24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第1回となる今回は、野球部の水鳥遥貴(商4・慶應)。1年次からリーグ戦に出場し、3年次にはレギュラーとして明治神宮大会制覇に貢献。最終年は背番号「1」を背負い、副将としてチームの核であり続けた。そんな彼の、全てをかけた4年間に迫る。
2021年、慶大野球部に入部。同期には慶應高時代からともに戦ってきた本間颯太朗(総4・慶應)や、再び野球に挑戦することを決めた清原正吾(商4・慶應)らがいた。入部時の目標は、「背番号1を着けること。4年生で誰もが認めるチームの中心選手になり、秋に誰よりも活躍すること」だったという。1年次のリーグ戦出場は1試合。「もっと1年生から活躍したかったけれど、そんな甘いものじゃないことを痛感させられたし、もっと早くから活躍したかったなという思いはある」と当時を振り返る。
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オータムフレッシュ早大戦にて
2年次にはフレッシュトーナメントなどに出場し、迎えた3年春。2カード目の明大1回戦に「1番・一塁」で先発出場すると、初回から安打で出塁。これが自身初安打となる。明大3回戦では「5番・一塁」で先発し途中から遊撃に入ったが、最終回の守備で右肩を負傷。このプレーで慶大は勝利を収めたが、水鳥はここから約1か月、「人生で一番悔しかった」という時期を過ごすこととなる。「試合に出ている人が羨ましかったし、自分でもここからいけると思った中で、けがをしてしまったのは、すごく悔しかった」。やっとの思いでつかみかけたレギュラーへの道は、そう簡単ではなかった。
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悔しさを味わった
3年秋のシーズンは、優勝争いのプレッシャーの中を過ごすこととなる。開幕カードの立大戦で2連勝し、続く法大戦も4回戦に及ぶ激闘の末に勝ち点を獲得。東大戦も2連勝。勝ち点3で首位に立ち、明大戦を迎えた。水鳥は1回戦で初回に3点適時二塁打を放つと、3回戦でも2安打3打点の活躍。優勝へ向け負けられない一戦で、真価を発揮した。そしてチームは勢いそのまま、明治神宮大会を制覇。日本一に登りつめ、水鳥は「あの経験は一生の宝物」だと振り返る。
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明治神宮大会で優勝し日本一に
そして12月には大学日本代表候補として、愛媛県で行われた合宿に参加。宗山塁(東北楽天ゴールデンイーグルス)や金丸夢斗(中日ドラゴンズ)、篠木健太郎(横浜DeNAベイスターズ)、渡部聖弥(西武ライオンズ)らとともにプレーし、「すごいメンツがいて、その中で自分がすごくちっぽけで、みじめに思えた。自分のレベルの低さを痛感したし、もっと頑張らなきゃなと思えた。特別な経験だった」と話す。
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愛媛県で行われた合宿に参加
(左・宗山、右・渡部)
そして迎えた最終学年。入部時の目標だった「背番号1」を背負い、副将としてチームの中心選手となる。しかし「最初はすごく(副将を)やりたかったが、役職につくとうまくいかなくて。副将としては苦しい1年間だった」と明かす。春季リーグ戦では明大、早大にそれぞれ2連敗し3位に。「悔しかったし、もう一回やり直せることならやり直したい」と後悔を語る。しかし「その経験があったからこそ秋があったし、これからの野球人生に生かしていければ。1日1日を、1打席1打席を後悔しないようにやっていく必要を感じた」と貴重な経験にもなったという。
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夏にはオールスターに出場
秋季リーグ戦では主に1番や3番に入り、規定打席で3割台の打率を残した。早慶戦でチームは2連勝し、自身も通算2本目の本塁打を放つ。意地を見せた早慶戦を、こう振り返る。「早慶戦で2連勝できた理由は今でも分からないし、あの3週間で何かを大きく変えたわけではない。ただ今思うと、早慶戦に勝つことがどれだけ大事なのかということを周りの反応から実感した。早慶戦は特別だということを、最後の最後でより感じられた。その中でプレーができて、幸せだったなと思います」
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最後の早慶戦
プロ志望届を提出したものの、指名されることはなかった。「それが今の実力なので。次に向けて頑張るだけです」と語った水鳥。大学での4年間を「野球人としても人間としても、成功や失敗を経験して、学びがあった。成長できた4年間じゃないかな」と総括する。
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成長できた4年間
大学4年間をどう過ごすか。水鳥は「自分から行動する。自分のコンフォートゾーンを抜けて、知らない世界に飛び込む。自分のしたことないことをしてみる。人になんと言われようが、挑戦してみる」ことが大切だと語った。
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諦めずに挑戦することが大切
慶大を離れ、社会人野球へ。明治安田に入団し、1年目からレギュラーを目指す。「今は自分が一番下手だと思っているので、焦りはあります」と環境の変化を感じているものの、目標は「2年後にプロにいくこと」。新たな舞台で、夢を叶えるまで。水鳥遥貴の挑戦は、まだ終わらない。
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2年後、プロの世界へ
(取材・記事:工藤佑太)