【Last message】背中で支えた4年間 最後の神宮に響き渡る思いの証/4年生特集「Last message 〜4年間の軌跡〜」 No.42 福住勇志(野球部)

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24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第42回となる今回は、野球部の福住勇志(商4・慶應)。1年時から140キロ台中盤の直球を武器に注目を集めたが、度重なる故障に悩まされた大学生活。それでも自らの役割を全うし、スタンドからの応援を力に変えて、従来とは異なる形でチームを支え続けた。選手として試合に出場する機会は限られたものの、全力の応援活動に魂を捧げ、チームの一員として戦い抜けた福住。卒業を目前に控え、これまでの野球人生を振り返る。

「最初の小学生の頃とかは、自分でも納得のいくプレーができていて。中学に上がったタイミングで身長が急激に伸びて、プレースタイルが変わったので少し悩んだのですが、高校でなんとか最後スタメンに出て、大学でピッチャーに移って。最初はピッチャーも良かったのですが、やっぱり怪我をしてしまって。そこから思うように、最後は復活できなかったなと」。技術的な面では満足のいくキャリアではなかったというが、「人としての成長という部分では、いい経験ができたのかなという風に思います」と、野球を通じて得た経験や学びは計りしれないものだった。

1年春季フレッシュで登板した福住(本人提供)

チームに貢献することを決意し、副将に立候補した昨年。リーグ戦ではベンチ入りこそ叶わなかったものの、グラウンドの外からチームを支える役割を果たした。試合に出場することだけが貢献ではない。そういった姿勢を体現し、仲間たちが全力を尽くせるようにサポートしてきた。「やっぱりプレーで貢献できない分、応援で貢献するのは当たり前という風に思っています」。神宮の応援スタンドには、いつも福住の姿があった。誰よりも熱い声で声援を送り、時には大きなメガホンを手に最前列で三色旗を掲げる。最後の神宮でありながらも、変わらぬエールを届け続けた福住の存在は、チームの精神的な支えとなっていた。

それでも「僕は最後の最後まで自分がプレーに出て活躍することを諦めなかった」と福住。「自分がグラウンドに出てプレーした時に、逆に応援してもらえるような、みんながら全力で応援してもらえるようなスタメンになるために、自分から全力で応援しようと心がけていた」と、野球への情熱が消えることはなかったという。また、野球という競技は選手だけで成り立っているわけではない。応援指導部をはじめとする多くの人々の支えがあることを常に意識し、彼らに敬意を払う気持ちを持ち続けた。「特に応援指導部の方々に常に応援してもらっていたので、そういった部分で応援指導部の方々に失礼のないようにと心がけていた」。試合前には仲間と声をそろえて校歌を歌い、得点のたびに飛び上がって喜ぶ。その姿は、まさにチームの一員としての誇りを示していた。

スタンドから仲間たちに熱い声援を送る福住

迎えた秋の早慶戦。大学4年生の秋、最後の舞台に立つことは惜しくも叶わなかった。「1年生の頃はリーグ戦と行き来していて、最後に自分たちの代になって、1年生の頃に思い描いた4年生の姿と真逆の姿だなと」と振り返るも、長年の親友である清原正吾(商4・慶應)の活躍には心を大きく動かされた。昨秋の早大1回戦、2点リードの6回裏。ワセダのエース・伊藤樹(新スポ4・仙台育英)の初球をとらえた打球は、一直線にレフトスタンドへ。清原が放った一振りは、福住の真上を通過していった。空を見上げた瞬間、彼の胸に込み上げたのは、親友の努力が結実したことへの純粋な喜びだったという。「あいつのホームランが自分の真上を通るようなホームランで、結構泣きそうになるぐらい嬉しかったです」。試合後の優勝セレモニーでは、仲間たちと肩を組み、歓喜の瞬間を分かち合った。

福住にとって最も心に残る試合は、4年生に用意された特別な試合(Mature Cup)であった。長年ともに戦った仲間たちと過ごす最後の時間。「試合後、『勇志さんありがとう』『練習頑張って』と声をかけてもらった時、今までの努力が報われた気がしました。本当に一生忘れない思い出の試合かなと思います」。その空間には、彼の投球を見守る仲間たちの温かいまなざしがあった。4年間の思いを込めた最後の登板は、大輪の花を咲かせ、美しく散った。

Mature Cup初戦・法大戦に先発した福住

そのバトンを受け継ぎ、今年度の主将としてチームを率いるのが外丸東眞(新環4・前橋育英)だ。彼の努力や苦悩を間近で見てきた福住は、新チームに大きな期待を寄せる。「丁寧に一つ一つしっかりやってきた人間なので、そういった人間が作り上げるチームは絶対に強いチームだと思います。僕たちの代よりも比較的明るく前向きに取り組む姿勢の者が多いイメージなので、僕たちとはまた違う明るさで良いチームを作り上げていくのではないかなと思います」。

最後に、福住にとって”野球”とは。「『人生』とか言ったら普通すぎるな。僕にとって野球といえば、本当に『第二の親』という感じですね」。野球を通じて成長し、学び、仲間と喜びや悔しさを共有してきた福住勇志。その姿勢は、これからの慶大野球部にも確かに受け継がれていくだろう。

インタビューに応じ、ポーズを決める福住

(取材、記事:ウジョンハ)

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