【Last message】仲間と共に見つけた“ソッカー部にいる意味”/4年生特集「Last message〜4年間の軌跡〜」 No.27・堀溝大貴(ソッカー部男子)

ソッカー男子

24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第27となる今回は、ソッカー部男子の堀溝大貴(総4・暁星)。ラストシーズンでは念願の「2部優勝、1部昇格」を成し遂げ、有終の美を飾った慶大ソッカー部。その裏で“ソッカー部にいる意味”を模索し、もがき続ける堀溝の姿があった。そんな彼は、大学4年間で何を想い、何を得たのか。

 

父親と兄の影響で、物心ついた頃にはサッカーを始めていた堀溝。サッカーをすることが当たり前だった彼にとって、大学で「ソッカー部に入る」以外の選択肢はほとんど念頭になかった。「自分で選んだ道」を突き詰める友人の姿を羨望しながらも、「生活が変化するのがちょっと怖かった。友達もいるし、サッカーを続けた方が楽だろうな」という思いが勝った。そして、高校1年時に等々力競技場で観た早慶戦への憧れも後押しとなり、堀溝は慶大ソッカー部の門を叩いた。

ソッカー部に入る以外なかった

2021年シーズン終盤、当時1年生だった堀溝は早くもTOPチームの練習に参加するチャンスを掴む。しかし、思うような結果を残せず、トップチームに定着することはできなかった。3年時には、「努力も貢献もしていない自分」がソッカー部にいる意味を見失い、本気で退部を考えた。それでも、彼にはまだやり残した目標があった。早慶戦出場ーー。さらに、周りを見れば「ソッカー部に入る」という選択を正解にしようと懸命に努力する仲間の姿があった。結果を出せなくても、堀溝の頑張りを傍で見守り、全力で励ましてくれている人がいた。そんな仲間の想いに触れる中で、「自分なりの役割を果たして、この学年で何かを成し遂げたい」という思いが、いつしか堀溝の原動力になっていた。人生の選択に責任を持てるのは、自分しかいない。3年間もがき続けた末に辿り着いたのは、「一度決めたらやるしかない」という覚悟だった。

「一度決めたらやるしかない」という気持ちで戦った

ラストシーズンは、「サッカー人生の集大成ということで気持ちが入っていて、初めてここまで『勝ちたい、試合に出て活躍したい』と思えた」と振り返る。そんなサッカー人生最後の1年は、新監督の就任、下田グラウンドの人工芝張替工事という大きな変化と共にスタートを切った。新チーム発足直後はその変化に戸惑うこともあったが、練習を重ねるごとにチームの方向性が明確になっていった。それは、ピッチの内外を問わず、部員一人ひとりが意見を出し合って行動するチームのあり方だった。練習試合で負けが続いた際には、4年生で学年ミーティングを実施。目標を「1部昇格」から「2部優勝」に引き上げることでチームの士気向上に努めた。

※1位と2位は1部に自動昇格、3位は1部参入プレーオフへの出場権を獲得する。

早慶戦出場を果たしたラストイヤー

チームとしては着実に結果を残した一方で、堀溝にとっては難しい1年だった。早慶定期戦前のインタビューでは「交代出場が多くて、中々まとまった出場時間が得られてない悔しさがあると同時に、チームは首位ということで嬉しさと悔しさが混じった複雑な感じです」と語っていた。堀溝は、関東リーグ7試合(1アシスト)、アミノバイタルカップ2試合(1ゴール)、早慶定期戦、慶應・神戸サッカー定期戦の計11試合に出場。いずれも途中出場という難しい立ち回りの中で、持ち前の嗅覚とシュート力を武器に勝利へ貢献した。8月の早慶定期戦、堀溝は国立競技場のピッチへと駆け出す。86分からの途中出場。堀溝は、4年目にしてついに「早慶戦出場」の悲願を果たしたのだ。この時、ソッカー部を「続けてきて良かった」と心の底から思えたという。一方、関東2部リーグの優勝争いは最終節・日体大戦までもつれ込んだ。首位を走る慶大と、2位・日体大の直接対決。両者譲らず0−0で勝ち点を分け合う結果となり、慶大の「2部優勝」が決定。途中出場していた堀溝は、ピッチの上でその瞬間を噛み締めた。

「2部優勝」を見届けた

4年間で感じ得たものは、「多様性」だという。幼稚園から高校までを一貫校で過ごしてきた堀溝は、「知り合いがMAX160人というすごくミニマムな人間関係の中で生きてきていて、通学で電車には乗りますけれど乗車時間が2分だったので(笑)」と話す。大学入学後は行動範囲が広がり、様々な人との出会いを経て「自分の想像している以上に自分の人生は狭かったし、人から見たら特殊な枠に入るんだっていうのを凄く実感した4年間」だったと振り返る。そして、ソッカー部では「本音をぶつけあえる仲間」ができた。4年間を振り返れば、GM選出ミーティングなど、誰かのサッカー人生をかけて本気で話し合わなければいけない場面に何度も直面した。だからこそ、今では取り繕わずに本音で語りあえる関係性を築くことができた。

ソッカー部に4年間を捧げた

堀溝は、自身の「AO入試」の経験を活かしてチームの強化にも貢献してきた。4月からは、AO入試で慶大に合格した13人の後輩がチームに加わる。「来季は1部でさらにレベルとか強度が上がっていく中で、有望株を何人か合格させられたのは良かったなと思います」と嬉しそうな表情を見せた。中でも、1月に第103回全国高等学校サッカー選手権大会で優勝を果たした、前橋育英高のエースストライカー・オノノジュ慶吏については「『NEXT健人』だと思っている」(=塩貝健人※)と期待を覗かせた。さらに来シーズン注目したい選手には、「自分と同じ雰囲気を感じるので、すごく頑張ってほしい」とFW・立石宗悟(法3・桐蔭学園)の名前を挙げた。そして後輩たちに向けて、「ソッカー部での4年間は全力でサッカーに費やして欲しいですね。それだけの価値がソッカー部にはあると思います。一方で、人生はサッカーだけじゃないと思っています。こういった部活動を通して、自らの人生をどう生きていくのかを考えるのが一番大事かなと思います!」と、堀溝らしい言葉を残してくれた。TOPチームのスタメンとして、ピッチに立てるのは11人。間違いなく、スタメン以外の役割を担う選手の方が多い。堀溝もその一人だった。心が折れそうになりながらも“ソッカー部にいる意味”と向き合い続け、自らの役割を全うし、チームのために戦い続けた堀溝。そんな4年間の軌跡は、きっと後輩たちの道標となる。

※2024年シーズンの途中まで約2年間慶大ソッカー部に所属。横浜F・マリノスを経て、現在はオランダのNECで活躍する。

(記事:長掛真依)

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