自身の成長のみならず、大学野球や日本の野球界の発展を目指すことを目的としてインスタグラムのアカウント(@keio_veloboy)を開設した広池浩成(新経3・慶應)選手。開設してまだ約1ヶ月だが、現在のフォロワー数は12月25日時点で6296人。ほぼ毎日、投球技術やトレーニング内容を投稿している。12月11日には自己最速となる156km/hを記録した広池選手に、アカウントに込められた思いや野球観について取材しました!
ーーーアカウント開設のきっかけは
大学野球の人気を高めたいと思ったことからです。大学野球は選手のレベルも高く地域性もあり、かつてプロ野球を凌駕するほどの人気があった時期もあった、とてもポテンシャルのあるリーグです。確かに早慶戦の集客面での突出はすごいものがありますが、他の大学同士の試合だって、早慶戦に引けを取らないような、レベルの高い試合が繰り広げられていると思います。そういったレベルの高い大学野球というコンテンツをもっと多くの人に見てもらいたいという思いから、まず慶應から、そしてその中でもまずは自分からやってみよう、と考え、アカウントを開設しました。自分自身から発信していくことを最初の狙いとしています。
2つ目の理由は、自身のレベルアップです。アカウントを通じて世間に向けて発信することそのものは、発言が公のものになるという点で、当然プレッシャーを感じることもありますし、注目も浴びます。期待してくれている人も、野球関係者の方も見てくださっている。そうした期待に恥じないような姿を見せたいですし、その上で自分が有益な情報を発信して、学生野球から技術のレベルを上げ、より一層魅力的なコンテンツにしたいというのが、2つ目の理由です。アカウントでは、投手向けにしても野手向けにしても、「これは間違いない」っていうような効果があったトレーニング方法を選んで発信しています。アカウントで練習法を紹介するにあたっては、情報を精査して自分の頭の中で整理する必要があります。確かに他の人の成長を助けるのも確かにアカウント運営の目的としてありますが、このアカウントを通して一番成長しているのは確実に自分だと思います。
ーーーアカウントの活用方法として期待することは
アカウントの活用方法としては紹介しているトレーニング方法を実践してもらう、という部分よりもむしろ同じ学生が発信していること、野球に取り組んでいる姿を見ることで刺激を受けてほしいです。学生からの発信が少ない現状において、姿勢を見せることで他の学生に刺激を与えたいと考えています。コメント欄への質問はウェルカムです。もちろんそうしたコメントが来ることはわかっていて投稿していますし、DMでもピッチングフォームに関する質問を多く頂きます。もちろん返せる範囲にはなりますが、そうしたアドバイスを通じて自分の学びにも繋げています。
ーーー6月から11月にかけて15kg増量し、体格が大きく変化。増量によって最も顕著に感じた部分は
まず運動エネルギーってものがあって、それをボールに伝えていくのですが、運動量というのは「重さ×速さ」で導出されます。つまり体重というものは重ければ重いほど良いです。どこの筋肉が強くなったとかよりも、どこの筋肉が強くなったとしても、とにかく「体重が重くなった」という事実が重要であり、体重が重ければ重いほどボールに伝わる力が大きくなり、球速が向上します。これは運動力学的にも、バイオメカニクスって分野でもわかっていて、そういう意味では、増量によってなにか恩恵が得られたというよりも、増量そのものが恩恵であるのではないかなと。
ーーー12月11日には自己最速となる156km/hを計測。各所で話題となっているが、広池選手自身はこの記録をどう捉えているか
156km/hを記録したことは、自分の限界値が上がったということです。限界値を上げることで、当然コントロールできる球速も上がるわけです。試合で常に156km/hを投げられるとは限りませんが、限界値を上げることで、試合で使える速いボールを投げられるようになりました。例えばそれまで最速151km/hで、試合中にコントロールできる球速が140km/h中盤だったものが、最速156km/hになり、球の最速の上昇ともに試合中にこの速さならコントロールできるって球速が150km/hに近づいています。この数字は「成長の指標」として、すごく大きなものだと思います。
ーーー最速156km/hと言われると、やはり2016年のドラフト1位で広島東洋カープに入団した矢崎拓也(平29卒・現東京ヤクルトスワローズ)選手が頭をよぎる。広池選手にも「プロ野球への道」が頭をよぎることはあるか
プロ野球選手になることを目標に、高校生の頃から計画的に進めてきています。
ーーーそれは元プロ野球選手である父・広池浩司さん(現西武ライオンズ副本部長兼編成統括)の存在が
技術的に何か教わったわけではないんですけど、気持ち面、精神面、プロを目指す人ってどういう人なのか、どういう人間がプロになれるのか、そういう気持ちとしての面は本当に成長させてもらったと思います。
ーーー今秋リーグ戦の立大2回戦では、リーグ戦初先発初勝利。7回6奪三振、本塁打1本だけで抑えて1失点だったが、当時の投球を振り返って
6奪三振の中ではストレートだけじゃなくて、スライダーとかがすごい効いたと思うんですけど、スライダーは自信のある球で、この冬すごい改良に取り組んでて、ピッチャーアセスメントで学んだ握りとか投げ方とか、一番バッターが嫌なスライダーの場所を投げられるように日々調整中です。
ーーー広池選手の持ち味に素晴らしいストレートがあるが、スライダーなどの変化球との組み合わせでどのような価値が生まれると考えているか
僕は今、ストレート、スライダー、カットボール、フォークを主に投げているのですが、きっちり全体の4分の1ずつ投げれるのが理想ですね。偏りがあると選択肢が狭くなっちゃいますし、バットに当たりやすいです。バッターの意識が4分割できれば当たらないものなんで、4つの組み合わせもちゃんとバッターが見分けにくい場所にいくように変化球の組み合わせもしてあって、4球種4分の1ずつちゃんと投げ込めば、バッターの的を絞れない、っていうのが理想としてはありますね。でもストレートも本当に難しいもので、プロでもできる選手はすごく少ないからこそ、そこは目指すところですし、この間の試合(12月15日に行われた日大とのオープン戦)もストレートが半分以上占めちゃって、そこは課題ではあります。プロを目指す上でストレートに頼ることなくいろんな球種で打ち取っていく、学生をストレートで抑えるのは、ストレートで圧倒できるような球を投げるのは絶対条件なので。学生をストレートで圧倒して変化球を少なくしても抑えられるっていうのは、バッターを圧倒するっていう意味では当たり前なんですけど、プロで本当にそれでご飯食べてるバッターたちをどうやって抑えるかってなった時に、選択肢を広げる、それをいいコースに投げ続けるっていうのはすごい大事になってくるんで、そこも見せた上で、4分の1ずつというのを念頭に置いてます。
ーーー投稿の中にストレートのシュート回転、シュート成分をちょっと無くしていこうみたいな話があったが、それは課題として捉えているか
シュート成分はぜんぜんあってよかったんですけど、球速を上げた時にたまたまシュート成分が少なくなって、球質が変わってたぐらいです。シュートはシュートでいいんですよ、もちろん。シュートしてるボールとスライダーの組み合わせで、バッターにとっては横幅が広くなるんでいいんですけど、「シュート成分減ったな」って思って、それなら他の球種もちょっとだけ修正しようかなって。ただただストレートのシュート回転が減った増えたとか、ストレート1球種の中での話ではなくて、そのシュート成分の減少だけでも、他の球種との兼ね合いとかまでも見据えて調整する必要があるということなんです。シュート回転の有無についてはどっちがいい、悪いとかって話ではないですね。
ーーー来年の飛躍に向けて、現在最も意識して取り組んでいる課題は
やっぱバッターと勝負するっていうところ、自分のポテンシャルとか球速とか上げていくのはトレーニングの方でやっていて、いかにバッターを抑えるかっていうところはすごい大事に取り組んでいきたいですね。1年生はまだ自分のポテンシャル伸ばすだけでよかったかもしれないですけど、(来年は)3年生の代で、完成度というか、いかにバッターを抑えるか、それで試合に出ていくかというのが大事になってくると思うんで、バッターを抑える術っていうのをどんどんつけていきたいですね。もちろん球速も、年始で160km/h投げる予定なんで(笑)。残り3、4年生のうちには絶対出します!
ーーー最後に来季への抱負を
来年はもう絶対、今年は秋もいっぱい負けたりとかして、あんまり戦力になれたって感じじゃなかったんで、来年春は六大学のバッターを圧倒するってところを1番の目標において、バッターと勝負していきたいです!
(取材、記事:神戸佑貴)
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