慶應義塾大学と同志社大学による対抗イベントである慶同戦。陸上の対抗戦も9月29日(日)に日吉グラウンドにて開催され、両校の選手たちが母校の勝利のためしのぎを削った。トラック/フィールドでの今季最後の公式戦である今大会では、これがラストゲームとなる慶大競走部第107代4年生たちが意地を見せ有終の美を飾った。
男子第73回・女子第15回慶應義塾大学対同志社大学対校陸上競技会
9月29日(日)@日吉陸上競技場
結果
男子 〇慶大39―24同志社●
女子 ●慶大9―29同志社〇
男子得点者
三輪颯太 | 100m | 10秒45 | 1位・3点 |
篠宮健吾 | 100m | 10秒53 | 2位・2点 |
林明良 | 100m | 10秒53 | 3位・1点 |
横井健道 | 400m | 48秒34 | 2位・2点 |
久保亮太 | 400m | 48秒35 | 3位・1点 |
奥泰貴 | 1500m | 3分56秒71 | 2位・2点 |
井上丈瑠 | 1500m | 3分56秒54 | 3位・1点 |
成沢翔英 | 5000m | 14分47秒77 | 1位・3点 |
稲生健人 | 5000m | 14分53秒70 | 2位・2点 |
木村有希 | 5000m | 14分57秒91 | 3位・1点 |
岩井章太郎 | 110mH | 14秒25 | 1位・3点 |
三輪颯太―岩井章太郎-篠宮健吾―林明良 | 4×200mR | 1分22秒90 | 1位・3点 |
若原祐人 | 走高跳 | 1m90 | 1位・3点 |
府中歩輝 | 棒高跳 | 4m00 | 1位・3点 |
鎌形圭佑 | 棒高跳 | 4m00 | 2位・2点 |
辻湧作 | 走幅跳 | 7m31 | 1位・3点 |
イベルブランドン | 走幅跳 | 7m12 | 3位・1点 |
山田直弥 | 円盤投 | 32m40 | 2位・2点 |
女子得点者
玉置彩乃 | 100m | 12秒92 | 3位・1点 |
鴨下友織菜 | 400m | 59秒29 | 3位・1点 |
佐口向日葵 | 1500m | 4分43秒98 | 1位・3点 |
井上汐莉 | 1500m | 4分50秒15 | 3位・1点 |
木村千紘 | 100mH | 17秒33 | 3位・1点 |
玉置彩乃―木村千紘―野村早希―日根千晴 | 4×100mR | 50秒97 | 2位・2点 |
慶同戦とは慶應義塾大学と同志社大学によるスポーツや文化活動の対抗戦である。両校は創設時期や創立者の理念などにおいて共通点が多く、慶同戦もその長い歴史的な交流と競争関係の一環として今日まで続いてきた。今年で73回目(女子は15回目)を迎える競走部慶同戦も長く続いてきた大会の一つである。
【男子トラック】
100mには副将・三輪颯太(環4)と短距離ブロック長・篠宮健吾(政4)が出場。スタートから横一線の接戦となったものの、中盤以降抜け出した三輪が競り勝った。2位には篠宮、3位には林明良(政2)が入り、慶大はこの種目で表彰台を独占した。
1500mには奥泰貴(商4)が出場。奥は序盤から中盤にかけて2番手に控え、ラスト1周でスパート。先頭でホームストレートに入ったが、残り50mで同志社大の選手に抜かれ、2位となった。PBを更新したもののレース後は悔しさをにじませていた。井上丈瑠(経3)もPBで3位に入り、慶大はこの種目で3点を獲得。
5000mには木村有希(総4)が出場。駅伝主将の田島公太郎(環4)と共に駅伝チームのエースである木村は、午前中に10000mのレースに出走しており、これがこの日2本目のレースだった。序盤から先頭に立つと、終盤まで安定したペースで2年生の成沢翔英(環2)と稲生健人(経2)を引っ張った。3着でレースを終え、慶大の表彰台独占に貢献した。
110mハードルには岩井章太郎(環4)が出場。先日の全日本インカレで8位入賞を果たした実力を発揮し優勝を果たした。京都府出身で同志社高校卒業である岩井は、レース後の写真撮影では同志社大の選手と共にイニシャル「D」の文字を手でポーズしながら笑顔をみせていた。
大会のラストを飾る200mリレーには一走に三輪、2走に岩井、3走に篠宮が出場。一走の三輪が抜け出すと岩井、篠宮がリードを広げる。4年生3人の思いの繋がったバトンを受けた林がゴールを走り抜けると、掲示板は「1’22”90」の数字を点灯。これは200mリレーの塾新記録。彼らの努力が結実した瞬間だった。
【男子フィールド】
走幅跳にはイベルブランドン(総4)と小林一揮(政4)が出場。東京六大学陸上でこの種目優勝経験のあるイベルは、跳躍ブロック長として今季もチームを引っ張ってきた。この試合では記録を伸ばせず、優勝した辻湧作(環3)の後塵を拝したものの、3位に入り慶大に1点をもたらした。6位の小林も最後まで自身の跳躍をやりぬいた。
棒高跳には府中歩輝(文4)が出場した。試合終盤まで鎌形圭佑(経3)との4m超の高さでのサドンデスを繰り広げ、最終的には4mをより少ない回数で成功させた府中が1位となった。今年の早慶戦で敗れた鎌形に勝ち、大きく記録を伸ばしての優勝。4年生の意地である。
穂苅大和(理4)は円盤投げとやり投げの2種目に出場した。午前中に行われたやり投げでは自己ベストに迫る記録を残すも4位。その後に行われた円盤投げでも5位と得点獲得とはならなかったものの、投擲ブロック長として最後まで挑戦する姿勢を貫いた。
【女子トラック】
100mと100mHには木村千紘(商4)が出場した。懸命にゴールを目指して走り切ったタイムは12”96であり、自身初の12秒台をマーク。直後に行われた100mHでも自己ベストを更新し3着に入ると、100mリレーでは2走を務め慶大の2位での得点獲得にも貢献。最後の公式戦を笑顔で締めくくった。
1500mには佐口向日葵(商4)が出場した。佐口は中盤まで2位集団の後方で試合を進めると、残り1周でスパート。残り200mで先頭に立つとさらにギアを上げ後続を突き放し1位でフィニッシュ。自己ベストを7秒更新する会心のレースだった。
【女子フィールド】
走幅跳には日根千晴(商4)が出場した。惜しくも優勝こそ逃したものの、2位に入り慶大に2点を加点。日根はさらに100mリレーにもアンカーとして出走。前述のとおり2位でフィニッシュし、個人では4得点の活躍を見せた。
慶大は、女子は同志社大に敗北したものの、男子は走高跳にて若原祐人(経3)が1位となるなど得点を重ね、去年に続き勝利をおさめた。慶同戦は、単なるスポーツ対決にとどまらず、地域を越えた学生交流の促進の機会として重要な意義を持つ。慶大と同志社大の学生も競技を通じて互いを高めあっていた。来年は同志社大の本拠地・京田辺キャンパスにて両校競走部はぶつかり合う。
慶大競走部の今季の公式戦も残すところ箱根駅伝予選会・本戦のみとなった。長距離ブロックの部員たちは、今日の試合の仲間の思いも胸に大一番に向かっていく。慶大競走部は、大会を終えたトラック/フィールドの選手たちも含め一丸となってサポートする。彼らの今後の活躍にも注目である。
以下選手インタビュー
長距離ブロック長・田島公太郎
――慶同戦を終えた後の感想
最後の競走部全体として臨む公式戦に早慶戦などでは直接的な貢献ができない長距離ブロックが積極的に関われたことはすごく嬉しかったです。その中でも我々男子は優勝できたので素直に喜ばしいなと思いますし、これを予選会に繋げたいという言葉を皆が言ってくれているのでそれも素直に嬉しいかぎりかなと思います。自分も身が引き締まる思いです。
――OP10000m男子に出場されましたが現在の状態は
かなり余裕をもって走れたかなと思っています。毎年、この時期に1本10000mを走ってから予選会を迎える流れを毎年の恒例、ルーティンみたいな感じになっているのですけど、過去一、4回出走してきた中では一番余裕もあったし、調子も良かったかなと思います。
――箱根駅伝予選会まで残り三週間、チームの状態や雰囲気はどうですか
9月の半ばに約1カ月半に及ぶ合宿が終わって、夏合宿もなかなかいい雰囲気で終えることができたのですが、そこからさらにできるっていう感じが自然にチームに漂うような感じがしてきていよいよだなというふうに感じているところです。実力としても、昨年とは比にならないほど、チーム全体、特に上位走のレベルがアップしているので、そこでいかに稼いで後ろに余裕をもって走ってもらうか、自分の走りに集中して走ってもらうかっていうところを意識して臨めるような、望ましいチーム状況には何とかなりつつあるのかなというところです。
――予選会に向けて個人としてチームとしての意気込みをお願いします
過去3回出走していますが、シンプルにベストな走りがしたいです。これまでは、ならしたような、毎年同じような順位、記録会だったのですが、ラストイヤーで気合が入っているので、もう一段階上にあがった結果を残したいなというのが個人的な思いです。日本人トップような目標も立てているのですけれど、一番に思うのは、4年間で最高の走りをしたいということです。チームとしては十分に狙える位置にいるのかなと思うので、ここから3週間は練習の質が強くなるような練習は終わっているので、後はどれだけ隙をなくせるか、妥協をすりつぶしていけるかというところを大事にしたいなと思います。
副将・三輪颯太
――慶同戦を終えた感想
まず、最低限の目標として、男子100mを大会新記録で優勝して、4×200mリレーでは塾記録を出したいと思っていたので、この目標は達成することができて率直にホッとしています。
――最後の公式戦でしたが、どういった気持ちで大会に臨んだか
男子は何としてでも勝利したいという目標があったので、後輩の活躍も見られましたし、短距離でいえば、男子100mの3位までを慶應で独占できて、OP種目でもいい記録があったので、後輩たちの活躍が見られた良い大会だったなと思います。
――残りの競技生活で成し遂げたいこと
高校時代は学生タイトルを獲って優勝することができたのですが、大学ではできてないので、全日本インカレでもできなかったので、その分、次の大会でしっかり結果を残して自己新を出して競技を締めくくれたらなと思います。
副将・仲子綾乃
――慶同戦を終えた感想
4年間、長かったようで終わってしまえばあっという間だったなというのが率直な感想です。
――レース後、佐口選手を労う姿が印象的でしたがどういった思いだったか
3年半ずっと一緒にやってきて、最後の慶同戦に懸ける気持ちみたいなものもそばで感じていました。それが結果として出て、PBも大幅に更新して、チームメイトのそういった姿をみて、自分は出られなかったけど、そういった仲間がいることがすごく嬉しかったです。
――残りの競技生活をどう過ごしたいか
今怪我をしていて、今シーズンは終わってしまったので、結果とかは残せないですけど、その分いろいろ感じたこととか考えたこともあるので、あと1カ月、思い残すことがないようにやり切れたらいいかなと思います。
以下同志社大学へのインタビュー
――慶同戦を戦い終えた率直な感想
末盛:今回男子は惜しくも敗れてしまったんですけど、女子は15回目にして初めて優勝できたので、後世に残るいいチームになっていると思います。この慶同戦から今の3回生が幹部として引っ張っているんですけど、本当に良いスタートダッシュがきれたと思います。
井出:末盛が言ったように、今回女子が15回目にして初優勝することが出来て本当に嬉しいです。選手を含めサポートメンバーや応援など一人一人が力を出し切った結果として掴めた勝利なのかなと思います。
――普段は京都のグラウンドにて練習されているかと思いますが、今回慶大の日吉グラウンドで試合をしてみていかがでしたか?
末盛:大学でこんなにいいグラウンドを持っている所はなかなか無いと思います。同志社にはこのように試合ができるグラウンドはないので、大学のグラウンドで開催するからこそ、大会運営の仕方などでより自主性を持って取り組めたのではないかなと思います。
井出:小学生の陸上チームや慶應義塾高校の学生方もこの大会にOP参加されたりOBの方々も応援にいらしたと思うんですけど、こういった地域や同じ学校の学生/OBとの交流機会を得られることは大学で開催するからこそなんだと思いました。
――競走部の慶同戦も今年で73回目を迎えました。両校の交流がこうして続いていることをどう思われますか?
末盛:普段関東の大学の方々と触れ合う機会は年に一度行われる全日本インカレだけなんで、それ以外に長い間こうして一緒に戦えて仲良くもなれる機会があることは非常にいいことだと思います。
井出:こういった歴史ある大会を毎年行うことが出来てとても光栄ですし、両校の伝統が今後も何十年何百年と受け継がれていってほしいと思います。
――最後に本日共に戦った慶大競走部の皆さんに向けて一言
末盛:慶大さんは全日本インカレで活躍するような選手を毎年輩出されていてとても強いチームですが、同志社も来年こそは男女共に優勝できるように頑張ります!
井出:また来年も是非熱い戦いをしたいなと思います。京都でお待ちしてます!
(取材:竹腰環、山口和紀、小田切咲彩)