでいながらも、大人な、どこにいても輝いている選手だなと思うからです。
ーー早慶戦に向けて、マネージャーとしての思い
岡﨑:今年の早慶戦は僕にとって本当に夢の舞台で、選手がそこで活躍する姿を観るのを僕自身とても楽しみにしています。だからこそより多くの人にこの舞台を観に来てほしいと思っています。ピッチに立つ選手はもちろん、運営に関わっている選手、応援している選手、一人ひとりが輝いて見える場所だと思うので、サッカーに興味のない人にも国立の舞台での熱狂を体感してほしいですし、「明日から頑張ってみよう」と思えるような活力を与えられると思うので、その舞台を最後まで創り上げられるように頑張りたいなと思います。
関:ピッチに立つ選手は思う存分プレーして、歓声を浴びながら輝いてほしいなと思います。ピッチに立てなかった選手たちには、既にこの思いがあるのは重々承知ですが、「来年はこの場に立ちたい」という気持ちをさらに強める場であればいいなとも思います。観に来てくださる方々にとってもなにか心が動くものがあればいいなと思います。
竹島:去年の早慶戦のあと1人の部員が自分に言ってくれた言葉がずっと印象に残っていて。彼は試合に出ていなかったんですけど「こういう舞台があるなら自分も目指したいと思った」と言ってくれました。そう思うような試合を創れるのは早慶戦だからこそだと思うし、出る選手も出ない選手も何かしら自分の心に残る瞬間があると思うので、それがたった0.1秒だったとしてもその瞬間を大切にしてもらえるような場を創り上げられればいいなと思います。これはお客さんでも然りで、サッカー興味ない人にとっては印象は薄くなるかもしれないけど、「そういえばあの試合行ったな」って思ってもらえるインパクトのあるような試合にできればいいなと思います。