入替戦出場へ熾烈な順位争いを繰り広げる関東2部。慶大は開幕6連勝も、直近2試合で上位を争う大東文化大と亜大に敗れ、2部5位。残り3試合で全勝する以外に道がなくなった慶大は、2週間の中断期間を経て“絶対に落とせない”中院大との一戦に臨んだ。第1セットは拮抗した展開の中、ピンチサーバーとして起用された松山鼓太郎(商2・慶應)の4連続ブレイクで21ー22から逆転し、このセットを勝ち取る。続く第2、第3セットを、23ー25、16ー25で落としてしまうが、途中出場のL・山元康生(法3・慶應)の活躍もあり、30点に及ぶデュースを制して第4セットを死守。最終第5セットは、L・緒方哲平(環1・日向学院)もコートに入って守備を固めるが、ラリー戦の末に最後は相手のサービスエースでゲームセット。2ー3で悔しくも中院大に敗れ、痛恨の3敗目となった。これを以て慶大は3位以下が確定し、入替戦出場、そして“1部最速復帰”は叶わぬものとなった。
※入替戦への出場資格:2部上位2校
2024年10月12日(土)
秋季関東大学男子2部バレーボールリーグ戦
第9戦 慶大×中院大
@大東文化大学東松山キャンパス
得点 | ||
慶大 | セット | 中院大 |
25 | 1 | 22 |
23 | 2 | 25 |
16 | 3 | 25 |
30 | 4 | 28 |
11 | 5 | 15 |
出場選手 | ||
ポジション | 背番号 | 名前(学部学年・出身校) |
MB | 22 | 稲井正太郎(法1・慶應) |
OH | 11 | 入来晃徳(環3・佐世保南) |
OH | 12 | 内田克弥(環4・松江高専) |
MB | 8 | 芳賀祐介(環4・札幌北) |
S | 6 | 山口快人(経2・慶應) |
OH | 1 | 渡邊大昭(商4・慶應) |
L | 4 | 今田匠海(政1・慶應) |
途中出場 |
|
|
MB | 9 | 松山鼓太郎(商2・慶應) |
S | 15 | 久保田健介(商3・慶應湘南藤沢) |
L | 7 | 山元康生(法3・慶應) |
OH | 2 | 清水悠斗(総1・習志野) |
L | 3 | 緒方哲平(環1・日向学院) |
第1セットは、入来晃徳(環3・佐世保南)のサービスエース、山口快人(経2・慶應)のブロックやディグが光るも、うまく流れを掴みきれず。立ち上がりから競った展開となる。セット中盤には、16ー18の場面で山口のワンハンドトスを芳賀祐介(環4・札幌北)が得点に繋げると、直後には入来が再びサービスエースを奪い、18ー18で同点に追いつく。その後も、両者譲らぬまま20点台に突入。このセットを何としても勝ち取りたい慶大は、20ー21と1点のリードを許したところでタイムアウトをとる。試合再開直後に失点も、渡邊大昭(商4・慶應)がレフトから強烈なスパイクを相手コートに叩きこみ、21ー22。慶大はチームをさらに勢いづけるべく、ムードメーカー・松山鼓太郎(商2・慶應)をサーバーに起用。松山がサーブで相手を崩してチャンスをつくると、まずは入来がスパイクポイントで応える。さらに松山のサーブから、同期の山口が2連続でブロックポイントを奪い、24ー22で慶大がセットポイントを掴む。そして、最後は渡邊のインナースパイクで締めくくり、25ー22。慶大の4連続ブレイクで第1セットを勝ち取る。
続く第2セットは、慶大のサーブミスに加えて相手のスパイクを止めきることができず、序盤から3ー8と大きくリードを許す展開に。それでも、ここにきて渡邊大昭が春リーグ1部サーブ賞の実力を遺憾無く発揮。サービスエースを含む6連続ブレイクで一気に追い上げに成功し、試合を立て直す。以降は、第1セット同様にシーソーゲームとなる。攻撃では、S・山口快人が渡邊、内田克弥、入来晃徳、稲井正太郎(法1・慶應)をうまく使い分け、得点を重ねていく。そして18ー18の同点から、またも渡邊のサーブが走り3連続ブレイクで21ー18。一度はリードを広げた慶大だが、時間差攻撃でブロックを崩され23ー23の同点に追いつかれると、そのまま23ー24で相手にセットポイントを握られてしまう。2セットを連取して流れを掴みたい慶大はタイムアウトを挟むが、最後はスパイクが相手ブロックに捕まり、23ー25で第2セットを落とす。
セットカウント1ー1で迎えた第3セットは、長いラリーの中で山口快人が守備でも強さを発揮するなど粘りをみせるが、徐々に中院大との点差が開いていく。慶大は、入来晃徳や清水悠斗(総1・習志野)がバックアタックで会場を沸かせ、良い形で得点を奪う場面もみられたが中院大の勢いを抑えることはできず。11ー17の6点ビハインドで、慶大はタイムアウトをとる。その後も、慶大の攻撃が相手ブロックに捕まり、うまく流れを掴めないままセット終盤に突入。それでも16ー22の場面では、慶大のビッグサーバー・渡邊大昭にサーブ順が回りチャンスを迎える。1つでも多くブレイクして点差を縮めたい慶大だったが、このチャンスを活かせずに4連続失点。16ー25で第3セットも落とし、セットカウント1ー2で第4セットへ臨む。
入来晃徳のスパイクポイントで幕を開けた第4セットは、相手の時間差攻撃に再びペースを乱され得点を伸ばすことができない。中院大に流れが傾き始めた6ー9の場面で、慶大のタイムアウト。その後もキャッチミスが重なり、7ー12の5点ビハインドに。ここで、L・今田匠海(政1・慶應)に代わり、L・山元康生がコートイン。サーブミスでも失点が目立つ中、山元は安定感のあるレシーブやディグ、フォローでチームを支え、攻撃のチャンスを演出する。少しずつ流れを掴み始めた慶大は、入来晃徳の強烈なジャンプサーブからの稲井正太郎のブロックポイントなど、良い形で得点を奪い17ー19の2点差に迫る。さらに、渡邊大昭や芳賀祐介を中心に得点を重ね、23ー23の同点とする。両者の意地がぶつかり合い、24ー24、25ー25、26ー26と試合は均衡。27ー27の場面では、山元のナイスレシーブに同期の入来がスパイクで応え、28ー27で4度目のセットポイント。直後に相手の秀逸なライトスパイクで再びデュースに持ち込まれるも、内田のレフトスパイクで29ー28と一歩前に出ると、最後は稲井のブロックポイントで30ー28。30点台にもつれこむ大熱戦を制し、セットカウント2ー2で試合はフルセットへ突入する。
勝敗を決する、最終第5セット。負ければ“1部最速復帰”の望みが絶たれる慶大は、内田克弥のレフトスパイクやフェイント、芳賀祐介のクイックなど、引き出しの多さを存分に発揮して得点を重ねていく。一方の中院大も、サービスエースやブロックの脇を抜くスパイクで応戦し、再び拮抗した展開となる。7ー8の1点ビハインドで芳賀に代わってL・緒方哲平(環1・日向学院)が入り、慶大は内田、山元、緒方という3人のL経験者で守備を固める。内田、山元、緒方に加えて、山口快人がディグで粘り強くラリーを繋ぎ、稲井正太郎は1枚でブロックポイントを奪うなど、個々が強みを発揮。それでも、スパイクミスや繋ぎの部分でミスが目立ち、10ー13で慶大のタイムアウト。選手、スタッフ、監督が全員で集まり、声を掛け合って再びコートへと戻る。タイムアウト明け最初のポイントは、渡邊大昭のスパイクで慶大が勝ち取り11ー13とするが、フェイントでコートの真ん中にボールを落とされ11ー14で相手のマッチポイントを迎える。絶対に落とせない第5セット26ポイント目、慶大選手が見送った中院大サーブはエンドラインいっぱいに落ち、相手のサービスエースでゲームセット。思いがけぬ試合終了に、選手たちはその場に立ち尽くす。慶大は、フルセットの末に悔しくも中院大に敗れた。この敗戦をもって、1部2部入替戦への出場は叶わぬものとなった。
開幕6連勝も、第7日の大東文化大戦、第8日の亜大戦で2連敗を喫し、2週間の中断期間を経て迎えた第9日の中院戦。悔しい結果に終わった一方で、敗戦の中に変化と成長の兆しを感じる試合でもあった。サーブミスやレシーブでの乱れから攻撃をうまく展開できず、失点がかさんだ大東文化大戦、亜大戦から一転、大事な場面で大きなブレイクに成功する場面もみられた他、足りないところを全員で補い合い個々の強みも垣間見えた試合だった。特に、途中出場という難しさの中でも活躍をみせたL・山元康生について、星谷健太朗監督は「第4セットは康生のおかげで取れたようなもの。彼の真面目さがすごく良い方に働いたし、こうやってうちにはいろんな選手が必要」だと話した。目標が遠ざかり、試合展開としても追い込まれた苦しい状況の中でも、第4、第5セットを戦う選手たちの表情は活き活きとしていた。残すところ2戦。入替戦出場の可能性は途絶えてしまったが、まずは残りの山学大戦と学芸大戦を全力で戦い抜き、早慶明定期戦、そしてチーム渡邊で戦う最後の全日本インカレでは最高に「慶大らしい」バレーを体現してくれることを楽しみにしている。
(取材:長掛真依)
▼以下、コメント
星谷健太朗監督
ーー2週間が空いて気持ちを新たに臨んだ一戦だと思いますが、振り返っていかがですか
気持ちの面で切り替えるということや足りないスキルを克服できるようにと準備してきたのですけれども、それが発揮できた部分がありながらも、発揮するための気の持ち方というのがうまくできなかったのが残念かなと思います。
ーーこの2週間で特に力を入れて練習していたことは
攻撃でコンビネーションを良くしていくこと、ブロックを揃えるということや止めにいくこと、点を取りに行くサーブと嫌なところを狙い続けるサーブを強化してきました。
ーーその成果はどのくらい感じられましたか
求めているところを100だとすると、60くらいかなと思います。練習の中では変化があって成長が見られたのですが、試合となった時に焦りが出たりとか、練習と違う相手と対峙した時にこれまでの動きに戻ってしまうことがよくあったので、そこは経験を積んでいかなければいけないなと思います。
ーーサーブでは渡邊大昭選手の6連続ブレイクもありました、課題にしていたサーブについてはいかがすか
取り組んできた、嫌なところを狙い続けるというところがよく発揮されていたのではないかと思います。おそらく大昭(=主将・渡邊大昭)の60%くらいのものだったのですけれども、それでも相手にとっては脅威になるものを打ち込めていたので、それはすごい良かったと思います。
ーーラリーの中であと一本がつながらないという場面もありましたが、守備面はいかがでしたか
守備はもともと得意にしているところはないのである程度仕方がないなと思うのですが、それでももう少しボールに対して執念を持ってやれていたらつながるボールも多々あったのではないかなと思うので、技術で足りない部分は意識で補って今ある力を最大限出せるようにもっと努力をしていく必要があるのかなと思います。
ーー次戦、山学大戦への意気込みをお願いします!
結果が伴わない試合が続いていますが、我々はバレーボールができる幸せを感じて、一球入魂。それによって、自分たちはもちろん、応援して観ていただいている方々に少しでも活力を与えられるようにとやっているので、それをアップのところから最後の一点までやり続けられるようにアクションしたいと思います!
渡邊大昭選手(商4・慶應)
ーー2週間が空いて気持ちを新たに臨んだ一戦だと思いますが、振り返っていかがですか
作戦というよりかは自分たちの精神的な不安定さが出たなというところで、そこからミスが続いたり、全然繋がっていないなという印象はあったのですが、練習でやってきたことを出すという点では徐々に良くなっているので。あとは最終戦までにどうするのかというところを、また明日もありますが一つ一つ楽しんでいきたいと思います。
ーー以前、課題に挙げられていたサーブでブレイクする場面も多く見られましたが
そこは修正して、練習で3本連続でミスなくキープするような練習をしたりアクションを起こした結果、今日は8割くらいのサーブで良いサーブが入っていたので、そこは練習の成果が出たのかなと思いますが、まだまだミスはあるので修正点はまだあるのかなと思うので、及第点くらいですかね。
ーーラリーの中であと一本がつながらないという場面もありましたが、守備面はいかがでしたか
ラリーが取りきれていないという課題点があって、そこに関しては練習の中でもAチームではないメンバーがすごく繋いでくれてラリーの練習になっているので。そのおかげで先週に比べて今日は取りきれているボールもあったので、すごく良かったかなと思います。
ーー次戦、山学大戦への意気込みをお願いします!
チームとしては負けが続いていますけれど、徐々にプレー自体は良くなっているので、気持ちの面でみんなが心の底から楽しんでバレーボールをできるような環境をつくって、まずは自分が楽しんでやっていきたいと思います!
山元康生選手(法3・慶應)
ーー第4セットからコートに入って活躍されていましたが、試合を終えてどのようなことを感じていますか
まず、この秋リーグを正リベロとして戦っている今田匠海は紛れもなくチームの守護神で、何度もチームを救ってきたと思います。リベロは“0”か“マイナス”しか生まない、精神的負担の大きい難しいポジションだと思いますし、自分も似たような経験をしたから気持ちはすごく分かるので。だからこそ、明日からまた切り替えてやってほしいなと思います。そして、同じくリベロの平山一之心、緒方哲平の2人についても、リベロでありながら異なるポジションで練習している時間も長くて辛い時もあると思うけれど、それでもベンチに入って活躍している点は本当にすごいと思っています。リベロ3人のことを尊敬しているし、一緒にやれて良かったと思っているので、これからも切磋琢磨していきたいです。
ーーこの秋リーグの期間は、どのようなことを意識されていますか
とにかくこの秋は、勝つために「全員で」ということを意識しています。サブメンバーの役割はいつでも試合で活躍できる状況を作っておくことなので、その点で松山鼓太郎、野口真幸、緒方哲平、清水悠斗はコートに入ってしっかり活躍できていて、役割を果たしてチームに貢献できていると思います。自分は亜細亜戦では不甲斐ないプレーをしてしまった中で、今回はきちんと役割を果たせたのかなと思っています。加えて、匠海(=L・今田匠海)が安心して思いっきりプレーできる環境を作れた点も、(次の日に行われた)山梨学院戦の勝利に繋がったかなと感じています。
ーー今日の試合、そしてご自身のプレーを振り返っていかがですか
第4セットで自分がコートに入った時は、チーム全体に少し停滞感がありました。エネルギーが足りていなかったのとフレッシュさが必要だと感じたので、だからこそ周囲への声かけも含めて「しっかり勝ちに行くよ」というところを示したつもりではありました。ある意味、“劇薬”として入って4セット目は取れたのかなと思う反面、勝ちきれないということはまだまだチーム全体としての実力とか気持ちが足りてないということだと思うので、勝ち切れるチームになっていかないといけないなと思います。個人のプレーに関しては、ほぼマイナスを出してないので、“0”に近い。当たり前のことを当たり前にやっただけなのかな、という感じです。
ーー秋リーグは限られたチャンスの中、途中出場で試合感を掴む難しさなどもあったと思いますが、振り返っていかがですか
試合を想定して練習はしているけれど、やはり試合は少し独特で、亜細亜戦は浮き足だってしまった一方で、今回は落ち着いて入れたかなと思います。ただ、同じミスを繰り返しているようではダメで。これまでの3年間いろいろな経験をしてきているからこそ「難しい環境だから」なんて言い訳はできないので。経験を活かして誰よりも難しい立ち回りをこなしていかないといけないので、どの立場でも求められた役割ができるように今後も頑張ります。
ーー残りのシーズンはどう戦っていきたいですか
まずは学芸に勝つことだったり、全カレで1つでも多く勝つこと。来週以降は総力戦、チーム全員で4年生についていくことが大事になっていくと思います。それに加えて、大昭さん(=OH・渡邊大昭)だったり、陽大さん(=アナリスト・田鹿陽大)、細野さん(=S・細野一真)とは塾高だったり中等部の頃からずっと一緒にやってきましたし、祐介さん(=MB・芳賀祐介)、克弥さん(=OH・内田克弥)とはコートで共にプレーする時間も長かったのと、今はなかなか会えないけれど まささん(=学連委員長・山本昌岳)もすごくお世話になっている先輩なので、先輩方と少しでも長くバレーができるように、1つでも多く楽しんで、たくさんのことを学んでいけるように。残り少ない時間を大切にしていきたいです。
稲井正太郎選手(法1・慶應)
ーー2週間が空いて気持ちを新たに臨んだ一戦だと思いますが、振り返っていかがですか
先々週は2日とも負けてしまって、今日は本当にこれ以上負けられない勝負の日だったので、より一層気合いの入る、身の引き締まる試合でした。
ーー試合内容の方は振り返っていかがですか
個人的には、攻撃面では自分の力を出し切った感じはするのですが、守備面ではもうちょっと頑張りたかったなと思います。
ーー「もうちょっと頑張りたかったところ」は具体的にどのようなところですか
特にサーブを打った後のレシーブであったり、ブロックを同じところを何本も抜かしてしまったので、それは改善したいです。
ーー前回の試合から2週間空きましたが、どのようなことを意識して練習されましたか
先々週の負けた試合は、最後の1セットしか試合に出られなくて、自分の満足いく動きができなかったので、今週こそは全員見返してやろうという気持ちで頑張りました。
ーー次戦、山学大戦への意気込みをお願いします!
あまり結果とかは気にしないで、とりあえず1年生としてできることに全力で取り組みます!