先発の渡辺和大(商2・高松商業)は前試合の東大戦で完封勝利を収めており、期待通り7回まで無失点に抑える安定した投球を見せる。しかし8回に久しぶりの四球で走者を出し、その後無死二塁の場面で自らの悪送球により痛恨の1点を失う。一方打線は3回、秋季リーグ戦全試合スタメン出場の吉野太陽(法2・慶應)が先制の二塁打を放ち、相手先発の篠木健太郎(経4・木更津総合)から大きな1点をもぎ取る。しかし、9回に後を任された前田晃宏(商3・慶應)がこの回先頭の藤森康淳(経2・天理)に勝ち越しのソロ本塁打を打たれると、さらに吉安遼哉(法4・大阪桐蔭)にも右中間に本塁打を打たれ1-3と2点のリードを許す。さらに、鈴木大照(文4・明徳義塾)のボテボテの当たりを遊撃手の林純司(環1・報徳学園)が悪送球。この日慶大4つ目の失策でピンチを招き、前田は降板。後を受けた木暮瞬哉(法3・小山台)が何とか打ち取りこの回を抑える。最終回での継投の失敗と失策が響き、悔しい敗戦を喫した。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
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法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 3 |
慶大 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
◆慶大打撃成績
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
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1⑤水鳥遥貴 | 中安 | ・・ | 三振 | ・・ | 投ゴ | ・・ | ・・ | 犠打 | ・・ |
2⑦吉野太陽 | 三失 | ・・ | 中2 | ・・ | 二ゴ | ・・ | ・・ | 中飛 | ・・ |
3④本間颯太朗 | 三ゴ | ・・ | 中飛 | ・・ | ・・ | 二ゴ | 二ゴ | 一飛 | ・・ |
1前田晃宏 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ |
1木暮瞬哉 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ |
4③清原正吾 | ・・ | 三飛 | 三ゴ | ・・ | ・・ | 右飛 | 右飛 | ・・ | 中飛 |
5⑨真田壮之 | ・・ | 二ゴ | ・・ | 三振 | ・・ | 右飛 | 右飛 | ・・ | ・・ |
9佐藤駿 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | 二直 |
6⑧横地広太 | ・・ | 四球 | ・・ | 中飛 | ・・ | ・・ | 右飛 | ・・ | 遊飛 |
7⑥林純司 | ・・ | 死球 | ・・ | 右2 | ・・ | ・・ | 三振 | ・・ | ・・ |
8②渡辺憩 | ・・ | 右飛 | ・・ | 三ゴ | ・・ | ・・ | 三振 | ・・ | ・・ |
9①渡辺和大 | ・・ | ・・ | 四球 | ・・ | 遊飛 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ |
🈱中塚遥翔 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | 一安 | ・・ |
🈰古野幹 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ |
4上田太陽 | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ | ・・ |
◆慶大投手成績
投球回 | 打 者 | 投球数 | 安 打 | 本塁打 | 四死球 | 三 振 | 失 点 | 自 責 | |
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渡辺和大 | 8 | 32 | 109 | 4 | 0 | 1 | 8 | 1 | 0 |
前田晃宏 | ⅔ | 6 | 18 | 2 | 2 | 1 | 0 | 2 | 2 |
木暮瞬哉 | ⅓ | 2 | 9 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 |
前カードの東大戦で初の勝ち点を獲得し、そのまま波に乗りたいところである慶大は、最終カードの早慶戦に向けた闘志を胸に法大戦へ臨んだ。今試合は好投手同士の対戦が注目である。今季ここまでリーグ2位の防御率1.50で絶好調の渡辺和に対し、法大は先月プロ志望届を提出し、ドラフト上位指名に期待がかかるプロ注目右腕のエース・篠木がぶつかった。また、他にも両チームにプロ志望届を提出した選手が多数存在し、輝かしいキャリアが期待される者たちの「未来」ある試合となった。
初回、テンポのいい投球で2アウトを奪うも3番の松下歩叶(経3・桐蔭学園)に左中間に鋭い当たりの二塁打を打たれる。それでも、内海壮太(法4・御殿場西)を緩急のついた投球で三振に仕留めピンチを切り抜ける。その裏、先頭の水鳥遥貴(商4・慶應)と篠木のプロを目指す者同士の対決が実現する。水鳥は篠木の気迫のあるピッチングをものともせず弾丸の二塁打を左中間に放ち、ドラフトに向けて最高のアピールとする。しかし後続が続かず、得点には結び付かなかった。
慶大は2回にもチャンスが訪れる。先頭の清原正吾(商4・慶應)が倒れると、横地広太(法2・慶應)が四球、林が死球で1死一、二塁となる。普段見られない篠木の乱調なだけに打席の渡辺憩(商1・慶應)に期待がかかる。ライナー性の当たりが外野に飛ぶも場所が悪く、右飛となる。この回は2者残塁で終わるも、慶大の流れは終わらない。3回裏、渡辺和が四球で出塁すると、1死一塁で吉野が快音を響かせる適時二塁打を放ち1―0と流れを呼び込む先制点を奪う。本間颯太朗(総4・慶應)の中飛で吉野が三塁へ進塁。追加点が欲しい慶大だったが、こちらもプロ注目の打者・清原の三ゴロでこの回が終わる。
4回は、逆に慶大が3回まで見られなかったピンチに襲われる。横地のスライディングキャッチで先頭打者の出塁は防いだものの、2死の場面から中津大和(経4・小松大谷)の内野安打、藤森の遊撃手の頭上を抜く安打で一気に2死一、二塁と追い込まれる。しかし、14イニング連続無失点中の渡辺和は冷静さを取り戻し、次の打者を打ち取り、ピンチを切り抜ける。慶大はその裏、林の二塁打ですかさず応戦するも後が続かなかった。
その後、7回までは両先発投手が危なげのない投球を披露するも、8回、渡辺和は法大の猛攻にさらされる。疲れが見えてきた渡辺和は先頭を四球で步かせると、暴投で二塁への進塁を許す。さらに石黒和弥(法3・高岡商業)の犠打の処理に慌てた渡辺和は、悪送球でここまで守った1点を追い付かれてしまう。続く熊谷陸(人環1・花巻東)も犠打。しかしこれを水鳥も一塁への悪送球。無死一、二塁の逆転がよぎる絶体絶命のピンチを迎える。しかし、またしても渡辺和は鬼気迫る投球を展開する。松下を右飛に打ち取ると、続く内海を伸びのある直球で三振。前打席で内野安打を打たれた中津を落ちる球で空振り三振に切ると、慶大観客席とベンチが一心同体となって沸く。
その裏、堀井監督は先頭で今季初出場の1年生・中塚遥翔(環1・智辯和歌山)を代打に起用する。期待に応え、中塚は弾丸のような打球で一塁手のグラブを弾き、出塁。続く水鳥は一塁線に沿う犠打を決める。ここで今日篠木から1点をもぎ取った吉野に打席が回るも、中飛で流れを掴めず。そのまま本間も倒れた。
9回、疲労がみられる渡辺和に代わり前田が登板する。前田は今季6試合投げて未だ自責点が0であった。ところが、直球が甘いコースに入ると、これを藤森が容赦なく右翼スタンドに運ぶ。気を取り直し、次の打者を打ち取るも、法大の主将・吉安が右中間に逆転の本塁打を放つ。さらに鈴木の弱い当たりを林の悪送球で出塁を許す。石黒の犠打に加え、熊谷の四球もあり2死一、二塁となる。これには堀井監督もたまらず前田を降板させ、小暮をマウンドに送る。一時満塁となるも何とか三振で切り抜ける。しかし、この回でペースを完全に乱された慶大は、その裏を3者凡退でゲームセット。慶大は1-3で惜敗し、5位を維持することとなった。
渡辺和は2年生でありながら、篠木のプレッシャーをものともせず素晴らしい投球をしただけに、8回の暴投と悪送球が悔やまれた。また、今季最多の4失策は強力打線を持つ早大との早慶戦に向け、課題の残る一戦となった。しかし、中塚や渡辺和など下級生の活躍もあり、長期的な目線で見ると頼もしくも楽しみでもある慶大の一面もみられる試合だった。法大戦はまだ残っているこれらの課題をどう克服するか今後の展開に注目が集まる。
(記事:吹山航生、写真:加藤由衣、大泉洋渡)