8月25日(日)、国立競技場にて第75回早慶サッカー定期戦(早慶クラシコ)が行われる。早慶クラシコ開催にあたり、ソッカー部の選手たちを取材した。第8弾は主将の山口紘生(商4・國學院久我山)。今年で4度目の早慶定期戦。これまでの経験すべてを糧に国立の舞台へ挑む山口選手に、主将としての思いを伺った。
ーー今シーズンの戦績を含め、チーム全体の振り返り
今年は中町監督に変わって、 しっかり自分たちのスタイルがあるサッカーを貫こうと、シーズン前からずっと準備をしてきました。なかなかうまく勝ちきれない試合とかも続きましたが、 なんとか今、試合数の差はあるものの単独首位に立てました。(取材日7月31日時点、8月24日現在は2位)アミノバイタルカップでも11年ぶりに全国大会への出場権を得たっていうところで、スタイルを貫いたことで少しずつ結果はついてきているのかなと思っています。ただやっぱり守備の部分とか、あとは相手に引かれた時の細部のところでまだまだ甘いところがあると思うので、しっかり今週勝ち切って、中断期間入って準備できればいいかなと思います。
ーー今シーズン、チームとしての1番の成長は
攻撃ですね。今までは守備のところに力を入れて慶應のサッカーをやってきたんですけど、中町さんが入ってきてくれてからは、攻撃の部分で自分たちが主導権を握って、 観ている人も楽しいようなサッカーをするっていうのを掲げてきて、実際できている感覚もあるので、そこは大きな成長かなと思います。
ーー中町さんが「攻撃的なサッカー」を掲げていらっしゃる中で DFとして守備をする立場ですがご自身のプレーは
チームで攻撃的なスタイルを掲げてきた中で、守備のところは自分がやらなきゃいけない部分は大きいなと。今までの良さを出しながらも新しいことを積み重ねていくってことがチームとしての成長だと思っていたので、やっぱりそこは自分だったり、ヘッドコーチも中心となって色々守備をしてきているんですけど、それでも脆さであったり、まだまだ改善できるところはたくさんあるので、 自分のプレーで言うとまだまだ基準としては足りていないと思っています。後期も始まる中でより磨き上げていきたいですね。
ーー改めて今年のチームのスローガン・目標を教えてください
今年は「慶應らしさと個の追及」を掲げています。監督が変わるタイミングで、 今までの自分たちが大切にしてきた慶應の伝統だったりとかサッカーみたいなところを積み重ねつつも、新しい風を吹かして、どんどん個人個人がサッカー選手として上を目指す中で切磋琢磨して、組織としてもやっぱり高めていきたいなと思っていたので、今までの伝統の継承の部分と新しいものの積み重ねを意識しています。
ーーご自身のプレーの持ち味は
守備の部分で全体を統率するみたいなところはやらなければいけないと思っています。1年生から出させていただいていたっていうのは、実力があったとかそういうことではなくて、前監督が先を見据えて色々教えてくださっていた部分が大きいなと思っていたので。4年で主将になって自分がやらなきゃいけないし、その経験として培ってきたことをチームにピッチ上で還元できるかどうかっていうのが自分の価値だと思っています。主将にもなっていますし、そこは意識して取り組んで、もっと発揮していかなきゃいけないなと思います。
ーー主将に就任された経緯
シーズン前に4年全員で話し合って、立候補と他薦みたいな形で投票をしました。自分と茅野が立候補したんですけど、色々話し合う中で自分が主将で、茅野が副将になりました。
ーー茅野選手は副将としてどのような存在ですか
めちゃめちゃありがたいです。自分と結構正反対というか、色々違う強みを持っていると思います。自分ができないこととか、自分じゃなかなか発揮できない価値みたいなものを茅野は率先してやってきたし、 それをお互いにいい感じに補完し合いながら、結構どっちもでこぼこなんで。(笑)上手い感じに折れながらやっています。ただ2人だけじゃなくて、4年全員でやりながらいいバランスが取れてるのかなと思います。
ーー今シーズン印象に残っている試合
開幕戦の拓殖大戦と、あとやっぱり早慶戦です。前期の早慶戦はすごく印象に残っています。自分が(慶應に)入ってから早稲田に大差をつけて勝ったことがなかったし、4点も取って勝つこと自体がなかなか関東リーグ公式戦でもなかったので、そこは自分たちが貫いてきた攻撃的なスタイルが実を結んでいると思いますし、ここからやっぱり早稲田よりも慶應が結果を残すようなチームになっていきたいと思ってるので、そういうところが1つのきっかけとして見えた試合でした。
ーー慶應も早稲田も攻撃で点を狙いにいくと思いますが、どういうところで差がつくと思いますか
お互い攻撃と言っても、そこに対する考えとか、どういう風にプレーを押し込むかっていうのはもちろん違うし、それこそ個人やチームのカラーの違いが出てくるなとは思います。一方で、そうなってくると守備が大事になってくるとも思います。攻撃をするということは別に守備を蔑ろにするわけではないと思うので、自分たちのサッカーを貫きながらいかに締められるかっていうのは結構大事だと思うし、そういう意味で自分の役割は大事なのかなと。
ーー國學院久我山高校でのサッカーと大学のサッカーの違いは
全部違うんですよね。久我山のサッカーは「美しく勝て」みたいなところで、結果よりもまずは内容にこだわる、自分たちの美しいサッカーをしようみたいなところを 追求していた学校でした。でも慶應に入って、なにがなんでも勝たなきゃいけないとか、部を代表して学校を代表して戦うことの意味みたいなものが部員に浸透していて、そこはすごい戦う組織として魅力的だなと思いました。あと大学は学生主体でやっているので、社会人スタッフもいるけどチームを運営するのは学生だっていうことで、サッカー以外の部分で学生がやることが増えたっていうのは結構大きな違いかなと思います。
ーー2部昇格を果たしたプレーオフではなにを感じましたか
自分が1、2年で1部から3部まで落としてしまった時にピッチで出ていたので、そこはなんとしても勝たなきゃいけないなっていうのと、、あとは当時の4年生が 凄く1年間頑張ってくれていたので、一緒にこのチームで結果を残したいっていう思いでやってたかなと思います。
ーー大学サッカー4年間の振り返り
1年の頃はとにかく必死でした。大学サッカーに入って、当時1部で、周りは4年生。自分はトップチームに入れてもらえたものの4年生ばかりで、練習も試合もついていくのに必死でした。それでもガムシャラにやっていたらチャンスをいただいて試合も出させてもらえるようになったんですけど、とにかくなんととかついていこうとか、少しでもチームのためになるようなプレーがしたいなと思って頑張っていたかなと思います。2年生は、自分が相対的にやっぱり経験を積んでいた方でもあったので、少しずつ 自分がやらなきゃと思っていたんですけど、1年、2年と結構苦しいシーズンが続いて、結果的に2年連続で降格っていうことになってしまいました。それを受けて3年では、3年生ではあるものの、絶対に自分がチームのために力を発揮して、2部、1部に戻さなきゃいけないという覚悟でやろうと思っていました。4年生に助けてもらったことは多かったんですけど、よりチームの中核としての自覚だとか、自分がやるという覚悟は年々強まっていたように思いますね。そういう思いの中で4年も主将に立候補して、今も自分が活躍するとかそういうこと以前に、チームとして1部に戻せるチャンスをいただけているので、早慶戦勝利ももちろんなんですけど、最後の代で自分が今まで培ってきた3年間の経験を発揮して、なんとか何かチームに残していきたいと思っています。
ーー主将に就任されてからピッチ内外での意識や行動に変化は
自分の基準がそのまま部の基準になることがあるなと感じています。主将どうこう関係なくリーダーシップは全員が発揮するべきものだし、自分が主将じゃなくても同じようなことはやっているんだろうなと思う一方で、みんなで選んでもらっている身としては、ソッカー部の顔として、代表として見られるっていうことだと思うので、自分の日々の練習での取り組み姿勢とか、施設内での振る舞いとかが下級生とか他の人から見られて基準になってるっていう意識を持ちながら、少しでも部の基準を押し上げられるように 振る舞い続けようと思ってやっています。
ーー4年間で挫折は
ずっと試合には出させてもらっていたんですけど、小さな挫折みたいなものが毎日続いてることが多かったなと思っていて。2年連続の降格とか、なかなかチームとして勝てない時期も3年間多かった中で、そういうところで出ていた選手としては1番責任を感じるので。ただ、出させてもらってる以上は自分のせいなので、挫折とは思わなくとも、やっぱりそういう苦しい時期はあったかなっていう風に思います。
ーー試合中メンバーへの声掛けやプレーの面で意識していることは
90分間通して冷静にチームの視点に立って考えようっていうのはありますね。自分も下級生の時はどうしても他の人にベクトル向けられずに自分でいっぱいいっぱいになってしまうこともあったので、今自分のこの立場でできることって言えば、自分が活躍したいとか、自分がミスしてどうこうみたいな感情からは1歩引いてチームの視点で見ることかなと思います。これは立場としてもそうですし、チームの中でも大事な役割だと思ってるので、常に落ち着いてポジティブに声をかけをできるように心掛けてます。
ーー今年の早慶戦のキーマンは
茅野かなぁ。3年生で結構出ている子も多いしクオリティ高い選手も多いんですけど、やっぱり慶應のサッカーを体現するっていう意味では、茅野の責任感とか、技術面、体張って走り続ける姿勢みたいなところは、他の下級生とかまだまだ持ってないところだと思うので。そういう選手が活躍してこその慶應のサッカーだと思うし、そういうところをいろんな人に見てほしいなっていう風に思います。
ーー山口選手にとっての早慶戦はどのような舞台ですか
1年生の頃から夢の舞台だっていうのは今も変わらないんですけど、でもやっぱり何回か経験させてもらってきて、みんなが緊張とかする中で自分が1番力を発揮しなきゃいけないなっていうのは思っていますね。1年生の頃は初めて出させてもらって、自分のところで失点したのを4年生に取り返してもらって勝って、2年、3年も自分のところで失点をして負けているので、3年間の積み重ねとか経験を4年目、国立の舞台で出して勝つっていうのが求められることだと思います。憧れの舞台っていうのもあるんですけど、主将として絶対にチームを勝たせなきゃいけない機会だとも捉えています。
ーー早慶戦は高校生やサッカーをやっている子供たちを含め多くの人が慶應のサッカーを見るチャンスだと思いますが、そこに対する思いはありますか
自分も高校のときに早慶戦を見て、この舞台に1回でもいいから立ってみたいなと憧れを持ったのは事実で。これだけの大きな規模で早慶両校の学生が創り上げてできる舞台っていうのは大学サッカー他に見てもないと思うので、 やっぱりいろんな人に見てほしいなと思いますし、それが早慶を、早慶のサッカー部を憧れる1つのきっかけになってくれたら1番嬉しいです。
ーー早慶戦への意気込み
自分も一部員として憧れの舞台、夢の舞台であることは変わらないし、その早慶戦の舞台が近づいてきてワクワクしている気持ちはある一方で、今年は主将という立場で、3年間出させてもらった経験とか、なんとしてもこのメンバーで早慶戦勝利を達成したいという思いがあるので、精一杯頑張りたいと思います。
ーーお忙しい中、ありがとうございました!
(取材:愛宕百華)