【競走】古豪慶大 31年ぶりの悲願へ/箱根駅伝予選会直前特集⑤

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箱根駅伝予選会まであと2日!昨年は総合22位となり本戦出場を逃した慶大。悔しさを力に変え、彼らはこの1年間更なる成長を遂げてきました。最後の特集となる今回は、慶大駅伝チームの今季の戦力、そして予選会攻略法を分析します。来年1月、三色旗の襷は31年ぶりに箱根路を駆けることができるのか。運命の一戦は10月19日(土)・午前9時35分号砲!

 

“9分33秒”、この時間が何を意味するのか皆さんはご存知だろうか。これは、昨年の箱根駅伝予選会にて総合22位となった慶應義塾大学と総合13位(※)となり本戦出場の最後の枠をつかんだ山梨学院大学との総合タイムの差である。1人当たり57秒。慶大は昨年、これだけの差をつけられ本戦出場を逃した。全員が自己ベストを更新した上でのこの結果は、彼らに計り知れない絶望を与えた。ただ同時に、その箱根駅伝への思いをより一層強くさせた。(※第100回の記念大会となった昨年度は、出場枠が例年の「10」 から「13」に増やされた。)

 

それから一年、慶大駅伝チームはさらなる成長を遂げて還ってきた。昨年から今年にかけて多くの選手が自己記録を更新。塾歴代記録TOP10のうち、5000mには4人、10000mには5人の現役生が名を連ねる。今年の関東インカレでは、主将・田島公太郎がハーフマラソンでこの大会の長距離種目にて慶大30年ぶりの入賞を果たした。昨年途中からチームに加入した2年生・成沢翔英の台頭は戦力にさらなる厚みを与えた。 

 

3年時より駅伝主将を務めてきた田島

 

夏合宿で彼らはさらなる自信をつけた。Aチーム(チーム内トップ層)の限界突破に加え、Bチーム(チーム内ミドル層)の戦力底上げにも着手。慶大を指揮する保科光作ヘッドコーチは今年のチームに自信をのぞかせる。「今年のAチームは昨年より早い設定タイムでより強度の高い練習を積めています。Bチームに対しては、“前のランナーとの距離を開けないこと”を練習では徹底させてきました。全体的に昨年度よりも確実に実力をつけており、誰を起用してもある程度計算できるほど陣容は整ってきていると思います。」 

 

”前のランナーとの距離を開けるな!”

 

先日発表されたエントリーメンバー14人のうち8人は前年も出走しており、チームとしての成熟度も高まっている。今年の戦力は“過去一番”と言っても過言ではないだろう。 

 

そんな慶大が今年も挑む「箱根駅伝予選会」。この大会では、各チームから選ばれた10~12名のランナーがハーフマラソンのコースを走る。各チーム上位10人の合計タイムがチームの記録となり、そのタイムが早い上位10チームに来年1月の箱根駅伝本戦への出場権が与えられる。今年は、43大学から500人にものぼるランナーが東京都内にある陸上自衛隊立川駐屯地にて一斉スタートを切る。 

 

31年ぶりに本戦への切符をつかむために慶大はどう挑むのか。前回大会にてチーム3番目のタイムで走った4年生・安倍立矩は昨年のレースを次のように振り返った。「昨年は前半の10キロのタイムに対し、後半10キロで大きくラップを落としてしまいました。やはり勝負のカギを握るのは公園に入ってからになりますね。」“勝負は公園から”、これは安倍をはじめ多くの選手が口をそろえてポイントに挙げることだ。予選会コースでは立川駐屯地内を周回し、その後応援客で埋め尽くされた沿道を走る。ここまでの道は平坦であり、ランナー達にとっては比較的走りやすい。 

 

「今年は公園に入ってからが勝負です」(安倍)

 

だが、13.5キロを過ぎて昭和記念公園に入ると、その様相は一変する。細かなアップダウンの連続に加え、カーブが多く、他大学の選手とのタイム差がつかみにくいことから、体力的にも精神的にも追い詰められ、大幅にペースダウンする恐れがあるのだ。図からわかるように昨年の大会にて、慶大選手の多くは後半10キロで大きくラップを落とし、他大学に大きく引き離される結果となった。この最大の難所で各ランナーが粘りを見せ、ペースダウンを最小限に抑えることが求められる。 

 

10人の前半10km/後半10kmのペース比較 (例)「-78」とは前半と比べ、後半は1分18秒ラップタイムを落としたことを表す

画面左・慶大、画面右・東海大(総合10位)

 

 

 

ただ慶大には、各自が後半に向けて体力を温存する作戦をとる余裕はそれほどない。参考までにエントリーメンバーの10000mの記録上位10人の平均タイムは20位圏外。10位の山梨学院大学とは1人当たり15秒遅いタイムである。保科は予選会攻略のポイントについて次のように語った。「前半の10キロの通過時点で10位圏内に入っておくことがかなり重要だと思います。前半から攻めて10位圏内をキープし、後半5キロは死ぬ気で粘る。うちの場合、他大学と勝負するにはこの戦い方しかないと思っています。」 

 

その上で保科はキーマンとして2人の4年生の名を挙げた。「エースの木村(有希)と主将の田島、やはりこの2人には日本人トップ争いをして来てほしい。そこがうまく走れると他の選手たちにも余裕ができるので。」 

木村・田島らトップ層がタイムを稼ぎ、ミドル層が前のランナーに食らいつき、ラスト5キロは全員で粘る。まさにチーム一丸となって戦い抜くことが勝利の絶対条件となる。

 

チームの命運を握る木村(写真左)と田島(写真右)

 

創部107年目を迎えた慶大競走部。その白地のユニフォームの胸元には大きく「K」の文字が刻まれる。ユニフォームを身にまとった12人の学生たち。“12通りの21.0975km”の物語が始まろうとしている。来年1月、三色旗のタスキは31年ぶりに箱根路を駆けるのか。運命の一戦は、10月19日(土)・午前9時35分、号砲。

走る、ただそれだけ

 

(記事:竹腰環、編集:河合亜采子、鈴木拓己、ウジョンハ、小田切咲彩、山口和紀)

 

最後までお読みいただきありがとうございます!

 

 

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