【競走】力走の裏にはこの方々の存在有り!吉川昂希×小林真維・保科光作/箱根駅伝予選会直前特集④

競走

箱根駅伝予選会まであと3日!特集4日目の本日は、吉川昂希主務、小林真維駅伝主務、保科光作HCのインタビューを掲載します!吉川主務と小林主務は1月に襷がつながることを願い、競走部をサポートし続けて来ました。保科氏は駅伝チーム約30年越しの本戦出場への牽引者です。これを読んで是非当日も声援を送りましょう!

 

主務・吉川昂希(総4・湘南学園) 

駅伝主務・小林真維(商4・都立三田)

 

Q自己紹介をお願いします

吉川:慶應義塾体育会競走部107代で主務を務めています、吉川昂希と申します。

小林:駅伝主務兼長距離マネージャーを務めている、小林真維と申します。

 

 

Q主務と駅伝主務の役割に関して、共通点や相違点を教えてください。

吉川:慶應の競走部は他の大学と違い、「駅伝部」が存在していなくて、長距離も含めて「競走部」として成り立っています。その中で、全ブロックの運営の長を務めるのが主務です。その中でも箱根駅伝に特化して、箱根駅伝のための合宿や予選会など動きが別になる部分のサポートをメインにするのが駅伝主務、という形で役割は使い分けられています。

同じところでは、インカレや対抗戦では長距離も含めて一丸となり、主務・駅伝主務というところは関係なく一緒にサポートして戦っています。

全ブロックの運営を担う吉川

 

 

Q主務・駅伝主務になられた経緯、きっかけは何ですか?

小林:基本的には学年が最も上の長距離マネージャーが駅伝主務を務める流れがあり、4年生の長距離マネージャーが自分一人しかいなかったこともあり、任命していただきました。

 

吉川:代としても田島(公太郎=環4・九州学院)、トラック種目でも豊田(兼=環4・桐朋)や三輪(颯太=環4・西武文理)などチームとしても勢いのある代だと分かっていたので、自分自身が選手として貢献することも考えたのですが、それ以上にチームとしての最大値を引き出す仕事をやってみたいと思いました。150人をまとめられる機会もそうないと思ったので、最後は自分で決めて主務をやることになりました。

 

 

Q部内の現在(取材日:10月13日)の雰囲気はどうでしょうか?

吉川:チーム全体としては、箱根の予選会で代交代というところで、4年生が引っ張っていくだけではなく、3年生がリーダーシップを取っていくような過渡期にあります。とはいえ箱根予選会に向けてサポートや長距離ブロックの選手を中心に、集中力が高まってきているのではないかと思います。

 

小林:長距離ブロックの内部の雰囲気として、予選会が近づいてきた現在は外出や食事の制限も厳しくなっているので、やはりブロック全体としてピリピリしているところはあります。

 

 

Q予選会に向けて選手をサポートするにあたり、当事者として意識していることはありますか?

吉川:長距離の選手は練習時間が少しずれていたりすることもあり、小林ほど選手の状態を見ることはできませんが、その中でもできるだけ長距離の選手とコミュニケーションを取り、どういう状態なのか、自分にできることはないのか、そのあたりのアンテナを張るようにしています。もう一つは部員も含めて応援に来てくれる方たちもいるので、その方々の力を引き出して、しっかりと応援を選手に届けて選手が気持ちよく走れるようにしていきたいと思っています。

 

小林:意識していることは大きく2つあり、1つ目は対選手に関して、選手の日々の変化にすごく気を配っています。例えば練習前のアップで走り方が変な選手はいないか、そういう選手がいたら今日の調子を聞く、あるいは他の長距離マネージャーと連携するなど選手の状態を把握して、もし問題点があれば保科コーチに報告することです。これは予選会前だけではなく普段からしていますが、より意識するようにしています。

2つ目は対内部に関して、吉川と、応援してくれる選手の行動計画を作っており、そういう選手をどう引き込むか、当日スムーズに応援できるようにするためにはどうすればいいか、などの連携を意識しています。

 

 

Q小林さんは以前「後輩への指示出し」も意識しているとおっしゃっていました。後輩へのどのような指示出しを行っていますか?

小林:細かく指示を出すということを気をつけていて、自分が1年生の時に予選会や他の大会を経験した時、「勝手が分からない」というのが正直な感想でした。先輩たちに指示されていても前提の知識が違うので、自分が1年生になったつもりで一から十まで教えることを意識しています。かつ、分からないことがあれば遠慮なく聞けるような雰囲気作りも意識していて、当日にミスがないような育成と雰囲気づくりを心掛けています。

 

慶大競走部はこの人たちのために頑張りたいと思える最高の場所

 

 

Q4年間を振り返って、慶大競走部を選んだ理由や良かったところは何ですか?

吉川:もともと自分は選手として入ってきました。入部時に自分自身が良いと思ったポイントは2つあり、一つは言わずもがなオリンピック・パラリンピック選手を輩出するくらいレベルが高いということです。もう一つは「自分たちで考えながら、自立しながらやっていくんだ」という考えで、それにチームとして惹かれました。そんな環境の中で過ごす4年間で自分も成長できると考えていました。

 

小林:入って良かったと思うところは人がいいことで、入部の決め手になったのもこの人たちのために頑張りたいという引き寄せられるものがあったことです。この4年間やってきて、この人たちのためにどんなにしんどくても頑張りたいと思えるのは入部当初から変わりません、やはり入部して良かったなと思います。

 

 

Q競走部の一員として、選手をサポートするやりがいを感じた瞬間はありますか?

吉川:自分は選手とマネージャーどっちも経験する中ですごく良いなと思うのは、陸上はみんなで頑張ってきたものが、数値として分かりやすく出るところだと思います。それが本人の努力に加えていろいろな人のサポートもあって、そして選手の活躍を下支えし一緒に喜びを分かち合えることが、やって良かったところです。

 

小林:やりがいを感じる部分は選手が結果を出した時です。例えば今年5月の関東インカレで駅伝主将の田島がハーフマラソンで21年ぶりに長距離ブロックから入賞し、歴史のコマを進められました。自分たちの代で偉業を成し遂げられた瞬間となり、これまでやってきて良かったなと思いました。

 

――その田島選手はどんな存在ですか?

 

吉川:SFCで一緒に授業を取ることも多くよく話をするのですが、まず選手として"芯"があります。実力もさることながらそれを出すだけの"芯"があることを尊敬しています。また、チームへの愛もすごく感じます。長距離ブロックが他の部員から応援されるにはどうすればいいのかを懸命に考えているなとこの4年間横にいてすごく感じます。自分の中でも応援したくなる選手ですね。広報の仕事もやってくれるなど、頼れる部員だなとずっと思っています。

 

小林:長距離ブロックの中から見る田島のことを話させていただくと、田島は長距離ブロック全体の一つのモチベーションとなる存在です。1年生の時に学生連合として箱根駅伝本戦の7区で出場しているということは、その時点で箱根を走るために田島に残された選択肢は、チームで箱根駅伝に出ること、チームでしか箱根駅伝に出られないということです。普通ならそこで競技を辞めたりモチベーションが続かなかったりすると思うのですが、最後までチームを見捨てずに、チームで箱根駅伝本戦に出たいという思いを持ち続けてやってくれたので、私自身も後輩も田島を箱根駅伝に連れて行きたいと言っている人が多いです。チームのモチベーションとなる存在ということは、私も長距離ブロックのメンバーも思っていると思います。

 

 

Q予選会当日、お2人はどのような役割を担っていますか?

吉川:当日やることは荷物の運搬や應援指導部とのやりとりです。駐屯地の中で應援指導部とコミュニケーションを取りながら選手に走る前にいい応援を届けられるようにやっていきます。107代最後の公式戦なので、最後にしっかりと締めることが自分の役割です。

 

小林:私は主に選手のスタートラインに立つ前のサポートやサポートメンバーへの指示出しです。選手に関しては招集に連れて行くことも自分の役割なのでそういったサポートを、サポートの統括としては予選会の準備から当日まで自分がメインとなってやっているので、うまく運営するための指示出しが求められていると思います。

 

競走部を支える3人

 

 

Q選手にはどんな走りを期待したいですか?

吉川:"一番"で帰ってきてほしいという思いがあります。長距離を1年間やらせてもらい、いろいろな長距離の持つ側面を見てくる中で、本当に大変なブロックだと思いました。多くの方たちが関わって成り立っているブロックであるだけに、最高のパフォーマンスを発揮してほしいということがあります。それが関わってくれた人たちへの一番の感謝の伝え方にもなると思います。全員が「自分の中で一番のレースができた」と思えれば、襷が1月につながると信じています。自分の中での一番とチームの中での一番、他の大学に負けないくらいの一番の活躍などエゴを出して走ってほしいという思いも込めながら"一番"で帰ってきてほしいと思っています。

 

小林:求められている順位・タイムで帰ってきてほしいなと思います。それぞれ選手一人一人に役割があり、田島や木村(有希=総4・葵)はタイムを稼ぐ、日本人先頭集団で帰ってくることが求められてくるだろうし、その下も上位に食い込むくらいに入ってこないと本戦は見えてこないと思います。長距離ブロックはクラウドファンディングもやっていて支援してくださった方々も他ブロックに比べて多いので、そういった方々に対して結果で恩返しをすることにこだわってほしいと思います。

 

 

Q予選会当日に向けて伝えたいことはありますか?

吉川:(読者に向けて)

特に4年生は過酷な4年間を過ごしてきて決して他校に比べると環境が満足にそろっている部ではないと思っています。その中でも自分たちには何が足りないのか、どうやったら本戦に出場できるのかを4年間考え続けてきました。その部員たちの熱い走りを、ぜひ立川に来ていただいてご覧になってほしいです。箱根の本戦からは約30年遠ざかっていますが、田島や木村、安倍(立矩=理4・厚木)といったエース格がそろった代で歴史を塗り替えられるように頑張ってきたと思うので、直接見に来てもらえればと思います!

 

小林:(選手に向けて)

後悔はしないように。きつい時に耐えて走り切ってほしいということに尽きます。結果を出すことが求められているし、クラウドファンディングもやっていて結果を出す義務があると思うので、そういう人たちのことも思い浮かべながら最後まで甘えずに走り切ってほしいです!

“後悔しない” 小林真維

 

――お忙しい中、ありがとうございました!

 

 

 

 

<保科光作ヘッドコーチへのインタビュー>

Q直前練習を終えたチーム全体の状態はいかがですか?

保科:だいぶ疲労も抜けて、全体的にかなり状態が上がってきていると感じますね。ここ最近は日中気温が高い時間帯に練習してそこでしっかり汗もかけているので、本番に向けてこれ以上の状態の向上が見込めると思います。

 

Q昨年と比較して、今年のチームはどういったところに成長を感じますか?

保科:チーム内で6~10番手の中間層の選手の中で底上げができ、その実力差がグッと縮まってきていると感じます。誰を起用してもある程度計算できる状態になっているので、そこは去年と比較してチームとして成長したポイントかなと思います。

 

Q昨年の予選会では全体22位と悔しい結果となりました。今年10位以内に入るための予選会攻略のポイントはどこにあるのでしょうか?

保科:前半の10キロ通過時点で10位圏内に入っておくことがかなり重要だと思います。他の大学では後半勝負のところも多いですが、ウチの大学は前半からしっかりと10位圏内をキープして残り5キロは必死に粘るという走り方しかできないと思っていますし、その作戦がチームにも合っていると思ってますので、前半から積極的な走りでレースを展開して行きたいと思っています。

 

Q"チームの命運を握る存在"として挙げるとすればどの選手ですか?

保科:やはり木村・田島の2人の4年生ですかね。この2人には日本人トップ争い、できれば日本人トップを取って欲しいと思っています。そこが上手く走れると他の選手たちに余裕ができるので、この2人がトップ争い、少なくとも日本人一桁順位で帰ってきてほしいという思いです。

 

Qそもそも、なぜ慶應義塾大学駅伝チームのコーチ職を引き受けられたのでしょうか?

保科:私は元々実業団の日清食品グループのほうでコーチをさせて頂いてたんですが、気持ちの中では箱根駅伝を本気で目指すチームで指導してみたいという思いがずっとありました。その中で、慶應義塾大学からお話を頂いた時に、私の気持ちと慶大の求めていることが合致したので引き受けさせていただいたという感じですね。

 

”箱根駅伝を本気で目指すチームで指導したい”

 

 

Q慶大競走部では学生の自主性が重視されています。そういった環境で指導する上で新たに感じたこと、苦労したことは何ですか?

保科:私が就任した当初は、"自主性"という言葉に大きな責任が伴うことが学生たちの中であまり浸透しておらず、自主性=自由という認識が結構ありました。競技をする上での責任の部分がかなり欠落していたのかなと。そこの部分は地道にコミュニケーションを取りながら部員たちに伝えていきました。「"自主性"というとすごく聞こえが良いけども、実際にはただ自由にやってるだけだよね」という自分の認識とのギャップを埋めることが大変でしたね。

 

――それはどうやって乗り越えていったんですか?

 

保科:自主性を持つことは大切ですが、やはりチームとして活動する以上は規律やルールを守ることも大事である、ということを学生たちとかなり話しました。例えば練習は週に12、3回あるんですけど、そのうち全員が顔を合わせるポイント練習は4回しかないんです。他の練習では各々が考えたスタイルで取り組むのはいいけど、それに対して週4回のポイント練習がキッチリとできる、こうなるための規律を自分たちで決めていくことの大切さから伝え始めました。

 

――選手たちの"自主性"に対する考えを見直すことから始めたんですね?

 

保科:練習が積めていないとレースでも結果が出るわけがないですので、「自由とか自主性というものにはかなり大きな責任が自分たちに伴うんだよ」という様な話は就任当初は特にしていましたね。今では多くの部員がそのことを理解して練習してると思います。

 

Q指導をする上で、チームのモチベーションを維持するために実践されていることはありますか?

保科:ある程度"空気感を使い分ける"ようにはしています。大事な練習がある日には、学生たちにその緊張感が伝わるような仕草をしています。例えば、敢えてあまり人と話さないようにするだとか。一方で、ずっと張り詰めたままの雰囲気だと学生たちも疲れてしまうので、合宿所では一緒に食事をしたり入浴したり、そういった場所では練習以外の事も話をしています。その中で様々なことを学生たちの方から喋ってもらうことで打ち解けあう、そしてその分グラウンドの中では真剣にやるというように、オンとオフの切り替えというのはかなり気を使って活動しています。

 

”今年こそは確実に決めたい”

 

 

Q箱根予選会に向けての意気込みを聞かせてください。

保科:この箱根駅伝プロジェクトが始まって今年で8年になりますが、今年は戦力的にもこの8年間のみならず、100年以上の競走部の歴史を振り返ってみてもかなり戦力が揃っていると思います。ただそれはウチの大学だけの戦力であって、他大学も同様にレベルを上げてきています。その中で、レース前半から攻めの走りをするウチの戦い方が他大学にどれだけ通用するのか。とにかく、しっかりと前半から攻めることが箱根本戦出場に繋がってくると思うので、戦力が充実している今年こそは確実に決めたいと思っています。

 

――お忙しい中ありがとうございました!!

 

(取材:長沢美伸、竹腰環、編集:河合亜采子、鈴木拓己、ウジョンハ、山口和紀、小田切咲彩)

 

最後までお読みいただきありがとうございます。特集は明日が最終回です!お楽しみに!

 

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