第104回関東インカレが神奈川県相模原市で開催された。4日間に及ぶし熱戦の末、慶大競走部は男子20点・女子8点を獲得し、一部残留を果たした。高橋諒(商2・桐朋)が十種競技を制し大会連覇、倉田紗優加(環3・伊那北)も女子やり投で圧巻の自己新V。鈴木太陽(環4・宇都宮)が男子1500mで中距離種目久々の3位表彰台となるなど、実力者の真価と4年生の意地が光る大会となった。
今大会で活躍を魅せた選手の皆さんへ試合後インタビューを行いました。ぜひ最後までご覧ください!
<男子1500m3位・鈴木太陽(環4・宇都宮)>
――3位表彰台おめでとうございます。今の率直な感想を聞かせてください
本当に感謝の気持ちしかありません。自分の可能性を信じて背中を押してくれた人たち、そして正直信じていなかったという人たちの存在すらも、「見ていろよ」と奮い立たせてくれる原動力になりました。ポジティブな感情もネガティブな感情もすべてを力に変えて、自分らしい走りができたと思います。 レース後には多くの祝福のメッセージをいただき、改めて自分は幸せ者だと実感しました。そして何よりも、お世話になった人達にメダルをかけて涙を流してもらえたことが、とても嬉しかったです。
――どのような意気込みで今年の関東インカレに臨まれましたか?
「まずは自分自身が誰よりも楽しむ。そして、会場全体を楽しませる」という気持ちを持って臨みました。 部として「1部残留しなければならない」という重い空気が漂っていましたが、義務感を背負って走っても良い結果は出せないと感じ、あえて一度そうした思考から離れ、夢中になって純粋に目の前レースを楽しむことを意識しました。 結果として、周囲の予想を良い意味で裏切る走りができ、トップバッターとして得点を獲得することで後に続くチームメイトが少しでも肩の力を抜いて競技を楽しめる空気を作れたなら、本当に嬉しいです。
――1500m予選では全体2位・更に自己ベストをマークしました。レース中やレース後の心境について振り返っていただけますか?
練習から調子が良かったので、落ち着いて集団の前方で位置取りをキープすることに集中していました。ラスト100mでまだ余力があったので、決勝進出は確信できました。走り終わった直後にはすぐに気持ちを切り替えて、「明日の決勝で勝つためにどう疲労を抜こうか」と、次に向けた準備に意識を向けることができていました。
――決勝レースについてもお願いします
「あとはご縁次第だな」と感じていました。1500mは対人競技であり、展開や一瞬の判断で順位が大きく変動します。そのため、「ご縁があれば表彰台まで届くかもしれない、だからこそ自分の100%を出し切ることに集中し、周囲のペース変動に柔軟に対応していこう」という、力まず冷静なメンタルで走ることができました。結果、表彰台に立つ“ご縁”に恵まれたことが嬉しいですし、最終学年にしてようやく「自分らしさ」を表現する走りができたことにほっとしています。

「ようやく”自分らしさ”を表現する走りができました」
――今大会の結果は鈴木選手にどのような意味を持つと思われますか?
「自分の弱さを認めたうえで、それでも勝ちにいく」そんな経験ができた大会でした。実は直前にメンタルを崩してしまい、不安も大きかったのですが、たくさんの周囲の支えがあり急ピッチで立て直すことができました。ひとりではとても弱い。でも、周りの人の存在があれば、そこから強さを引き出すことができる。そのことを心から実感した数日間でした。 弱さを抱えながらも、周囲とともに戦い、“此処ぞ”の舞台で自分の力を出し切れたことは、これからの人生においても大きな自信になると思います。
――今後の意気込みをお願いします
「ラストイヤーの“此処ぞ”に強いタイプ」と言ってきましたが、今回の結果には運の要素も少なからずあったと感じています。だからこそ、次に控える全日本インカレでは、この結果が実力であると自他ともに証明できるような走りをしたいです。 また、10月の箱根駅伝予選会に向けて、トラックシーズンで得た小さな自信を糧に、“ミドル鈴木”から“ロング鈴木”へと進化し、ハーフマラソンでも輝けるよう挑んでいきます。今回の結果を通じて「資格記録や昨年の順位なんて関係ない」と示すことができたと思っています。その意識をチーム全体で共有し、具体的な行動へと変えて、予選会で大番狂わせを起こしたい。 その反撃の道のりを誰よりも楽しんでいきます!
<十種競技2連覇・高橋諒(商2・桐朋)>
――大会連覇おめでとうございます。今の率直な感想を聞かせてください
ほっとしたというのが率直な感想です。
――どのような意気込みで今年の関東インカレに臨まれましたか?
優勝して慶應に絶対8点持ち帰るという目標を掲げて臨みました。
――10種目を振り返ると、走高跳など本調子ではないように見えた種目もあった一方、円盤投や棒高跳など自己ベストを更新した種目もありました。大会を通じてご自身の調子についてはどのように思われていましたか?
大会の2週間前に足首を負傷し、万全ではない状態で大会に臨むこととなりました。高跳びは途中で断念せざるを得ませんでしたが、棒高跳びや円盤投げでは、1年間積み重ねてきた成果を実感することができました。ペース配分はあまり考えていませんでしたが、なるべく体力を消耗しないように競技の休憩中は目を閉じて、入ってくる情報を制限するなどの工夫をしていました。

「体力温存のために休憩中は目を閉じて情報を制限していました」
――優勝できそうだと思えた瞬間はありましたか?
棒高跳びでベストを跳んだ時に優勝を確信しました。優勝が決まった瞬間は嬉しいという気持ちはもちろんありましたが、慶應に8点持ち帰ることができたことにほっとしました。
――今大会の結果は高橋選手にどのような意味を持つと思われますか?
プレッシャーがある中で大事な大会で勝ち切ることができたというのは大きな自信につながりました。
――今後の意気込みを聞かせてください
怪我しにくい身体作りをし、大事な大会で結果を残せるように日々頑張ります。
<女子やり投2連覇・倉田紗優加(環3・伊那北)>
――関東インカレ2連覇おめでとうございます。今の率直な感想を聞かせてください
前半試技(3回)の投擲があまり良くなく、ヒヤヒヤする試合だったのでとりあえず2連覇できて安心しました。
――前回王者として臨んだ今大会。大会前はどんなことを考えてきましたか?
関東インカレの約2週間前の織田記念でとても良い感覚を得ていたので、順位よりも記録を狙おうと思っていました。60mへの手応えもあったので「コンディション次第では60mあるな」と思いながら臨みました。順位を意識すると力むので、とにかく自分の動きに集中しようと思っていました。今年唯一の全体応援だったので楽しもうとも思っていました。
――2週間前の学生個人選手権では惜敗し、表彰式では涙を見せる場面もありました。こうしたライバルは倉田選手にとってどんな存在ですか?
学生個人はそこにかけていた分悔しすぎて涙が止まりませんでしたが、ライバルがいてくださるからこそ頑張ろうと思えますし、やはりハイレベルの投げ合いの試合は本当に楽しいので感謝とリスペクトしかありません。
――試合中はどんなことを考えていましたか?
技術的に左に槍を引っ張ってしまう(槍を離すのが遅くなってしまう)エラーが出ていたので、とにかく右に投げる意識を持つことで修正しようと思っていました。また、私は1投目が得意で前半に記録を出すことが多かったので、前半悪いと負け試合になってしまうことが多かったためどこかで立て直さなければいけないと思っていました。

「とにかく右に投げる意識を持とうと」
――4投目の大投擲の際の感想は?また、その時までに何か心境の変化はありましたか?
4投目からトップエイト試技に入るため、1回リセットしようと思っていました。助走がはまっていない感じもあったので何回か助走練習をして良いイメージを作り上げていました。調子はよかったのでとりあえず自己ベストだけ出して帰ろうと思っていました。
――優勝が決まった瞬間の心境は?
自己ベストで優勝することが1番気持ち良いので、嬉しかったです。前から後ろから競走部の仲間が応援してくれていたのですが、全体応援が今年は関カレしかないなかで、みんなの前で60m投げられてよかったと思いました。また、ちょうど母が遠方からコーチングで来てくれていて、母の日も近かったので良い投擲を見せられて本当に嬉しかったです。
――今大会の優勝は倉田選手の競技人生にどのような意味を持つと考えていますか?
勝ち切ることができなくなってしまっていた大学陸上で、勝ち切る経験ができたのはとても自分に刺激が入った感じがして重要な試合だったと感じています。
――今後の目標/意気込みを聞かせてください
60m投げることはできましたがセカンドベストがまだ57m台なのでそれを上げることは必要不可欠です。60m台で記録を安定させられるようにして、日の丸を背負って戦える選手になれるように、やり投げを楽しみつつ、コツコツ練習を積み重ねていきたいと思います。

「日の丸を背負って戦える選手になれるように」
<競走部108代主将・大島琉偉(経4・慶應)>
――今大会の慶大競走部の戦いぶりについて
目標に掲げていた男子25点、女子15点には届かなかった。しかし、選手一人ひとりの奮闘によって、なんとか一部残留を果たすことができた。長年この代での2部降格が危惧されていただけに、まずはほっとしている。男子20点、女子8点という得点以上に、今大会には多くのドラマがあった。中長距離種目での得点や表彰台は10年近く遠ざかっていたし、男子4継での得点も7年ぶり。これまで手が届かなかったことを、次々と成し遂げた試合だった。
高橋や倉田も、昨年の優勝から連覇を期待される中で、しっかり結果を出してくれた。部内外からの期待やプレッシャーを背負いながら、それを乗り越えて2連覇を達成した姿は本当に誇らしい。まさに総力戦を体現した大会だった。
一方で、素直に喜べる内容ではなかったのも事実。悔しい思いをした選手も多い。特に、今大会での得点を期待され、来年のエースとなるであろう3年生の須崎(走高跳)や林(200m)は、悔しい思いをしたはずだ。しかし、この経験は長い目で見ればチームにとって必ずプラスになる。来年こそ、彼らが表彰台に立つ姿を期待したい。
――今大会は主将として常に最前線に立ってチームメイトを應援されていました。個人的に1番心に残った瞬間はいつでしたか?
男子1500m・鈴木太陽のレース。出場ランキングは決して高くなく、得点予想でも名前は上がっていなかった。慶應だけでなく、他大学からも完全にノーマークの存在だった。そんな中、予選で自己記録を大幅に更新し、決勝では堂々の3位表彰台。中距離種目での得点や表彰台は、いつ以来かわからないほど久しぶりの快挙だった。4年生として、意地を見せてくれた。あのレースは、他の選手たちにとっても大きな勇気と自信になったはずだ。

鈴木の激走に勝ち鬨をあげた
――今後の競走部としての意気込みをお願いします
関東インカレは終わったが、公式戦はまだ4つ残っている。次は日本インカレだ。今年は関東インカレから日本インカレまでの期間が短く、調整が難しい。しかし、関東インカレ以上に厳しい戦いが待っている。
今回、悔しい思いをした選手には、その悔しさを日本インカレにぶつけて欲しい。日本インカレに出場しない選手も、夏の公式戦に向けて自分にできることを全力でやってほしい。
全部員がそれぞれの立場に立って関東インカレを迎えた。4日間で得た学びを次に活かし、残りの公式戦に向けて最高の準備を積み重ねていけば、必ず結果がついてくる。
(取材:小澤理太、中原亜季帆、小林由奈、鈴木拓己、竹腰環、野村康介、山口和紀、小田切咲彩)