【Last message】背負った期待、纏った“氣” 本間主将の4年間(後編)/4年生特集「Last message~4年間の軌跡~」 No.43 本間颯太朗(野球部)

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24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。本企画の最終回は、野球部主将・本間颯太朗(総4・慶應)。期待のルーキーとして入部した1年次には、いきなり全国の大舞台でスタメン出場を果たす。2年次はリーグ戦で「代打の切り札」として活躍を見せると、3年次にはレギュラーに定着し、リーグ戦優勝と明治神宮大会制覇に貢献。最終学年では主将に就任し、チームを引っ張り続けた。本記事では、常に戦力としてチームに欠かせない存在だった本間の4年間の軌跡を辿る。後編では、上級生、主将としての葛藤や大学卒業後の進路について迫る。

本間が3年になる頃には、2021年に大学3冠を経験した選手はほとんど卒業。2023年、リーグ戦開幕前の慶大の評判としては、決して期待できるものではなかった。しかし本間は、当時を「たしかに、2個上の先輩は野球の技術が高い人たちだらけだったんですけど、1個上の先輩も負けていないと思っていました。だからそこまで不安に感じていませんでした」と振り返る。

春の慶大は3位でフィニッシュ。最終節の早慶戦で勝ち点は挙げたものの、開幕2カードで勝ち点を2つ落とすなど、これまでのリーグ戦に比べ早々に優勝戦線から離脱するシーズンとなった。その中で本間も打率.200、6失策と攻守で精彩を欠く結果に。本間は「ただ試合に出ていただけという感じでした。ダメなシーズンだった、という記憶しかない」と語る。ただ、早慶2回戦では3打数2安打3打点を記録。「早慶戦で少し打てた」経験が、その後の成長のきっかけの1つにとなったという。

早慶戦で大活躍の本間

春のリーグ戦を終え「なにかを変えなければ」と考えた本間。夏には主将の廣瀬隆太(令6卒、現福岡ソフトバンクホークス)に習い、フォーム改造に着手した。これまで打撃は感覚だけだったというが、廣瀬から打撃理論と実践のすり合わせの方法を学び、自分のスイングに落とし込んだ。結果、秋は立大2回戦でのリーグ戦初本塁打を皮切りに、シーズン通算打率.340、3本塁打をマーク。優勝が懸かった早慶3回戦では7回に本塁打を放つ活躍を見せるなど、主に「2番・三塁手」として2年ぶりのリーグ戦優勝と明治神宮大会優勝に貢献した。

明治神宮大会後には皆で喜びを分かち合った

個人としてもチームとしても華々しい成績を残した3年秋。しかし、栄冠の裏で本間は「次、神宮で戦うときにはこの先輩たちがいないのか」と不安な気持ちが芽生えたと明かした。そしてシーズン終了後の12月初頭、今後の野球人生のために肩の脱臼癖を治す手術に踏み切る。リハビリを経て、実戦に復帰したのは2024年春のリーグ戦開幕2週間前。新シーズン開幕に向け調整が大きく出遅れる形となった。

オープン戦で冷静に戦況を見つめる本間

一方、チーム内で本間は主将に就任。オープン戦期間中、本間は試合に出ることができず「チームを俯瞰して見られたという良さもあったんですが、プレーで示せない悔しさ大きかった」という。「『氣』が大事っていうのをずっと言っていて、それでも足りないというのが春キャンプの時点の課題で。それを結局、僕がプレーで示せなかった。そんな中で、快太(=斎藤快太、商4・前橋)であったり、遥貴(=水鳥遥貴、商4・慶應)、正吾(=清原正吾、商4・慶應)が頑張ってくれていたんですけど…。背中で引っ張ると言いながら、主将の僕がそれをできなくて。もどかしかったですね」と振り返った。

本間を支えてきた副将・斎藤快&水鳥

結果、春は3位、秋は5位でリーグ戦を終了。秋に関しては、2016年春以来のBクラスとなった。最終学年、主将として過ごした1年間について本間は「大学前半の3年と最後の1年間は、体感、同じくらいの長さでした。ラスト1年は特に濃かったです。しんどかったです」と率直な心境を口にした。

本間の声でチームの結束力を高めてきた

本間が「一生忘れられないくらい悔しかった」と何度も語るように、春は早慶戦で早大の胴上げを目の当たりにした。また、本人こそ「結果が出ていなかったから仕方ない」と冷静だったが、秋はスタメンを外れベンチを温める機会も増えた。しかし、”本間世代”として最後のカードとなった秋の早慶戦では、本間、水鳥、清原ら4年生の大活躍で首位の早大に連勝。部員全員の意地で、有終の美を飾った。「1年間やってきたことが無駄じゃなかったと思えるよう、最後は勝って終わりたかったので。ちょっとは報われました」と笑顔を見せた。

早慶2回戦後に同期たちと抱擁を交わした

大学野球引退後は、社会人の強豪・パナソニック野球部に入部。地元・奈良に近い大阪のチームを新たな進路として選択した。1月から練習に合流しており、「懐かしいというか…7年関東にいたので。練習に参加してすぐに関西弁も強くなって、根は関西人だなと感じています」と充実感を見せた。パナソニックは昨年、都市対抗と日本選手権の社会人野球2大大会の出場を逃した。合流以降は本間曰く「ビビるくらい練習している」といい、全国出場、そして優勝に向けレギュラー定着を目指す。“慶應の主将“という大きな肩書きを背負い、社会人野球の道へ進んだ本間。彼の『氣』を社会人野球の舞台でも存分に放ち、チームを引っ張って優勝へ導く__。その姿が見られることに、今後とも期待したい。

鹿児島で慶大との試合にスタメン出場した本間

(取材、記事:北村可奈)

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